翌日、十二日目。遭難九日目。
この日は晴天で、波は穏やかだった。船にU-ボートを隣接させ、ロープを下ろしてもらう。一応、念のためにレーダーの復旧が行われることとなり、船員であった彼を返すのと同時に、修理の手伝いをするためレオニーさんとマルゴットさんが向こうに移る。
それから数時間後、努力の甲斐あってかレーダーが復旧し、現在位置は正確に割り出された。天測の結果とほぼ一致していて、私は鼻の下を人差し指でこすった。ふふん。なんたって、航海長ですもの。
そこから航路をとり、舵のきかないタンカー船の曳航を行った。といっても、死んだのは舵だけでスクリューは生きているから、舵取り程度で済んだし、それほど難しくはなかった。まぁ、全速で引っ張って、頑張って角度を変えていたけれどね……。
その上、タンカー船の行き先もフランスだったことから、船長には了承を得て航路を組んだ私達は晴れて陸地へと航路を取ったのだった。
☆☆☆
それから、およそ三日後。
十五日目、遭難十二日目。
ビアンカ艦長と共に、私は艦橋にいた。朝の静かな空気が肺いっぱいに溜まって、吐き出される。生きてるって素晴らしい。凄くそれを実感する。
予定通りならそろそろ陸地が見えてくる頃合いだった。あたりを見渡すと、まだ見つかりそうにはない。
「まだですかね」
「……まぁ、もうちょっとかかるでしょう。ハンナはせっかちさんだから」
「な、ち、違いますよ!」
「ふふふ、どうだか」
クスクス笑うビアンカ艦長にもうっと頬を膨らませて怒る私。こういうやり取りができるのも、もうそろそろ港につくという安心感からだ。二人してそうやって遊んでいると、普段からは聞き慣れない音がした。それは、高い音域で、クークーという鳴き声。私達は顔を合わせると、音のなる方へと顔を向けた。
「艦長、あれ……!」
「えぇ……かもめだわ。港が近いわよ……!」
そう言って、私達は抱きしめあった。朝の当直の子達が来たとき、二人して抱き合っていたものだから呆れた目で見られたのは置いておいて、だ。
数十分後、カランカランという鐘の音が響く。その音は、灯台のあるロリアンの港に近づいたこと、そして船が来たことを表す心地よい鐘声だった。
灯台は光を灯してはいなかったが、その存在は安らぎを与えてくれる。その灯台を見て、ビアンカ艦長はポツリと呟いた
「おぉ、ロリアンの灯火よ……ね……」
「なんですか、艦長?」
「ロリアンに居た父の友人が、帰港するたびにそう呟いてるんだって。あの灯台の光が、私達も、彼らにとっても、すべてのロリアンの船乗りにとっても希望の灯火だったのでしょ」
「へぇ……良いですね、それ」
ビアンカ艦長の父のことを知っている私は、その話が父との良い思い出のひとつなのだと思うと、自然と微笑む。そんな私に、ビアンカ艦長も綺麗な微笑みを見せた。
その時である。拡声器で声量をあげ、後ろの船にまで届かせる声が聞こえてきた。
『そこの諸君、とまりなさーい! こちらはブルーマーメイド! 応答に応じなさーい!』
その声の主は、スキッパーと呼ばれるモーターボートでコチラに高速接近する。そう、本職ブルーマーメイドさんであった。
私達は私達以外の、そのブルーマーメイドの方に出会えたことで、ふいぃと息を漏らして安堵した。やっと嵐をのり越えたような、そんな安堵感だった。
「あー……拡声器ってありましたか?」
「何処に置いたか忘れてしまったわ。とりあえず、曳航ロープ切断、タンカー船の航路上から離れてから機関停止するわ」
「了解です」
「あと、たぶん発令所にあるから、いって、拡声器取ってきて」
「わかりました」
そう言うと私は発令所へと向かい、いつくかのガラクタから拡声器を取り出す。このガラクタ類も、爆雷を受けたときの被害物だったり、揺れや衝突時の破片だったりする。それらを見ると、一ヶ月も前に起きた出来事のように感じられる。少しだけその破片たちを眺めた後、それを持ってまたブリッジへと登る。
「はい、艦長」
「ん、ありがとうハンナ」
手渡しすると、頭をポンポンと短く撫でられた。私は恥ずかしさから、「ちょっと、子供じゃないんですけど!」とビアンカ艦長に叱りつけてしまう。でも、ビアンカ艦長はそれに微笑むのだった。いや、まぁ、私もその手を退けようとしていないから、それを分かって微笑んだのだろうけれど。
そして、その手をどけると、ビアンカ艦長は拡声器を使用する。
