「「────♪」」
自室でレーちゃんと2人、歌を歌う。私達の喉からは全く同じ声が発せられ、重なり、部屋の中に響く。
全く同じ声。だけど、私には違いがわかる。ほんの僅かな差だけど、確かに違いはある。
あの後、めちゃくちゃ検査された。体の隅々まで。いやぁ恥ずかしかった。ああいうしっかりしたところでやる検査って緊張して気を失いそうになる…。
まぁこのうら若き2人の乙女の検査をしてもらった。
結果、やっぱり私とレーちゃんは、全く同じ存在になっていた。DNAからアウフヴァッヘン波まで、全く一緒。最早適合率なんてものじゃない。
人でもあり、聖遺物でもある。それが今の私達。レーちゃんは人になって、私は聖遺物になった。
……ぶっちゃけ、自覚は殆どない。
こうなる前から私達は同じ存在だと思って接し続けてきた。だから、これを機に何かが変わるということもなかった。
けど身体の方は違う。確かに変化はあった。レーちゃんと私の見た目が一緒になったり髪が伸びたり。……今更ながら、なんでおりんと司令は私とレーちゃんを見分けれたんだろう?雰囲気が違うのかな?
「「────♪」」
こうして2人で歌っているのも、この変化が関係している。
ただ歌っているわけではない。私達はただ歌っているようにしか思ってないけど。日課だし。
それはさてとき、歌っているのは、フォニックゲインを生み出しているから。こうしていないと、有り体に言えば体調が悪くなる。
メディカルルームにいたら血圧が低下し始めたんだよね。めちゃくちゃ焦って緊張で気絶しました。
直ぐにレーちゃんに叩き起こされて
「志乃ちゃん!歌うよ!」
と突然言われ歌うとあら不思議、機器は静まり体調は良くなりました。司令が駆けつけてきたときは怒られると思って気絶し掛けました。
「「────♪………」」
「ふぅ、楽しかった」
「次志乃ちゃんが男パートね!」
「はーい」
また、レーちゃんと歌を歌い始める。
私達は謹慎を命じられた。謹慎なんて初めてされたせいでびっくりした。T○Cの北○も最初はびっくりしたのかな?そんなぁ(´・ω・`)ってなってたし。
そういえば加賀美さんも謹慎だったっけかな。私はレーちゃんと一緒にいるけど、おりんはどうなんだろう?
「あ、志乃ちゃん。おりんが配信しているよ」
「えっマジ!?ゲリラとかsyれにならんでしょ…」
急いでパソコンの前に座る。そういえば椅子をもう一つ買ったよ。今まで私の膝の上に座らせてたけど出来なくなっちゃったから。……うぅ、膝の上が涼しい……。
『はぁい、ゲーム配信です。ゲリラです』
「告知しないなんて珍しい!」
「うわ!おりんだ!」
「しばらくぶりのおりんだ!」
「大丈夫?」
うわ、平日の昼間なのに結構ダンゴムシがワラワラと……。
確かに久しぶりの配信だ。配信ないからずっとアーカイブウロウロしてたから気づくのが遅れちゃった。
『今日はストライクファイターのネット対戦やります、パスはかけません、好きにどうぞ』
ストライクファイター…ストファイ、世界的に有名な格ゲーだね。海外の大会もかなり盛り上がってるし。
「レーちゃんやる?」
「んー…後で入ろうかな」
『じゃあキャラはザンで行きます』
そう言って部屋を作る。するとすぐに対戦相手が入ってきた。
『なんで的確にメタりに来るんですか!』
「イキりん失敗」
「おまたせ」
「いつもの」
「20年変わらぬ戦術」
「伝統芸能」
「ノルマ達成」
相手のキャラはガイ。簡単に言うとおりんのザンとの相性は剣と弓矢ぐらい悪い。
『ええい、やってやりますよ。今日の私は阿修羅すら凌駕しますから見ててくださいよ!』
阿修羅とは仏教、インド神話に於ける戦闘神。一説では正義側でもあるらしいが一般的には悪者の認識らしい(雑学)
Ready Fight!の文字と共に対戦が開始される。
なんとしてでも近づいて押し切りたい盤面。近距離に持ち込まなければ話にはならないんだけど……?
