暗い。何もなくて真っ暗な場所で、私は縮こまっていた。
もう何日経つかわからない。ここにはおりんの配信だってないし、レーヴァテインも、呼んでも来てくれない。
「レ……ァ…イン……」
私は自分が最も頼りにしている聖遺物であり、「私」であるレーヴァテインを呼ぶ。もう3桁は彼女のことを読んだはずだ。けれど、レーヴァテインは来てくれない。
「────!」
「ッ!?レーヴァ…テイン…?」
小さく自分の名を呼ぶレーヴァテインの声が聞こえ、私は立ち上がって周りを見渡す。しかし、視界は真っ暗な暗闇。私以外に、何も見えない。
「…気のせい…か…」
私はその場に縮こまる。。もう生きていても楽しくない。レーヴァテインが、おりんがないこの今の時間は、本当にからっぽで、色がない。
「────!」
「………………」
再びレーヴァテインの声がどこかから聞こえる。さっきよりも大きな声。
けど、今度は立ち上がらずに、その場に縮こまったままだった。どうせ、気のせい。
「────!」
「………………」
また、レーヴァテインの声が聞こえる。さっきよりも更に声が大きい。
もしかしたら、近づいてきている?もしそうなら、レーヴァテインと会うことができる?
淡い希望を一瞬抱くが、変に希望を抱いて後悔するなら、と思い希望をねじ伏せる。
「────!」
「………………ッ!」
再びレーヴァテインの声。更に声が大きく明瞭になる。もうこの気持ちは抑えられない。
会いたい、レーヴァテインに、私は会いたい。
「────!」
「レェェェヴァテイィィィィンッ!!」
瞬間、真っ暗だった空間が眩しいぐらいに真っ白な空間に変わる。
後ろから足音が聞こえる。私は泣きそうになるのを堪えながら後ろを振り向く。そこには、シンフォギア「レーヴァテイン」を纏った少し幼い私、レーヴァテインが走ってきていた。
「志乃ーーーッ!」
レーヴァテインは私に飛びつく。私に飛びつくと同時に、私のことを強く抱きしめてきたので、私もレーヴァテインのことを抱きしめ返す。
「ねぇ志乃」
「…なに?」
「私を手離さないで」
そのお願いは、レーヴァテインが初めて私に言ったことだった。私はもちろん、こう答える。
「手離さないよ」
そう言ってレーヴァテインを強く抱きしめる。
次の瞬間、真っ白な空間が、消えていった。
♦︎
「…………ん…んん…?」
私はゆっくりと目を開けた。目に入ったのは白い天井。ここは…病院?
次に自分の状況を確認する。横には電子モニターが設置されていて、点滴をされていた。
すると、病室(?)の中に看護師さんが入ってくる。
「あっ!め、目を覚ましたんですか!?先生ー!!織田さんが目を覚ましましたー!!」
看護師さんは慌てながら病室を出て行ってしまった。頼むから静かにしてクレメンス…。なんか動きにくいの、多分筋力落ちた?
ゆっくりと上体を起こす。すると、近くにシンフォギア「レーヴァテイン」のペンダントが置かれていた。
私はそれを手に取る。すると、いきなりベッドの隣にレーヴァテインが現れる。
現れたレーヴァテインは今までとは少し違う。今までは半透明だったその姿は、くっきりと見えている。
レーヴァテインは私の頭を撫でる。今まではぼんやりとした感覚だったが、本当に頭を撫でられている感覚が伝わる。
レーヴァテインの手を握る。本物の人みたいに、暖かくて、柔らかい手だった?
「れ、レーヴァテイン、ど、どういうこと?」
「志乃ちゃんのわかりやすいように言うとね、仮面ラ○ダーエグ○イドのパ○ドみたいな感じ」
「非常によく理解した。というかなんでそれ知ってるの…」
私はゲーム病か?レーヴァテインは私に取り憑いてるわけじゃないでしょ……。
「というかそれなら…」
私はレーヴァテインの服装に目を向ける。レーヴァテインの服装は、シンフォギア「レーヴァテイン」そのもの。レーヴァテインの説明そのものなら、レーヴァテインは日常生活を送ることになるのでは?
「え、えっと…レーヴァテインはどうするの?」
「うーん…志乃ちゃんと一緒!……ダメ?」
「わかった許す。だから今だけはよくわかんないけど多分リディアンの制服あるからそれに着替えて!」
「はーい」
レーヴァテインが返事する。次の瞬間レーヴァテインが身に纏っていたシンフォギア「レーヴァテイン」が消え、真っ裸のレーヴァテインがそこに立っていた。
「早くッ!服着てッ!」
「?」
レーヴァテインは不思議そうな顔をしながら病室の箪笥を一つ一つ探し始める。すると、箪笥の中からリディアンの制服と、私の下着を取り出す。頼むから早く着たください恥ずかしくてまたベッドで寝ちゃいます。
着替え終わったレーヴァテインは、正直滅茶苦茶可愛かった。私よりも小さいので、服が少し大きいけど、これはこれで可愛いから許す。
「えへへ〜♪可愛いでしょ〜♪」
「自分で言うの…?まあ可愛い」
「志乃ちゃん鼻血ッ!」
「ふぇ?」
意識を鼻に向けると、何かが流れてるのを感じる。
鼻をつまんで鼻血を止めつつ、レーヴァテインから渡されたティッシュを受け取る。ありがたひ。
♦︎
「自由だーッ!」
目を覚ましてから約一ヶ月、私は退院した。
色んな人が私に会いに来てくれた。加賀美さんに司令に立花さん。それに翼さん。翼さんが来るたびに騒然とするのやめてください数回は気絶して病院が更に騒がしくなるから!
