ハイスクール・フリート 灰色の狼娘たち⚓   作:黒助さん

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第八話:嵐の中で

 嵐の中で、私達は大きな体験をする。仲間というものがどれだけ大切なのか、今一度自身に問う。手を差し伸べるだけじゃだめだ。突き放すのもあるいは手かもしれない。最初の砲撃事件以前から以下に記したが、一番知ってもらいたいのは嵐の中での事件だ。この日誌は、私達がU-ボートに乗って、何が起きたのか。その事実をまとめたものである。

 

 

 

 ハッチのバルブを回すと、勢いよくそれが開いて冷たい雨と新鮮な空気が艦内に入ってきた。バルブを回したビアンカ艦長がまっさきに外へと出てみるのだが、一向に声がこない。私達はその様子を下から眺めていたが、海中にいたときより揺れが激しくなっており、足場が安定しなかった。すこし酔ってきた気もする……。

「エーリカさん、クラウディアさん、エリヴィエラさんの三名はハンナさんと共にブリッジへ向かって欲しい」

「「「はい」」」

「ソリナさんは砲雷科と航海科の皆にいつでも指示を出せるよう、待機してほしい。ビアンカ艦長はそう言っていた」

エルヴィーラ副長は発令所に集まってきた副委員長たちにそう伝え、私の目を見た。私はその瞳を見て、コクリと頷いて、ビアンカ艦長と同じようにはしごを登る。すると、冷たい雫が私の顔に落ちてくる。それは顔の曲線を伝って、あるいは雨合羽によって弾かれて落ちていく。冷たく、しかし塩辛くない……雨だ。それも、勢いが違う……!

私はハッチからブリッジへと出ると、大きな横風に見舞われ、わっと声を上げた。すると、私の前に手を差し出す人が居た。ビアンカ艦長である。

「どうしたんですか?」

「……状況は、まだまだ悪いわね」

 グイッと引っ張ってもらい、ブリッジに登った私はその言葉の意味を理解した。現在はものすごい嵐の真っ只中であり、波は高く、雨量は多く、暴風雨かつ非常に息苦しさを感じるような大嵐だった。

 波を登るように艦首が天を仰ぐと、一気に下降し、叩きつけられるような気分を無理やり体験させられる。まるでジェットコースターのようだった。それも、豪雨と、いつか転覆してしまうんじゃないかと思えるような恐怖を伴った。

「くっ、命綱はある。しかし、この雨量と揺れだといつ吹き飛ばされてもおかしくない……大丈夫か……!?」

「気合があれば! なんとでも!」

「いかないわよ! あなたもちゃんとつけなさい!」

「エリヴィエラさん! つけてます!」

「気合は何処行ったのよ!?」

 しかし、ここの皆は根っこが何処かおかしいのか、なんとなく余裕そうである。雨の中、軽口を大きな声で叩いて、わーわーと騒いでいた。どういうことなの……。

 ビアンカ艦長もちょっとは危機感を持ってと注意してください!と、キッと睨むと大笑いをしていた。いやいやいや、何笑ってるの!?

「ふふふ、はは、あはははっ!」

「艦長!? 何笑ってるんですか! わわ、わわあっ」

「いや、うん、きゃあっ……わかってるけれど、少しおかしくて!」

「いや、どういうことよ! この元気馬鹿と一緒にしないでくださる!?」

「元気馬鹿は言いすぎだろう? ちゃんと名前で読んであげなよ」

「声が小さいのよ! 雨が強くて聞こえないですわ!」

「君の声はキンキン響くようで、よく聞こえるね」

「なんですってぇ!?」

「きこえてるじゃないか!!」

「気合です!!」

「そうですね! 少しどころか凄くおかしい状況です艦長!!」

「あはははははははあははははは!!」

「だから!!! 笑ってる場合ですかっ!!!!」

 なんて、こんな土砂降りの雨の中私達は少し言い合い?をして、少し落ち着かせた。すると、伝声管からエルヴィーラ副長の声が聞こえてきたのか、ビアンカ艦長はそちらに取り入った。

「で! どうなるんですの!?」

「気合です!!」

「気合はもう良いんだ! 十分ある!」

「それよりも! これじゃあ艦橋の装甲から顔を出しても全く見えないですよ! 艦長!どうします!?」

 ここにいる全員は艦橋の装甲から顔をだすことができずに居た。其処を離れると暴風雨が容赦なく体中を叩くのと、揺れや波に体のバランスを取られて艦橋からふっとばされかねないのだ。ビアンカ艦長も伝声管に必死にくっついて、話をしていた。少しして、ビアンカ艦長はコチラに向くと、ムスッとした顔で私達に叫んだ。

「潜航!! このままも難しいわ! 船内の換気と空気の取り込みを早急に行って!!!」

「わかりました! 三人共! 戻りますよ!!」

「気合だああああああああ!!」

「置いていきますわよ!!!!!」

「やれやれ……」

 そして、なんとかしてエーリカさんを連れて発令所に戻る。私は航海図を見て現在地について考えることとした。少し時間が経ち、段々揺れが収まってきていた頃、私はグッと唇を噛み締めた。鉛筆を置いて、少し悩む。わからない……。わからないの……現在の位置が……。おおよその場所はわかるのだけれど……。

「エーリカさん、羅針盤見てきて。今どっちの方角に向いてる?」

「え? んぇ……北西です! ……でも、艦橋に居たとき、艦橋の羅針盤の破損を確認しています!」

「報告ありがとう……だめだわ。艦長、相談があります」

「何かしら」

 ビアンカ艦長の方へ向いてそう切り出したものの、報告することができなかった。こういう悪いニュースは言い出しづらいもので……。それを察してか、ビアンカ艦長は苦笑してこちらに来てくれる。

「……言い出しにくいこと?」

「……はい。ラジオルームでのいくつかの機器の故障以降、私は個人的に今ある情報から現在位置を特定していましたけど……おおよその位置しかわかりません」

「……遭難、ね」

「今はまだ戦闘前とあまり変わらない位置にあると考えられるのでおおよそは特定できます。それに嵐を超えれば天測で方位と大体の位置は得られます。ただ……この嵐の中ではほとんどわからないと言えるでしょう」

 私の言葉に、目をつむると大きくため息を付いた。ビアンカ艦長の表情は曇り、近くにあった椅子にドカッと座ると俯いた。ビアンカ艦長……。

「ごめんなさい……」

「ハンナが謝ることではないわ。私が、間違えたのよ」

 そう言うと、艦長帽をとって頭をかいた。そしてその艦長帽をじっと見つめる。しばらくして、明かりが赤色点灯となる頃に、ビアンカ艦長は立ち上がると私にこういった。

「この嵐の中だと難しいとは思うわ。だけど、ある程度でいいから現在の位置を見出して、航路をとってほしいわ」

「わ、わかりました。どの様な航路にしましょうか」

「……学園へ帰る航路よ」

 そう言うとビアンカ艦長はキッと天井を睨みつけた。

 これが、私達の航海四日目、そして遭難一日目の始まりだったのだ。

 

 

☆☆☆

 

 

