学園に通った後の、次の日の5月3日。
建国記念日で、今日は祝日となっていて学園はお休みの日だ。
昨日の話し合いで、両親が私の家にいないということも相まって、私の家でお泊まり会を開くことになった。
恋ヶ窪さん、ひまりさん、流さん、ナノちゃんの4人と一緒にお泊まり会を始める。
私は、昨日のうちに家中を片付けたり、掃除しているうちに夜になっていたので、みんなの分のご飯を用意するのを忘れて寝てしまった。
そうしているうちに、今日を迎えてしまった。
カーテンを開けると、外は見事に青空が晴れ渡っている…………訳ではなく、どんよりとした曇り空が広がっている。
「はあ……。 出来れば晴れていて欲しかったな。」
せっかく来てもらうんだから、晴れていた方が来やすいに違いない。
まあでも、みんなが来るのは昼過ぎ辺りって言ってたし、スリッパとか用意して、もう一回ぐらい部屋に掃除機をかけて、それから……。
私は、キッチンに向かうと無言で冷蔵庫を開けて中身を確認する。
「ちょっと難しい……かも。」
ある程度の量の食材は入っていたものの、みんなが来て泊まり込むとなると、少し物足りないような気がする……。
ため息をひとつついて、時計を見て時間を確認する。
現在の時刻は、7時をちょっと過ぎたあたり。
どこに買いに行くにしたって、まだお店は開いてないだろうし、しばらくは家で支度を……
ピンポーンッ…
インターホンの音が鳴った。
もしかして、誰か来たのかな?
……はっ! もしかして母さんと父さんが帰ってきたとか?
インターホンから外を覗き込むと、そこにはスーパーの袋を携えて、こちらを見つめるひまりさんの姿があった。
服は、さっぱりとしたボーダー柄で薄手な長袖Tシャツに、チノパン、更には長袖のワイシャツを腰に巻いている、
という格好だった。
私は慌てて、玄関のドアの鍵を開けてひまりさんを家に招き入れる。
「本当に申し訳ないです〜、わたしだけ早く来ちゃっいました〜。 よいしょっと。」
ひまりさんはスーパーの袋を玄関に置き、また玄関先に出ると、旅行用のキャリーバックを引きずりながら持ってきた。
音を立てながら玄関に移動させると、私をまじまじと見つめて、目を細めて微笑んだ後にこう言った。
「彩歌さんって、可愛らしいパジャマを着ているんですね〜。」
「……っ!」
私は慌てて自分の身体を見下ろすと、パジャマを着込んだままだった。
というよりも、さっき起きたばかりだったから身支度も何も整えていなかった。
私の着ているパジャマはピンクの地に、白色の水玉模様があしらわれたスウェットの物だった……。
たちまち、私は自分のほおが熱を帯びていくのを感じる。
「えっと、ひまりさんこれは……!」
慌てて取り繕おうとすると、ひまりさんは人差し指を唇にそっと当てるとこう言った。
「わたしだけの秘密にしておきますね、大丈夫、誰にも言いませんよ〜。」
……気を使われてしまった。
「と、とにかく! ひまりさんは来るのが早かったけど、どうして早く私の内に来たの?」
なんとかして、無理やり話を逸らす。
すると、ひまりさんはスーパーの袋を少し持ち上げて、食材を買ってきたのでお世話になる彩歌さんに朝食を作ろうと思ったんです〜!と、自信満々に理由を話した。
「あっ、もしかして、もう朝ごはん食べちゃいましたか〜?」
私が首を振って答えると、ひまりさんは嬉しそうに朝食を作るので案内して下さいとお願いした。
「分かった、それじゃひまりさんはそこにあるスリッパを履いて付いてきてね。」
私が歩き出すと、スリッパを履いてパタパタと音をたてながら、ひまりさんは付いてくる。
「腕を振るちゃいますよ〜!」
キッチンに着くと、ひまりさんは早速シャツの袖をまくって料理を開始するようにしたところで、突然動きを止めた。
「そういえば、わたしエプロンしてませんでした〜!」
そう言い残して風のようにキッチンから風のように去っていった。
