IS〔ツイン・ソウルズ〕   作:犬吉

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Side 篠ノ之 箒 【もっと我侭に】

 

織斑一夏が1025号室を出たその日。

 

「言ってしまった……言ってしまった、言ってしまったーっ!!」

盛大に啖呵を切った箒は、同居人のジト目にも気付かずにゴロゴロと転がっていた。

それも一夏のベッドの上で、一夏の使っていたシーツに包まり、一夏の使っていた枕を抱きしめてだ。

「……すっごくウザい」

そりゃあ視線だって、痛々しい物を見るようでも仕方ない事だ。

 

同居人はこのまま箒を簀巻きにして、一夏の部屋に即日宅配でもしてやろうかと思ってしまった。

その際は、ラッピングとメッセージカードも添えてやろう。

カードの内容はこうだ。

 

『私そのものがプレゼントだ。是非、受け取って欲しい』

 

――うん。考えただけでウザったい。そして凄く痛い。

でも、今の箒の状態ならば「それをやれ」と言ったら、やってしまうのではないかという期待もある。

それはそれで有りかも知れないが、もし受取拒否されたら、この子はその場で切腹でもするんじゃないだろうか。

それに一時の好奇心で箒の、これから先の学園生活を壊すのも忍びないと、彼女は考えを改めた。

 

(そういうのはちゃんと、付き合うようになってからやらせよう)

 

訂正。大概こいつも酷いヤツのようだ。

「でもさ、後の問題は優勝できるかよね……自信あるの?」

ピタリと、ゴロゴロ虫が動きを止める。

「………するのだ!!」

ガバッ! と、箒が跳ね起きる。

ゴロゴロ虫は雪ん子状態で、ググッと拳を握り固める。

「何がなんでも優勝して………そして一夏と、つ……つつつつつつ〜〜〜〜〜っ!!」

顔がこれでもかという程に真っ赤になり、そして――――。

 

バッタリ。

 

「あ〜あ、思考回路が焼き切れちゃった……じゃ、お休み〜」

 

 

1025号室、消灯。

 

 

 

 

時刻は12時を周り、翌日へと変わっていた。箒は未だに、ドキドキと不安で眠りに着けないでいた。

隣からはスヤスヤという寝息が立っている。もの凄く恨めしい。

とにかく眼を閉じて、体を横たえておくだけでも休めると、箒は布団を被った。

その甲斐あってか、徐々に眠気が箒の中で膨らみ始めた。

 

 

♬〜♪♫〜〜♪

 

 

「っ……!?」

いきなり鳴り響いた電子音に、箒の意識が覚醒した。苦々しく、音源である携帯電話をわし掴みにする。

一体誰だと画面を見ると『着信 非通知』と書かれてある。

 

間違い電話か、いたずら電話か。どちらにせよ、この恨みどうしてくれようか。

取り敢えずは文句の一つでも言ってやらねばと、箒は通話ボタンを押した。

「―――お前は誰だ?」

『……もしかして、寝ていたの?』

「これからそうなる所だったものを、この電話のせいで邪魔された……」

不機嫌さを、隠しもせずに吐き出してやる。

『あ〜、それはゴメン。じゃあ、かけ直すね……』

「その前に、自分の名前も名乗らないのか貴様は? 何処の誰かは知らないが、いささか無礼だろう?」

箒は低く、ドスを利かせた声で相手に言ってやる。

『…………あっ』

すると、まるで「ポンッ」と手を打ったかのような短い返事が返ってきた。

『えっと、六年ぶりだね……ほーちゃん?』

「―――ッ!?」

箒は驚き、息を呑んだ。

自分をほーちゃんと呼ぶのは、世界でただ一人。

何度直せと言っても絶対に止めない。変なところで意地を張られ、結局は箒が折れてしまった。

今は病床の床にあり、政府の保護下にあるという、篠ノ之箒のもう一人の幼馴染。

「は、春斗……なのか?」

『久しぶり、やっと……話せた』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

春斗は一夏と代わってもらい、白式のプライベートチャンネルと、自身の端末をリンクさせるプログラムを作っていた。

 

その実験も兼ねて通信を行った相手は――― 箒。

携帯の番号は一夏のアドレスに登録されてあったので、問題なく掛けることが出来た。

何故、箒を選んだかといえば、純粋に彼女と話をしたかったからだ。

 

 

しばらくのコールの後、電話が繋がった。

『―――お前は誰だ?』

開口一番。ご機嫌斜めな響きである。

「………もしかして、寝ていたの?」

『これからそうなる所だったものを、この電話のせいで邪魔された……』

「あ〜、それはゴメン。じゃあ、かけ直すね……」

やはり、日が変わってから掛けたのは不味かったと、春斗は通話を切ろうとした。がそれを止める箒の一声。

『その前に、自分の名前も名乗らないのか貴様は? 何処の誰かは知らないが、いささか無礼だろう?』

「……………あっ」

不機嫌さを更に増した、本気で怒っている声。

春斗は、自分が箒と話すのは初めてだったと、ようやく思い出した。

 