 五日目。遭難二日目。

 なおも嵐はつづいており、状況は悪化の一途をたどる。波は高いために海上航行は難しいし、海中に潜るのだって空気は悪くなる一方だ。換気を行うのだって海上に出てからじゃなきゃできないため、たまに行う程度だ。そのためか、アデリナが喚いて買い置きの消臭剤を設置しており、清潔感を何とか保とうと努力を試みている感じだ。

一方でバッテリーの充電を行う必要があるし、ずっと潜っていることはできない。海上航行に移ると揺れは激しくなり、気分が悪くなるものも多少居て、皆辛そうであった。特に辛そうなのが見張の当直だった。かくいう私、ラッヘルも見張りに当たることがあったのだがその体験も記そうと思う。

まず、艦橋に立つというのが難しいものだった。波が全身を襲い、足元を掬われれば大怪我待ったなしだし、雨が強く手前は向けないし。視界はほぼゼロ、居る意味があるのかを疑いたくなるものだった。

ただ、海上に何があるかわからない現状、少しでも見えるとそれが重要になってくるため、立たない訳にはいかない。だからか、今日も嫌そうな顔をして担当者方はブリッジで格闘をしていた。お疲れ様である。

さて、昨日の激しい戦闘の後、ビアンカ艦長から無事遭難を迎えたことを伝えられてからというものの、空気だけでなく雰囲気も変わってしまった。狭いこの潜水艦の中だと、通るのに一苦労するし、寝床だって足りない。今まで耐えてきたのだけれど、昨日の出来事からか神経が過敏になっちゃって、皆が少しピリピリしだしていた。

正直、私はこの空気が嫌いだ。きっと良くないことが起こる。空気が重くなるだけならまだしも、ピリピリするときはいつだって面倒な事件が起きるのだ。

そこまで書いて、私は一旦手を止めた。ふと、昔を思い出して頭を振ると、その手記をポケットにしまいこんで立ち上がった。揺れはなおも大きく、あまり良い状況とは言えないでいた。実際、ちょっとよろけちゃったし。

壁に手をついて艦首の乗組員の寝床である休憩所から発令所へと向かう。途中、委員長、副委員長に割り当てられた寝床にある、自分のベッドに置いていたカメラを首にかける。これがないと少し落ち着かないのだ。そしてそのまま向かおうとする。

「わっ」

「おっと、ごめんなさい」

 どんと前を向いた拍子に誰かとぶつかってしまった。反射で謝って見ると、いかにも不機嫌そうな顔でマリアンネ・エルレンマイアーがそこに居た。いつもどおりの白衣は来ておらず、ちゃんとした制服姿だ。あの白衣は洗っていない手で触ろうとしたらもれなくマリアンネからの罵倒が飛んでくるくらい肌身離さず、清潔に保っているというのに。

珍しいこともあるなぁと思うのもつかの間、あっちゃあマリアンネかぁと神様を少し呪った。

「ふぅー、君の目はなんだい、節穴なのか? 人間の目が何故前に2つついているのかしっかり考えたことはあるのか? それに少しは演技を身に着けたほうが良い、私とぶつかったことを呪うように、嫌な顔がしっかりと貼り付けられていたぞ? マスコミめが」

「……ちょっとぶつかっただけじゃん。何もそこまで言うことはないんじゃない? だから嫌な顔だってされるんでしょ」

「へぇ? では嫌な顔をしていたことははっきりと認めるわけだ。実に不愉快極まりない」

 このとおりだ。マリアンネは衛生に関して特に厳しく、私にぶつかったところを払っていた。こういった小さな苛立ちの積み重ねが、後に大変なことになると知っている私。だから、今は冷静になろうと、自分に言い聞かせてクールダウンした。

 しかし、更に珍しいことに、彼女はこう言い始めた。

「……はぁ、すまない。君の報道姿勢に対しては、私は被害を被っては居ないからと言っても、非難されるべきではあろうが、少なくとも今この場ではお互いに不注意でお互いが悪かったと言える。……私もストレスがたまっているようだ」

 謝るのか謝らないのかよくわからない。私の姿勢というのはたぶん、写真を撮ってそれを秘密裏に売っていることだろう。ここの女性たちは格好いい子も居るし、案外儲かるのだ。

「……謝るのは、珍しいね。確かに少しピリピリしすぎてた、ごめん」

「珍しいとは何かな? 私は、私が悪いときに謝らない人、という風評被害甚だしいレッテルをはっつけている女だという認識なのか? 馬鹿め、私だって悪いときは謝るとも」

「余計なこと言いすぎ……」

「何だ? 物事ははっきりと言えと教わってこなかったか? 私にもしっかり聞こえるように言いたまえ」

「わかったわかった、ごめんって言ったの」

 そう言って私は切り上げると、後ろからもまだ言葉が聞こえてくる。あれに対抗できるのはエーリカかビアンカ艦長くらいだろう。ザシャもいけるかなと思ったけれど、試しに当ててみたら思考停止していたし。

 とりあえず、夕食前のいい匂いのする厨房を横切って、艦橋要員の皆様が過ごす上級休憩室を横切る。レオニー機関長が横になっていたが、休憩だろうか?

「艦長?」

「ん……ラッヘルさん」

 そこに居たのはジークリンデ水雷長だった。いつものポニーテールを揺らしながら、発令所の皆の様子を見て回っていた。なるほど、機関長の代わりにやっているのですね。

「あれ、艦長さんは?」

「艦橋よ……外を当直と一緒に見てる……」

「わかりました。ありがとうございますー」

 礼を言うと私はそのまま艦橋へ行こうかなと悩む。正直、私はビアンカ艦長に用があるわけではなく、単純にいろいろな写真を取らさせてもらおうかなと、許可をとりたかっただけなのだ。だから、あえて私はここでない他の、それこそあまり立ち入らないであろう艦尾魚雷発射管室や、エンジンルームに行ってみることにしようと思った。そういえばなんだかんだで写真を撮ってなかったしね。

 そういうわけで、私はその場からエンジンルームに向かおうとした。ふと、発令所から出る前にハンナ航海長が机に張り付いて、頭を抱えながら何かをしているのが見える。あれは一体何をしているのだろう。

 と言いつつも、だいたい察することはできる。現在の航路をこの嵐の中でどれほど進めているのかを考え直しているのだろう。北か、南かも怪しい状態でよくもまぁ、あがける。でも、その努力を私は笑わないし、むしろ尊敬すらしていた。

「ハンナ航海長」

「んぇ、な、なに?」

「あまり、煮詰めずに、気を楽にしてくださいね」

「……ありがとう、ラッヘルさん。それでもまぁ、やるだけのことはやらないと」

「ほどほど、ですよ」

 肩をすくめて苦笑すると、ハンナ航海長も苦笑して返した。さて、さて。そうしてまず目の前に広がるのは過給式9気筒ディーゼル機関、MAN M9V40/46が2つ並んだ、あっつ苦しい世界だった。そう、ディーゼルモータールームである。チャカポコチャカポコとロッカーアームが上下に忙しなく動いているさまと、それを制御する彼女らを見ていると私は全く違う世界に来たように感じた。

あたりを見まわすと、今エンジンを担当しているのはマルレーン、ツェツイーリア、マルゴットの三人で、汗で濡れたシャツ一枚という格好でいた。濡れて透けたブラジャーとかが目に入るのだが、彼女たちはあまり気にしていなかった。もはや慣れたからなのだろうか。