『こちらU-101。貴官の指示通り、近場にて一時停止しよう。ただし、背後のタンカー船は操舵不能であり、本艦が曳航している。そのため、一旦曳航ロープの切り離し等を行う時間が欲しい。また、我が艦と後続のタンカー船の入港許可を求む』
すると、スキッパーに乗りながらその女性は、少し考えるようにしてから声に出した。
『あー……そう? ならいいや! 少し待ってて』
「軽い!」
思わず突っ込んでしまう私。これがヤーパンツッコミか……。昨晩、慰め会でレオニーさんとジークリンデさんと、その他大勢でヤーパンのマンザイを見たからだろう。手の動きが伝染ってしまっていた。
その手をゆっくりと元の位置に戻す私。幸いにもビアンカ艦長には見られていない。ホット一息をついてから、そのスキッパーの女性を眺めるのだった。
しかし、その軽さにビアンカ艦長もやる気なさげに言った。
「まぁ、U-ボート一隻に対してスキッパー一つのみ出ていることから察せられるわよ」
「ゆるゆるですね……」
「逆よ。一人で守れるほど、あの人は強いのか、もしくは私達が下に見られているか……一番有りえるのは、すでに私達がここへ帰還することを読んでいたか、ね」
「もしそうだったら、すごいですね。流石はブルーマーメイドです」
「それならもっと速くに助けに来いって話よ」
「あ、あはは……」
ビアンカ艦長の愚痴に苦笑する私。まったくもってそのとおりで……曳航って案外、燃料をバカ食いするものだったからね……。
とりあえず、あのブルーマーメイドさんが呼んだのか、他にもタンカー船を曳航してくれそうな船が近づいて来た。私達は後ろの船と切り離すと、航路のじゃまにならないようにはける。すると、私達の方にスキッパーに乗ったブルーマーメイドさんが近寄ってきた。
「はーい、それじゃあ、あなた達は私が隣に付くから行きましょうねって、えぇ!? 本当に女の子じゃん!」
どうやら潜水艦であるからか、やはり男子高生を想像していたようだ。驚く彼女をよそに、しかしビアンカ艦長は冷静に自己紹介を始めた。なんだかんだ言って、そう言われるのは学校でもう慣れてしまっているのだ。悪い意味で、だったけれどね。
「そうです。私がU-101艦長のビアンカ・フォーグラーです」
「同じく、U-101航海長のハンナ・デーニッツです!」
「こりゃ、丁寧にありがとう! ブルーマーメイドのフランソワーズ・オージェ。ようこそロリアンへ! 歓迎するわ!」
「よろしくおねがいします」
明るい彼女の笑みを見て、私達もほほ笑みを浮かべる。非常に心地の良い歓迎であった。それから接岸するまで、フランソワーズさんから色々質問を受けて、色んな話をしていた。これまでの嵐や戦闘、その前の日常生活など。ドイツに来たら、Takoyakiのお店があるよとか。結構楽しいお話ができて、久しぶりに波風が気持ちよく感じられた。
彼女はその間にもスキッパーで先導し、私達は桟橋に近づいていた。
すこしして、フランソワーズさんが言った。
「それじゃあ一旦そこに止めるから、そこの桟橋で停泊してー!」
「わかりました。ハンナ、艦橋要員を甲板に呼んで。服装は制服で」
そういうビアンカ艦長はキリッとしていた。制服で甲板に出るということは、陸地に降りるのだから身だしなみはちゃんとしよう、ということなのだろう。そういうことなんだろうけれど、さぁ。
私はビアンカ艦長に一歩詰めるとネクタイに手をやった。
「艦長も、こういうときなんだからしっかりネクタイ結んでください!」
「うぇぇ……苦しい、苦しいよハンナ……」
「自業自得ですよ! もう」
キューッと締める私にぐえぇと苦悶するビアンカ艦長。そう言いながらも整えると、苦笑しながらビアンカ艦長はありがとうと言うのだった。ま、まぁ、このぐらいにしておいてやりますよ。うん。
すると続々と艦橋に艦橋要員のメンバーが集ってきた。レオニーさん、エルヴィーラさん、ジークリンデさんだ。
「艦長、来たよ」
「私も来ました。船員全員もちゃんと制服です」
「……やっと、やっと陸地に足がつく……」
「ジーク、なっさけないなぁ?」
「……レオニーは昨晩わんわん泣いたくせに」
ニヤつくレオニーさんに、ジークリンデさんはそう反撃した。なっと声が漏れると、レオニーさんは少し顔を赤らめていた。そうなのだ。レオニーさんはやっと着くと聞いたとき、泣いてしまったのだ。だから慰め会を行っていたのだよ。
そして狼狽えるレオニーさん。機械等に関しては天才的なのに……馬鹿と天才はなんとやら、だ。
「そそそんなことないよ!」
「それなら、私が胸を貸したというのに、お嬢様」
