「はーい、いい子たちですね~」
折れた差し棒を、両手から離した小平先生はその後、こう切り出した。
「それでは早速、席替えもかねて、本日の測定をしましょう」
小平先生は、丁寧な口調ながらも有無を言わせずにこう説明した。
「今朝、皆さんの机に数字の書いた紙を入れておきました。その数に従って席を決めていきますが………そうですねぇ、数が少ないほどラッキーということにしましょうか。」
それを聞き、私を含めた、クラスのみんなが机の中にあった紙を開く。
このクラスの人数は40人。
私の運は悪いけれど、さすがに30番台には、いってないはず・・・。
そこに書かれていた数字は、
だった。
「………ッ!!」
31番ということは、このクラスの中でも、運が悪い方に入る。私の不運は、そこまでひどいとは……。
「ふぅ」
とりあえず、前の黒板の座席表を見るために前のほうへ移動する。
私の席は………っと、
右から三番目の、後ろから二番目、か。後ろの方だったら、クラスで目立つこともないかな。近くの人は、何番なのかな……?
前に出て、もう一度座席表を見てみる。
すると、左上の席が気になった。
1・・・・・・番・・・?
なるほど。いくら不幸な人たちが集まっても、マシな人はいるんだと思い、その席に目をやると、
「……」
その席に座っていた、黒髪の子と目が合ってしまった。
じっくりと私の方を見つめている。
すると、軽く頭を下げられ、そのまま目線を外された。
………まあ、このクラスで一番運が良い子なんて、私には関係ないだろう。自分の席に着き、座る。
トントンという風に後ろの子から、肩をたたかれた。気になって振り向くと、カチューシャをした子が声をかけて来た。その子は茶髪の髪を短く切った髪に屈託のない表情で、私に話しかけてきた。
「お、やっと気づいてくれたね、おっはよう!」
純粋な笑顔で挨拶をしてくれたので、私も返す。
「はい、おはようございます」
私の挨拶が変だったのか、アッハハと笑い、話し始めた。
「アタシの名前は、
砂川はともかく流とは珍しい名前だ。そんな感想を私は持った。
身長は私よりも高く、すらっとしている。
性格は明るい感じなのか、私に声をかけてくれた。
「よろしくお願いします、砂川さん。私は、西沢 彩歌と言います」
「砂川さんじゃなくて、気軽にアタシのことは、流って呼んでもいいよ。代わりに君のことはあやかって呼ぶね」
いきなり名前呼びは・・・と思い、流さんと呼ぶことにした。
そういえば、わたしの番号は31番で流さんの番号は32番だった。
「流さん、私たちの番号って近いけど、不運だったことってある?」
うーーん……と首をかしげながら答えた。
「アタシは、無いかな~」
不運だったことが無い、か。
自覚がないだけで、もしかしたら何かしらの不運は背負っているのかも・・・そう考えてた時、
「ま!これから仲良くしてほしいな。 よろしくっ、アヤカ」
そういいながら二カッと笑い、右手を差し出された。
「う、うんよろしくね」
私も、差し出された右手を握り返した。
「はーい、席も決まりましたね。今日はもうこれで終わりですが、お試しで一つ、宿題を出しましょう」
と、小平先生が言いながら宿題を出した。
そして、私たちの前に出されたのは、………生卵(賞味期限切れ)だった。
「生だから、気を付けてくださいね。 この卵を明日まで割らずに持っておくこと。それが、本日の宿題です。」
すると突然、小平先生が左側の方を指したかと思うと、白髪の様な髪色をした眠そうな生徒に注意した。
「そこ!ちゃんと持ち帰ってくださいね。」
どうやら、卵を持ち帰らないでおこうとした生徒がいたようだった。
そうして、変な宿題を出されて私の入学式は終了した。
「それにしても、この生卵、どうやって持っておこうかな。」
私が、一人教室に残っているのには、理由があった。まあ、他クラスメイトたちは、友達だったりが出来たりして一緒に帰ってたけれど、私は、自らその誘いを断った。
もちろん私だって友達は欲しい。
でも、
まだ私の不幸を知ってもらってない、
いや、
私が打ち明けていないだけで、向こうも何かしらの不幸は抱えているはずだった。
席替えの時に仲良くなった、流さんも無かったと言ってたけど、やっぱり、何かの不幸は持っているんだと思う。
でも今は………
「……………………」
沈黙に包まれている教室の中、1人椅子の音を立てながら立ち上がり、呟く。
「帰ろうかな」
くよくよ考えていても仕方がないし、とりあえずは家に帰ろうかな。
そう思い、私は席から立ちあがった。
生卵片手に階段を下りて下駄箱に着いてから、靴を履き替える。
予め傘立てに用意しておいた、傘をさして学園から出る。
すると、外はあっという間に暗くなり黒々と曇ってきて、無数の雨を降らす。
篠突く雨とでも言うのか、激しく降っている雨に鬱陶しさを感じながら傘をさし、帰路を急ぐ。
今日、他の人たちと帰らなっかったのには、理由がある。
それが、今の状況。
私は、よく雨に降られた。
いつでも、
どこでも、
今でさえ。