そんな彼女たちは、異常がないか、エンジン出力はこれでいいのか、逐一診ては調節しているのだ。お疲れ様である。

「ひぇぇー! 疲れたー」

「おぬし、まだ弱音を吐くには早いのじゃ! こういうときであるがゆえに、我々が頑張らねばならんじゃろ!」

「ツェツイーリアの、おにぃ~」

「たわけ! 我は鬼ではない! 女神じゃ!」

「やれやれ、余計疲れるというのに……女神様、マルゴット、そっちを見てくれないか? 音がおかしいような気もするし」

「何じゃとー?」

「な、ほんと? すぐやる! ありがと!」

「……で、ラッヘル。ここに何かな?」

「あぁ、いや、なんでもないよ。ただ、写真を撮りたくてさ」

 機関室の入り口で立っている私を見て、マルレーンはすぐに気づいた。っていっても、狭い室内なんだから、当たり前だけれどね。私のその言葉にマルレーンは自慢のカウボーイハットをくいっと上げて、「なら構わないよ」と快く承諾してくれた。

 ただ、体は今、濡れ透けだから撮らないようにして欲しい、とのことらしい。まぁ、守るはずないんだけれどね。売れるし。

 エンジンをいくつか適当に撮りつつ、こっそりと彼女たちを撮っておく。バレていないのか、注意が私に飛んでくることはなかった。が、やっぱりここは一番厳しい場所のようだった。

「マルゴット! そっちの計器を見落としておるぞ! ちゃんと伝えなければ火が落ちるんじゃからな! たぶん!」

「わかってます! すいません! でも憶測は止めてほしいです! マルレーンはそっちを!」

「はぁー……はいはい。ツェツイーリア? そんなに大声出さなくても聞こえるよたぶん」

 

「あっちゃあ……ここはいつも戦場だね」

 

 ついつい呟いてはははと苦笑してしまう。怒号飛び交うその場所から退散すると、私はエレクトリックモータールームへと移動した。海上航行中、ここは誰も使わず放置されることが多い。といっても、ここのエンジンに何もさせていないわけではなく、ディーゼルエンジンで発電し、その電力を充電にも当てているのだ。だから、時たまコチラに顔を出す機関士は居て、大事に扱われている。

 しかし、その先の艦尾魚雷発射管室と、その一歩手前の乗組員休憩室……もとい、機関士ルームとも私達がつけている、機関士たちの寝床がある部屋の扉が閉まっていた。通常は空いているはずなのだが、どうしたのだろう。

 私はそっと扉に耳をつけると、その中の会話を聞き出そうとした。

 

「……!」

「……?」

「……! ……」

 

「……何の話をしているのかな?」

 

 しかし、エンジン音と時たま聞こえるツェツイーリアたちの声がそれを邪魔する。記録係としてこれは気になる内容だ。私はにやりと笑うとはぁ、とため息を付いて、扉につけていない片耳の穴を指で塞ぐ。そして、更に集中して聞き耳を立てた。ここが記録係に選ばれた私の腕の見せ所だ。

 

「……ねぇ、何とか言ったらどうなの?」

「はっきりと言えよ。目障りなんだよ」

「……わたし、じゃ……」

 

「なに、これ」

 

 しかし、その会話に私は眉をひそめるのだった。何か秘密の花園のような、写真ネタになるような内容を期待していたのだが……どうやら、喧嘩のようである。すぐさま止めにかかるのが本来は正しいのかもしれないが、私はそれを続けて聞いていた。性なのか、それとも。

 

「掃除だってまともにできないなんてさ。どんだけとろくさいんだよ」

「……」

「黙ってないで、何とか言ったらどうかしら。見捨てちゃうかもしれないわよ?」

「み、見捨てないで……! ごめんなさい、わ、私、もう一回頑張るから……」

「……あ、そう。じゃああと頼むわ」

「よろしくね?」

「……」

 

「……」

 

 喧嘩では、なかった。ラッヘルは頭を振るとディーゼルモータールームへ逃げるようにしてその場を去った。聞いてしまったそれを、胸のうちにあるぐちゃぐちゃの感情を、何処にも吐き出せぬままに。それは、彼女の脳裏をかすめたある記憶からだった……。

いじめ。

ただ、人を笑う、それ。

「……」

 行き着いた先は、機関長の寝床であった。すぐそこであったが、そう遠くないここへ行くまでが、一瞬だったように感じる。それは、この気持ち悪い感情が周りのものを見ないようにしていたからなのだろうか。私はドキドキとうごめく心臓に手を触れて、機関長のその背に問た。

「レオニー機関長……話があります」

「……何かな、ハニー?」

 ごろんとコチラを向いて微笑んだあと、私の表情を見た機関長は真剣な表情に切り替えると座るように体制を変えた。私は少し目を背け、ぐっと、機関長を見る。

「……それで、話って?」

「……ナタリアとメルツェーデス、そしてアンネについて」

「……うん。それか……知っているよ」

「なっ……!?」

 機関長は暗い顔でそう答えた。知っていて。知っていて、何もしないのか?

「知っているなら……!」

「本人に聞いたんだ。それがいじめであって、辛いのなら僕が二人にキツく言うって。でも、大丈夫ですって言われてさ」

「本人が言ったからって……!」

「わかってるよ。だから、艦長に相談するつもりだった。その矢先に『これ』だったからさ、今はとにかく、協力しあわなきゃならない。だから、陸地や学校に付くまでは関わり合っても『そうなる』余裕はない、そう思っていたんだけれど……」

「余裕? それが何だって言うんですか……! 実際に、今、起きていたんですよ!?」

 キッと機関長を睨むようにしてそういう私。だが、機関長は頭を垂れるとこう呟いた。

「……初めてみたんだ……あんな場面。だから、どう対処していいのかがわからなくてさ……初めは喧嘩だと思っていたし、喧嘩はしないでって止めようとしてたけど、雰囲気が違うくて……それでも、いつも僕が居るときはそうならないように対応していたし、話しをつけるよう説得もしてきたつもりだった。だけど……起きているなら、もはや僕だけではだめだ。艦長に相談するよ……」

 情けないよね。そう自嘲しながら立ち上がる彼女に、私はその背を見ることしかできなかった。いつもの格好いい彼女が、今日は小さくて。揺れる船によったのか、気持ちが悪い。

 その日の夕食は、美味しく食べることができなかった。

 

六日目、遭難三日目。

「おはよう。自分のベッドで寝るよう心がけるのは船員としての義務じゃないかしら、ねぇハンナ?」

「んぁ……あ……艦長、おはようございます……?」

 目が覚めたそこは、発令所の航海図を広げた机であった。いつの間にか航海図の上で腕を枕に眠ってしまっていたようだ。私ははっとしてビアンカ艦長に向き直る。

「あ、し、失礼しました! ……えっと、確かに、ベッドで睡眠を取るべきでした」

「自身の体調管理をしっかりするのも、明日明後日の活動に関わる重要なことでしょう? 航海長なんだから、しっかりしなさい」

「すいません……」

 本日六日目。昨日と変わりない揺れとビアンカ艦長の説教で目が覚めた私は、反省しながらも航海図を眺めた。結局、ポイントを見失ってからというものの、皆と力を合わせても現在位置を特定することはできなかった。それどころか、本格的に方位すら破損し、不明となった今、完全なる遭難を迎えたと言ってもよかった。