すると、久々のイケメンオーラをまとったエルヴィーラさんが、レオニーさんに詰め寄った。両手を包むように握られ、その目を合わせられないレオニーさんがスッと目をそらした
「へぁ……や、べつ、べつにいい、よ」
「……乙女」
「初心」
「うるさいな!」
「ふふふ……さ、おしゃべりは一旦やめて。敬礼!」
そう言うと、私達はその接岸先に居る方々に敬礼をした。すると、桟橋に元々居た人以外にも、倉庫の中に居た人や他の作業中の方など、色んな人達が集まってくる。その場に多く見えたのはツナギの格好をした整備士さんである。他には正装に身を包んだ船関係の方々、果ては買い物に出かけていたであろうおじいさんおばあさんまで、そこに居た。
私とレオニーさんは口をぽかーんと開きながらその光景を目の当たりにした。
「U-ボートだ!」
「U-ボート!? 幽霊船じゃないだろうな!?」
「U-ボート!?」
「あぁ、乗っているのは誰だ!?」
「……ありゃあ、ビアンカちゃんじゃないか!?」
「あぁ、あれぁビアンカちゃんだ!!」
「あの艦長の娘さんかぇ?」
「ふぉ、フォーグラー! フォーグラーさん!!」
「孫さんが、U-ボートで、帰ってきたぞぉ!!」
駆け寄ってくる人たちは皆、口々にビアンカ艦長の名を呼んでいた。ビアンカ艦長の人気は大きいものである。私達はその声援に驚いて、ビアンカ艦長を見る。ビアンカ艦長の故郷であるロリアンではあるが、ここまで歓迎してくれるとは……ビアンカ艦長、一体何者なのだろうか。
艦長はと言うと、接岸が近くなってきたので機関停止を命じて、少し照れくさそうに敬礼を続けた。
「艦長、有名ですね」
「……まぁ、父がU-ボート乗りだったから」
「故郷であっても、これだけ有名ってことは、凄いお父さんなんですね」
「……ふふ、自慢の父よ」
「よし、それじゃあ私達がロープを掛けるよ。甲板に行こう、ジーク」
「……わかったわ」
U-ボートが接岸すると、レオニーさんがロープを投げた。すると、すぐ近くに居た整備士の格好をしたおじさんが、素早いロープワークを披露する。そして、他に来ていた方が簡易的な階段を持ってくると、早々にそれを甲板へと合わせた。それも、U-ボートの甲板から丁度良い高さで。さすがはU-ボートのあった街だ。
それを見たエルヴィーラ副長がフッと微笑んだ。
「迅速なお迎えだ」
「あれは慣れているっていうのよ。総員下艦! 久しぶりの陸地よ、しっかりと踏みしめなさい」
『ヤー!』
機関停止とともに、甲板へと乗組員の皆が出てきだす。それを各学科の委員長や副委員長達がまとめると、全員がその場に並んだ。そして順にその階段を登って、その地に皆は足をつけたのだった。
地に足をつけたとき、皆の顔には安堵と喜びが映っていた。この長い遭難生活で、やっと得られた陸地の安心感、太陽の輝き、人々の声。それらを一身に浴びたことで一気に感情も出たのだろう。何人かは泣いてしまっていた。
そして、乗組員たちの下艦が完了すると、私達艦橋要員のメンバーも降り始めた。私達は最後に、この艦を降りる。艦長が微笑んで言った。
「さて、私達も降りるわよ」
「やっと、ですね」
ビアンカ艦長と、ふふっと笑い合う。その一段一段を、私達は一緒に登っていった。そして最後の一段で、ビアンカ艦長と私の足は止まった。二人で顔を見合わせる。他の乗組員も私達を見ていた。
「……せーのっ」
そして、最後の二名が陸に下艦した。
長い嵐にもみくちゃにされた。
色んな居座古座があった。
それをも乗り越えて私達はやっと、陸地についたのだった。
「……ふふ」
「……あはは」
訳も分からず、二人で笑う。そうしてやっとの思いでたどり着いて、簡単に地面を踏める。それがなんだかおかしくてさ。ものすごく短い期間で、いくつ嵐を越えたのやら……。それが、報われた瞬間だった。
それから少し笑い疲れるまで笑うと、私達の下艦を、一人のおばあさんが待っていたのに気づいた。久方ぶりにU-ボートを迎え入れる人々が割って道を作っている。その先にいたおばあさんは、コチラをニコニコと眺めていた。
「と、お祖母様」
「え?」
するとビアンカ艦長は、祖母に気づくとそっちへ駆け寄っていく。その顔は嬉しそうで、まるで長いこと帰りを待っていた犬のようであった。そう、そのおばあさんはビアンカ艦長のおばあさまだったのだ。
「ビアンカ……ふふ、大きくなって、まぁ」
「……えっと。ただい、ま……」
「……おかえりなさい。宿と食事は三日間くらいなら用意しておいたわよ」
「……! お祖母様……!」