私の不運は、悪天候。
私の周りだけ、雨が降るから、他の人たちと帰りたくなかった。
きっと、
”いつものことで慣れている”
私とは違い、傘の用意なんてしてないだろうから。
「っ………!」
片足が水たまりに足をとられて、なんとか転ないようにともう片方の足で踏ん張った。
すると、私の左手に持っていた卵はするりと手から抜けて、地面に落ちてしまった。
グシャリと音を立てながら生卵が割れる。
激しい雨の中、落ちた卵を冷淡な目で見る。
「やっぱりね。」
小さく、呟いた。
自分の持っていた傘に、激しく雨粒が、叩きつけられる。
私の表情は、暗くなってゆく。
私は、悪天候の不幸に見舞われた高校生だ。
次の日、
「全員、卵を割ってしまったようですね」
小平先生の優しげな言葉に、全員が押し黙る。
「これも想定内です。 どんな状況で割ってしまったか、紙に書いて提出……」
と、ここで割り込む声があった。
声のする方を見ると、先日ピンクのジャージを着ていた子だった。
「せんせ~!」
ジャ~ン!と、その子は、高く卵を掲げると、その瞬間に教室中で驚きの声が上がる。
さすがにこの事は想定外だったのか、小平先生も、あらと言って驚いている。
すると、その子の持っていた卵が割れ、中からヒヨコが飛び出した。
ピヨリと鳴くと、その子の頭の上に乗ってしまった。
「アッハハハハッ!見てよ、あやか、あの子の卵からヒヨコが生まれてるよ」
そんな、楽しそうに笑ってる流さんを見て、私も思わず笑っていた。
「ふふっ、うん。そうだね」
パンッ、と小平先生が手を叩いた。
「はい。みなさん。 花小泉さん以外は、なぜ卵を割ってしまったのかという、理由を書いてくださいね」
そう呼びかけた後、小平先生は、プリントを配った。
貰ったプリントには、『なぜ、卵を割ったのか、その経緯を説明せよ。』と書いてある。
そこに、雨の中転びそうになって……と書こうとして、私は慌てて文章を消した。
なんだか、本当のことを書いてしまうのは、私にとって癪な気がした。
書き直そうとしたとき、右から強い視線を感じた。
何だろう、後ろの席にいる砂川さんとかかな?
そう思い、右を向いてみると………そこには、小平先生が満面の笑みを浮かべてこっちを見ていた。
放課後。
私は、プリントに嘘を書こうとした罰として、
教室に残って掃除をしていた。
小平先生曰く、
「嘘をつく人ほど、不幸に陥りやすいんですよ。それに嘘をつけば、自分自身にそのツケが戻ってきますよ」
口調自体はとても丁寧なんだけど、明らかに怒っているのがわかる様な声のトーンだった。
小平先生は一通り私に説教をした後、教室(七組)の掃除を軽くする様にと言い残して職員室に呼ばれて行った。
「はぁ………」
なんて、一人でため息をつきながら箒でごみを集めていると、
音を立てて教室の扉が開いた。
誰が入って来たのかと思ったら、短めの茶髪に黄色いカチューシャをしている。
つまりは、入って来たのは流さんだった。
「お~、アヤカいいところにって、何やってるの?」
私の姿を見つけるなり、そう聞いて来た。
「その、卵を割った理由のプリントに嘘を書こうとしたら、怒られて。その罰で、ね………」
「ふーん、そうだったんだ」
少しにやけた様な表情を作って、こう言った。
「そう言えばアヤカに用事があったんだよ。」
「……?」
私になにか用事があるのだろうか?
そう思っていると、流さんが入ってきた扉の方を向いて
「おーい、遠慮せずに入ってきなよ。」
と声を掛け、小声で私にある事を知らせる。
「実はさ、紹介したい友達がいるんだ。アタシって、実は友達多いんだよー。」
え、紹介したい友達………?
困惑していると、
扉の方から二人の女の子が入ってきて……
~次回予告~
流ちゃんが、紹介したい友達とは…?
次回、Lucky.3 こっちにおいで
この話までで、アニメ1話に追いつきました。
ハナコ達が、親睦を深めていた数時間後に雨にうたれていた彩歌………ちょっと可哀想な事しちゃいましたかね……。
次の話は、アニメの2話の身体測定では、無さそうですが・・・?
追加された分のプロフィールも、書いておきます。
不幸タイプ…悪天候
番号…31
にしさわ あやか
西沢 彩歌
元ネタ…西武柳沢駅
茶髪でツインテール
片方の髪に太陽をかたどったアクセサリーをしている。
性格:冷静で、優れた観察眼をもつ
不幸タイプ…不明
番号…1
???
元ネタ…???
黒髪を肩まで伸ばしている
性格:???
不幸タイプ…不明
番号…32
すなかわ ながる
砂川 流
元ネタ…武蔵砂川駅
カチューシャをしている
性格:気さくで明るい
一応、ヒバリさんも、
不幸タイプ…不明
番号…28
ひばりがおか るり
雲雀丘 瑠璃
こうなって来ると、出席番号1番の子が謎過ぎますね。
ま、他の子達も続々と登場しますので、乞うご期待!
最後に謝辞を。
ここまで読んでくれて、ありがとう!
そして、挿絵を描いてくださった、ガンバりささんに感謝します!
これからキャラ増えるので安心してください!
それでは、また来週に!