彼女達の連絡先を集める事になりました。   作:大里野上

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プロローグ

その日、浮之城 彩芽(うきのじょう あやめ)の心は激しく揺さぶられた――

 

 イベントやライブに直接関係する事でライブハウス側が行う事は、[ライブスタジオを貸し出すこと]だけ、少なくとも、彩芽のバイト先の【CiRCLE】ではそうだ。

 基本的に、掃除と受付と機材の確認だけであり、機材の準備やメンテナンスは、専門的に出来るスタッフの仕事になっている。

 

その日のライブハウス【CiRCLE】はイベントライブであり、いつも以上の賑わいを見せていた。

 楽器や機材に対する専門的な知識を有していない彩芽は、受付とドリンクの販売等が主な仕事内容だったが、イベントライブで来客が多くなると予想されたため、人見知りで接客が苦手な彩芽は普段より多いお客さんを捌く事は出来ないと、自己申告していた。

 当日。予想通り、には多くのお客が押し寄せ、何時もならレッスンスタジオと分けて行っている受付は、ライブスタジオのみの利用に限定されていた。単純に受付の回転率は倍になっており、今日の受付は、イベント時の受付を任させた経験豊富なスタッフだったが、当日券を求める人も多く、対応が追い付いていない。

 

「あっちも大変みたい‼ 凄い数のお客さんだよ‼」

 要望が通り、バックステージで作業をしていた彩芽は、スタジオの中央で大声で指示を飛ばしながら、最終確認を行っている月島 まりな(つきしま まりな)の声で受付の状態を知った。

 まりなは、真面目に指示を出しているが、声は弾んでおり、嬉しさを乗せている。

 楽しそうだな。と、思いながら自分の作業に戻る彩芽.

前日の内にセッティングは行われ、リハーサルは朝行われており、彩芽の作業は荷物を運ぶ事等、簡単な力仕事が主だ。

「うんっしょ」

 力も体力も余り無い彩芽だったが、黙々と作業する事は自分に合っていると思った。

 

「あと、どれくらい掛かりそうですか?」

 作業が終わりそうな彩芽に、声をかける人物がいた。

 王緑 輝(おうりょく ひかり)。彩芽の先輩にあたる人物だ。

「これで終わりです」

「あっ、それなら皆さんも終わった様なので、少し休憩しましょうか」

 短く返事をした彩芽に対して、飲み物を渡しながら休憩を進める輝。首だけで返事をし、貰った飲み物に口をつけていると、スタジオに観客達が入ってくるのが見えた。

「凄い……」

 きっかけは、一回のミリライブだったらしい。

 オーナーが企画し、まりなとその時の新人スタッフが主導で行われたそのライブは成功を収め、不定期に開催する目玉イベントになった。その結果、CiRCLEには連日多くの人が押し寄せる様になり、人員が足りなくなった。そのおかげで、彩芽は自分がバイトとしてスタッフをやっていると、知っていた。

 幸いなのは、人で不足といっても、バイトの事を考えてシフトを組んでおり、忙しさもブッラクと言われる程のものでは無かった事だ。

「本当に凄いですよね。この人たち皆、彼女達を見に来たんです。まりなさんも、このライブの為に何時も色々用意をしていて、ライブハウスがここまで深く関わる事って、珍しいんですよ」

 そう言いながら彩紗の方を向く輝。

 その顔は、自慢するようで言う所のどや顔であった。

 

 イベントライブの特徴は、参加バンドの企画にCiRCLEが全面協力している。

 予算出すのは当たり前、機材のメンテナンスや打ち上げ費なども全て負担していた。中には予算など考えた事が無いだろうバンドもあるのだが、そういったバンドにもまりなを中心として、出来るだけの事をしていた。

 しかし、CiRCLEが何をしているかも、普通のライブハウスの事も知らない彩芽は、あいまいに相槌を打つことしか出来なかった。

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