「え? え? どういうことですか?」
「ふふふ……今日から少し、ゆっくり休みなさいということよ、お嬢ちゃん」
どういう話なのか理解できない私に、おばあさまは優しい目で見つめるとそういった。そう、つまりは今晩の宿はU-ボートではないということである。私はその言葉に笑みが漏れ出て、無意識にガッツポーズをとっていた。
「……! ありがとうございます!」
「ありがとう、お祖母様!」
「ほほほほ」
ビアンカ艦長は再会の感動と準備の感謝に、祖母をおもいっきり抱きしめた。ぎゅーっと抱きしめるビアンカ艦長にはどこか犬のしっぽが見えた気がする。ブンブン振って、本当に嬉しそうなビアンカ艦長だった。ただまぁ、少し、うん……その嬉しそうな抱きしめ方は、羨ましいかも。
そして、私はその光景から皆の方へと振り返る。すると、エルヴィーラ副長がもうすでに皆を整列させていた。それに気づいたビアンカ艦長は、んんっと咳払いすると帽子を少し深くかぶる。あ、恥ずかしがってるんですね、ビアンカ艦長。
皆もそれをわかっているのかニコニコと優しい目でビアンカ艦長を見ていたのだった。
「さて、全員ならんだわね」
「はい、総勢28名。全員無事です」
その確認にビアンカ艦長は「よろしい、副長」と満面の笑みでいうと、くるりと振り返って皆と向き合う。一人ひとりの表情には笑顔が浮かんではいたものの、どこか疲労の色がやはり伴っていた。だからか、ビアンカ艦長は労いと共にこう言った。
「私からあなた達へ言うことがある。この数日間本当によく頑張ってくれたわ! でも、今はまだ学園へ帰還を果たしていない! おおよそ二日か三日後に、我々はここを立ち、学園へもどる!」
今後の日程をここで話すと、更に予定に狂いなく遂行できるようしなければならない、とビアンカ艦長は釘を差した。
しかし、彼女は口角をニヤリと吊り上げた。ビアンカ艦長お得意の、落として上げるやり方だった。
「だが、せっかくの陸地よ。今日はふっっっっかふかのベッドで横になって、ゆっくり休んで頂戴! ここに12:30集合。それまで節度を持ってくれていると信じるから、自由行動の時間とするわ」
『やったー!!』
それが、全員の心の底からの絶叫であった。ナタリアさんなんかもう何処かに行きたそうだし、エーリカさんなんて準備運動をし始めていた。
そんな彼女たちの歓喜の叫びにビアンカ艦長も満足したのか、ニッコリと微笑んで全員にこういったのだった。
「……以上、解散!」
☆☆☆
自由解散となり、先程あげていたエーリカさんは走り込です!と意気揚々に飛び出していくと、ウズウズしていたナタリアさんもよっしゃあ!と叫んでついていった。それにつづいてかメルツェーデスさんとアンネリースさん、クラウディアさんらが固まって街の方へと向かっていく。……もう、あの三人……四人は、仲良く生活できていた。
そうして、皆散り散りになる中、ビアンカ艦長は自身の祖母に向き直る。
「さて、と。お祖母様」
「なにかねぇ」
「あのU-ボート、実はいくつかやられてて」
「みりゃわかるよぉ、そのくらいね」
「応急修理程度でいいから、とにかく羅針盤とレーダー直してくれない?」
この通り、と頭を下げるビアンカ艦長。それにしかし、ビアンカ艦長の祖母はフーっと困った顔をしていた。
「……安くはするけど、ただにはできないからね?」
「ローゼマリー! 会計のお話だ!」
すると、艦長は会計担当のローゼマリーさんを呼び出した。意気揚々と街へ向かおうとしていたローゼマリーさんは、ムスッとした顔でビアンカ艦長の元へと踵を返す。
「なんですか艦長。予算というのはいつもカツカツなんですよ? 5日分程度の食料ギリギリにしたら、皆がお金を持ってここらを歩いていたんですがねってくらいにね」
「でもその御蔭で缶詰生活だったけど、無事じゃない? それに、もし余裕があっても、あなたなら貯めるでしょう?」
「……そ、そうですけど……で、本題はなんですか?」
私はそれを尻目に、街へと繰り出そうと動き出す。エルヴィーラ副長は居なくて良いのかな?と少し心配はしたが、まぁ、二人はそのまま話を始めたので良いのでしょう。たぶん。
そう結論を出した私も、疲れを癒やすべく街へと繰り出そうとした。
しかし、足は進まず片腕も動かせない。何事かと思い、その、後ろに若干引っ張られる自身の手の先を見てみる。その手をレオニーさんががっしりと掴んでいたのだ。何してんの、この人は。
「ほら、ハニー、見てみて」
「わわわっ、なんですかレオニーさん」