『なんでぇ!今技出たじゃん!』
「判定負け」
「やっぱりな(レ)」
「キャラ相性の差は……」
「イキり失敗配信者」
「ク ソ ザ コ プ リ ン」
草。
「なんかいつもより遅いね」
「んー…そうかも。入力がなんか遅いかな?」
『飛び道具やめえや!起き上がりに重ねてくるな!』
「入力遅すぎィ!」
「あっ(察し)」
「そら(起き上がるのが遅いと)そうなるわ」
「ダメみたいですね」
入力遅くて狩られてる…アワレおりんは爆発四散!ラウンドを落としたのだった…。
『ぐっ……ストライクファイターやめてドンパチやります』
「えぇ…(困惑)」
「諦めが肝心」
「格闘で勝てないから射撃で勝とうとする女」
「CPUにしかマウントを取れない女」
そうだね、誰にでも向き不向きはあるもんね!
「…そう、向き不向きは誰にでも…」
「志乃ちゃーん。緊張に弱いのは仕方ないから戻ってきて〜」
『ドンパチ2周目指します』
「果たしてイキれるのかおりん」
「おりんの腕なら二周は出来るでしょう」
「ノーミスで一周はいくと見た」
ドンパチの2週目かぁ…。「死ぬがよい。」されるのが目に見える見える…。
…危ないかな?あ、反応が良くなった。本気出したのかな?
『はい、一周目アイテム取得、1ミスでクリアです』
「イキりん」
「序盤の動きが悪かった様だが」
「慣れてなかったんでしょう」
さてここからが本番…。ドンパチの最新版ってノーミスクリアまだ出てないよね…司令ならクリアできる…?
『え、二周目こんなに弾幕濃いの?』
「即堕ちイキり配信者」
「あっ(察し)」
「これは……ダメみたいですね」
『えっあっあっ……終わった……』
「クソザコナメクジ」
「やっぱりおりん」
「所詮はおりん」
「機械にもマウントを取られる女」
これはしょうがない…うん、しょうがない…。二周目出すのに苦労した記憶が…うごご…。
「志乃ちゃん、私もこれやりたい」
「はいはい、また貸してあげる」
…レーちゃん、天才肌だから簡単に二周目出せるんじゃ…むむむ…。
『じゃあ残った時間、空中散歩と行きましょうか』
は?
「えっ」
「えっ」
「マ!?」
「うせやろ?」
「まさか!」
あー!困りますおりん様こまりますあーっ!
……やったわ。おりん。謹慎中なのに簡単に空を飛んだ…。
普通の人間は空を食べますか?No、飛べません。つまりはギアを使ってるわけで…。
「…同じ広告としてなんか言われたり…しないかなぁ…」
ぽんぽんぺいん。
『そーらはきれいだなー皆さんもそう思いますよね』
「いかんいかん危ない危ない……」
「やばいて!」
「高所はやめてクレメンス…」
「志乃ちゃんって高所大丈夫?」
「あー…画面越しなら大丈夫だよ。まぁ、有事の際は言ってられないけど」
…なんかフラグ建てた気がするけど、まぁ、気にしない方がいいよね。
おりんは画面に向かってピースしたり指さししてりする。どうやってカメラ持ってんだろう?
…あぁ、そういえば、おりんも全身聖遺物なんだっけ。イカロス…蝋でできた偽物の羽…か。じゃあ蝋で何かを作って持ってるのかな。
…おりん、後で始末書書かされたりするのかな…。
「おりん!スカイタワーから煙でてる!」
「マジだ!」
「出番出番!」
「仕事の時間だぞ!」
……え?マジ?
急いで窓を開けてスカイタワーを見る。昼間だから黒い煙がよく目立つ。一目で確認できた。
しかもあれは…ノイズ!
……どうする?行くか?行かないか?The answer is……
「行くよ!レーちゃん!」
「がってんてん!」
レーちゃんと手を繋ぎ、窓から外に飛び出す。そして……
「「────♪」」
聖詠を詠う。2人のフォニックゲインが交わり、溶け、混ざり合う。
姿が、重なり合う。
「…シッ!」
上手く着地した私達は、急いで駆け出した。
元話数27話、「詩織」の心 を2分割でお送りします。
後半はまた今週末に…