昔は、家具は高い買い物であることが多かった。
マイカル郊外に、平屋の大きな店舗が完成した。日本のインテリア小売業大手のニトルの店舗である。
圧倒的な家具の種類と品質管理、また配送まで行って貰えるとなれば、日本の家具にしない手はない。対立していたムー、特にマイカルの家具屋はしだいに顧客が減っていき、倒産するものもあった。
そんな中、動きを見せずに手堅く家具をつくり続ける家具屋があった。レトイ家具店である。創業から150年近くになる老舗の家具屋であった。もともと高級家具として有名であり、廉価な家具屋とは考え方が少し違った。
「社長、我々の家具を日本に売り込んでみたらどうでしょうか?」
「現時点でそんなことをする必要はないと思うがなぁ」
「あちらはガラスなんかも使ってますから、遅かれ早かれ我々に不利です」
「まぁ、そうだな。しかしそれにはまずは日本の家具店を調査するべきだな」
レトイ家具店は、早々に日本へと売り込めないかを考えていた。レトイ家具店自体、熾烈な競争を乗り越えてきた。相手が日本であろうと、ある程度の利益を得る自信があった。
夏。レトイ家具店の幹部たち5人は、飛行機と船を乗り継いで日本へ到着した。船旅の一部は日本の航路だったので、さまざまな内装を観察したり、サイズをはかったりした。
「あの船もすごかったが、日本の町はもっとすごいな」
「あんな建物どうやって建てるのでしょうかね」
一行が降り立ったのは、福岡市であった。福岡市で降りたのは、東京に行くにはさすがに運賃が高く、無理があったためである。
ひとまず最初に宿を探すことになった。マイカルに展開している日本の旅行代理店で先に予約をしてあったのだ。しかし、それがどこなのかはよくわからなかった。
「ヒーギス、こっちではないかね?」
「いやこっちじゃないですか?」
日本の旅行代理店でもらった地図には印がつけられていたが、そもそも今どこにいるのかが分からなくなっていたのだ。
「取り敢えず誰かに聞いてみよう!」
そう言って販売部門部長セイルは、そこら辺にいたサラリーマンに声をかけた。
「すまんが、この建物はどこにあるのじゃ?」
「え、あー、これはこの通りをまっすぐ進んで.......」
「ここじゃな」
「そのようですな」
10分後、ようやく博多プレジデントホテルへと到着した一行は、一旦休憩をとることになった。
「この家具はどんな木材を使っているのでしょうか?」
「ムーでは見かけない材料だな」
「このソファーの布地も見事なものだ」
「金属も使われているものもありましたが、表面の加工により鏡のようですな」
結局、ホテルの家具に興味が出てしまいあまり休めない一行であった。