すると、レオニーさんは私の手を引っ張っていく。引かれるまま、建物の影に連れ込まれると、レオニーさんは其処から先程の二人の様子を伺い始めた。そこにはジークリンデさんもいて、同じ様にこっそりと様子を眺めている。どうやら彼女も気になっていたらしい。
そしてニヤニヤと少し趣味の悪そうな笑みを浮かべながらレオニーさんは言った。
「会計のお話だよ。ローゼマリーどうするのかな」
「……どちらにせよ、艦長の言っているものが直らないとまた遭難よ」
「ですよね。どうするんだろう」
なんだかんだ言いながらも、私も一緒になって顔を出した。まるで母の様子を窺う三姉妹である。そうとも知らずにビアンカ艦長たちは話を進めていた。
そして、ビアンカ艦長は色々必要な分などなどを読み上げた後、その紙をローゼマリーさんに渡す。受け取ったローゼマリーさんは、それを見た瞬間から営業スマイルへと表情を変貌させた。すごい、彼女の表情を見ただけで金額が多いことがわかるわ。
「で、これがしめての見積書だよ」
「……もう少しやす―――」
「これ以上はまけられないよぉ」
優しい微笑みで、おばあさまは言う。ニコニコと。対するローゼマリーさんも、普段よりも少し声が高めで、優しさを含めた声音をだして話していた。私達三人はその変貌っぷりにちょっとゾッとする。
「優しいばあさま、そこを何とか……これでもギリギリの生活をしてて」
「こっちの皆も生活がかかってるからねぇ」
「艦長……うぅん、孫さんだって一緒に乗るし、このまま修理せず出たら」
「脅しもきかないよ。これでも安く済ませたのだから、ダメなものはダメ」
しかし、笑顔でピシャリと言い放つおばあさまに、ローゼマリーさんは笑顔のまま固まった。おばあさまのそれは、手強いというより、手慣れている感じがする。流石は港に住む女性だ……。
そして、軽くあしらわれるローゼマリーさんはしかし、食い下がらずなおもいくつか持ちかけては玉砕していた。値切り交渉ってしたことあるんだ……。
すると、艦長は苦笑して呟いた。
「……私のお祖母様は、そういう所は頑固だから」
「ビアンカ、そこはしっかりしている、と言いなさい」
「はぁい」
「……」
人差し指を立てて、そう修正するおばあさま。それに答えるビアンカ艦長……いや、ビアンカさんの姿は、まさにお祖母ちゃんに怒られる孫そのままであった。
そして今度は、おばあさまをじっと見つめるローゼマリーさん。それにふぅっとため息を付いたおばあさまはこう続けた。
「黙るなら、また遭難することねぇ。頑張りなさいな、ビアンカ」
「……ぅぅぅううううううっ」
その優しくも冷徹に切り捨てる言葉に、唸り声を上げるローゼマリーさん。半泣きである。彼女は、そのままその請求書を受け取って、とても、とても、とてもしたく無さそうではあったが、そこにサインをしていた。
「おいおい、半泣きだよローゼマリーが」
「おばあさまも人が悪いわね……泣き脅しも無意味って言ったわよ、今」
「請求書を手にとったね……サインもしてる」
「大変だなぁ、ローゼマリーも」
他人事のようにそういう私達は、苦笑してその一部始終を見ていたのだった。お疲れ様です、ローゼマリーさん。いつもありがとう。
そんな風に皆で労いの言葉をかけていると、ビアンカ艦長はふと思い出したように言った。
「あ、そうだローゼマリーさん」
「むぃぃぃぃ……何。今度は何!」
「いや……あはは……燃料の補給もいりそうで、さ……?」
「うわああああああああああああああああん!! すっからかんだああああああああ!!」
絶叫とともに、ローゼマリーさんは膝から崩れ落ちた。ガチ泣きである。
「あっちゃあ、ないちゃった!」
「……とりあえず、迎えに行きましょうか」
「……そうね……」
やれやれと首を振りながら肩をすくめるジークリンデさん。とても可愛そうに思えてきたのだろう。その気持は良くわかります。そう思いながら、私達はその場に駆け寄る。その後、契約を済ませたローゼマリーさんを私達はパフェなどをごちそうして元気づけるのであった。
ムスッとしながら食べてるローゼマリーさんは、いつもの冷酷な守銭奴とは違って、なぜだかどこか可愛らしかった。
それから少し経って、お昼時。言っていた宿の一階の食堂に全員が集まる。すると、用意されたきれいな長机に、個別の椅子、そして用意されたグラスと前菜に全員で驚いた。予想以上に準備が整っており、まるで来ることが分かっていたかのような準備の良さをしていた。さすがはブルーマーメイド、そこまで読んでいたのかな?
