ハイスクール・フリート 灰色の狼娘たち⚓   作:黒助さん

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第一話:友達でピンチ!

 ある少女の話からこの学校生活が始まった。

入学式は甲板の上で行われ、周りには私と志を同じとする少女たちが並び、皆一様に朱のセーラー服をまとっている。私もその一人となって、集団に並んでいた。

しばらくすると、少女は悠然と甲板上の前方に設置された朝礼台へと上がった。堂々としたその姿は、しかし、他の人より伸長が幾ばくか小さな女の子であった。堂々とした立ち振舞と、その背丈格好のギャップが視線を釘付けにした。

そんな中、隣の子たちがヒソヒソと語っているのが聞こえてくる。

「―――妖精?」

「……―――【海の妖精】、テア・クロイツェル」

 聞いている限りでは、少女は妖精と呼ばれており、何でも数十年ぶりに満点で入学したらしい。どえらいエリートだった……。私、いくつか空欄があったような気もする……そのすべてを乗り越えたのか、あの小さな子が……。

正直、失礼極まりないがそう思ってしまった。

 誰よりも成績の良かった彼女はそのマイクの前に立ち、私達新入生代表として挨拶をする。しかし、その内容は驚くものだった。

『新入生代表のテア・クロイツェルだ。私から話すことは―――陸の上では特に無い。以上』

 ……しばし、私は口を開けてポカーンとしていたのを、覚えている。

 その少女の挨拶が終わり、海洋学校生としての学園生活が始まった。

 

 

☆☆☆

 

 

 その学園生活が始まって少し、私はワタワタと戸惑っていた。友達の作り方というのは、どこで正しく教えてもらえるのだろうか。今は少し、正しい友達の作り方というものを学びたい気分だった。

あのとても短い演説をした彼女の周りには、面白い人達が集まっており、退屈しなさそうな騒がしさがそこにはあった。

 しかし、その一方で私の周りはというと……

「ちっこく遅刻遅刻ちこくううううううううううう!!」

 色んな意味で頭おかしかった。

 朝っぱらから、一体何なの……。私が呆然とするのもそのはずで……早朝、学生寮からの登校中である。その叫び声とともにパンツすら丸見えの状態で降下してきたのは、私の知る限りのキングオブバカであった。その名前をレオニーといい、重機械操作・修理やそれらに関する知識に置いては右に出るものは居ない。が一方で奇行を働く人物でもあった。天才と何とかは紙一重という言葉を体現した人なのだ。

 とりあえず私は、あまりの光景から落とした手提げカバンを拾うことにする。そして、他人のふりを始めた。見ていない。私は、何も。

「いてて……お?」

 いくつかの砂埃を巻き上げてから体を起こした彼女は、私を見つけると目を爛々と輝かせた。うわっ。やだ、目をつけられた。

 彼女は即座に立ち上がり、降下時のパラシュート他装備一式を早急に近くの草むらへと隠す。そしてその勢いのまま、私の方に向かってきやがった。またか。またなのか。

「やぁ、マイハニー!」

 ショートカットで、ウィンクがとても良く似合うボーイッシュな少女。その容姿そのままに、明るくて元気な子であった。

彼女は私に対してばちこーんと、キレイな敬礼も付け加えての挨拶をする。私はため息を付いて、いつもの準備をした。

「気持ちのいい朝だ、おはゔっ!?」

「私はあなたのハニーじゃないって……! もう!」

 拾った自身の手提げカバンを、言い切る前にぶち当てた。倒れるその瞬間までキラキラという擬音を付け加えられているような格好良さであり続けるバカオブバカ。最初こそ対応には困ったのだが……

「あの、気絶したふりはいいです。目覚めのキスもしませんから」

「はい」

 慣れたものである。

 彼女はスクッと何事もなかったかのように立ち上がる。ほら、平気じゃん。と私はまたため息を付いた。そんな私を含めて、レオニーさんを変な目で見るのが……

「おはよ……うわっ」

 ポニーテールに、前髪を分けた銀のヘアピン、そしてけだるげな目が特徴なジークリンデさんである。初めてあったころも同じようにけだるげではあったが、今は特にひどいように思えた。ただ、一言言わせてもらえるのなら、眉にシワを寄せ、こちらを訝しむのはお門違いだと思いますと言いたい。なんで私を見てるの。

「……また」

「誤解です。私とこの人は別にSMな関係じゃないって前から何度も……!」

 これはまた、本日幾度目かのため息を付いて空を見上げた。あのテアという少女の周りではいじめが起きていたが、それ以上にこれもまた、私へのいじめじゃないですかね?神様……。

 

 

☆☆☆

 

 

「しっかし、いきなりカバンはナシでしょっ!」

 私を真ん中にして、三人並んで歩いていく。その中でレオニーさんは先程の制裁に文句をたれていた。そんな私達の隣を色んな人が駆けていく。そんな光景が視界の端では広がっており、……避けられているんじゃ?と心配する私。でもまぁ、こんな私達の和に今更加わる人も……というか、好んで加わる人など居ないだろ。うん。

 とりあえず、その文句に対して正論を叩きつけてやろう。

「不審者のような行動を取らなければいいだけでしょ? あと、私はあなたのハニーじゃないし」

「つれないなぁ。それと、あれはパラシュートの実験を兼ねた……」

「実験も何も、不審な行動でしょうが」

「……はい、おっしゃる通りです」

 引き際の良さは認めてあげよう。相も変わらぬ雰囲気に膨れっ面になる私は内心微笑んでいた。いや、まぁ、なんだかんだ、このおかしな雰囲気は好きだった。この学校に来てからのはじめての友達ではないが、この2人はかけがえのない親友……の、一歩手前である。でも、貴重な存在に変わりはなかった。

