IS〔ツイン・ソウルズ〕 七夕短編
*このネタはIS〔ツイン・ソウルズ〕本編とは全く関係ありません。
7月7日。七夕。同時に篠ノ之箒の誕生日でもある。
「という事で、短冊に願い事を書いてみようっ!」
箒の誕生日パーティーの最中、織羽は脈絡もなく笹と短冊を取り出した。何処からとかいう話は受け付けません。
「どっから出したんだよ」
と、空気を読まない男が受付ないというのに言いやがります。
彼は織斑一夏。世界で一番フラグを立てまくる男として先日、見事にギネス認定された男子高校生である。
「されてねぇよ」
「一夏、誰に言ってるの?」
と、その隣にいる一夏にとても良く似た風貌の青年が首を傾げる。
織斑春斗。自分の体を失い、一夏の中に意識だけが宿っている。が、このおまけ時空ではそんな事はなく、普通にいます。
「タンザク? 何ですの、それは?」
セシリアが意味が分からないと尋ねる。ラウラやシャルロットも、右に同じのようだ。
「あぁ、ヨーロッパ組は知らないのね。日本じゃ、七夕に願い事を書いた短冊……こういう紙を吊るすのよ」
「その前に、織姫と彦星の話をした方がいいかな?」
春斗はざっと、七夕の話を三人にした。と、何やら乙女心が刺激されたのか、何やら憤りを抱いた表情を見せた。
「なんなのですか、愛する二人を引き離すなんて……!」
「そりゃあ、務めを忘れた二人も悪いと思うけど……!」
「義兄上、何処に行けばその分からず屋どもは居るのですか?」
「まぁまぁ、落ち着いて。ラウラちゃんはISを戻しなさい」
「―― で、短冊を笹に吊るすのはどうしてなのですか?」
「夏越の大祓の茅の輪(潜ると身を清められるとされる大輪)の両脇に笹があるんだけど、それにちなんで笹に五色の短冊を吊るんだ」
「中国だと五色の糸を吊るすのよ」
「ということで、早速やってみよう~っ!」
うんちくは一先ず終わり、それぞれが早速五色の紙に願い事を書き始める。
「出来ましたわ!」
一番に書き上がったセシリアは早速、短冊を笹に結びつけようとした。
「―― 待て、オルコット」
「―― っ!?」
検閲官織斑千冬が登場し、さっとセシリアの手から短冊を奪い取る。
『一夏さんと一緒にオルコット家を守れますように』
「却下だ」
ビリビリビリッ!
「あぁっ!?」
「バカ者。七夕の短冊は……ちょっと待て凰、デュノア、ボーデヴィッヒ」
「「「―― っ!?」」」
千冬がセシリアに構っている隙にと動いた三名であったが、そんなものを見逃す千冬ではない。あえなく奪われる三人の短冊。
『今後こそ一生、一夏に酢豚を食べさせる』
『一夏は私の嫁』
『春斗が僕の、僕が春斗のものになりますように』
ビリビリビリビリビリビリッ!
