今回はシリーズものです。多分3話くらいで終わるとおもいます。
対グラ・バルカス戦が始まった。ムーからすればはじめての科学技術国家との戦争であり、技術的に劣勢な戦いでもあった。
キールセキ東側避難民テント
アルーが陥落してしばらくして、キールセキの郊外には避難民によるテント村が形成された。
最初は空いていた公共の土地に掘っ立て小屋を建てて対処してきたものの、あまりに数が多く、建てるスピードが避難民の数に追いつかなくなったためである。
そのテントは、日本から自衛隊と民間航空会社が提供された民間の在庫をムー軍が空輸、現地の警察や元気な住民と一緒にテントを建てていた。
さて、ここで問題になったのが食べ物であった。数万人もの食事を毎日用意するのは不可能である。すでにキールセキでも食料の買い占めが起こっているため、容易に食材が手に入らない状態に陥っていた。
中央歴1643年6月5日 日新食品マイカル支社 会議室
「本社から我々に日本へ戻れとの指示が来た」
「まあそうでしょう、アルーが攻撃を受けたという報道が流れていますからな。日本政府としては自国民に危害が及ばないようにしたいはずですからな」
「まあ、私たちだって死ぬのは嫌です。守るべき家族がいる。ただ......なにもしないまま帰るってのは性に合いませんよ、支社長」
「まあ、私もこのまま放っておいて帰るのはな。さて、では確認する。いま在庫はどの程度ある」
「現在展開している13種類の商品それぞれに5万食はあると思いますよ。ムーの購買力はかなりのものですから」
3人は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「クビ覚悟だな」
「まあ、十分蓄えはありますし、問題ないですよ」
「カミさんに怒られそうですな?」
3人は、動き出す。
☆
「いまあるトラックは20台、最前線まで運ぶわけにはいかないからそこからはムーに任せよう」
「社員にはどう説明する」
当たり前のことだが3人の中では社員を危険にさらさないことが絶対条件となっている。先頃の自動車専用船のこともあり、気が抜けない。
「社員には志願者だけ行ってもらうしかないですな。マイカル行政側にも日本の免許持ってる人がいたはずですからそちらに人員要請するのも良いかもしれません」
早くからマイカルに進出していた自動車教習所は、現在2ヶ所に増え、他の都市にもいくつか設置され、ムーの道路規則の日本化が進んでいる。都市部ではある程度道路整備も進んでいるため、日本車が普通にはしることも可能だ。
ただし、レイフォル側にはまだ整備が届いていない。いわゆるコンクリート道路があるだけである。
「よし、とりあえず自社で用意した20台の車両に積み込む作業を始めよう。時間が惜しい」
現在のトラックは大型3台と中型トラック17台である。単純計算でカップ麺は一箱20個入りで2キロなので
大型トラックは一台につき10トン程度積めるので5000箱10万食分、中型トラック一台につき最大4トン程度積めるので、2000箱積める。4万食分だ。
だがこれでも1ヶ月のうちに消えてしまう数でしかない。水も含めるとさらに短くなる。
そして途中悪路であることを考えると、限界まで積む訳にはいかないのである。
「とりあえずラーメンを優先しよう、軽いし、数が多いからな。余裕があったら飲料も持っていこう」
☆
「というわけで、キールセキに食料品を運んでくれる者を募集したい。これで昇進になるとか、クビになるとかそういう話はない。さらに言えば給料の増額なんてこともない。やってくれる者は今日の昼までに私に申し出てくれ」
既に倉庫ではトラックへの積込が始まっている。マイカル行政への話も既にしており、地元がキールセキ方面の職員が手伝ってくれることになっている。
しかし、それでもまだ10人しか集まらない。キールセキで活動することを考えると、少なくとも30人くらいほしいところだ。
「俺、行きますよ」
ひとりの社員が手を挙げる。若い社員だ。
「私も行きたいです」
そういって次々と手が挙がる。
結局社内で14人集まった。
誰も好き好んで戦場に行きたいわけではない。下手をすれば向かっている途中で攻撃を受けるかもしれないのだ。ただ自分がやれることはやりたいと思っているだけなのだ。
☆
昼過ぎ、社員とマイカル職員たちは日新食品の倉庫へ集まっていた。
「我々は全部で24人しかいない。そしてキールセキまでは約2200km近い距離がある。従って、二人一組で交代で運転をするほかない。つまり動かせるのは12台ということになる」
鉄道は現在、軍の物資、兵隊の輸送を行っており、民間が使うことができない。飛行機はそもそもまだ本格運用が始まっていない。やはり自動車で行くしかなかった。
一応20台に食料品及び飲料を詰め込んだものの、8台分は置いていく。水は多めに持っていくことになり、12台のうち大型3台と中型2台が水、残り中型7台がカップ麺ということになった。
「では出発する!副支社長、留守を頼む!」
「わかった!こっちでもほかの業者に声をかけてみる!」
マイカルから総勢12台のトラックが次々と出ていく。目指すはキールセキだ。
今回は全然調べていません。実際の企業だったらこんなことやらないですよ。