 そんな中、レオニーさんは辺りを見回しながら話題を転換した。

「で、何だか今日は雰囲気が違わない? 空中からも見えてたけど、皆いつも以上に張り切っているっていうか……」

「たぶんそれは、午後からある適性試験ね」

「「適性試験?」」

 頭上にクエスチョンマークを出現させたような、何も分かってない顔をする私とレオニーさん。忘れていた。私もば……ある程度頭がいいだけだった。ジークリンデさんはため息をついて、冷ややかな目を私達に向ける。わ、忘れてたのは悪いけど、そんな睨まなくても……。

「自分の向いてる専科を推薦するとかなんとかの試験よ」

「なんとかて……」

 私のツッコミに目を背けるジークリンデさん。うん、知ってたけれど、彼女は睨んでいたわけではない。そういう目つきなだけだ。そして、自分で言っては何だが……私達と仲がいいのだから、ジークリンデさんもそれなりにぽんこつ……もとい、それなりの性能でしか無いであろうことは最近察せるようになってきた。ははっ。

「ま、僕にはカンケーないね」

 このポンコツはまた調子に乗って……。HAHAHAとアメリカンな笑い方をしながら続けるレオニーさん。私達はふいっと踵を返した。余裕綽々ですね、お疲れ様です。

「愛しのエンジンちゃんさえいればって、待って、まってジョーダン! 軽いジョーダン!君たちのことも愛してるよー!」

 

 

 

 

 

「……まぁ、ジョーダンはさておいて……レオニーさんはつまり、機関系の士官か、下士官を目指してるの?」

「そう! 昔ジーちゃんがさ、船乗りでね。機械を弄ることが多くてさー。凄い自慢したり、武勇伝も聞かせてくれて……その影響で僕も機械をいじってきたんだ」

 彼女は自身のじいさまが本当に好きなのか、くすぐったそうに、でも自慢げにそんな話をする。それが本来の少女としての笑みを見せており、可愛らしかった。ずっとそれでいろよと思わなくもない。

「ジーちゃんに憧れてたのもあるけれど、やっぱり機械が大好きなんだ……だから、ブルーマーメイドになって、色んな人を助けるために船を動かす、心臓になりたいんだ」

 そう語る彼女の横顔は、キラキラと輝いていた。いつものうざったるい輝きでない、夢のために駆け出した少女そのものの。その横顔は、とても格好良く思えた。

「で? ジークはどうなんだい?」

 と、今度はジークリンデさんに話題先が移った。彼女はいつもの澄ました顔で答える。

「特に話すことはない……」

「おいおい、つれないことをいうなよー」

「わたしも、きになるなぁ」

「……」

 すると、彼女は少し黙って、少しずつ話しだした。

「……私は水雷長になりたい……計算の速さは誰にも負けない……この速さを誰かのために活かしていきたい……だから、適性検査では士官になるよう頑張りたいわ……」

「おぉ、お高いところを狙うね」

「頑張るんだね……!」

 あまり話をしない彼女も、その胸中の想いを淡々と語った。だが、その顔もやる気は見え隠れしているものだった。本気なんだ、みんなは。私だって負けないとは思う。でも、これほどの真剣さを私は持っているのかな……?

「それじゃあ、私達もそれぞれの分野で士官目指さない?」

「え?」

 レオニーさんはそう提案した。高い目標に、彼女の顔は笑っているものの、本気だった。それを聞いてジークリンデさんもキッと凛々しくなる。

「私は機関長!誰よりも機械に強いやつになる!」

「……なら、私は砲雷長。」

「で、マイハニーは?」

 で、私は? しかし、その言葉に私は少し固まった。レオニーさんの言葉を訂正しながら私は考える。二人はそれぞれが素晴らしい目標を持ち始めていたのに対して、私は……。

「ハニーじゃないし……んー、私は……」

 

 私は……。

 

「……私は、航海長。航行のエキスパートになる」

「へぇ?いいじゃん」

 レオニーさんはそう言って微笑んだ。ジークリンデさんも私の答えを聞いて薄く笑みを浮かべた。……そう。私は、航海長になりたい。一度でもいいから、そこで頂点に立ちたい。

 私は、その考えを飲み込んで、2人に笑みを浮かべてみせた。どこか心の内は少し、釈然としないが……。

「じゃあ、難しいだろうけど、まずはこの適性検査を乗り切ろうね!」

「おぉー!」

私達は、それぞれの想いや夢を胸に、その後の適性検査へと移る。片目を前髪で隠したポニーテールの女生徒が、ニヤニヤとしながら傍を通り過ぎていくのを横目に、私達三人は試験場へと向かった。

様々な人が見守る中には、あの妖精とか、妖精をいじめる子とか……騒がしい方々が勢揃いであった。しかし、その試験場で私達を待っていたのは……

「え?」

「次、ビアンカ・フォーグラー班、前へ」

「はい」

 

 いつかの、初めての友達だった。

 

今後絡んでほしいキャラ

  • テア・クロイツェル
  • ヴィルヘルミーナ
  • その他(名前を挙げていただければ)
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