おんハピ♪ 〜Only Happy♪〜   作:赤瀬紅夜

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Lucky.10 めまぐるしく

わたしの朝は早くて、5時に起きます。

 

「ふぁ〜あ」

 

欠伸をしながらベットから起き上がり、まだ眠い目をこすります。

 

ふと、床を見ると畳が敷かれています。

 

畳の上にベットなんて、わたし自身も可笑しいと思いますけれど、理由があったようです。

 

我が家は日本家屋のようなデザインなのですが、わたしが幼い頃にベットに寝たがっていたから、だそうです。

 

まあ、なんでわたしの事をこんな風に他人事の様に語るのかっていうのは、わたしが覚えてないだけなんですけどね。

 

「さてと。」

 

起きてからはまず、自分の身なりを整えます。

 

パジャマから着替えて洗顔、歯磨きを済ませ髪を後ろでお団子にした後に、朝食とお弁当作りに取り掛かります。

 

身支度を整えるのに、僅か5分。

 

わたしもやっとこの生活に慣れてきましたね〜。

 

最初の頃は、料理を作る際に邪魔になるかと思って、髪を束ねてポニーテールにしていました。

でも、お母さんに今のお団子のやり方を教わってからは、ずっとお団子をしています。

 

今では料理を作る時だけでは無く、普段からこの髪型になっているのですけどね…。

 

お気に入りの髪型に整えた後、わたしの名前が書いてあるエプロンを身に付けて調理場に入ります。

 

「おはよう日毬。今日もお友達の分の弁当を作るのかい?」

 

おとうさんに声をかけられました。

わたしの料理の先生でもあり、我が家のお店を切り盛りしているだけあって、いっつもわたしより早く起きています。

それにわたしは、すっごくおとうさんの事を尊敬しています。

……まぁ、自分のおとうさんの事を尊敬の眼差しで見るのもどうかと思いますけどね。

 

「おとうさん、おはようございます~。はい!今日も頑張って作りますよ〜。」

 

そう言うと、お父さんは少し微笑んでわたしの頭を撫でてくれました。

 

えっへへ、頭撫でてもらえて嬉し………って違います〜‼︎

 

「お、おとうさん! わたしもう高校生なんですから、子ども扱いしないで下さい〜!」

 

カァァァッと頰が熱くなるのがわたしでも判ります。

 

「もうっ、今日はわたしがみんなの分のお弁当を作るので、おとうさんは調理場から出てってください〜!」

 

そう言って、わたしは苦しまぎれにおとうさんを責めるようなことを言ってしまいました。

 

「そんなに、一人で作りたかったのか…?」

 

そう言い残して、おとうさんは心配そうな表情を浮かべたまま出て行きました。

 

 

「うぅぅぅ、おとうさんに酷いことをわたしは言ってしまったのでしょうか…?」

 

そう独り言をつぶやいきながら、玉子焼きを焼くために冷蔵庫から生卵をいくつか取り出します。

そうして、生卵を割っていくうちに、さっきおとうさんに言ってしまった事が頭によぎります。

 

 

 

………クシャ、

 

 

「わ、わ、落としちゃいました……うぅ、せっかくの卵さんが……ごめんなさい…。」

 

思わず座り込んで、生卵に謝ってしまいました。

新鮮な生卵を落としてしまい、割れてしまった殻から白身がドロリと床に広がってしまいました。

慌てて片ずけようとして、布巾を取ろうとして立ち上がった時にくるり滑る事で、とわたしの身体は宙に浮いてしまいました。

浮揚感が在ったのもつかの間の出来事で、次の瞬間には調理室の床の上に転んでいました。

 

卵の割れたところの真上に転んだのかパジャマ

 

「えへへ、、」

 

そういえば、あの入学式の日の帰り道もこんな事がありましたっけ…。

 

落とした生卵の残骸を片付けながらあの日の帰り道の事をを思い返していました。

 

〜〜〜

 

そう、確かあの2人と会ったのは入学して間もない時でした。

 

晴れやかだった空も曇り始めていました。

 

天之御船学園の入学式を終えて、1人帰宅している時に生卵を渡されていたわたしは、卵を大事そうに抱えて慎重に歩きながら家へと帰っていました。

 

帰り道である、河川沿いを慎重に歩いていると、1匹のネコちゃんが、猛ダッシュでわたしの右側を通り過ぎて行きました。

 

「ニャ、フグゥー…ぺっ」ダダダッ

 

クシャ、

 

そのネコちゃん(黒猫でした)が、生卵を咥えていたようでそれを取り落としたのか、割れた殻と中身がが地面に広がっていました。

 

と、わたしが割れた卵を見て立ち竦んでいると、今度は同じ制服を着た子が横を通り過ぎました。

 

何のことか、わたしには分からず、セミロングの赤っぽい髪色を颯爽揺らしながら通り過ぎた子の発している声を聞いてみると…。

 

「……コラ〜〜〜!レンの生卵を落としたなあ〜〜!このヒビキから逃げようなんぞ……」ダダダダッ

 

何故、ネコちゃんの後を追って行ったのでしょうか?