きっと、玄関に置いといたキャリーバックの中に入っているんだろう。
またもやパタパタと足音が聞こえ、狭い廊下からひまりさんがエプロンを着けて登場した。
全体的に真っ白なエプロンだが、所々にフリフリがあしらわれていたり、背中には大きなリボンを作るように腰紐を結んでいた。
ぱっと見る限り、メイドさんに見えなくもないデザインのエプロンだった。
「これは、外出用のエプロンなんですよ〜。 エプロン以外にも、割烹着とか、コックさんの服なんてのもあります〜。」
そう言いながらも、キッチンに立って調理を開始する。
目にも留まらぬ速さで料理をしていく姿に、若干の気まずさを覚えて、私はキッチン越しのリビングに移動した。
「これは、凄いのが来そうな予感がする……。」
そう、1人つぶやいた。
作ってもらった朝食をひまりさんと一緒に食べてから、しばらくした後。
今までの中で、最も美味しい朝食を堪能した私は、ひまりさんと今後の予定を立てることにした。
ひまりさんが、早速と言うように口を開く。
「さっき料理を作っている最中に拝見させて貰いましたが〜、少し食材ちゃんたちが少ないので買いに行きませんか〜?」
それは、私も思っていた事だったし、母さんたちが旅行に行っている間に使う分としてのお小遣いが私の部屋の机の上にあったので、お金はそれを使うことにしよう。
貰ったお小遣いは、なんと10万円……まあ、ゴールデンウィークに有給を取ってフルで休むなら、私だけとはいえ食事だとか様々な費用がかかるからだと思う。
それに、なんといってもひとり娘を家に1人にさせるんだから、それくらい何かしてくれなきゃ割りに合わないし。
ひまりさんの言葉に私は返答する。
「うん、私も丁度買いに行こうと思っていた所だし。」
すると、その言葉を聞いたひまりさんは息を巻いてあるチラシを出してきた。
そこには、私家から少し歩いた先にある商店街でセールが大規模的にやる、という内容だった。
「わたし、これにいきたいんです〜、ここで買い物しませんか?」
……ここの商店街はいった事なかったし、これを機に行ってみるのもアリかも。
「いいね、それじゃあ商店街が開くのが9時からだから、しばらくはのんびりしていって欲しいな。」
そういうと、ひまりさんはいそいそと携帯電話を取り出した。
しかし、ひまりさんが取り出した携帯電話は、今時には珍しく降りた畳まれたもので、俗に言うガラケーというものだった。
「すみません、わたしガラケーなんですけどRINEの交換しませんか〜?」
「……! うん、良いよ。」
RINEというのは、一種のコミュニケーションアプリで、その中でアカウントを作りQRコードだったりでアカウント同士を連結させて、簡単なメッセージのやりとりや、写真や動画までもが送り合えるというもので、複数人でグループを作って会話できたりもできるスグレモノだったりもする。
アカウント同士は、お互いの‘友達’として登録されることになる。
私も、先日貰ったスマホを取り出し、早速交換しあってみる。
ひまりさんの携帯を見ると、緑色で、全体的に少し丸っぽい外見をしていて、端の方には2つの出っ張りが出ていて、そこには目の様なものが描かれていて……って、これカエルの見た目をしている携帯なんだ。
RINEを開くと、早くも新規の友達の欄に「ひまり」という名前が現れる。
私は、それを友達登録して、やりとりが出来るようにする。
プレゼントされたスマホを色々いじっておいてよかった……。
と、心の中で呟きながら。
こうして文章に書いてみると、L●NEって便利なんですね〜。
というわけで、当初の構想予定を大幅に引き伸ばし、今回の話はおしまいです。
〜次回(嘘)予告〜
彩歌と陽毬の2人は、お泊まり会に必要な食材を求めて商店街へ。
しかし、そこには思いがけない人物が居て……?
次回、Lucky.30 こんどから
ん? どうやらさっきの予告は本当じゃないみたいですよ?