等身大すごろくと言っても、お遊びだしどうにでもなるだろーとたかをくくっていたアタシだったけど、いざ始まってみれば衝撃以外の何物でもなかった。
まず、はじめにしーちゃんからサイコロを振って、その後にアタシが振り、数を多く出した方が二回振りもう1人が一回の合計三回のルーチンを作ろうって話になった。
しーちゃんが振って、最初は4。
その次にアタシが振って3。
ギリギリだけど、アタシの負けでしーちゃん二回、アタシ一回でやることにした。
そうしてやってから、約10分経過。
アタシは言葉を失っていた。
順調に駒を進んでいったのだけれど、それがあまりにも順調過ぎた。
アタシは1とか、3とか、運がいいと5あたりの目を出してたけど、しーちゃんはえげつない数字を叩き出していた。
4、5が出るのは当たり前で、6もバンバン出るし、1〜3の目が出ないくらい快調に進んでいった。
しーちゃんがまたも6を出して、マスをしばらく進むとそこには小平先生と、小さなロボットが立っていた。
…………正直、あの先生嫌いなんだよなー。
できれば関わり合いになりたくないけど、この感じはやっぱりお題を出されるのか。
「来ましたね。あなた達が今のところぶっちぎりで1位ですよ。」
ニコニコとそう言う。
それに続いて、小さな影が動く。
確か、チモシーだっけ?
パネルが出てきて、アタシ達の前にボタンが現れる。
「ドキドキ!コスプレルーレットだよ〜。」
で〜んと言う効果音とともにチモシーがそう宣言した。
「流ちゃん、コスプレって本当ですか⁉︎」
驚いた様な顔をしてしーちゃんが問いかけてくる。
「うーん、どうやら本当らしいねー。」
取り敢えずは、アタシから先にルーレットをやらしてもらおう。
ルーレットには、沢山の動物が描かれていた。
兎、猫、虎、イカ、羊に魚まで。
あれやこれやのコスプレをすることになりそうだなー。
コスプレとか初めてだけど、何になるか……。
アタシは、ルーレットに繋がっているであろうボタンに手を掛けてた。
途端にルーレットの一部が光り、クルクルと動物達を照らしながら回り出した。
カチリッとボタンを押す。
しばらく回った後、止まったマスは………
「流ちゃん、その犬耳お似合いです。」
と、しーちゃんがニヤニヤしながら言う。
そう、アタシのコスプレは「犬」だった。
犬といっても、犬耳をつけて玩具の尻尾を着けただけなんだけど、制服の上から着けてるだけだから何となく気恥ずかしい思いにかられる。
「そう言う、しーちゃんだってペンギンさんになって可愛いよー。」
アタシは犬だったけど、 それに対してしーちゃんはペンギンだった。
しーちゃんは衣装が丸ごと変化している。
着ぐるみと言うよりは、布で作ったパジャマみたいな薄さのもので、全体的に青色のペンギンをかぶる様に衣装にしている。
ただ、胸から足元にかけての真ん中あたりは白色になっている。
サイズがなかったのか少しぶかぶかな感じもするけど、それでもしーちゃんの小さな体躯には似合っていた。
「流ちゃん、それじゃあ行きましょう。」
小さなペンギンが、アタシを覗き込みながらそう言う。
「うん、そうだね、しーちゃん。」
それに答えながら、アタシも進んだ。
………そういえば、あの時。
入学式の日の帰り道で、しーちゃんと会った時のことを思い出す。
そう、あれはアタシが入学して早々にプールに忍び込んだ時のこと。
〜〜〜
入学式を終えて、何と無くだけど家に帰りたくなかった。
帰路につこうと思っていたけど、気になってプールによることにした。
水泳部に入りたかったし、何よりも誰かいれば話し相手になってくれるかと思って。
しかし、残念ながら扉は施錠されていて入れなかった。
……なので、フェンスをよじ登っていくことにした。
今更ながら、何やってんだアタシ!
って感じだけど今更ながらに思えば、そんな無茶をしたいくらい暇だったのかも知れない。
「よいしょっと。」
フェンスの頂上まで来ると、アタシはそこから飛び降りた。
アスファルトの地面に着地したのにも関わらず、あんまり衝撃は来なかった。
プールの方に目を向けると、意外にもプールの中の水は透き通っていて綺麗だった。
春先にはまだ使って無いから割と汚いかと思ったけどそうでも無さそう。
「ん? んーー?」
よく目を凝らすと、プールを挟んだ向かい側に誰かがいる……?