「「「あぁ――――っ!!」」」
「貴様ら、七夕の短冊に書く願い事は”芸事”だということを知らんのか?」
七夕の基となった祭事が技芸上達を願うものであったことから、七夕のご利益は芸事だけとされている。
泣く泣く、恋愛事以外の願い事を模索する四人。
「芸事か……ISが上達したいってのはアリか?」
あーでもないこーでもないと悩む一夏をさて置いて、春斗は箒に尋ねる。
「ほーちゃんはどんな願い事を?」
「うむ……何を書こうか考え中だ。春斗は?」
「僕はもう書いたよ」
「どんな事を書いたんだ?」
「それは秘密。そういえば昔、ほーちゃんが転校した年の七夕……願い事一夏と書いたっけ」
「……あぁ、そうだったな。なんて書いたっけ?」
「忘れたの?」
「春斗は覚えてるのか?」
「勿論。僕が『また、ほーちゃんに会えますように』で、一夏は『箒とまた遊べるように』だよ」
「あぁ、そうだったな」
「っ……!」
箒が顔を赤くして、ビックリする。それは箒がかつて書いた短冊の内容のせいだ。
『もう一度、一夏と春斗に会えますように』
天の川に分かたれた織姫と彦星が、一年に一度会えるように。
もう一度、いつか二人と再会する事を願って。
環境が、社会が箒を孤独にする中で、星に願うことだけが箒の精一杯だった。
「―― じゃあ、あの時の願い事は叶ったって事か?」
「六年越しでね。やれやれ、織姫と彦星だって一年で再会できるのに……随分と時間が掛かったね」
「……そうだな」
夜天は晴れ渡り、星の天蓋に、笹の葉がそれぞれの願い事を示す。
さわさわさわ……。
赤い短冊が、そよ風に吹かれて揺れる。
『もう二度と、この時を失わなずに済むように 篠ノ之 箒』
その願い事が叶うか否か、それを知るのは天の星のみである。
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外伝 ケモノっ娘騒動!?
とある日。
「へぇ。黒猫のパジャマか。よく似合ってるな」
一夏にそう言われたラウラは、クラリッサに連絡を取っていた。
「――というような事があったのだが、どう思う?」
『なるほど。織斑一夏は――〈けものっ娘萌え〉です』
「けものっ娘萌え?」
『はい。兄である織斑春斗が小動物萌えである以上、充分に考えられる事です』
この物語はドイツの主犯と、このやり取りを聞いている者達によって引き起こされた―― 本編とは全く以て関係ない事件である。
「ふぅー。今日も訓練きつかったなぁ」
放課後の自主訓練を終えた一夏は、スポーツドリンク片手に更衣室で体を休めていた。
「お疲れー、一夏――」
「おう、鈴か」
「―― にゃん♪」
「ブハッ!?」
一夏は盛大に噴いた。何故かといえばそれは目の前のヤツのせいだ。
鈴はISスーツを着ていた。それはいい。さっきまで一緒に訓練していたのだから。
問題は――その頭と尻だ。
頭には、本来人間にはないケモノ耳。尻には人類のそれは退化して無い筈のケモノ尻尾。
どっちも猫のそれである。
「そんな一夏を、鈴がいっぱい、癒してあげるにゃん♡(きゃるーん♪)」
手を猫にして可愛くウインク。ハートが背後に乱れ飛ぶ。(イメージです)
「………あれ?」
一夏のリアクションが無い。完全にフリーズしている。しかも、ドン引きしてのフリーズだ。
鈴はようやく、自分がスベったことに気付く。
「いや、違うのよこれは! ただ一夏がこういうのが好きだって聞いたからであって、別にそんなんじゃ――」
「―― 鈴」
必死に自己弁護する鈴の肩に、ようやく再起動した一夏がそっと手を乗せる。
「大丈夫だ。鈴がどんなに偏った趣味でも、お前の事は俺が守ってやるからな(世間の目的な意味で)」
一夏はそう言ってイケメンフラッシュ。かつては数百を超えるフラグを建築した、某ZEROランサー顔負けの、封印指定確実の魔性の微笑みである。
そんなものを至近距離で喰らって、鈴が無事であろうか。否である。
「一夏……♡」
あーっと、効果はバツグンだ。
「――って、ちがーう!」
「ぐはぁ!?」
鈴の猫手パンチが一夏をぶっ飛ばした。
「これは……これは…………趣味なんかじゃないぃいいいいいいいい!!」
涙を浮かべ、鈴は夕日に向かって走る。青春である。
「お……俺が……何をした……がくっ」
一夏はガックリと倒れた。これもまた青春である。
「ラウラぁあああああッ!」
ドガーン! と、甲龍を展開した鈴が、部屋の壁をぶっ壊してラウラ達の部屋に乱入する。
この時点で彼女の運命と真耶の書類仕事追加が決定するが、そんな事はどうでもいいとばかりに、鈴はラウラの背に指を突きつけた。
「よくもガセネタ掴ませてくれたわね! おかげでとんだ赤っ恥よ!!