 目覚めの悪い朝を過ごし、お昼前、最後に鉛筆でポイントに印をつけて、鉛筆を投げ出した。コンパスも、定規も、今や何も役に立たない。私は少し苛立っていた。わかってた。もう、どうしようもないところまで来ていることぐらいは……。

 発令所の椅子に座ると、レオニーさんがそれに気づいたのか、後ろから声をかけてくれた。

「ハニー、どうしたんだい? 難しい顔をしてさ」

「……現在地を、完全に見失ったの。早めの遭難申告を艦長にしたけど……どうあれ遭難することになるのね」

「……まぁ、仕方ないさ。むしろハンナはよく戦ったよ。殆どの情報が得られない中、必死に秒数と時間と、速度だけでさ」

「……」

 慰める言葉が、しかし一々傷口をえぐるようで、私は目を背けてしまう。すると、レオニーさんも私と背中合わせで座った。と言っても、狭いこのスペースでは隣に座ることしかできないから、背中合わせと言っても実際は隣りに座っただけではあるが。

 しかし、彼女の背は私と変わりない気がして、それが気になった。気になった……いや、気になったなら、まだ彼女を大切にする余裕があっただろう。このときの私はそれを気にもとめられなかった。疲れてたんだ。きっと……どうしようもなく、理不尽な状況に。

「……それに比べて、僕は情けないや」

「……どうしたの」

 でも、その一言はいつものレオニーさんの声色ではなかった。彼女も、なにか問題を抱えていて、それに対する疲労がその言葉には乗っていた。

 聞き返す私に、レオニーさんは自嘲気味に話を続けた。

「……いじめが起きてる」

「え……」

「だから、それを解決するために今から艦長に応援を要請するよ。僕だけじゃ、どうしようもなかった」

「そんな……」

 私はバッと勢いよく彼女を見た。その横顔に悔しさの残る残念そうな表情が写っていた。私と変わりない表情に、私まで悲しくなってきて。

「……行ってくる。ついでに現在地を完全に見失ったことも報告しておくからさ……ハンナはもう、おやすみ。2時間程度しか寝てないんだろう?」

「……わかった……レオニーさん、あなたも、お疲れ様」

「……ありがとう」

そういう、優しい言葉にも、私はそうとしか答えられなくて……いじめの問題にも、決着をつけようと頑張るレオニーさんとは違って……それがどうしようもなく、苦かった。

 

 それから昼食をすませ、私は当直として見張りに当たった。ブリッジから見える景色は変わらず曇天で、雨が突き刺さるように降り注ぎ、波は荒れている。嵐のさなかというのは、どうにも生きた心地がしなかった。ため息を一つつくと波が全身を襲う。そのしょっぱさにむせながら私は逃げるように発令所へと戻った。

「あ、艦長」

 発令所へついて、すぐそこにいたのはビアンカ艦長だった。ちょうど艦橋へ上がるのか、合羽を装着している最中であった。しかし、私が気になったのはその後ろにいるアンネリースさんだ。

 機関室を担当とする彼女が、ビアンカ艦長と同じように雨合羽を着ていることが珍しいのだ。一応、緊急時や当直が不在もしくは病気などのときは変わりに機関科の人たちが変わりに見張員になることはある。だけど、今は人手が足りないわけではなかった。

「……と、アンネリースさん?」

「ん、そうよ。ちょっと一緒に艦橋に上がってほしくて」

「……」

 しかし、アンネリースさんの表情は暗い。それを見て私ははっとした。この子が、いじめられていたの? 確かに、彼女のおどおどとした態度は癪に障ることは、私はなかったけれど、人によってはそうなることもある。そう考えると、ビアンカ艦長が解決に乗り出したのだろうことに気づいた。

 私はビアンカ艦長に視線を戻すと、小さくうなずく。ビアンカ艦長もそれに瞬いて返事した。

「……そういうわけで、今日の当直の編成を少し変えさせてもらうわ。いいわね?」

「わ、わかりました」

「……」

「……アンネリースさん」

 どうか、どうか穏便に解決するよう祈って、私は自分のベッドへと戻ろうとした。このあとの仕事はなく、海図から開放された今はただゆっくりと英気を養うこと。それが仕事であった。

戻る間際、ちらりと横目で見えたレオニーさんは、仕事に打ち込んではいたけれど、その顔はいつもよりは険しかったように見えた。

 それから少し、ベッドで横になる。すると、自身の頭の中で浮かんでくるのがアンネリースさんのことだった。あのあとどうなったのだろうか。どういじめられていたのか。誰にそんなことをされたのか。そして、私達の船の中で、そうする人がいる。その事実が、どうしても頭に浮かんで消えない。

 そうしていくつか悩んでいると、ふいに私のベッドのカーテンがスライドされる。誰?という私の問いに答えたのはビアンカ艦長だった。

「ハンナ。作戦があるわ。少しいいかしら」

「は、はい。なんでしょうか」

「機関士を除く全乗組員に、この事実を公表するの。現場を私が抑える。狭い艦内でよくもまぁ、そんなことをしようと思ったものね」

「へ? え、あ、そうですね」

 

 慌てふためく私をよそに、ビアンカ艦長が日常会話のようにそれを話していた。私はその平然っぷりが、気になって間抜けな返事をしてしまう。何故? イジメが起きているんだよ、ビアンカ艦長?

「……どうかしたの?」

「い、いえ、案外平然としていたので……」

 私のその言葉にふぅ、とため息をつくと、ビアンカ艦長は私の頬を両手で挟んだ。こねくり回すように撫で回してくる。むぇ? 何? なんえ? そううまく発音できないまま聞く私にビアンカ艦長は答えた。

「……ハンナ。私は怒ってはいるわよ? ただ、アンネリースさん自身も変わる必要があるとは思えない?」

「……」

「自分の意見を主張できないのは、いざというとき何もできなくなっちゃうわ」

 すると、その手を離して艦尾の方を見た。アンネリースさんが帰っていった方である。役立たずというわけではないけれど、確かに行動できないと皆に影響を出してしまうことはあるだろう。

「だから、あの子には覚悟を決めてもらったわ」

「か、覚悟?」

 さぁっと顔を青くする私。覚悟って、覚悟って?? 反撃をするのだろうか。いやまあするのだろうけれど、反撃は反撃でも、殺傷とか……? いやいや、落ち着いて。そんな事するはず……でも、おとなしい子ほど恐ろしいことをするとかしないとか……いやいやいや。

「だ、だめですよ! 人殺しとか、そういうのは!」

 しかし、慌ててそういう私にキョトンとするビアンカ艦長は次第に笑い始めていた。え、何笑ってるんですか。

「ふ、ふふふふ、人殺しとか言ってないわよ。って、そんな物騒なことさせないわよ普通」

「ま、まぁ、そうですよねぇ……」

「ハンナは早とちりしすぎよ。とりあえず、全員に知らせてほしいの。ここに内容を書いた紙があるから、渡していってちょうだい」

 ビアンカ艦長の言葉に顔を赤らめつつ、渡されたメモをしっかりと受け取って私はベッドから降りる。そして、ビアンカ艦長の目を見てはっきりと言った。

「わかりました……!」

 