プールサイドにしゃがみ込んで、揺らめく水面をじーっと見つめている。
ペタペタとアタシは足音を鳴らしながら、その子に近づく。
こんなところに、アタシと同じ様に来ている子がいるなんて。
意外も意外。
もしかしたら、新手の不良かと思ったけど、その子に近づいてその子の顔を見た瞬間に、そんな考えはアタシの中でもろく崩れ去った。
小さな体躯に、薄っすらとした肉付き。
肌が透き通る様に白いのに、髪は対照的に黒い。
そして何よりも、クリクリとした紅い瞳。
え、え、何この子………!
「めっっちゃ可愛いーーー!!」
気づいたら抱きついて頬ずりしていた。
私は女子でもかなりの高身長で、体格もそれなりにある。
何で今そんなことを言ったかと言うと、身長の大きい子が小さな子を力一杯抱きしめたらどうなるかと言うことだ。
……まあ、つまりはアタシは初対面の子を抱きかかえて持ち上げて、更には頬ずりをしていた、というワケ。
「可愛いなーもう! うりうりうり。」
「止めてください! もういいので!」
頬ずりをしまくって可愛がってる所で、ばたばたと手足を振り回しながら声を上げた。
流石に可哀想になって来たので、下ろしてあげる。
キッとこっちを見て、プルプル震えている。
………震えてるのも可愛いかも。
ってそうじゃない、そうじゃない。
「ええと、きみは何でこんな所にいるのー?」
アタシはポリポリと頰をかきながら、そう尋ねる。
「ボクは、見学しに来ててプールサイドでぼーっとしてただけなのに!」
どうやらしなくても怒っているなー、こりゃ。
アタシは顔の前で手を縦にしてゴメンゴメンとジェスチャーを取りながらなんとか宥める。
……この背丈の高さからして中学生?
いや、もしかしたら大人びている小学生のなのかも知れない。
「どこから来たのかなー? 勝手に高校に入っちゃったらダメだぞー。」
頭を撫でながら言い聞かせる。
するとプルプルとまたも震えだして、パシンとアタシの手を払いのける。
「ボクは〜! 高校生だし! 同じクラスじゃん!」
紅い瞳に涙を溜めながら、叫んだ。
‥‥‥‥マジですか。
そこからしばらく、事情を聞いた。
「いやー、まさかホントに同じクラスだとは。 よろしくねー、椎名さん。」
彼女の名前は恋ヶ窪 椎名というらしい。
椎名だからしーちゃんかな?
とあだ名を考えたけど、ここで子供扱いをするとまた起こりそうだったから、まあ椎名さんと呼ぶことにした。
「よろしくです。 それで、流さん……でしたっけ? 流さんはどうしてフェンスを越えてまでここに来たんですか?」
おずおずという様に、椎名さんが訪ねてきた。
「えーっと、それはね……。」
改めて聞かれると答えにくいなー。
何となくなんて言えないし……そうだ!
「実は水泳部に入りたくってさー。」
水泳部に入りたいのは確かだし、別に嘘もついてないから良いよね。
「なるほど、そうでしたか。」
うんうんと頷きながら椎名さんはそう返した。
「まあ、アタシは許可とか取っているわけじゃ無いから、ここに来たことは秘密にしといてね?」
アタシはそう言って人差し指を唇にそっと付けた。
〜〜〜
……まあその後にひまりんと会ったりして何だかんだあったけど、それは省略しよう。
「流ちゃん、ゴールしましたよ! って聞いてます?」
ゆさゆさと、しーちゃんがアタシを揺さぶってくる。
「気づいてるってば。 なんだかんだ言ってアタシ達が、1位になったね。」
アタシ達はあのまま順調にコマを進めて、めでたく1位でゴールしたのだった。
まだ彩歌達が来るまで時間もあるし、暇つぶしにしーちゃんをいじってるかな。
そう決意し、アタシはしーちゃんに抱きついて頬ずりをした。
あの時みたいに、しーちゃんが手足をばたばたして苦しげに叫んだ。
「流ちゃん、止めてくださいー!!」
やっぱり、しーちゃんってちっちゃくって可愛い……!
という感じで、流ちゃんの語りでやってみました。
いかがでしたかね〜?
元気な感じに書いたので、文章が明るくなってればな〜と思います。
〜次回予告〜
すごろくを終えた彩歌達は、その帰り道寄り道をしていくことに。
次回、Lucky.21 かえりみち
………ちなみに、椎名ちゃんが着ていたペンギンのぬいぐるみは、アニメ「氷菓」という作品で着ていたものがモチーフです。
ではでは!
また次回に会いましょう〜!