レーヴァテインについてのことは、二課内の機密事項の一つになった。つまりレーヴァテインを出せるのは誰もいない病室ぐらいだった。正直そんなタイミングが少ないので悲C。勿論配信は欠かさず見てる。まあ大体夜遅くなんでコソコソイヤホンつけて見てます。
退院したてで多少はリハビリしてたけど、体力更にないです…。家までが遠い。愛しのパソコン…。
「志乃ちゃん大丈夫?」
「だいじょ…だ、だいじょばない」
「あともうちょっとだから頑張れー」
「うん、頑張る」
私はレーヴァテインに応援されながら歩く。レーヴァテインがバテるの見たことないんだけど…?一応私の小さい頃の姿…なんだよね?リディアンの制服だけど。
歩き始めて十数分、ようやく我が家に到着する。鍵を開けて中に入ると、靴を脱いで急いで自分の部屋に戻る。
「じゃあレーヴァテイン、配信の時間になったら起こして!」
「えっ?病院でたくさん寝たのにまた寝るの?」
「そそ、じゃあね〜」
「む〜…夢の中に潜り込むもんね〜だ!」
私は我が家のベッドで寝始めた。
♦︎
『はーい、あらぁ~わかっちゃったぁ』
なぜそんな櫻井口調に…。というかおりん過去何回わかったといってわかってないことがあったか…。
コメ欄は「うそつけ、絶対分かってないゾ」「わかった(わかってない)」「おりんに謎掛けをやらせるな」とおりんの発言を否定するコメントがたくさん流れる。
『はぁ!?なんでダメなんで……ああそういう事~完全に理解しました』
やっとわかったのか…(困惑)私すぐわかったよ…?やはりおりんクオリティ、理解までが長すぎる。
コメ欄も「ダンゴムシ並の知能」「壁にぶつかってようやく曲がる女」「翼さんにやってもらえ」と再び罵倒が飛ぶ。流石ダンゴムシ、容赦がない。
『おりん、そろそろ私が代わるわ』
『えーっ後少しの所でしたのに!』
おりんと変わり、翼さんが操作を変わる。
コメ欄は「やった!翼さん来た!これで勝つる!」「おりんは大人しくしてろ」と歓喜の声が大量に。流石翼さん、ダンゴムシの心を掴む掴む。
『ん?ああ……わかったわ』
流石翼さんマジ文武両道。みんなの憧れの存在だね!まあおりんの配信に来るという割とローカルな存在。
コメ欄からは「わかった(わかってる)」「やっぱり翼さんがナンバーワン」「おりんは歌だけ歌ってろ」「翼さんもゲーム配信やって」と和気藹々としたコメントが。
『いやいや、私の本業は歌手ですから。でもおりんの歌がいいのは同意しますね』
禿同。レーヴァテインだってお歌上手だよ!何回かしか聞いたことないけど…しかも子守唄…。
『私のラジオが……奪われている……これは面倒な事になった……』
おりんは悲しみの声を上げる。まあ、おりんは翼さんなら、とか思ってそうだけど。
コメ欄は「がんばれおりん」「クソザコナメクジ」「人気配信者」とおりんに対する罵倒と励ましのコメントが同時に流れる。ダンゴムシはおりんに辛辣である。
私が戦って奇しくも倒れた事件は、司令からルナアタックと呼ばれる事件として聞いた。そんな事件から結構な時間が経った。
夜空に浮かぶ月は欠け、はるか昔は玉のように美しいと言われていた丸い月はもう見れない。まあ、あまり月に愛着はないけど、日本人としては多少悲しい。
レーヴァテインのことは隠そうとしたけど司令に抗える気がしなくてバラしました。「────だとぉ!?」で笑いそうになるのと同時に緊張による失神直前の状態が合わさって変になりました(その後もちろん気絶)。
お腹に穴が空いた私ですが、なぜか塞がってしまいました。レーヴァテイン曰く、「体を少し乗っ取って自分自身を纏わせた」らしいです。意味がわからない。
というか当たり前かのように人の体乗っ取るのやめてもらえる?多分他のシンフォギアはできないよね?…できないよね?
まあそんなことはどうでもいいとして、レーヴァテインとの入院生活は楽しかったからおっけーです!…まあ、寝てる間にイタズラするのはマジ勘弁…。
『おりん、そろそろ時間よ』
『そうですね、じゃやりますか、アレ』
ついに来た!おりんと翼さんが揃ったときの恒例行事!
コメ欄も「来たのか!」「来た!」「お歌の時間だ!」と喜びの声で溢れかえる。
おりんと翼さんがパート分けした曲を歌ったり、ダンゴムシ達がリクエストした曲を歌ったり。というか、私がリクエストした『Justiφ's』歌ってもらえて嬉しい…。一回どんな曲か聞いてたけど。ごめんね。
配信が終了する。
「楽しかったね!」
「そうだね、じゃあ私は寝るかな〜」
私はレーヴァテインにそう言ってベッドにダイブする。
新しい日常、大切にしなきゃ。
『風峰 虹晴』の名前でTwitter始めました。是非フォローミーです