エルニーニョ   作:まっぴ~

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 エリアの騎士原作でBLじゃない小説見当たらないなぁと思ってて、いつの間にかキーボードに打ち込んでいた小説。忙しい現実から逃れるために書いただけなので、続くか分かりません。不定期更新です。そして最強ものです。
 何より重要な注意事項は、サッカーを見るのが好きというだけで、作者はサッカーの知識がまったく無いので勉強しながら書いてます。そこら辺はご了承ください。サッカー小説を楽しむというよりも、高校生編に入ってからの人間ドラマを見てもらえれば楽しんでもらえると思います。ただ、高校生編に入れるのはいつになるのか分かりません。気分次第でそこまですっ飛ばすかもしれませんが。
 という事で、この小説に御縁があって行き当たった人はどうか暖かく見守って下さい。飽きっぽい性格なので、もしかしたら途中で飽きて更新がストップするかもしれません。投げやりでごめんなさい。


プロローグ

 パタンと漫画を閉じると同時に、テレビの中から悲鳴のような歓声と、それにかき消されて何と言っているのか分からないアナウンサーと解説の実況が響く。

 画面の中では青いユニフォームを着た者たちが、一人天に拳を入れようとガッツポーズしていた同じ服を着ている者に飛びかかって、頭をくしゃくしゃにするように押しつぶしていく。何人もが彼の上に乗っかって、あんな事をされたら潰れてしまうのではないかと心配になるが、やがてその激励が終わってから下敷きとなっていた彼がカメラに見せたのは、飛びきりの笑顔だった。丁度閉じた漫画の主人公も同じような事をして人の下敷きになっていて、まるで漫画とテレビの画面がシンクロしていたかのような錯覚すら覚える。

 

 画面の中では再び始まった試合が動いていて、それをぼーっと眺めていると同じ病室の者たちはやんやと画面越しに応援していて、まるでこの部屋と試合会場とが一体化しているかのような感覚に包まれる。U-15日本サウスアメリカ交流カップの決勝戦がそこでは行われていて、試合観戦を始めてから1時間近くが経過した今、後半には既に突入していて残り時間は無し。ロスタイムが僅かに2分あるだけで、先ほど得点した青のユニフォームのチームは未だ1点のビハインドを許しているままだ。

 カナリア色のユニフォームの彼らは青いユニフォームを着ている少年たちを身体能力で全く寄せ付けず、フィジカルでの当たりにしても、パスのスピードにしても、ドリブルの速度やキレでも、個人のレベルが段違いだというのは画面越しにもよく分かる。ましてや、こうしてテレビに移されている青い選手たちはそれを間近で体験しているのだからよほど堪えているだろう。

 そんな事を証明するかのようにドリブル突破をしようとしていたカナリア色のユニフォームの選手にすがるように身体をぶつけている青のユニフォームの選手は苦しそうな顔をしていて、パスが出されたところで眉をひそめる。

 

『ああ~~っと逢沢だ! 日本の10番逢沢傑!! 一瞬のスキをついてパスカットぉ~~~!!』

 

 そしてそのパスを読んでいたかのように10番の選手はカナリア色に繋がっていたパスに、青いマーカーを入れるかのようにしてピッチに描かれたキャンバスに筆を走らせる。

 そのまま青い線を伸ばすようにドリブルを初めて、瞬時にトップスピードに乗った事で一人を完全に抜き去って、そして僅かなフェイントを入れてそのまま2人目も置き去りにする。観客の興奮も増して、実況はそれに呼応するかのように自然と声が大きくなっていき、そしてこの病室でもそれに釣られたのか、彼を応援する声のボリュームが大きくなる。

 三人目に寄せられたところで彼は数十メートルはあろうかという距離を、一瞬にしてパスでゼロにして、味方にボールを回す。

 DFの裏に出されたその魔法の様なスルーパスはピッタリと味方の足元に収まって、9番の選手はそれをそのままワントラップでシュートに持ち込んで、コーナーに蹴られたその球はキーパーに惜しくも弾かれて、嘆息が観客の声となったかのように、みなが同時に息をつく。そしてそのまま弾かれたボールはDFが大きくエリア外へとクリアした事で、病室の者たちが発声練習の様に大声を出す。

 だが、それを読んでいたのか青い10番の足もとにルーズボールは吸い込まれるように入って行き、10番の左足が迷うことなく振り抜かれて、ボールはネットへと突き刺さる。まるでそこが定位置であるかのようにボールは三度ほどバウンドしてから、コロコロと転がると同時に観客も実況も、悲鳴のような声を上げてゴールが決まった事を喜ぶ。