「ふっ、馬鹿め。偽情報に踊らされおって……」
不敵に笑いながら、ラウラが振り返る。
「現代の戦闘において、情報戦は基本だぞ!!」
「っ――!」
その瞬間、鈴は戦慄した。
黒尽くめであった。ピョコンと立った耳。お尻には丸い尻尾。
ウサギだ。しかも黒ウサギだ。
『篠ノ之束のいたずら黒うさぎ~♪』
何か、妙な電波が飛んできた。
そして、鈴は叫んだ。
「お前もかぃいいいいいいいいいっ!!」
それはもう、近年稀に見る素晴らしいツッコミであった。
「あまいですわ、お二人とも!」
バーン! と、ドアが開け放たれ、乱入する二つの影。
「そのような姿では、殿方の視線は奪えませんわよ?」
シャラーン。とでも音が聞こえそうな感じで、見事なブロンドロールを掻き上げるのはセシリアだ。
そしてその姿は青かった。そして何時もと違って露出が多かった。
ぶっちゃけ、バニーガールなのだ。
「うぅ……は、恥ずかしい……」
そしてもう一人はシャルロットだ。垂れ犬耳に尻尾。しかも首輪付きという上級セルフプレイ仕様である。
誰得? それは、これを読んでいる貴方が決めればいい事だ。
「あんたらもかいっ!!」
鈴。君がいなければこの状況はツッコミきれない。頑張れ。
「ちょっと! すごい音がしたけど一体何!?」
ドアがまた開かれ、姿を見せたのは――春斗だった。
そして、中の光景に目を瞬かせ、そして――。
「で、一体何があったの? こんなエデンの園を作るなんて……僕に理性を捨てろとでも言うのかい?」
「そんなつもりは毛頭ないわよ。つーか、頭を撫でるな!」
「よーしよーし、ゴロゴロ~♪」
「ふにゃ、にゃぁ……」
「あ、義兄上……余りなでないで……」
「ほーら、ラウラちゃんも……ゴロゴロ~♪」
「ふぅ……はう……そ、そこは……」
春斗のテクニック(撫で技)に、鈴もラウラもメロメロだ。
充分に堪能したのか、春斗が額の汗を拭う。その足元には、グッタリとする子猫と黒ウサギ。
「……で、一夏に見せるためにそんな格好してるのは分かったけど」
「「何処で!?」」
セシリア&シャルロットのツッコミが光った。
「何でシャルまでそんな格好を?」
「え……だって……春斗、こういうの好きなんでしょ?」
「まぁ、嫌いじゃないけど……何故、リードを僕に渡す?」
「え……だって……春斗が僕のご主人様だから……?」
小首を傾げるシャルロット。尻尾が謎パワーでふりふりと揺れている。これは絶対に本音の持ち物だ。春斗はそう確信した。
「―― へぇ」
そして、春斗のSスイッチが軽く入る。
「あっ――」
ぐい、とリードを強く引かれ、シャルロットの体が引き寄せられる。
「じゃあ、僕の可愛い子犬には、躾が必要かなぁ?」
その顎に指を這わせ、クスクスと笑う。
「あ、そんな……っ!?」
グイ、と更に強くリードが引っ張られる。一瞬、苦しそうな表情がシャルロットに浮かぶ。
「ダメじゃないか。今のシャルは、僕の可愛い子犬なんだから……ほら、鳴いてご覧?」
「わ……わん」
「クスクス。本当に鳴くんだ……驚いたなぁ」
「そんな……だって、春斗が鳴けって言うから」
「僕が言ったからそうするの? 違うよね? だって、自分から僕をご主人様って言ったんだし……ねぇ?」
「は……はい……そうです、ご主人様……」
「「「…………」」」
三人はいきなりの状況に耳まで真っ赤になっていた。
「え、これいいの? ノクターン行きとかにならない?」
「まだ、大丈夫だ。これ以上に行かなければ……だが」
