天之御船学園に入学してから2度目の日曜日を迎えた、4月17日。
午前中に降っていた雨が止み、晴れ間が見えた。
そんな時の昼食の時間のことだった。
母さんと二人でミートソースのかかったスパゲッティを食べていると、ふと思い出した様にこう言われた。
「ねえ彩歌、デパートで買い物に行く気はないかしら?」
買い物……か。
母さんが私にお使いを頼むなんて珍しい。
私の不幸のことは知っているけれど、それでもこの休日中に一歩も家から出ないで、ゴロゴロしてばかりしていたのは流石にまずかったかな……。
「分かったよ、母さん。それで何を買ってくれば良いの?」
遠目のデパートなんかに行かなくても、近くにスーパーがあるからそこで済むと思って聞いてみた。
「母さんはいつも行ってるスーパーに行ってるから、彩歌はデパートに行って服でも買ってきなさい。」
服……確かにそこまで多くは持ってないけど、必要最低限の分は持っているから必要ないかな。
「彩歌はある程度服は持ってるでしょうけど、せっかく高校生になったんだから、いつもは着ない様な服でも買ってイメチェンしてみなさいな。」
と、私の思った事を悟ったのか母さんはそう言った。
イメチェンしてみなさいなって言われてもな…。
ため息をひっそりとついた後、私はデパートへと向かった。
…今日は晴れてるから傘は要らないかな。
外に出ると、傘を持ち歩かない事に、なんとなく不安に感じた。
まぁ、小春日和な陽気に流石に雨は降ってこない……かな。
デパートに入った私は、とりあえず三階フロアに向かった。
このデパート…というかショッピングモールは1階が食料品売り場、2階がゲームセンターと雑貨屋、そして3階がファッションとなっている。
その一角にある洋服屋さん「ひだまり」に来ていた。
最近できたお店なので、どんな服が置いてあるのか気になったから入ったんだけど……。
「お客様、こちらの洋服と合わせるならこちらのスカートなどを添えるとより一層雰囲気がふんわりしますよ。」
「ご試着でしたらあちらに…」
という具合に物凄い勢いで服やらをオススメされ、あれよあれよという間に試着室に入っていた。
「私ってもしかして流されやすいのかな…。」
一人そう呟いて、先程渡された衣装に着替えてみる。
店員さんにオススメされたのは、白のブラウスにピンクのロングスカートというものだったけれど、正直自分で選んだものではないので、似合うのかどうかが分からない不安が私の中で渦巻いていた。
恐る恐る鏡をのぞいてみると………思いのほか似合っている私がいた。
店員さんからオススメされて試着室に入った時には不安だったけど、いざ着てみるとピンクのロングスカートの色がそこまでキツくないところが春先の季節にはよく合ってる気がした。
折角だから買ってみよう。
もともと着ていた服に着替えて、さっき着たブラウスとロングスカートを会計に出した。
会計にいた店員さんは、さっきの押しの強い店員さんではないようだった。
「合計で8,640円になります。」
ブラウスが5,000円にロングスカートが4,000からの25%引きで3,000円……お得に買えたのかも。
………あの店員さんには少し感謝しないといけないかな。
「ありがとうございましたー。」
店員さんの声を背に受けて、私は「ひだまり」を後にした。
紙袋を片手に下げて、どうせならデパートの中で何かしようと歩き出す。
服屋に靴屋などが立ち並ぶ通りを抜けて、エスカレーターに乗って2階に降りてみる。
雑貨屋さん……というか本でもみようと思った。
今日はよく晴れてたし、最近面白い推理小説が読みたくなっていたので、エスカレーターから降りて、本屋に向かう事にした。
ガヤガヤ
しかし、エスカレーターから降りたところで、私は足を止めざる得なかった。
本屋に行く前に通る道にあるゲームセンターに人だかりができていた。
このゲームセンターには入口の方に太鼓のリズムゲームが置いてある。
その人だかりだろうか……と思っていると、その中に顔見知りがいた。
子供たちの中で頭一つ分身長が高いので否が応でも目につくのだけれど。
その人はそれはもう、むちゃくちゃ爆笑していた。
「アハハハっ、ちっちゃいのに上手いー!動きにくそうな服なのに、スゲーバチ動くの早い…ぷぷっ!」
流さんが、子供たちに混じっていたのだ。
その目線の先には……ドレスの様なフリフリした服を身にまとい必至に太鼓に向かってバチを振るう恋ヶ窪さんの姿があった。
ドドドン、カカッ、ドンドンカカッ……
うん、とても楽しそうだけどあの中に入るとめんどくさい事になりそうだから無視しよう。
その結論が出た事で2人の姿を視界から外して、当初の目的だった本屋に向かうために方向転換して歩き出す。
「……! アヤカじゃん、おーい!」パタパタ
…流さんに気付かれてしまった。
「…………逃げよう。」ボソッ
目を合わせた瞬間にそう呟いて、私はゲームセンターと反対側に走り出した。
ダダダダダッ
さっき買った服たちの入った紙袋を前に抱えて全速力で走る。
頰に風が当たるのが感じる。
人はそこまで居なかったから出来る限りスピードを上げる。
「はあ、はあ……」
息が切れ始めたところで、ポンと肩を叩かれた。
後ろを振り返ると、流さんがいつの間にか追いついていて私を捕まえていた。
「アヤカ、うん、今のはちょっと傷ついたなー。」
苦笑いして私を見つめる流さんに、私は謝ることしか出来なかった。
「流さん、ごめんね…。一緒に遊ぼう?」
しーちゃんのところに戻ろうか。と流さんは私に笑顔で言った。
というわけで、まだまだ続きます。
〜次回予告〜
恋ヶ窪さんたちと合流した彩歌は、無事家へと帰ることができるのか…?
次回、Lucky.12 わたしも
いや〜、友達見た瞬間に走って逃げるとか、彩歌もなかなかおてんばですね〜〜(*´-`)