テュファは、一般的なムー人である。彼女は今、アルバイトのためマイカル港近くにできた日本のコンビニエンスストアに向かっていた。
「マイカル港の辺りって新しいお店の入る隙間もないくらい競争が激しいって聞いたことあるけど」
マイカル港は東部でもトップクラスの貨物取り扱い量を誇る。そのため会社も多い。さらにその社員たちの需要を満たすため、小売店も多い。
「えーっと、教えてもらった場所はこの辺りだと思うのけど...あれかしら」
駅から港へつづく最も大きな通りのさらに人通りが多いところだ。
その一角に見るからにムーっぽくない店舗があった。原色でデカデカとFamily Martsと書かれている。入り口脇にはのぼりがたっており『ただいまおにぎり2割引』とか、『新商品入荷!』と書かれている。そしてすごい量の人が集まっている。
「なんなのこのお店。日本ではこれが普通なのかしら。でもこれは美味しそうね」
そうして日本の店を眺めていると、看板の色に似たエプロンをつけた黒髪の男性が店の裏から現れた。
「あー、全然客減らねぇ...計算機で一つずつ計算って無理あるだろ」
どうやら店員のようだ。
「あのー、ここって日本のお店ですよね?」
「え?ああ、そうですよ。Family Martsマイカル中央通り店です。お客さんですか?」
どうやら日本の店員は、私を買い物に来たのだと勘違いしてるらしい。
「いえ、私は斡旋所から来たのですけど...」
「君を待っていた!」
「えっ」
いきなり手を握られ、お店につれていかれる。いったいなんなの!?
「いやー、正直に言うとそろそろ限界でね。見たでしょあの人の数」
「え、えぇまぁ」
「君にやってもらいたいことは色々とあるんだけど、まずは商品を並べるのをやってほしいんだ」
男性は傍らの机の引き出しから透明な柔らかいガラスのようなものに入った写真つきの紙(ラミネートされた商品一覧)を私に渡す。
「これは?」
「これはこのお店の中にある商品の一覧だよ。すべての商品の場所と、どんな商品なのかが書かれている」
私は驚いてしまった。ちょっと中を見てみたけれど、種類が普通じゃない。食べ物だけでなく紙や鉛筆、本、服まで販売している。いくつものお店を合わせたような商品の種類だ。
「こんなにたくさんの種類を売っているんですか?」
「そうなんだ。だから商品を並べるのが大変なんだ」
じゃあお手本を見せるから、付いてきて。そういわれてドアを開けた先で見たのはーーーー
『オイ!それは俺が先に目ェつけたんだぞ返しやがれ!』
『ふざけんなこのヤロー!先に取ったもん勝ちだろ!』
ーーー商品の奪い合いが行われている様子だった。
「あのー、いつもこんな状況なんですか?」
「いや、これでも一度につき入店人数20人、1人が購入可能な商品数30個にしてるんだよね。まぁこの制服を着てればすぐに道を開けてくれるよ」
そういいながら奥の商品棚に向かっていく店員さんの様子を見て、私はこの仕事をやっていけるのかなと思うのであった。