色々やらかして捕まって、加賀美さんと特別室に放り込まれ一夜を明かした。
そして次の日。私と加賀美さんは拘束具を着せられて、面接室に2人とも並ばせられてる。
目の前にいるのは司令。後ろにいるのは黒服の人2人。
正直言っていいですか?私面接とか受ける前に気絶しますよ?いいの?もうゴールしてもいいよね?ね?
『志乃ちゃん頑張って!』
ペンダントを介してレーヴァテインが私に頑張るよう催促する。よし、なんとか気絶だけはしないように頑張ろう。緊張しないっていうのは無理な話です。
「何故こうして拘束されているかはわかるな」
「……はい」
「はっははっははい」ガタガタ
レーヴァテインに危害を加えられたことで頭がデッドヒートして勝手にシンフォギア纏って飛び出したせいです。
「加賀美くんや織田くんが思っている以上に事態は深刻だ、確かに君達が行った事は「救助活動」であり、最善であったかもしれない。しかし、観客を安心させる為とは言っても名乗ったのは不味かった」
日本政府はシンフォギアについての情報はしたみたいだけど、装者に関しては別だったみたい。
「すみません……」
「すすすすみません」ガタガタ
「確かに大勢の人間を救った事は賞賛されるだろう、現に日本政府に感謝や賞賛の言葉が届いている。だが同時に君達にとって本当にマズい事になった」
うぇ?マズい事?なんだなんだ?
「加賀美詩織が装者である事と同時に配信者「おりん」である事が世間に知られてしまった」
ファッ!?なぜバレた!?
「……情報の出所は翼のファンだ、主要メディアは既にこれをニュースとして取り上げてしまった」
えぇ……。
「コラボラジオよくやってましたからね……声でバレましたか」
「現在、君のチャンネルの登録者数が凄まじい勢いで増えている」
「いっそ殺せ!?」
「そう言うと思って、この拘束をさせて貰った」
声でバレるおりんすこ。まあ多分私もわかると思いますけどね。だってダンゴムシだもの。
私が拘束されている理由ですか?ちょっとレーヴァテイン没収されそうになってからの記憶がないのでよくわかんないです。
にしてもおりん可哀想。私なら死んじゃう。
「いっそ殺してくださいよぉ……」
「更に君達にとって悪いニュースがある」
「まだあるんですかぁ……?」
「わっわ私にもですか……?」ガタガタ
嫌な予感がするぞ。こんなに嫌な予感がしたのは生まれて初めてレベルなんですけど。
「内閣が君『達』に会見配信を求めている」
「アッ…」
気絶してしまいました。
♦︎
「すっすすみません!おおお騒がせしました……」ガタガタ
ほんの少しの間だけだったみたいだから話中断して待っててくれてたみたい。ありがたみ。
「問題ない。……賞賛と感謝と同時に君達の安否を問うコメントが世界中から来ている」
「?なんでですか普通に公表すればいいだけじゃないですか?」
「……つい先程、政府は君『達』を「特異災害対策機動部」の公式広報として使う事を決定した」
「え」
「君達は否応が無く、表に立たなければならなくなったという事だ」
神は言っている。私にここで死ねと。そんなことしたら緊張で昏睡しちゃう〜……。
というかなんで私も!?おりんだけでいいじゃないか!!
「政府の一部では最初から「戦力として使えない」君を「広告」として利用するという声があった、それが今回の件で正体を明かしてしまったが故にその声が再び上がり、高度な政治的判断でそれが採用されてしまった。
織田くんについても、データ上「戦力として使えない」と判断され、加賀美くんと同じく広報として使われることになった。織田くんは広告の裏方、つまり情報統制などを受け持ってもらうが、少しは人の前に立つことも覚悟してもらう。織田くんは、そういうのは得意なんだろ?」
この人は知ってる…!私がおりんを素材にして色々やっちゃってることを…!そんな弱み掴まれたらやるしかないじゃないか…!死ぬ…………。
確かに私は加賀美さんより弱い。弱い(大事なことなので2回言いました)。あーでもこれで更に役立たずな部分が曝け出されちゃうよ〜……。
「で、何時何処でやるんですか、配信」
おりん、結構平気そうだね。私また気絶しそうなのに。
「今日の正午、政府の公式チャンネルでやる事になった、配信機材は既に用意されている所だ」
え、ええ〜……。ちょっと早すぎません?私心の準備ができそうにないんだけど。
「で、何を発信すれば?」
「記者会見の様なモノだ、現在まとめている最中ではあるが、寄せられている質問に答えていく形になる。織田くんは最初の自己紹介だけしてくれたらいい」
「は、はいぃ……」
「他に質問はあるか?無ければ拘束を解いてすぐさま準備に向かってもらう事になるが」
よ、よかった〜…。徐々に慣らさせてくれ徐々に。
は〜……。流石に、私がやらかしたことはかなりダメなことだったことは嫌でも理解させられましたよ。
「他に私への罰は?」
「安心しろそんなものはない、強いて言うならこれから忙しくなる、それだけだ」
…………ん?私がやらかしたことは、こんな程度……程度では許されるはずではないのに。十分キツイけど。キツイけど!