 

わたしの頭の中が混乱しながらも、思いついた事がありました。

 

「もしかして、生卵をネコちゃんに取られでもしたのでしょうか…?」

 

本当にそうだとしたら、大変かもしれないです〜。

 

そう考えながら、とりあえず可哀想な生卵さんをどうにかしようとしゃがみ込んだところで、頭上から声を掛けられました。

 

「ねえ、そこの君。ヒビキって言って走り去って行った子見なかった?」

 

そこには、同じ7組の子で透き通った様な青色の瞳がそこにはあって……

 

〜〜〜

 

………って、この2人は違う人達ですね。

 

そうそう、確かネコちゃんを追って迷子になったヒビキさんをわたしも追う事になって、そこで、自分の生卵を割っちゃったんですよね…。

 

〜〜〜

 

追いかけっこの最中、

 

二手に分かれて追いかけようと言うところで、勢い余って手からスルリと離れて行った生卵は、丁度わたしの進行方向に落ちた事で、それを踏んでわたしは転んでしまっていました。

 

「………。」

 

転んだ先に同じ制服を着た小柄な子がいて、目が合っていたと思います。

 

気まずくなって、えへへ、、と誤魔化していると、背後から現れた誰かさん両脇を抱えられて持ち上げられてしまいました。

 

「ひゃうっっ!」

 

思わず、変な声が出てしまっていたと思います。

 

「この子が、さっきれんちゃんが言ってたヒビキって子かなー?」

 

取り敢えず立ち上がらせないとねー。

そう言ってわたしを地面に下ろしてくれました。

 

それを見ていた、小柄な子がパチパチと小さく拍手しながら言いました。

 

「流さん、多分違う子だろうけど捕獲おめでとうです。」

 

当時のわたしは、まさに混乱の極みでした。

 

手伝っているのにわたしが捕まっているの?とか、この人たちは誰?という風に。

 

わたしの状態を察したのか、わたしを持ち上げたカチューシャの子が事情を説明してくれました。

 

〜〜〜

 

と、事情というには些細なものでしたが、れんさんと二手に別れたところでれんさんが通りがかりの2人に頼んで、わたしの方に援軍を送っていた様でした。

そして、あの時に目の前にいた小柄な子が、恋ヶ窪さんで、わたしを持ち上げた子が砂川さんでした。

 

紆余曲折あったものの、何とかヒビキさんを捕らえる事に成功し、砂川さんにからかわれたりしてひまりんと呼ばれたりもしました……。

 

その後、砂川さんと帰り道が同じだったわたしは、筆記用具を取りに学校に戻ったりもするのですが、今は関係ないですよね〜。

 

まあ、そんな事があってからあの時落としてしまった卵に、申し訳無さと有り難みと両方持つ様になっていて、料理のことになると今までよりも熱が入る様になりました。

 

「大丈夫か⁉︎日毬………って、こりゃ盛大にやらかしたな。」

 

ガチャリと調理室の扉を開けて、おとうさんが慌てて入って来ました。

 

今のわたしを見かねたのか、苦笑いしながらもわたしを立ち上がらせてくれました。

 

「今日のところは、朝のケンカは終わりにしようか。せっかくの制服が台無しだから、取り敢えず今の服は洗濯して、着替えてきなさい。お弁当は父さんが作っとくから。」

 

そう言いながら、わたしの肩をポンポンと優しく叩いて送り出してくれました。

 

「すぐに入ってくるから、待っててくださいね〜。」

 

そう言って調理室を出た後、わたしは脱衣所に向かいながら思わず、頰に手を当てていた。

 

手のひらよりも温かい温度を感じる。

 

やっぱり、わたしの頰はまだ赤くなっている様だった。

 

こんなさまでは、まともにおとうさんと顔合わせ出来ない。

 

わたしのめまぐるしい朝の時間は始まったばかり。

 

取り敢えず、一旦お風呂に入ってたまには気持ちをリラックスさせた後に、料理を手伝おう。

 

そう決意して、脱衣所に入り服を脱いで、お団子を崩して、身体を洗って、浴槽に入って一息ついた所でふと気づく。

 

「…そういえば、わたしの服の替え、部屋に置きっぱなしですね…。」

 

この歳になっても、おとうさんを多く頼るところが残ってしまいそうです〜。




陽毬ちゃんの過去回想……。

ということで、今回は趣向を変えて語り部チェンジしてみました。

〜次回予告〜

休日の土曜日に、彩歌はお母さんから買い物を頼まれデパートに行くと、そこには恋ヶ窪さんがゲームセンターに居て…?

次回、Lucky.11 がいしゅつ

休日に出会うのは恋ヶ窪 椎名だけじゃない!

次回をお楽しみに〜。
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