 

☆☆☆

 

 

 ハンナ航海長が全体に知らせてから数十分後。艦橋要員であるレオニー機関長、エルヴィーラ副長、ジークリンデ水雷長、ハンナ航海長、ビアンカ艦長に加えて私、ラッヘルも現場に加えさせてもらった。この胸の支えは、この現場と決着、その後を見てみないと解消されないだろう。建前はそれを記録する必要があるからとしておいて、本心の胸のざわつきを収めるために参加する。

 艦尾魚雷発射管室の2つ前。エレクトリックモータールームに集まり、みんなは艦尾乗組員休憩室の扉の前に居た。

 すると、レオニー機関長が呟くように言った。

「決着をつける、か……艦長」

「何かしら」

「……ありがとね」

 その表情は複雑で、嬉しそうでもあり、険しくもあった。きっと彼女の中には感謝以上に悔しさ、自身への嫌悪感が多くあるのだろう。数十日も訓練をともにしてきたから思うのだけれど、もしかするとそれよりも反省の面が強いのかもしれない。彼女は、軽くしているが案外深く受け止めやすいタイプだと、私は日誌を付けてて思っていた。

 しかし、ビアンカ艦長はそれに冷たくあしらう。

「まだ終わってないわ。お礼ならその後にしてね」

「はは、そうだね」

 そう言いながら、全員が扉に耳を澄ませた。ジークリンデ水雷長は壁に耳ありと言っていたが、一体何だったのだろうか。ともあれ、その会話が私達に伝わっていて、私はそれをメモに取ったのだった。

 聞こえてきたのはやはり、ナタリアとメルツェーデスの二人の声だ。きっと、そこにはアンネリースもいるのだろう。

「はぁ。いつまでそうやってるつもりなんだよ」

「……」

「もういいわ。まともな掃除もできやしないなんてね」

「ごめんなさい……でも、それはナタリアちゃんが……」

 弱々しく声を上げるアンネリース。でも、それに語気を強めてナタリアが言う。

「俺が何?」

「……」

「はっきり言えよ。クソが」

「……ぁ……ぅ」

 悪態の突き方に棘がある。その場の空気は刺々しいものとなっていた。はぁあと、わざとらしいため息をつくナタリアが続けた。

「いつもいつもそうだよなぁお前。誰かと一緒じゃなきゃ何もできねぇ。それどころか一緒でもなんともできねぇんじゃね」

「そうでしょうね。寄生虫のように、ついていくだけ」

「そ、そんな……こと……」

「クラウディアだったっけ。あいつも同じなんだろうな。とろくてさ、お前みたいにだめなやつなんだろうな」

「っ!」

 パチン。何か拍手のように、軽い音が響いた。そう、状況が変わった。ナタリアがクラウディアを卑下した瞬間、息を呑む音、乾いたはたく音。

「クラウディアさんを……悪く言わないで……!」

「あなた……!」

「てめっ―――」

 そこで、ビアンカ艦長が扉を開いた。ガチャリ。なおも簡単そうに開くビアンカ艦長に、私達は驚かされる。どこまでも、彼女は冷静だったのだ。

「だっさ」

「な、なんで艦長が」

「いつからそこに……」

「どうでもいいけど、いじめられてた子にビンタかまされるなんてね。ダサすぎて笑ってしまうわ」

「っ、てめぇ」

 てめぇと言ったときだ。ビアンカ艦長は近場のものを蹴り上げ、ふっとばした。前言撤回。冷静さのかけらもなかった。ビビるのはその場にいる三人だけでなく、後ろに居た私達もであった。

「誰に向かってその態度をとってるの?」

「な……っ!」

「ごめんなさいね。もう全部わかっているの。全員が、ぜぇんぶ、ね。よくもまぁこんな狭い環境下で、いじめをしていられたものね」

 冷たくそういうビアンカ艦長には、どことなく雰囲気があって、正面に居たらどれほど怖いものだったのだろうか。たじたじになりながら、メルツェーデスとナタリアはそれに反論しようとした。

「……、ちが」

「ちがわない。そうでしょう?」

「お、俺達は、ただ……!」

「言い訳するなって言ってるの。何をしていたのか、もうわかってるの。―――二度も説明させるな」

 ピシャリと言い放つそれは、もう二度と反論の余地も与えやしない。そう言っているようで、二人も何も言い出せやしなかった。

「っ……」

「……」

「最低、最悪極まりない行為だわ。愚か過ぎて吐き気がする。……二人はバツとして、艦内の全掃除一週間、担当してもらうから。今、直ぐに」

「……はい」

「……わーったよ」

 そう言うと、道を開けるビアンカ艦長。その時見えたビアンカ艦長の横顔には怒りがこもっていた。どこまでも底冷えさせるような冷徹な目。その無表情は、感情むき出しに怒っている表情なんかよりも恐ろしかった。

 そして、彼女たちはその休憩室から出てくると、外に居た私達の目線に気づくと、俯いて逃げた。皆の目線が、彼女たちを軽蔑していたのだ。ざまあみろ。私は少しの間、そう心の中で思い、クスッと笑う。これで、本件はおしまいだ。そう、思っていた。

 

☆☆☆

 

 

 それから一時間後くらいのこと。私は艦首の乗組員休憩室に向かおうとしていた。その時、トイレのある廊下で、ナタリアとメルツェーデスが掃除をしているのを見つけた。それを少し隠れて見ていると、エリヴィエラが私の隣を通過して、二人のもとに現れた。

「あら? 今日からあなた達がお掃除をいたしますの?」

「……そうだよ」

「……リンデンベルガー家も堕ちたものですわね」

 半笑いで言うエリヴィエラ。煽るような彼女の言い方は、流石に相手を怒らせるだろう。案の定、メルツェーデスが怒りを顕にした。

「っ……! 何よ……!」

「いえ別に? いつもはアデリナさんがお掃除をやっていらして、それはそれはきれいにしてくださるのだけれど……他人に押し付けて自身の身の回りのお掃除もできないあなた達に、それができて?」

「……」

「……」

 しかし、それに反論はできようがなかった。自身の中で罪悪感があるのかは不明だが、少なくともそのきつい言い方には、事実が混じっているのだ。そして黙る彼女らにエリヴィエラは更にクスクス笑うと言った。

「反論もできないなんて。ふふ、無様ですわね」

「……くそっ!」

 彼女はそのまま休憩室へと立ち去る。ナタリアはその背に悪態をついて、手に持つ雑巾を床に叩きつけた。メルツェーデスもナタリアも、それでも掃除を続けるようにし始めたのだった。私はその一部始終から逃げるように発令所へと向かう。なんだか、何処か気分が悪かった。

 それからも少し時間が立って、赤色の電灯が付く夜。私はビアンカ艦長も、他艦橋要員の方々も不在の発令所でそれを聞いた。

「私も、それに参加しろと?」

「えぇ」

「……だが、それは同じことの繰り返しに過ぎない。いじめる側になるというのは」

「だからこそ、よ」

 声の主はエリヴィエラとクラウディアだった。クラウディアは学園に居た時期はアンネリースと一緒に行動をしていて、ご飯のときも授業も、いつも一緒だった。艦内ではときおり顔を合わせて少し話たりするくらいで、話す機会が少し減っている。きっと、だから、エリヴィエラは彼女にそれを言ったのだろう。彼女は続けた。