 

『な、なんとU-15日本代表、ジュニアユースチャンピオンブラジルを相手にロスタイム終了間際に再び同点に追いついたーーっ! これを放ったのはもちろんこの人!! U-15代表、押しも押されもしない不動のエース。MFゼッケン10番! 逢沢傑――っ!!』

 

 興奮は恐らく、直にその目でゴールの決まった瞬間を見ていた会場よりも、この病室の方が高かっただろうと思えるほどに、ゴールの決まった瞬間に病室に居た者たちは悲鳴のような叫び声をあげる。そのままうるさくしていたからか、当たり前のように看護師さんがうるさいと注意しに来て、そしてその直後に試合が終了した事で彼らはまた我がことのように騒ぎ始めて、それを見た看護師さんはまるで仕方がないと諦めたかのように苦笑して、ほどほどにしなさいと注意してから出て行く。

 実況は王者ブラジルを相手に引き分けたことで、まるでそれが勝ち星だったかのような言い草で今の試合を振り返って、青いユニフォームを着て汗を拭っている彼らの事を讃え始める。観客もそれは同じようで、スタンディングオベーションをしている様がカメラ越しにしっかりとテレビに映っている。そして最後に満足そうに肩を叩き合っている選手の姿が映されて、花が咲いた様な笑顔が映った最後に、10番の選手の泣き顔を見せまいと上を向いている姿が映し出されて、大歓声を上げていた病室は観客席とは対照的に静まる。

 

「……何泣いてんだよアホ。大健闘じゃないか」

 

 届かないと分かっている彼に対しての言葉は、病室が先ほどの喧騒を幻想だったと思わせるほどの静けさだった事で、壁に吸い込まれるかのように溶けて行く。

 それを合図にしたかのように、テレビの前に群がっていた者たちが、こちらを覗うようにして振り返ってきたので、思わず苦笑いを返してしまう。たぶん、上手く笑えていないだろうなと思いつつも一回だけ笑ってみてから、先ほど閉じたページを開いて顔の上に乗せて、彼らに自分の顔が見られないようにする。

 静かな病室の中ではテレビの音だけがやけにこだましていて、思わず全員が声を出そうともしない雰囲気を作ってしまったのは間違いなく俺だ。

 

「くそ……試合出たかったなぁ」

 

 そんな呟きにも、誰も答えてくれる事は無い。

 かつて付けていた青い10番のユニフォームを、今は唯一ライバルと認めた傑が着ている。神の子とまで呼ばれたのはついぞ三年前の話しで、今はこうして病室から同年代の試合中継をテレビ越しに眺めることしかできない。

 U-12の試合途中で倒れてから救急車で病院に運ばれて、精密検査を経てから目が覚めた翌日に医者から告げられたのは、突発性拡張型心筋症という訳の分からない病気。有効な治療薬は無く、心筋の病気であるが為に心臓に負担のかかる運動は今後二度と出来ないと言われて。何を言っているのか分からなくて医者を目の前にして喚き散らして部屋をぐちゃぐちゃにして、もうどうしようもないのだと告げられて目の前が真っ暗になったあの日が、ついぞ昨日のことのように思い出される。

 

 そして明日が運命の手術日で、待ちに待った心臓移植手術の日だ。

 もうそれでしか命が助かる保証はなくて、その手術が上手く行けばまだ運動の出来る可能性が少しばかりあるかもしれないと言われ。そして、成功率の低いその手術に挑むべきかどうか迷っていたところで、傑が今日の試合に勝つからお前も明日の手術頑張ってまたピッチに戻って来いと言ってくれて。

 だけど、現実は小説やドラマの様に上手く出来てはいない。

 こうして傑は約束を果たせなかった事で泣いていて、一瞬だけそれがテレビに映った事でこの病室でした約束を皆思いだして、何も言えなくなっている。

 

 嫌が応にも、次は俺の番だ。

 明日の手術が成功すれば、またボールを蹴ってピッチを走る事が出来るかもしれないのだ。

 だから、今日の結果は抜きにして明日の為にももう寝なければ。

 いずれは傑と同じピッチに立つ事を願って。

 

 そして、次の日の手術で俺は還らぬ人となった。

 




名前すら出てこない病室の住人と主人公。
とりあえずタグは付けていないけど、個人的に習作のつもりでもあるので、ある程度キンクリして高校生編まで突っ切っちゃおうというつもり。
ヒロインを出してからラブコメが書きたい。
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