「そんなバカなと思っているだろうが、安心しろ。俺達は何があっても君達を守る、だから君達は安心して配信に臨んでくれ」
ん?んー……んん?
「強いて言うなら「広報」となる事が君達への罰になる、世間からの悪意、他国の思惑、そんなものには君達を巻き込ませてたまるか」
……やっぱり、OTONAは優しいです。変に配慮がいいことが。ね、レーヴァテイン。
「手ひどくやらかしたというのに、私は守ってもらえるんですか?」
「到底許されるべきことではないはずなのに……」
「当然だ」
『頑張らなきゃね!志乃ちゃん!』
……はぁ。レーヴァテインに応援されちゃ、私もやらないわけにはいかないよね。
「わかりました、では……それと最後に」
どうしたおりん?
「なんだね?」
「給料は出ますか」
「当然」
こんなときでもおりんはおりんなんだね。なんだが安心したよ。
♦︎
私はレーヴァテインと一緒におにぎりと緑茶を飲んで加賀美さんと一緒に車に乗り込んでスタジオに向かう。
めちゃくちゃ緊張する。おりんが翼さんとのコラボを生で見たときより緊張してる。
自己紹介が終わったら座っているだけでいいと言われたけど、それでも正直緊張を隠し通すことができるかわからない。
怖い。みんなに見られるのが。それから逃れるために、私はおりんの闇の世界に入ったはずなのに。
『志乃ちゃん大丈夫?』
ペンダントを通してレーヴァテインが私に心配の声をかけてくれる。
そうだ、私には闇の世界以外にも安心できる場所がある。レーヴァテインが手を握ってくれる。
「大丈夫…大丈夫…!」
私は自分に暗示をかける。
私はレーヴァテインを手離さない。だから、レーヴァテインも私のことを手離さないでくれるはずだ。だから、ずっとレーヴァテインが手を握ってくれる。それなら、なんとか耐えられそう。
スタジオに到着し、私と加賀美さんはマイクと、加賀美さんのみ紙を渡されていた。
「もうすぐ開始ですが、大丈夫ですか?」
ごめんなさい正直大丈夫じゃないです。
この人はオペレーターのあおいさん。意外と私とは交流があり、いつもレーヴァテインと楽しそうにしてる。まぢジェラシー。
「大丈夫です、配信は慣れているので」
「だっだだ大丈夫です!」ガタガタ
緊張でヤバい。心臓が破裂しそう。もう無理。
すると、人からは見えない半透明のレーヴァテインが、私の手をギュッと握ってくれた。
途端に私の刺々しい緊張が、柔らかくなった。
「開始2分前!」
今なら大丈夫だ。おりんができるんだ、私だってできる…とは思わないけど、最善を尽くそう。
3…………2…………1…………!