そして、それぞれが席へと座るとビアンカ艦長が前方にある小さなステージに立った。
「さて……皆、お疲れ様。午後からも自由行動の時間をとるけれど、とりあえず艦内の服やその他荷物を宿へ持っていくこと。午後から修理が行われるから、恥ずかしいものはちゃんと持ってくのよ」
「はぁん! ヤーパンで手に入れた薄い本が……! もれ、とっととまとめないとまじやばいっしょJK」
「うすいほん? じぇーけー?」
「し、見てはいけないよ」
「そういう反応はすげぇ傷つくでござる……」
喘ぐミヒャエラさんは、ナターシャさんとソリナさんの反応に涙を流していた。うすいほんとはなんだろう。艦内で一番ヤーパンに詳しいのはミヒャエラさんで、そういったものを教えてくれる事がある。おそらくそのうすいほんという言葉のイントネーションから察するに、ヤーパンの言葉であることは間違いないだろう。少し気になったのでまたあとで訊いてみようと私は思った。
そして、ビアンカ艦長は続ける。
「さて、それじゃあ料理も並んだことだし……」
「すまない。その前に私達から一言言わせてもらえないか?」
そう、ビアンカ艦長が乾杯のためにグラスを手に持ったときだった。ふらっとビアンカ艦長に男の人が近づいてくる。その男の人は、ビアンカ艦長とは違う白い帽子に、紺色の制服を着た人であった。一目で船乗りかつ、おそらく船長なのだろうことを理解できるその風貌の男性に、艦長も驚いていた。
「……!」
「私はタンカー船セントラル号の船長、ブライアン・マックリンだ。この場の飯をおごらせてもらうよ。それと、燃料もね」
「は、うそ!?」
ガタッと席を立ったのはローゼマリーさんだった。彼女はしかし顔を赤らめ、慌てて本当ですか?と言い直した。おそらく生意気な態度で驚いたことを恥じたのだろう。どんなときも礼儀が大切だということを、ローゼマリーさんは一番わかっていたのだから。
そして、彼はその言葉にふっと微笑むと言った。
「泣いてる女性を助けるのも、男の仕事さ」
『おぉ~』
その一言に全員が歓声を上げる。感心した皆の声に、ブライアン船長は少し照れくさそうにしていた。よく考えると、女性だらけの今の食堂に居るわけだし、そりゃそういう言葉に歓声は上がるよね。
「感心されると少し恥ずかしいが……感謝の気持ちだ。受け取って欲しい」
「こちらこそ、感謝します、ブライアン船長」
ビアンカ艦長はそう言って、ブライアン船長と握手を交わした。其処に居た全員も口々にありがとうと礼を済ませる。それを確認し終えたビアンカ艦長は、咳払いをひとつし、その場を静める。そして、ブライアン船長に目線を向け合図を出すと、ブライアン船長は私達全員に向かってこう言った。
「……では。ここにいる人魚の卵たち、私達を救ってくれてありがとう。感謝する」
ブライアン船長のお礼の言葉は全員にしっかりと届いたのか、全ての席から拍手が沸き起こった。そしてそれが止むと、ビアンカ艦長がグラスを掲げる。それに習って、みんなも用意された自身のグラスを掲げて、ビアンカ艦長を見た。
そして、全員の顔をゆっくりと眺めると、ビアンカ艦長はニッコリと笑った。
「……それじゃあ、私から。長い演説は嫌いだから、短めに言うわ。お互いに生きのびたことを祝して、乾杯!!」
『かんぱ――――い!』
そして、その乾杯の音頭が部屋に響き渡り、皆での食事が始まったのだった。食の都フランスの美味しい食事は、ローゼマリーさんの料理に負けず劣らず、しかしやっぱり何より美味しかった。よくよく考えると、ここ数日は缶詰モノの生活をしていたのだから、そりゃ美味しいよね。
それからも、午後の自由行動時にブルーマーメイドのフランソワーズさんに色んな所を案内されたり、買い物やパフェなどの食事もした。なんだかんだで賭け事をしていなかった私は、そういう豪華な生活を送ることができていたのだが……ゲルトルートさんはどうしたのだろうか。殆ど賭け事で負けていた記憶しかない彼女について考えると、すこし心配であった。
夜にはビュッフェを楽しみ、好きなだけ食べた満腹感の中、お湯に浸かれた。お風呂は体に染み渡り、シャワーよりも汚れや気持ちを癒やしてくれたのだった。皆で浸かって、その感動を共有しあう私達は、きっといつまでも忘れないだろう。
上がった後のベッドなんか、ふっかふかで……折りたたみ式のあのベッドと比べ物にならなかった。っていっても、学園に居る頃だってそうだったのだけど……やっぱり船の中で生活していると、そういう当たり前のことが何よりも嬉しかった。
そんな楽しい時間は過ぎていき、夜更け。私は尿意に起こされた。
