プロローグ
「あっあっあっ…!頼むからお母さん早く服選んでよ!間に合わないから!」
「うるさいわねぇ。あら、やっぱりこれもいいわね〜」
「あ゛ぁ゛〜!」
私はかなり焦っていた。この後萌え声主「おりん」の配信予告時間が迫っている。なのに母が中々服を選び終えない。
私、織田 志乃(おりた しの)は、日々「おりん」の配信を糧として毎日生きている。あれ無しでは全くやる気がでない。
「ん〜…これにしようかしら」
「うん、わかったから早く!」
私は母を急かす。迷い始めてから30分が経とうとしている。時間かからないと言われたから付き合っているのに、こんなにも時間を取られるとは思わなかった。
母がようやく服を選び終えた。私は早くしたいので親が持っているかごを奪い取り、レジに向かう。
「あ、これもいいわね〜」
「はぁ?」
レジに向かう途中、母が再び足を止めて並べられている服をまじまじと見る。折角自分でかごを持ったのにまるで意味がない。
「ほら、次来たときに買えばいいでしょ!」
私は母の腕を引っ張ってレジに向かう。これじゃどっちが母親かわからなくなってくる。
レジにはそこそこの列が出来上がっていた。私はイライラしながら順番が来るのを待つ。
ポケットからスマホを取り出し、時間を見る。今の時間は19:40。大体ここから車で10分程度なので、ギリギリ間に合いそうだ。
前の人が列からいなくなり、ようやく私達の順番が来た。私はかごをレジに差し出し、店員さんが次々とバーコードを読み込んでいく。バーコードを読み込むたびに、どんどん値段が増していく。
店員さんがバーコード母は財布から一万円札を取り出して払う。店員からおつりを受け取ると、私は母の買った服を持ち、足早に店の外に出る。
「早くっ!」
「はいはい、わかったわよ」
♦︎
配信を見終えて寝た次の日。私は少し遅めに起き上がり、服を着替え始める。私は私立リディアン音楽院高等科に進学した。
私は昔から声が可愛いと周りから言われ続けた。中学3年生になってもそれは言われ続けた。だから、この声を大好きな歌に活かしたい。そんな思いから私立リディアン音楽院高等科に進学した。
私は自分の部屋を出て扉の鍵を閉める。親には絶対に開けられたくないので、自分の部屋の鍵だけは自分で管理している。
「お母さん、おはよう」
「おはよ〜志乃」
テーブルには既に2人分の朝ご飯が置かれていた。
我が家は母子家庭の2人ぐらいだ。私がまだ幼い頃、母は浮気されていた上に、DV夫だったらしく離婚したらしい。
父親がいないことに、私は何も思っていない。今一番重要なのはおりんだ。それ以外の何者でもない。
「いただきます」
私は椅子に座って朝ご飯を食べ始める。母はその間に私のお弁当を作ってくれている。母が朝ご飯を食べるのは私が行った後だ。
私は早めに朝ご飯を食べ終え、洗面所に食器を片付ける。
部屋を出るときに一緒に持ってきた自分のバッグを手に持ち、玄関に向かう。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけるのよ〜」
私は母の声を軽く受け流しながら、私は外に出た。
私は学校の授業中、母が死亡したことを知らされた