「ああいうのは、例えばいじめられる側になるとかしないと。痛い目に遭わなければ、また繰り返しますの」

「……」

「一度同じ目に合わなければ分からないことだってあるものですわ」

 うーんと少しうなりながら悩むクラウディア。しかし、私は内心で断ってほしいと思っていた。何故だろうか。同じ目に合えばいいのに、と、考えていたのに。

「……まぁ、正直アンネのことで私も怒っている。彼女たちに反省してもらうためにもこの怒りをぶつけるのもいいだろうな」

「……交渉、成立ですわ」

それからはクラウディアさんも混じっていた。二人はその夜、皆から疎まれていることを知る。皆が二人から距離を開け、クラウディアやエリヴィエラからの陰口は当然であるようにだれも養護しなかったのだ。彼女たちの言い分は正論で、それだけのことをしたのは間違いではないのだ。だから、責めようがない。見て見ぬふりであり、空気はどこか重い。

ここには二人の味方はいない。それもそのはずで、二人がこんな場所でそんなことをするなんてバカなことをするからだ。私自身もそう言い聞かせ嘲笑する。

せいせいしたのだが、二人がこのまま疎まれ続けるのかと思うと少しだけ収まりがつかなかった。夕食の味は、何故か変わらず、おいしく感じられなかった。

 

 

 

七日目。遭難四日目

 

 今日の目覚めは悪いものだった。当直でないとき、ナタリアさんとメルツェーデスさんが掃除をすることとなっていたのだが、この日の朝もまた、掃除に当てられていた。乗組員休憩室を掃除して居た二人だが、そこにはエリヴィエラさんとクラウディアさんの両名が居て、何かを言い合っていた。

 寝ぼけた頭でもわかる。それは呆れと怒りだ。

 この程度の罰で済んで良かったなとか、口々にトゲを刺すその言葉を二人がナタリアさんたちに投げかけていたのだ。

二人に対してのあたりは強い。そこへビアンカ艦長が来ると、エリヴィエラとクラウディアたちはその脇を黙って通っていった。しかし、ビアンカ艦長はそれを全く咎めることがなかった。何しているのよ、ビアンカ艦長……!寝ぼけ眼をこすりながら、その顔を見た。でも、何というか……去っていったエリヴィエラさんたちに対して、覚えておけよ……と言いたげな表情をしている。これは一波乱来るなぁ、と、寝癖をかいてビアンカ艦長たちを眺めた。

「お掃除の途中、お話良いかしら?」

 罰としてトイレとその周辺の掃除を任せた二人に、ビアンカ艦長は壁に持たれながらそう切り出した。二人はその声の主をちらりと見て、目を背ける。露骨に嫌そうにしながら。

「……んだよ、艦長」

「……」

「……なんで、あの子をイジメたのか。聞きたいの」

 だから、ビアンカ艦長は少し迷うと率直に二人に聞いた。その言葉にケッとそっぽを向くナタリアさん。メルツェーデスさんはそのままコチラを見ようとはしなかった。

「んなもん、話すかよ」

「話すこともなく、うざかっただけ……」

 二人の言葉にビアンカ艦長もため息を付く。相手はナタリアさんで、男勝りな性格が今は敵だった。聞き出すのが難しい……。しかしビアンカ艦長は二人の言葉に間髪を入れぬように問いた。

「……もっと原因とかあるでしょう? 聞かせて頂戴」

「っだから、話すことなんて―――」

「命令だって言ってるの。良いから話しなさい」

 そこで、ガシャアンと何かを蹴る音とぶっ壊れる音が部屋に響いた。私は慌ててラジオルームより先を封鎖し、この場に近付こうとする人を通行止めにした。ビアンカ艦長を心配して来てくれるのは助かるのだけれど、今は三人が話し合ってるから……。

「っ……」

「……」

 そして、さすがの二人もビアンカ艦長の気迫に声が出ずじまいであった。そして、少しの静寂が生まれたとき、ナタリアさんが口を開いた。

「……イライラするんだよ。ああやって、人に必死になってなつこうとするやつが」

「……同じく、よ」

「俺は、おれは……そんな、寄生虫みたいなやつが一番キライだ」

「……」

 本心だ。意外な表情を浮かべる私は、正しいと思う。寄生虫。人にすがって生きてく、か……。

「ついていって、嫌なことを頼まれても、友達だからって……そんなはずもねぇのに、それでもついていこうとして……はっきり嫌だって言うこともない」

「友達っていう、一縷の希望みたいな名前の妄想にすがって、勝手に絶望して、それをあまつさえ受け入れて……うざいし、不愉快」

 きっと、そうだったのだろう。アンネリースさんはそういうちょっと意見の出せない人だった。クラウディアさんの直ぐ側にいるイメージしかないから、確かに……すがっていたかもしれない。まぁ、クラウディアさんがそれでいいなら、それでいい話なのだが。

「……そう。でも、それなら難しいけれど、関わらないようにすればいいじゃないの?」

「ああいうのは関わってくるんだよ……だから嫌なんだ」

「……ずいぶん詳しいわね」

「……」

「……」

 ビアンカ艦長のその言葉に、ナタリアさんとメルツェーデスさんは黙った。どうやら、そういうのには詳しいらしい。昔、イジメていたのだろうか。同じ様な、自己主張のない子に。

「……昔、助けたんだよ」

「……い、言うの……?」

 ポツリと語りだすナタリアさん。戸惑うメルツェーデスさんの声が少し心配の声音を帯びている。そして、その言葉は私にとっては意外だった。

「聞かせて。命令だって言ってるでしょ?」

「……ほじくり返すようなことを……」

 しかしそういうビアンカ艦長に、睨むメルツェーデスさん。だけれど、ナタリアさんがそれを手で制する。

「それでも、知っているのと知らないのでは、私が公平ではなくなるから。この船の最高責任者だからね、私」

「……」

 黙るメルツェーデスさんの隣で、ナタリアさんが語った。

「……昔……お、同じようにいじめられてるやつがいて、さ……イジメてるやつはお嬢様でさ、何人かのグループでそいつ一人をいじめてた」

 ナタリアさんの語りは、しかし静かに響いた。まるで思い出したくない過去のような……いや、思い出したくない過去そのものなのだろう。

「おれはそのイジメってのが陰湿でさ、とても嫌いだったんだ。でもよ、聞いてるとさ、そいつもそいつで馬鹿みたいに見捨てないでって言いやがるんだ」

「……だから、私たちはしばらく彼女を見守ることにしたの。自分から嫌だとか言って、縁を切ればそれで終わることだし」

 メルツェーデスさんも、とうとう口を開いた。ビアンカ艦長はそれを黙って聞いている。私も、三人には見えない位置で黙って聞いていた。

「でも、彼女は言うことはなかった。友達ってものがそんなものなはずないのに、友達でしょ? って言われて、従い続けた」

「でも、ある日、それがバケツをかけるなり何なりと、悪化した。流石に見過ごせないからおれとメルツェーデスが助けてやって、二度と彼女を虐めるなと言ってやったんだ」

「……でも、あの子は彼女たちについていっていたし、何回か助けたあと、今度は私達についてくるようになった」

「それから、彼女は変わらないままおれ達の顔色をうかがうんだ。それが、友達ではなくて、気持ち悪くてさ……」

「それが、重なったのよ。だから、我慢できなかった……ただ、それだけよ」

 そう言って、二人は黙った。ビアンカ艦長はそれに静かに「そうだったのね」と呟いて、二人を見つめ続けていた。

「……ま、彼女には彼女で教育が必要だろうことはわかったわ。あなた達についても、まだまだ反省してもらうからね?」

「……」

「……はい」

 それでも、罰が軽くなるわけではない。ビアンカ艦長はそう釘を差してその場を去ったのだった。私もそこから艦橋へと向かう。横目で見た彼女たちはまた、掃除を再開していた。