眠気眼でトイレに向かうため、廊下に出たら……窓辺で黄昏る、えらい美人がそこに居た。艦長帽をかぶっていないし、いつもよりもすっと流れる髪だったから、一瞬だけ分からなかったけれど、そこにいたのはビアンカ艦長であった。
ビアンカ艦長のパジャマは白いワンピーススタイルで、赤髪と似合っていた。
「……」
「……あれ、艦長……?」
「……ハンナ」
「どうしたんですか? もう夜中ですよ……体に障ります」
ビアンカ艦長は何処か懐かしそうにしていて、それが気になった私はどうしたのか聞いてみた。実際、そうしている艦長を見るのは初めてだからか、少しだけ心配もしている。
ビアンカ艦長はしかし、再び窓の外の景色に視線を戻して言った。
「いや……実家を思い出したの」
「へぇ……そういえばここ、故郷ですもんね」
一緒になって窓の外を眺める。そこに映っているのは港、そしてその町並みだった。天には白い輝きを持つ月があって、今日は少しだけ欠けているけれど丸みを帯びていた。
しばらく黙ってその外を眺めていると、ビアンカ艦長がふっと、呟くように訊いた。
「……明日、行こうと思うのだけれど……ハンナも来る?」
「え? せっかくの団らんですけど、良いんですか?」
「……えぇ。もちろんよ」
「……じゃあ、ついて行きます」
「うん。行こうね。……おやすみ、ハンナ」
「おやすみ、ビアンカさん」
私は少し考えてからそう言うと、艦長も微笑んでそう言ってくれた。そして私は部屋に戻ると、また部屋を出る。トイレを探しにでかけたことをすっかり忘れてしまっていたのだ。その場をビアンカ艦長に見られており、少し恥ずかしかった。
この出来事は、どうか内緒にして欲しいと願う私であった。
☆☆☆
翌日、十六日目、遭難十三日目。
未だ船は修理中でやることがないため、三度目の自由行動となった。そのため皆も街へ繰り出し、昨日と同じ様に休暇を楽しんでいた。
私はというと、ビアンカ艦長と二人でおばあさまの家へと向かった。いくつかの家々と店が並ぶアーケードを通り過ぎ、離れた場所に大きく構えられた家に到着する。その豪邸を見て、私は一瞬意識が吹き飛んだ。あんな豪邸が、ビアンカさんのご実家、ですか……。
「へぇ……ここが、ご実家ですか……豪邸ですね」
「そうよ……」
「って、何処行くんですか!? ま、待ってくださいよぉ!」
しかし、その豪邸を無視して裏手に進んでいくビアンカ艦長。勝手知ったる場所だからか足取りは軽いけれど、私は慣れてませんから! そう心の中で叫ぶ私の思いをよそに、ずんずん進んでいくビアンカ艦長。もう少し考慮してほしかったところだ。
そうしていくつかの草木を割って進むと、開けた場所に出た。ざぁっと波が岸に打ち付ける音が聞こえ、潮の匂いを運ぶ涼しい風が、この草原を揺らしていた。遠くにカモメの鳴き声が聞こえ、其処だけが何処か切り離された世界のように感じられる。
感嘆の声を漏らし、私は草原を歩いた。
「……わぁ……いい場所ですね」
「……そうでしょう?」
しかし、ビアンカ艦長の行くその先は崖だったが、そこにぽつんとなにかがあった。それは―――
「……え、それ、は……」
それは、十字架であった。ビアンカ艦長はそれに、跪いて懐かしそうに、愛おしそうに微笑みかけた。そして少し十字架に触れて、撫でる。そこには、『ヨアヒム・フォーグラー。海に生き、海を守り、海を往った勇敢なる艦長、ここに眠る』と書かれていた。
「……ただいま、お父さん」
「……お父さん、亡くなっていらしたんですね……」
「……」
その言葉に、ビアンカ艦長は何も答えなかった。その無言が、肯定であることを示している。そう察すると、私も同じように跪いて祈りを捧げた。
ゆっくりと、目を開いてその十字架を私はまじまじと見つめる。白く、立派で綺麗なそれは、掃除が行き渡っていた。おばあさまがきっと、毎日掃除しているのだろう。それとも、この街の皆が掃除してくれているのだろうか。どちらにせよ、人望の厚い艦長であっただろうな。
そう考えていると、ビアンカ艦長がポツリと呟くように私に話し始めた。
「悲しい話で悪いけれど、聞いて欲しい……父はU-ボートのりで、ここの皆の中心だったわ。そんな父に憧れてたの」
「死んじゃってからは、何もかもがどうでも良くなって……それで、やる気もなかったけれど……今は、皆に会えたから。頑張って、立派な艦長になろうと思ってる」
そして、「もう覚悟は決まっているわ」と私にそう言うビアンカ艦長。その顔は希望に満ち溢れていて、輝かしいものであった。その決意は私だけでなく、父にも聞かせているように聞こえ、私はそれが少し誇らしかった。
「……艦長は、誰よりも艦長です。お父さんにも負けないと思います」
「……ふふ、ありがとう、ハンナ。父に対してはもう気持ちの整理は付いてるから、ヴィクトーリアさんとは違って泣かないわよ?」