「―― じゃあ、四つん這いにでもなってもらおうか」
「「アウトォオオオオオオオオオオオッ!」」
これ以上行かせまいと、鈴とセシリアが飛んだ。
正気に返った春斗。Mっ子モードから帰ってきたシャルロットは、全身まで真っ赤になって布団にくるまってしまっている。
「―― で、取り敢えずラウラちゃんと鈴ちゃん、シャルと……あれ、こういう時やりそうなほーちゃんが居ないけど?」
「さぁ? 箒は見てないわ」
「私も見ておりません」
「そっか……まだ寮内にいるのかな?」
「ちょっとお待ちなさい!!」
春斗が首を捻っていると、セシリアが物申した。
「何、セシリアさん? 今、大事な話しているんだけど?」
「何で見事に私だけスルーしてますの!? 笑われるのも嫌ですが、普通にスルーされるのはもっと辛いですわ!!」
「だって、バニーガールとか……マジ、ケモノ耳舐めてるとしか思えないし」
「もの凄く辛辣な評価!?」
「うさぎだって、ラウラちゃんと被ってる上、魅力負けしているし」
「容赦なき酷評!?」
「大体、ウサギって意外と好戦的だし。寂しいと死ぬとか大嘘だし」
「既に論点がズレにズレていますわ!?」
「つまり――不合格」
「がはぁ!?」
セシリア・オルコット、ここに散る。さらばヒロインの座。
「――って、そこまで重大な事態でしたの!? 本編ラスト近くで見せ場満載という話ですのに!?」
さぁ、どうでしょう。プロット変更して良いですか?
「ダメに決まってますわ!!」
「セシリア、誰と話しているんだろう?」
「――神だな(キリッ)」
ラウラのドヤ顔も、うさみみフードのせいで威力満点である。
五人は最後の一人であろう、箒を探すべく廊下を行く。
「ほーちゃんの事だから、どうせ勢い任せに耳とか付けて、最後の最後で怖気づいているんじゃないかな?」
「うっわぁ。想像が容易だわ、それ」
ということで、一夏の部屋に向かう事に。
と、やはり部屋の前でウロウロする人影――箒である。
箒はきつね耳にふさふさ尻尾、それに加えて巫女装束(鈴の首輪付き)という、セブン◯ークス伝説の妖狐に挑戦するかのようなフォルムであった。
キィイドンゴウズガァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
瞬間、粉塵の嵐が巻き起こった。
気が付けば壁に大穴が開き、ISを展開したシャルロットがバンカーを突き出していた。穴の向こうには目を回す箒と、やはりISを展開したまま意識を手放しながら箒を手放さなかった春斗。
さて、一瞬の間に何があったのか。スロー再生してみよう。
箒の姿を見た瞬間、春斗が理性をすっ飛ばしIS展開。IS展開速度、世界記録樹立(非公式)の瞬間である。
同時に瞬時加速(イグニッションブースト)。箒を抱き上げて逃亡を図る。
↓
そのコンマ数秒後、シャルロットがIS展開。世界記録(非公式)更新の瞬間である。
瞬時加速(イグニッションブースト)と同時にバンカー展開。春斗の背中目掛けてぶちかます。
↓
春斗と箒、そのまま外に吹き飛ばされる。←今ここ。
その間、わずかに1,13秒の出来事である。
「……もう、滅茶苦茶だわ」
「貴様ら……全員、反省室に来い」
鈴はもう、全てを投げた。具体的には背後に立つ修羅王の怒りのオーラにだ。
このあと、全員揃ってお説教を食らい、その腹いせに皆で一夏の頭にネコミミを付けてやった。
その事実に一夏が気付くのは、昼休みに入る頃であったりしたが、それはまた別の話である。