 

 そして、それから時間は経ち、夕食時となった。給食するために廊下の扉は開けっ放しになり、ローゼマリーさんが忙しそうに配っていた。当然私達は艦橋要員だが平等に決まった分量を渡され、それを受け取る。量はまだ多いほうだけれど、いつか無くなるのかと考えると、この料理は大切に食べなければという思考に至る。ローゼマリーさんの考えが染み付いてきたとしみじみ思った。

 しかし、艦尾の方でトラブルが発生した。私たち艦橋要員の五人が向かうと、酷い状況が眼前に広がっていた。皆に配られるべき食事が、ナタリアとメルツェーデスの二人の分だけ少ないのだ。

そしてそれを笑うエリヴィエラさんと、それを見過ごす皆がそこにいた。

「妥当ですわね。食事がもらえるだけ感謝なさいな」

「……くっ」

「……」

 誰もそれに何も言わなかった。機関士の中にはざまぁないね等の言葉も上がっていて、そんな酷く料理がまずくなる状況の中、二人は黙って食べ始めた。

「ゆっくり食べなさい。こぼしたって、自分で掃除するんですわよ?」

 そういうエリヴィエラさん。だが、流石に少し私もかちんと来てしまう。だって、そうでしょう? いくらそうでも、貴女までそんなイジメて……!

 しかし、ビアンカ艦長が私の手を掴んだ。まるでそこに行かせないように。

 突然の静止に戸惑う私の一方で、メルツェーデスさんの手が震えて、受け取るときにこぼしてしまった。

「あっ……!」

「おまえっ! 何こぼしてんだ! 食べ物も、人もなぁ、大切にしろ! サメの餌にするぞ!」

「マーシー!」

 すると、ローゼマリーさんが手に持つ料理を丁重に置いて、メルツェーデスさんを突き飛ばし、怒鳴った。ナタリアさんはそこに駆け寄って、メルツェーデスさんを抱きかかえた。

そして、それをニヤニヤと笑うエリヴィエラさん。バカがそういう目を見るんだと言いたげに。

流石にこの状況を見逃すわけにはいかない。そう判断した私はレオニーさんとジークリンデさんに目を配り、動こうとした。しかし、それは叶わなかった。ビアンカ艦長が私達の袖を掴んで、向かわせなかったのだ。二度もだ。どうして? 私がビアンカ艦長に問いただそうとしたその時だ。

 

「そこまでにしてください」

 

 力強いその言葉があたりを制圧した。

 ナタリアさんとメルツェーデスさんの前に立ってそう言ったのは、私達艦橋要員でなく、彼女たちにいじめられていたアンネリースさんだった。

 その表情は口をつぐんでキッと皆を一瞥するような睨みをつけていて、二人をかばうように両手を広げていた。そのつぐん

でいた口を開いて、皆に言った。

「私はもう大丈夫です」

「っ、でも」

「私は、怒っているんです」

 反論をしようとする皆に、しかし食い気味に彼女はそう答えた。いつものアンネリースさんとは違って、声が大きく、艦内に響いた。声だけじゃない。こんなにもしっかり意見を主張するような人だったっけ。私はその姿に驚愕して、まじまじと見つめていた。全くの、別人のようだった。

「私のために、皆が怒ってくれたのは凄く感謝しています。でも、だから同じ目に合わせるというのは違います」

 そう続ける彼女に皆も驚いているのか、誰もが注視していた。アンネリースさんは自身の弱さを、受けてきたことを吹っ切って、自身の思いを言葉に乗せている。

「見ているだけは気持ち悪いです。実際にいじめをやるのなんか、絶対に嫌です」

 実際、アンネリースさんだけはそのいじめのような……いじめに、参加はしていなかった。じっとナタリアさんたちを見つめて、その罰を見取っていた。だからか、そのさまを自身と重ねてこれが間違いなのだとそう思ったのだろう。

「私のためにしてくれたとしても、そうでなかったとしても、これ以上ナタリアさんたちを虐めるのは私が許しません」

 そう言って、静寂が訪れる。アンネリースさんはそこから離れずじっと皆の目を凝然として見つづけていた。誰もが皆、そこで少し我に返るとバツの悪そうに顔を背けたり、俯いたりする。わかっていた。ちゃんと冷静になれば、これがいじめなんだってことぐらい。そして、パンパンと二回手を叩くと、ビアンカ艦長が静止を声がけた。

「……これまでよ。これ以上問題を起こすのなら、私が怒るところだったけれど、アンネが代弁してくれたしね。私から怒ることはないわ……ただ」

 立ち上がって話すビアンカ艦長に今度は全員が顔を向けた。そして、皆に目配せをすると、ビアンカ艦長は続ける。

「ただ、今は最悪の状況かということを理解してほしいわ。この嵐を乗り越えるには皆が力を合わせる必要があるの。だから、誰かを卑下したり、誰かに仕事を押し付けたり、いじめたりしないでほしい。私達は……海の仲間は、家族なんだから」

 ビアンカ艦長の表情は少し、悲しさを帯びていた。傷ついたように、傷つかせた罪悪感を、感じているように。

「喧嘩するのは良いわよ。意見をぶつけ合うのだって良い。迷惑をかけるのだって良い。でも、自分の仲間を傷つけないで、もっと信用してあげて欲しいわ」

 皆がそれを静聴し、反省をしていた。ナタリアさんは、ビアンカ艦長の声、アンネリースさんのその背を見て聞いて、俯いていた。メルツェーデスさんもまた、アンネリースさんの背を見続けていた。

「ブルーマーメイドとか、そういうのじゃなくて、私達が一人間として生きていくこれからを思って。ナタリアさん達も、ここにいる皆も、反省なさい。私からは以上よ」

 そう言うと、ビアンカ艦長はその場から離れ、発令所へと移動していった。その時、ビアンカ艦長は小声で私に一人にしてほしいと言ったので、ついていこうとした足を私は止めた。ビアンカ艦長も、何か思うところがあったのだろうか。責任者という立ち位置は難しいもので、ビアンカ艦長もまた、とても疲れていたに違いないのだ。

 ビアンカ艦長の背を見送る私は、背後での声を聞いてハッとした。

「……ごめ……なさ……」

 それは贖罪の言葉。自身の過ちを認め、許しを請う、しっかりとした反省の言の葉だった。小さな呟きは、ナタリアさんを小さくみせた。小さな呟きは次第に大きくなり、しっかりと耳に届いた。それにつづいて、ナタリアさんの肩に寄り添って、メルツェーデスさんも謝る。