何せ、一夏と共にいつも一緒にいたもので、その辺りがすっかり抜け落ちていたのだ。

 

「えっと、六年ぶりだね……ほーちゃん?」

そう再会の言葉を告げると、電話の向こうで息を呑むのが分かった。

『は、春斗……なのか?』

「久しぶり、やっと……話せた」

ようやく、春斗は箒と六年ぶりの邂逅を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

箒は部屋では同居人を起こしてしまうと、一先ず談話室に移動した。

この時間になれば、部屋の外にいる者はまずいない。

その例外なく、談話室も箒以外の人気は無かった。

 

「ところで大丈夫なのか? 政府の保護下にあると聞いていたが……?」

『まぁね。取り敢えず、これは抜け道を使っているんだ』

「抜け道……?」

聞き慣れない言葉に首を傾げる。電話に抜け道などあるのだろうか。

 

『政府の秘匿回線』

「ブッ―――!!」

思わず噴いてしまった。

 

 

普通なら出来る筈もない事だが、春斗ならばそれぐらい簡単にやってしまえると、箒は知っている。

「そ、そうか……だが、あれだ。余り無茶はするなよ?」

その道の先にあるのはきっと、あのとんでもない姉の影だ。春斗までそうなった日には、もう世界に絶望するしかない。

『ほーちゃんこそ、結構無茶したって聞いたよ?』

「私が無茶をした……?」

どういう事だろうかと尋ねると、春斗は事も無げに言った。

『今度やる学年別トーナメントで優勝したら、一夏と交際するんでしょ?』

「ブフゥッ―――!!」

盛大に噴いた。

「なななななな………何故、そんな事をしし……知っていいいいい……!?、」

動揺し過ぎて、呂律がかなり怪しくなってしまった。

『一夏に、さっき質問されたんだよ。「箒に付き合ってくれって言われたんだけど……何処に付き合えばいいんだろう?」って』

「……………………何?」

何か今、とても聞き捨てならない言葉を耳にしたような気がした。

『どうやら一夏は、あれが告白だって気付いてなかったみたいだよ?』

「そ、そんなバカな……っ!! あれをどう聞けば、そうなるのだ……!?」

『一夏の恋愛思考回路を真面目に考えるのは、どこまでも無駄な労力だと思うよ?』

「……あぁ、分かっている。あいつはそういう男だと分かっているさ………だが、余りにもベタ過ぎる反応ではないかっ!!」

『そのベタでさえ、理解していないのがある意味、一夏の凄いところだけどね。そんな相手を好きになったんだから、仕方ないんじゃない?』

「ぬうぅぅぅ……っ」

言われればその通りなのだが、だからといって納得できない。

 

『でもまぁ、ほーちゃんが勇気を出して一歩を踏み出したのは……凄い事だよ?』

「そ、そうだろうか……?」

『うん。だから僕も………一歩だけ、踏み出そうって思うんだ』

「……?」

天才。努力家。一夏と違い、相手の心をしっかりと理解できる。そんな春斗が、何に勇気を出すというのか。

 

箒は続きの言葉を待った。

『ほーちゃん……ううん、篠ノ之 箒さん』

「何だ、改まって……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕は………貴方の事が好きです。友人としてじゃなく、幼馴染としてでもない。一人の女性として……貴女が、好きです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

『……あの、ほーちゃん?』

箒は完全にフリーズしていた。

 

思考停止を起こした箒ブレインが、徐々に再起動していく。

 

 

―今、何を言われた?

 

――好きと言われなかったか?

 

―――好きとはあれか、友人としてか? あ、幼馴染としてか?

 

――――いや、一人の女性としてと言われたぞ?

 

―――――つまりはどういう事だ?

 

 

――――――つまり今、自分は告白をされたのではないか?

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?!?!?!」

復活した思考が答えを導き出した瞬間、箒は声にならない声を上げた。

顔が真っ赤になり、心臓が急速に早打って苦しくなる。喉がカラカラに渇き、酸素を欲して呼吸が荒くなる。

 

『あの、取り敢えず落ち着いて!?』

「こここここ……これがおち、落ち着いてててて………!?」

『ま、まずは深呼吸しよう!? ほら大きく息を吸って!』

「ははああああああああ〜〜〜ぁあ〜〜っ!?」

『ほーちゃん、ちゃんと息をしてーーーーーっ!?』

 

 

 

 

 

