水処理は、環境を維持する上で非常に重要な施設である。ムーでは環境基準など存在せず、基本的に垂れ流しが普通であった。
これに懸念を示したのが、環境庁である。日本の企業や人がムーへと進出する際、垂れ流しなどが悪影響を与える可能性がある。そういった意見が出たのである。
日本政府によるムーへのODAは、地球でのODA総額の約3割であり、そこから水処理施設の建設費用を出すことになった。
ただ、ムーにおいてはまだ水資源保護の認識が低く、そもそも下水処理とはどういったものなのかを理解していなかったため、日本の水処理施設の見学を行うこととなった。
ムー政府から派遣されたのは、水道局副長官をはじめとする6人である。
「ようこそ日本へ。私、外務省から参りました室岡と申します。皆様の案内を致します。」
「これはご丁寧に。私はムーの農商務副大臣、バローツ・ネロウと申します。本日からどうぞよろしくお願いします」
今回は日本の水処理技術のムーへの輸出へとつながる可能性が高いと、メディアから熱く注目されていた。
「本日はお疲れでしょうから、施設の見学は明日とさせていただいております」
「お気遣い痛み入ります」
バローツは、水処理の重要性がいまいち理解できていなかった。わざわざ莫大な予算をかけてまでやる必要があることなのか?と思っていたのだ。
「それでは本日のご予定です。本日は、我が国の浄水施設をご案内致します」
「浄水施設?いったいどういったところなのでしょうか?」
「川等から汲み上げた水から細菌や寄生虫、有害な物質を取り除くところです」
「ほう...」
「私は当浄水場の浄水部長の来嶋と申します。まず私から、浄浄水場の簡単な説明をさせていただきます」
「よろしくお願いする」
「ではまず、水のろ過の方法についてご説明させていただきます。こちらの冊子をご覧ください」
日本の職員から薄い冊子が開いて手渡される。たった数ページだが、きれいな色で印刷されている。何度か見たことがあるが、さすがの技術だ。それにしても、こうカメラが多くては気が滅入るな。
「ムッ!」
こ、これは!すべてムー語で書かれている!しかも一つずつの文字が非常に整っている!と内心驚きつつ、顔には出さない。印刷くらいは我がムーにもあるのだ。
「まず、浄化するため川や湖沼、貯水池から取水します。取水にはこのような取水ぜきや取水塔を用います。こちらがその写真です」
「結構大きな施設のようですな」
「はい、河川の端から端までです。ですが、この堰から水を取るわけではありません。あくまでも水位を安定させるためのものです」
「なるほど、水の量が減ると大変ですからな」
「そしてそこから取った水はまず沈砂池に送られます。ここではーーー」
そうして、いったん冊子での説明が終わった。どうやら次に外の施設を案内するという。実際に水の処理をしているところを見せてくれるようだ。
「いや、確かに水をきれいにすることは重要ですな。きれいな水のほうが国民の健康的にも良いようです。海に流せば海の幸にも影響が出るとは、いやはや、日本は環境に対しての研究がよくなされていますな」
「いえいえ、まだまだです。今は問題ないように見えて、何年もたつと大きな影響が出てきますからね」
建物を出て、左にある水槽へと向かう。あれが説明のあった砂利などを用いた浄化槽だろうか?
「こちらが、フロック形成池となります。薬品で細かな汚れを固めるところです」
どうやら違ったらしい。ここは砂や砂利などできれいにした水を薬物を使ってさらにきれいにするところのようだ。
「ここで形成されたフロックは、隣の沈殿池で沈殿させます。ちょうどあちらの水槽が清掃で水を抜いているため、いってみましょう」
普段はあまり見ることのない水槽のなかを見ることができるようだ。これは良い。しっかりと参考にさせてもらおう。
「こちらですね。あそこに装置が見えていますね」
「ほう、水槽のなかはこのようになっているですか!」
水槽自体はコンクリートでできており、底には集まったゴミの塊を集める装置がある。さらにそのひとつ前の手順の水槽では薬品と水をしっかりとかき混ぜるための装置がある。どれもずいぶん大きいようだ。
実際に見てみると、技術力の高さやこの施設の建設費の高さなどが伺える。
「ずいぶん大きいですな」
「ええ、この浄化場は1日に最大11億5700万リットルの水を濾過していますから、その分大きな施設が必要なのです。もちろん、水質を保つために検査や清掃も欠かせません」
11億5700万リットルだと!?何という量だ。この規模の施設が複数存在しているといっていたが、東京の一部だけでこれほどの水を必要とするのか!
その後もいくつかの水槽や建物を案内されたが、ただただ日本の巨大さを思い知らされるばかりであった。
その日は、浄水場の見学のみであったため、一行はホテルへと向かった。明日は、下水処理場の見学に向かう事になっていた。