「や、泣かせてるわけじゃないです!」
「ふふ、冗談よ」
それから、色んなことを訊いた。ビアンカ艦長のこと。幼い頃から見ていたビアンカ艦長の父のこと。話すビアンカ艦長は誇らしげで、いかに父を尊敬していたのかが伝わってきていた。そんな話の中で私が気になったのが、ヤーパンの友達についてだった。
「ヤーパン好きで、いつだったか連れてってもらったこともあったわ」
「へぇ……ジークリンデさんが羨ましがりそうですね」
「ふふ、そうね。……その時のヤーパンの友達が言っていたの。ブルーマーメイドになるって」
「だから、艦長も?」
「父は同じ様な仕事の、ホワイトドルフィンだったから。それもあって、私もなろうと思ったわ」
懐かしむようにその当時の情景を、憧憬を語った。当時のビアンカ艦長は、信じられないことに気弱だったらしい。友だちもできず、父の後ろに隠れるような子だったと艦長は語った。なんて可愛らしいのだろうか。
「越えられない嵐はないんだよって、難題に挑んで。でかけた先で逸れそうになった私を、必死に助けに来てくれて……海の仲間は家族なんだよって……別れるときには、だから、海に出る限りまた会えるって、その子は言ってくれたわ。……言っていたことは、すべて、本当にそうだった……」
「……なら、また会えますね」
「……ありがとう、ハンナ。帰りましょうか」
「……はいっ」
そういうと私達はその場所を後にする。そのビアンカ艦長の顔は、スッキリとした笑顔だった。
☆☆☆
翌日、十七日目、遭難十四日目。
補給はバッチリ済ませ、応急処置も完了し、航路は十全に組み立てられる様になっていた。どうやら、レオニーさんや他の機関士達も集まって、修理を勉強がてら手伝ったらしい。そして、あとは出港を待つだけとなった。
そこに、学長とはまた違う、美しい老婆が現れた。ビアンカ艦長のおばあさまである。
「ビアンカ」
「何、お祖母様……それはっ!」
そう言って差し出すその手には、ビアンカ艦長が持っていた壊れた双眼鏡の、もう一方がのっていた。おばあさまはそれを、大事そうに持っていた。私もそれを見て、つい反応してしまう。だって、それは、艦長が大事にしていたものの、片割れであるから。
「……あ、双眼鏡の……!」
「……見つかったんだよ。大事に、持っていきなさい」
「……ありがとう、お祖母様。行ってきます」
「いってらっしゃい」
また、ぎゅーっとおばあさまを抱きしめるビアンカ艦長。別れを惜しむように、少し長めであった。……そんな光景を見ていたら、私も少しホームシックになってくる。お母さん、お父さん、今どうしてるかなぁ……。
しかし、その思考はエルヴィーラ副長の声でぶった切られた。
「至急、全員整列しろ!」
その声が響くと、甲板に乗員が全て並んだ。全員が気をつけの状態で、ビアンカ艦長たちを待つ。私も先に甲板へと移ると、最後にビアンカ艦長はおばあさまから離れて乗艦した。すると、エルヴィーラ副長がビアンカ艦長に体を向けると、ピシッと背を伸ばして言う。
「艦長、全員乗艦しました。準備完了です」
「ご苦労さまよ」
ニッと笑うビアンカ艦長に、エルヴィーラ副長もフッと頬を緩ませた。
「諸君。これより、出航する」
初航海のときのように、ゆったりと、話しかけるようにビアンカ艦長は言った。
「少し進むごとに問題の嵐に巻き込まれてきた私達は、やっと帰路につく。長かったようで短かったこの約三週間、恐怖も苦しみも、喜びも楽しみも忘れずに戻ろう。あなた達が私の仲間で、本当に良かった!」
珍しい満面の笑みで、ビアンカ艦長はそういうと、一度大きく息を吸った。そして―――
「抜錨! 総員、配置につけ!」
その命を下す。そしてこれまた合わせて皆が元気よく、声を合わせて言った。
『ヤヴォール・ヘァカピテーン!!(諒解、艦長!!)』
それから、皆は艦に乗り込むと、微速前進で出航した。ゆっくりと、別れを惜しむように離れゆく中で、非番の皆は甲板に出ると、大きく手を振っていた。
「さよーならー!」
「ありがとー!」
色んな感謝の言葉と、別れの言葉を口にする。その岸にはタンカー船の方々も居た。
本日は晴天。そう、どこまでも青く突き抜けていた。
今後絡んでほしいキャラ
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テア・クロイツェル
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ヴィルヘルミーナ
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その他(名前を挙げていただければ)