数分近い時間を置いて、箒はどうにかこうにか、会話可能レベルまで落ち着いた。

平常時に比べれば、遥かに動揺しているが。

何せ、自分が誰かを想っている自覚はあっても、誰かに想われているなど夢にさえ思わなかったのだ。それは仕方のない事だ。

『えっと、大丈夫……?』

「……だ、大丈夫だ」

電話を両手で持ち、震えそうな体を必死に抑えながら、どうにか言葉を発する。

「それで……その………あれだ……あの」

『……何時からって事?』

コクンと頷いて答える。電話越しでは見えないが、春斗はその”間”を理解したらしく言葉を続けた。

『そうだね……多分、初めて一夏と剣道場に行った時、かな? 最初見た時、髪の長い綺麗な子だなって思った……あの時からだと思う』

「っ………!?」

それはつまり、箒が一夏を好きになるずっと前の事だ。そんな前から春斗は―――と、そこに至った時、箒はハッとした。

 

 

自分は、自分の事を好きな相手に、自分の恋の相談をずっとしていたのだ。

 

 

もしも箒が、一夏にそんな事を相談されたらどう思うだろうか。

耐えられるだろうか。答えられるだろうか。悩む相手を励ませるだろうか。

 

無理だ。そんな残酷な事、耐えられる筈がない。きっと心が痛くて、苦しくて、逃げ出してしまうだろう。

 

 

 

「………ごめんなさい」

『ほーちゃん……?』

そんな酷い事を、自分はずっと春斗にしてきたのだ。

彼の優しさに甘え、その言葉に勇気を貰い、慰められてきた。

「私は……最低な女だ。知らなかったとはいえ、ずっと……春斗を傷つけてきた」

ポロポロと、涙が溢れる。

「知らなかった……春斗の心なんて考えてもいなかった………そんな風に……!」

言葉が、嗚咽に途切れていく。

 

『謝ることはないよ。言葉にして伝えなきゃ、誰だって相手の気持は分からないもの。僕の方こそごめんね』

「どうして……春斗が謝るんだ?」

『本当は、ずっと言う気はなかったんだ。でもね、ほーちゃんが一夏に告白したって知って、言いたくなったんだ。このまま、伝えないままでいたくなかった』

「………ごめん。私は……それには……応えられない」

押し出すように、箒はそれを吐き出した。

嬉しくなかったかと聞かれれば違うと答えられる。でも、ダメなのだ。

「私は……一夏が………好きだから」

残酷でも、酷い言葉でも、嘘は吐けない。それは、勇気を出して想いを伝えてくれた春斗に対して出来る、唯一の誠意なのだから。

 

 

 

『………ありがとう』

「っ……!? どうして……?」

『誤魔化さないで、ちゃんと向き合って……答えてくれたから。だから、ありがとう』

「ッ……!!」

『――さて、この話はここまでにしよう? 本当は別の話をしたかったんだ』

「な、なんだ……?」

『ほーちゃん、トーナメントで優勝する自信……ある?』

「………難しいとは思う。だが、可能性はゼロじゃあない」

箒は一夏との特訓で、ずっとISを動かしていた。他の一年よりも多少はリードしていると言える。

だが、専用機持ちとの戦いはかなり厳しいものになる筈だ。ここは最早、クジ運に賭けるしかない。

一年で専用機持ちは四名。それらが潰し合えば、可能性はある。

 

 

『――じゃあ、ほーちゃんが優勝できる可能性が上がるように、贈り物をするよ』

「な――っ!? どうして……!?」

『どうしてって……何が?』

「私は……その、お前の事を……振った……んだぞ?」

それを改めて口にすると、良心がとても痛んだ。

 

『僕が振られた事と、ほーちゃんを応援する事とは、何の関係もないよ?』

「そんな訳……!」

『僕は僕の我侭で、ほーちゃんに告白しただけ。だから……関係はないよ?』

「………」

『だから、ほーちゃんも……もっと我侭でいいと思うよ? 自分に素直って、そういう事だもの』

「………」

どうして。何でそんな事を言えるんだ。言った自分はこんなにも苦しいのに、言われた春斗がそんな軽い筈がないのに。

『それに約束したしね。「ほーちゃんの恋を応援する」って……』

「あっ……」

 

 

 

 

『そっか。ほーちゃん、やっぱり一夏のことが好きなんだ』

『うぅ、あらためて口にするな!!』

『ごめんごめん。でも、大丈夫だよ。僕が応援するから』

『……本当に?』

『うん! 約束するよ……ゆびきり、してもいいよ?』

 

 

 

 