『こんにちは、皆さん。私は特異災害対策機動部に所属するシンフォギア「イカロス」の装者、加賀美詩織と申します』
『同じく特異災害対策機動部に所属するシンフォギア「レーヴァテイン」の装者、織田 志乃と申します』
私は無事に名乗りを言い終えたことに安堵を感じる。同時に気が抜けそうになり意識が飛びそうになるが、気を張り詰めらせてそれを防いだ。
すると、コメントが流れる。コメント欄は「やっぱりおりんだ!」「無事でよかった」「助けてくれてありがとう」「こんな若い子が戦ってるのか」「広報担当じゃないの?」「もう1人の子めっちゃ緊張してる」「ほんとだめっちゃ緊張してる」と流れる。
コメント流れるのかびっくりした。というかそんなに緊張してる!?ほんと!?はぁ〜リラックスリラックス……。
というかここにもダンゴムシが湧いてるな。お前らは石の下で大人しくしてんしゃい(ブーメラン)。
『まず昨日のライブでの事件の報告です。「QUEENS of MUSIC」で突如発生したノイズを利用したテロ、主犯と見られる「武装組織フィーネ」およびマリア・カデンツァヴナ・イヴの身柄はまだ確保できていません』
すると、コメ欄に「取り逃がしたのか」「税金泥棒」「でも死人を出さなかったのは凄いよ」「人質を助ける事を優先してたから仕方ない」「翼さんも無事でよかった」とコメントが流れる。
取り逃がしたのは本当に悔しい。このせいでまたレーヴァテインに危険が及ぶかもしれないし。
しかし感謝されるのは少し変な気持ちになる。私は私情で突っ込んでいっただけなのに。
『またマリア・カデンツァヴナ・イヴが言った「ノイズを操る力」ですが、実在します。同日、ノイズ研究の為に岩国の米軍基地へ護送された「ノイズを制御する道具」が奪われ、基地もまた壊滅しています。政府はこれを武装組織フィーネの仕業と見ています。』
コメ欄に「そんなものがあるのか」「マズくないそれ」「とんでもない事になったな」「いい加減リラックスしろ」とコメントが流れる。
緊張のことは言わないでほんと恥ずかしいし私の性なんだから。
というか本当に不味い。ノイズなんて害悪なやつらが好きに発生するのは不都合しかない。シンフォギアを持つ私でさえ怖いのに、対抗手段を持たない一般人の人達から見たら、かなり怖いだろう。
『現在、国連と協力し、この事件に対応していく事が決定した所で、私からの報告は以上となります。ここからは多く寄せられた3つの質問に関して答えていきます』
コメ欄に「ついに明かされるのか」「おりん……」「これマジ?」「声からしてもう……」とざわつきが見られる。
ついに明かされる真実。私は自然とレーヴァテインの手を握る力が強くなるが、レーヴァテインを心配して意図的に緩める。
『私個人の事になるのですが、私は配信者「おりん」としてネット上で活動していました。これは事実です。昨日の事件の現場にも風鳴翼の一人のファンとして居合わせていました』
コメ欄は「うわああああおりんだぁああ!!!」「おりんはかわいいぞ!!」「翼さんのライブを守ろうとしたのなら泣ける」「本当におりんだった」「おりんの仕事ってこれだったのか……」「ありがとうおりん」と感謝の言葉で溢れかえる。
おりんが感謝されるのは当たり前だと思う。おりんは私と違って咄嗟に行動に出ることができる。おりんはアンチコメが流れないことに少し不思議に思ってるようだが、それは私は当たり前のことだと思う。
「志乃ちゃんもありがとう!」「ありがとう2人とも」「織田さんもありがとう!!」
………………なんで?なんで私に対する感謝もあるの?感謝ならおりんにしてよ。
私はそのコメント達を見て意識がまた飛びそうになるが、必死に堪える。
違う、私はそんな優しくない。しかしコメント欄はおりんに対してだけではなく、私に対しての感謝の言葉も含まれていた。
『次に、装者としての活動ですが。これは今年の4月からです、適性によるスカウトです。本来はデータ取りの為でしたが、緊急時などには対ノイズ戦も経験しています』
コメ欄に「命を大事にして」「あなた達がもっと早く動けば、死なずに済んだ人がいる」「おりんに救われた命があるのか」「ありがとう」「2人ともありがとう!」「ノイズを滅ぼせ」とコメントが流れる。
やはりノイズに対する怒りや、憎しみ、その行き場のない感情を私達にぶつけようとする人達は存在するようだ。
その気持ちは私にはわかる。だって、私だって母さんを殺されたから。
嘘です。そんなに感じてません。母さんを殺されたことは。けど、レーヴァテインを襲おうとしたことは絶対に許さない。
『最後に、今後の「おりん」としての活動ですが……』
加賀美さんが「おりん」としての行動を発表しようとする。
コメント欄は「やめないで」「やめるな」「程々にやれ」と流れる。
……やっぱり、ダンゴムシ達は考えることは一緒だね。
コメント欄に次々と「お前の戦場はネットだぞ」「闇の中で待ってる」「おりんのラジオで救われた人間もいる事を忘れるな」といったコメントが流れる。
私のように、救われた人もいるのか。
コメント欄には更に「自分の清楚さは捨てられる癖に命は見捨てられない女」「暗黒の聖女」「陰キャ救世主伝説」と流れる。
ダンゴムシはダンゴムシだよね。やっぱり、おりんなしでは生きていけないんだよ。
ちらりとおりんの持つカンペを見る。
──この回答は本人の意思を尊重する。
そう書かれていた。
隣に座る加賀美さん、もとい「おりん」は言った。
『……私が望むので、まだしばらくは続けたいと思います』
やっぱり、おりんの配信は私の居場所だね。