配られた冊子を開いて中を見てみると、この航空機についての簡単な解説がかかれている。それも文字だけではなく、綺麗な色のついた絵までついているのだ。
「この冊子はずいぶん綺麗な装丁ですな」
「この印刷技術も興味深いですよ。説明書やパンフレットに使えば分かりやすいですし」
「では、説明をさせていただきます。この飛行機、ボーインクB-767-300ERは、初飛行が今から30年前でーーー」
その説明の内容は、ムーの技術者たちを驚嘆させ、また渇望させた。こんな航空機が作りたい。また運用し自分達で空を飛ばしてみたい、と。
「それでは、以上で説明を終わりますので、引き続き空の旅をお楽しみください」
ムー南部 シマカゴ飛行場
「...すごかったですなぁ」
「...そうですねぇ」
空港の建物へと向かいつつ、素晴らしい空の旅を思いかえすムーの人たち。
彼らは技術屋として、また運用者として、日本の航空機の素晴らしさを体感したのだった。
数日後。ガダル航空機の面々は本社に戻っていた。
「では、先日の日本の飛行機の視察から得られた考察および性能などを元に、今後我々がいかに動くかを定める。常識とか前例がないなんてのはいいから、忌憚のない意見を聞かせてほしい」
ガダル航空機社長、シューメット・ガダルは周りを見渡す。会議に出ているのは日本の航空機に乗った工作部部長、設計部部長、内装部部長、材料部部長に加え、経理部、監理部、そして取締役などである。
「では、工作部より、報告いたします。まず、日本の飛行機の製造技術は我が国よりも遥かに進んでいると、推測されます」
ざわめきが起こる。世界第二位、そして科学側でトップであるムーを越す技術。今までそんなものは存在しなかった。
「更に、鋲の後がありませんでした。機体表面は非常に滑らかです。そしてあのテレビは理論すらわからない。...あ、後、主翼の端が斜め上に向いて曲がっていましたね。なんのためかよくわかりませんでしたが」
その後いくつか分かったことを報告して、工作部部長は席に座った。
「では次は設計部から報告いたします。設計については、図面が入手できていないので、細かなことは断言できませんが、我々より遥かに進んだ理論によって設計されているのは間違いありません。配線などは機内にないようですからおそらく機体と内装の間。そして与圧がなされています。窓ガラスは特別なガラスなのでしょう。機体は円ではなく楕円ですね」
設計部部長はここまで一息に言うと、一旦報告書から顔をあげた。
「我々としては、技術導入のため、数機程度入手できれば、航空分野のみならずいろいろな産業へと応用できそうなものが多数あると感じました」
そこで社長がスッと手をあげた。
「いろいろな産業と言ったが、具体的には?」
「まず、外装の金属加工技術。船舶や自動車に応用できると思います。ガラスもそうです。更に車輪等は巨大なおそらくゴム製です。また観測機器は学術分野に、内装は宿泊施設や鉄道、一般家庭にも応用できると思います」
「しかし問題があります」
内装部部長が声をあげる。
「我々は現在あのレベルのものを作る技術がありません。あの客席の模様を作るとなると。どれだけの投資が必要になるか。あの機内は温度が快適に保たれていました。明かりもしっかりしたものがありました。内装だけでムーの飛行機を作れそうですよ!」
「しかもほとんどの材料がムーにはないものでしたな。おそらく機体もムーで入手できる金属の数倍の強度がありそうですし、内装などは樹脂のようなものが多用されています」
材料部部長が腕を組み、ため息をつく。
ガダル航空機本社での報告会は結局、夜遅くまで続き、翌日更に今後の事業計画を見直すこととなった。
ガダル航空機の話ですが、予想以上に資料集めが難航しています。これからは定期的にはできない可能性が高いです。本当に申し訳ないです。