「あんな……あんな約束で、お前は……?」

『……まぁ、ね。でも、僕にもそれなりにメリットがある訳だし』

「メリット……?」

『こうやって告白したから、これからほーちゃんは僕の事を意識してくれるだろうし……』

「なっ……!?」

『そもそも優勝したとしても付き合えるかどうかは分かんないし、振られる可能性だってゼロじゃないでしょ?』

「うぅっ……」

『そうなると、僕にもまだまだチャンスがあると思うんだよね。ほら、メリットいっぱいだよ?』

「お前は……そんな打算を含んでいたのか!?」

『もちろん。当然でしょ?』

「春斗……そういう事を口にしたら意味が無いだろう?」

『あっ、しまった……』

下手なウソを吐いていると、箒にはすぐに分かった。

春斗はそんな打算で動きはしない。そんな相手なら、こんなに苦しんだりしない。

全部でないにしても、これは春斗なりの優しさなのだ。

 

『えっと、じゃあそろそろ時間もあれなんで……切るね?』

「そうか。もう遅い時間だしな」

『あ、最後にもう一つだけ………全国大会優勝おめでとう、ほーちゃん』

「ありがとう、春斗。素敵なプレゼント、ちゃんと受け取ったぞ」

『………うん。じゃあ、お休み。また掛けるよ』

「また、秘匿回線からか?」

『当然』

「そうか……じゃあ、お休みなさい」

「ブツッ」という切断音がして、電話は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

『一夏、もういいよ……ありがとう』

「ん? 分かった……で、実験は上手く行ったのか?」

『―――滞り無くね』

「そっか。じゃあ、上がるぞ?」

春斗の意識が深層域に沈み、一夏が浮上する。

「……ん?」

と、両目に痛みと違和感。何だろうかと指で触れると、表面が湿っていた。

「………泣いてたのか、春斗?」

何故。どうして春斗は泣いていたのか。一夏にはその理由が、全く分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

箒と春斗の告白から数日。

ある、とんでもない噂に箒が愕然とし、青空に向かってこの世の理不尽を訴えていると、呼び出しが掛かった。

 

やって来たのは打鉄の保管庫。

打鉄やラファールという練習機にも、待機形態は存在する。が、これらには盗難防止の為にそのプログラムをロックしている。

なので、ISはそのままの姿でそこに置かれている。

 

「来たか、篠ノ之」

「なんでしょうか、織斑先生」

箒は呼び出した担任――千冬にその理由を尋ねた。

「実は今度のトーナメントでは一機、大会用の特別なプログラムを試験的に組み込む事になった。その機体をお前に使ってもらいたい」

「何故、私が……?」

「これは打鉄用の、純粋に機体の反応速度を向上させる為のプログラムだ。だが、あくまでも試験品。ある程度使える人間でないとテストにならんのだ」

「私よりも、適任は多いと思うのですが?」

「いや、大会優勝も果たしたお前だからこそ、その動きをしっかりトレースできるかどうかが重要なのだ」

つまりは箒の――全国覇者の動きを完全にトレースできるなら、問題はないという事のようだ。

 

「それに、これは製作者自らの指名だ。断る権利はないぞ?」

「指名ですか?」

「そうだ。取り敢えずは装着してみろ」

「………」

怪訝な面持ちのまま、箒は打鉄を装着する。と、その変化はすぐに分かった。

「これは……っ!?」

違う。一体感がまるで違う。

今まで使っていたからこそ、この違いが分かる。

専用機と違い、練習機には汎用性が求められる為、細かいリンクにズレが生まれる。

だが、これにはそれが無い。こんな物を作れる人間が居る事にも驚きだ。

 

(これを作れる人間……!?)

 

箒はハッとした。自分を指名するということは、当然知り合いである可能性がある。

 

箒の知る限りでは思い当たるのは二人。だが一人はこんなプログラムを作るぐらいなら、IS自体を作ってしまう人だ。

ならば、答えはひとりだけ。

 

「先生、これはもしかして……春斗の作ったプログラムですか?」

「………そうだ。プログラム名は【真打】。それをインストールしたそれは【真打鉄(まことのうちがね)】という」

「真打鉄……!」

これが、春斗の応援。まさかこんなものを贈られるとは思わず、箒はただただ驚いた。

「それと、春斗からのメッセージだ」

千冬が一枚のメッセージカードを箒に渡す。

箒はすぐにそれを開いた。そこには短く、こう書いてあった。

 

『これが、あなたの想いを通す一助とならん事を』

 

「………バカ」

箒はカードをそっと仕舞った。

こんな物を贈られたら、優勝するしか無いではないか。

 

「なろう、もっと我侭に……!私は優勝するぞ、春斗……!!」

 

太刀を引き抜き、一閃。

箒の表情に、戸惑いも迷いもない。

恋も、戦いも、絶対に譲りはしない。もっと自分に我侭になる。

その為に、まずは今月に行われる大会だ。

「その首、洗って待っていろ、一夏……!!」

 

 

 

 

 

 

 

「おおうっ!?」

『どうしたの、一夏?』

「何か、すっごい寒気が……風邪か?」

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