「ごめんなさい……」

「ごめんなさい……ごめん……私……」

「許します」

 そう言って、アンネリースさんは二人を抱きしめた。ぎゅっと、優しくと言うよりは、力強く。そして耳元で再び囁いた。

「私が、ゆるします」

 その許しの声に、ナタリアさんもメルツェーデスさんも、心に積もった闇を浄化されたのか、頬にひとしずく、涙が伝った。やがてそれは歯止めがかからないように、ポロポロとこぼれ落ちていった。

「ごめんなさい……うぁぁぁぁん!」

「ごめんなさい……」

「もう良いんですよ、ナタリアさん、メルツェーデスさん」

「うぁぁぁん!」

 ナタリアさんとメルツェーデスさんの泣いている姿を見て、皆も彼女たちに駆け寄って口々に謝った。謝って、泣いて、謝って……そこにはもう、いつもの刺々しい空気はなかった。

 私はそれに安心したとき、隣をフッと通り過ぎていくエリヴィエラさんに気づいて、ビアンカ艦長ののぞみのため声を掛けようとした。だけど、それはできなかった。彼女は、ムスッと何かに怒っていて、それこそ何も話せそうになかったのだ。それも、この状況に対しての怒りというよりは……。

 

 

☆☆☆

 

 

 雲が空を覆い、しかし雨は止み、波はまだおとなしい海上に浮かぶU-ボート。そのブリッジで一人、潮風に吹かれて揺れるコートを無視してそこに居た。ビアンカ艦長は手すりに手を添え、ただただ遠くの地平線を眺めていた。今の時刻は 。丁度夕暮れ?でそこはぼんやりと明るい。なんとなく、頭にかぶっていた艦長帽を手に取ると、今度はそれを眺め続けていた。

そして、手すりから手放すと、帽子を優しく撫で始めた。父の白い艦長帽。それにどれほどの想いが、思い出が詰まっているのか。撫でただけではまだ、わからなかった。

「……どうしたの?」

 撫でながら、背後に現れたエリヴィエラさんにビアンカはそのまま声をかけた。コチラを見ないでも、誰かわかっていそうなビアンカ艦長にふぅっとため息を付いて、エリヴィエラさんはその隣に並び、手すりに手をかけた。ビアンカ艦長の問に答えないまま少し波風に吹かれて、自身たちの髪を揺らす。横髪を手で耳にかけ、遠くの海を眺めながらエリヴィエラさんは呟くようにこういった。

「……あの明るい場所が、私はちょっと苦手ですの」

 ポツリと、そう漏らす本音に、しかしビアンカ艦長は帽子を眺めていた。だが、その撫でる手を止めて、その続きを聞いている。彼女は続けた。

「社交界とか、色んな場所、色んな高貴な方々とお会いすると、こういうことが結構ありますの。……私は、だからああいう純粋な場所が苦手ですわ」

 そう言いながら腕を組み手すりに乗っけて、口元を埋めた。視線は船体に当たる波の動きを捉え、でも頭の中の渦に囚われる。苦手だ。そうじゃない。苦手になった……なってしまった。一つ空気を吸って、それを吐いて……ビアンカ艦長に、誰かに、自身の本音を吐露した。

「どうしても……どうしても、茶番だとか感じてしまう自分がいるのが、嫌い……一緒にごめんなさいと言えない自分が……嫌いですわ」

 彼女はわかっていて、一人になる場所を探していた。海上に一人になる場所はなく、このもやもやとした嫌悪感を、しかしビアンカ艦長にだけ吐露したのだ。波を割って進むその音が、虚しく聞こえた。

 しばらくの沈黙がすぎると、ビアンカ艦長は帽子をかぶった。そして、再び手すりに手をかけ、遠くを眺めながらこうつぶやいた。

「好きになる様、変わればいいわ」

「……簡単に言いますわね」

「簡単よ」

 それができれば苦労はしないと言いたげなその言葉に、ビアンカ艦長は即答した。目だけでエリヴィエラさんはビアンカ艦長の横顔を見る。エリヴィエラさんの瞳に写ったのは、優しい微笑みだった。

「……ここには家族がいる。血のつながっていない、それでも深いつながりのある、ね」

 家族……? と呟くようにその言葉を反芻するエリヴィエラさん。それにビアンカ艦長はそう、と答えると目を合わせて続けた。

「迷惑をかけるのだって良い、喧嘩したって良い。だって、家族なんだもん。……ここでなら変われるわよ。現に、貴女だってここに乗っているんだから。貴族とか色々気にしていたら、ここには乗れなかったでしょう?」

「……そう、ですわね」

 皮肉も少し混じったそれに、エリヴィエラさんは目を背けた。まったくもってそのとおりで、多少なりとも今の生活も悪くはないかもしれないと変わっている自分がいるのを自覚していた。

しかし、ビアンカ艦長はそれに微笑みながらこう聞く。

「ふふふ……今の話だってきっと一歩引いて受け止めてるでしょう?」

 その言葉に少し驚きを感じた。自覚しても、あんなふうにまっすぐに変われるなんてそう簡単なことじゃない気がして、少し引いて、自分から……。

「……えぇ、そうなれるなんて、ちょっと……思えないですわ」

 図星だからか、弱音を吐いた。はっきりとした本音をここまで言うのは自身でも少し珍しく、エリヴィエラさんはどこかで戸惑いながらもビアンカ艦長と話を続けていた。そして、ビアンカ艦長はだからこそ自信満々に、力強くこう言った。

「なら、私が見ているよ。貴女の変化を、私が見てる。貴族とか色々関係のないここだから、大丈夫よ」

 ビアンカ艦長は優しく、何処かだらしない。でも、やるときはやる。エリヴィエラさんは、そのしっかりとした言葉を、信じたいとそう思った。

「艦長……」

「さ、謝ってきなさい。例え別の目的があったとしても、無かったとしても、貴女も反省の対象なんだからね?」

「……Jawohl Herr Kapitän(諒解、艦長)……!」

 

 

☆☆☆

 

 

八日目。遭難五日目。

 雨はやみ、波もある程度大人しくなってきた本日。皆が慌ただしく働く中、今日の料理は豪勢なものとなっていた。表向きは皆の結束が強まったことに対してのお祝い……みたいな感じだ。でも、その裏では新鮮な食料が危なくなり、それの消費として豪勢になっていたのだ。食糧危機である。

 でも、まぁ、まだ缶詰などが残っているから餓死の危険性はそれほど高くはない。レモンだってまだあるから壊血病の恐れも……高くないはず。

 ともあれ、まだまだ危険はあるけれど、私は今日の日誌をあの三人の様子で締めようとおもう。あの、笑顔をいっぱいにして、部屋で遊んでいた彼女たちを。

ラッヘル・ルイーゼ・ハーニッシュ

 

 そう綴ったあと、私は料理をまた一口食べる。その料理は、とても美味しい味付けだった。

 

今後絡んでほしいキャラ

  • テア・クロイツェル
  • ヴィルヘルミーナ
  • その他(名前を挙げていただければ)
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