ムーへの日本企業進出が止まらない中、ついに工場をムーへと建設する動きが出た。
もちろん、新世界技術流出防止法があるため、最新機器は使えないし、最先端の技術を用いる重化学工業は認可すらされなかった。それをやったらどうなるか、地球で痛い目を見ているためだ。
そうなると、自ずと進出が可能な分野は絞られる。
途上国でも生産できて、ある程度人の手が必要で、それでもあまり重要な技術ではない。
そう、軽工業である。日本で軽工業というと、一般的には富岡製糸場などから始まる繊維工業や、それらから作られる洋服産業などと思われがちだが、だいたい間違いではない。
特に、こちらの世界では衣服の質はかなり悪く、日本の格安の服や古着屋の在庫がかなり海外に流出し、日本国内の衣服が枯渇するという訳の分からない状況になりつつあった。
政府としても、企業としてもこの機を逃さず莫大な投資をしてシェアを拡大したいと考えてはいるが、日本国内ではバブル期を超えるレベルで経済が活発化しており、わざわざ安めの給料な衣服工場に来てくれる働き盛りの人間はなかなかいない。
そこで目をつけたのが周辺の親日国家である。が、ここで大きな問題が起きた。周辺の国々は、見ればわかるように家内工業がメインであり、そもそも文明のレベルが違いすぎて機械を扱えない。根気よく教えるなら可能だが、現状少しでも早く操業を開始したい。ではどこなら可能か。近代レベルの国家で日本とはそうそう対立しない国。この条件に当てはまるのは、ムーしかいなかった。
現在一般的に使われているミシンは、1850年に発明されたものであり、三笠と同じような年代に登場している。当然、ムーでは似たものが発明されており、かなり好評を博していた。もちろん、日本のミシンによりかなり売り上げに影響が出ているようではあるが。
閑話休題。
さて、とにかく進出先は見つかった。が、問題はこの先である。ムーからすれば一般の店舗はまだしも、生産拠点である工場を日本が作る規模で建てられてはたまらない。既存の業界が破綻しかねない。という主張のもと、企業連合やカルテルを組んで対抗を始めた。政府の人間も一部反対を唱え始めた。
「現在の状況では工場を建てても下手をすると襲撃とかされかねませんな」
「流石にないと思いたいですが...。こちらとしても数百人単位で雇用を生み出してくれる工場の進出に反対してないんです。反対しているのは特に小さな服屋です。店が潰れると思ってるんでしょう」
「どういうことでしょう?」
「つまり、あなた方が服を作って、店を建てて売ると思ってるんです。ムーでは作った業者から仕入れるというのはまだあまりないですからね」
ムーはようやく産業革命が進んでいる段階にあり、まだ経済的には地域単位の動きがほとんど。日本との接触後、急速に地域間の統合が始まっているものの、人間の考えはそうそう変わらない。
「いっそのこと一般市民に大々的に雇用の募集を出しましょうか。裁縫をやったことがある方を優先すれば、勘違いしてくれるかもしれません」
「あ、私たちを組合か何かと勘違いするということですか」
「そうです。それで実際に働いて貰えば、認識を改めるかもしれません。ここは作るところであって、売るとこではないということを」
そもそも問題になっていたのは、自分の作ったものが売れなくなることで収入がなくなってしまうこと。特に町の服屋程度では潰れるしかない。が、そもそも前提が違う。作ることに特化するという認識を、服屋にわかってもらうことが重要なのだ。逆に、売るときはもはや大店に対抗するのは不可能になるのは目に見えていた。
結局のところ時間の問題であった。偶然日本が来て、早くなったというだけ。国家間ならば優先的に仕事を与えることができるが、完全な民間での話ならば、そんなことは無視されていたはずである。
2年後、無事操業を開始した大手縫製メーカーの工場では、反対していた服屋の半数程度が働き始めた。俺もその1人だ。最初はどうなることかと思っていたが、引っ越してきた者には社宅とかいう家が用意されていて住む場所にも困らない。結局、こっちの方が安定していた。月々の支払いがギリギリになる、なんてこともない。
「あぁ、生きてるなぁ」
⭐︎⭐︎
工場ができた小さな町では、たくさん人が引っ越してきたことで駅ができた。店が増え、さらに住宅が増えた。大きな店もでき、便利なところということでさらに人が。
いつのまにか工場が町から姿を消しても、発展を続けていく。やがて、服の街と呼ばれたその町が、デザインの街と呼ばれるようになるのは、また別の話である。
お久しぶりです。KAIZUです。本当に久しぶりにマイカルの日常更新です。久々にこういう感じのもの書くと意外と楽しいですね。最近はなろうの方の作品や3D、ニコニコの漫画ばかりやっていますが、ふと書きたくなりましたw
最近ハマってる3Dはイタリア艦を作っているのですが、実はあれは実験的なもので、どうやって船って作るのかを探ってる状態です。本命は次、ミスリル級戦艦。以前作ったものはカクカクでせいぜい作画参考資料レベルだったので、今回は1/700くらいでも通用するようなディティールを、と考えています。
ついでに言えば、アニメも描いてたんですがあれは一旦ボツになりました。船とか飛行機とか手書きだといつまで経っても終わらないと思ったためですね。
ではまた。