目を覚ますと、わたしはベットから落ちていた。
だらしなく四肢を広げて床に仰向けに寝そべってる状態。
布団が足元の床に散乱していて、ベットの上のシーツは剥がれかけていた。
「むむぅ、昨日はりんご、夢見が悪かったのかも知れないなぁ。」
ベットのさらに上を首だけ動かして見ると、二段ベットの上段があってそこには、人が居る気配は無い。
おねーちゃんはもう起きてしまったらしい。
ちなみに、わたしのベットは下でおねーちゃんは上のベットを使っている。
おねーちゃんは一階に降りちゃったぽいし、わたしもそろそろ行かないとかなー。
動け〜!動け〜!
……そう心の中で念じてみる。
それでも、わたしの足は動かない。
うーん、どうしたものか。
一応起き上がる気はあるんだけど、身体が動かない。
その時、ガチャリと音が鳴り部屋の扉が開く。
「もぅ、起きてよりんごっ! りんごの中学も今日授業あるでしょ?」
そう言って部屋に入って来たおねーちゃんはわたしの状態を見ると、ため息をついた。
「はぁ……全く何やってるのりんご。 ボクが部屋から出た時はちゃんと下のベットで寝てたじゃん。」
わたしは、そんな風に呆れてるおねーちゃんに返答する。
「おね〜ちゃん、足が動かないよぉ〜。 りんごを起こして〜!」
あまりの眠気に視界が霞む。
「もぅ、仕方のない妹ですねぇ!」
そう言うと、おねーちゃんはわたしの身体を持ち上げようとするけど……一向に動かない。
「うー、動かない……。 りんご、もしかしてまた身長伸びました? それに体重の方も……」
わたしは、顔が真っ赤になってるのを感じながらすぐさま起き上がる。
「べべべ、別に増えてないし、た、体重なんてあってない様なものだよ、おねーちゃん!」
自分でもはっきりとわかるくらい声が震えていたと思う。
……恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
「ちょっとー、椎名も、林檎もご飯できてるから早く来なさーい」
一階からおかーさんのわたし達を呼ぶ声が聞こえる。
「ささっ、おねーちゃん早く行こう?」
「りんご、起きれるなら早く起きてきてほしかったな……。」
あははは…、と曖昧にごまかしながら、わたしは階段を降り始めた。
「だから、りんごが思うに身長と同時に増えたわけだからあまり問題ないとね!」
登校中、わたしは少し誇らしげに友達に語る。
「いや、それは言い訳にしかならないと思う……。」
「さゆちゃん、そういう無粋なことは言わないに限るよっ!」
ワーワーと会話を弾ませながら、わたし達は中学校に向かう。
わたし達の中学校の正式名称は公立
どうしてこんな事を言い始めたかというと、公立校であるこの高校は、出席確認があるということだ。
ひっそりと教室に入ると、早速出席の確認が担任によって行われていた。
「
「はい、居ます。」
このクラスの委員長の唱花ちゃんは、真面目な子でみんなをまとめるのがすごい上手い。
去年も同じクラスで、類稀なる指揮力により、文化祭と体育祭共にクラスを1位に導いていた。
そんな子を横目で見やりながら、わたし達3人はひっそりと教室に入る。
「じゃ次、
「元気っすよ、ちょっとお腹が空いたくらいっす〜。」
「わかったー、給食まで待とうな、菊農池ー。」
くきゅるるというお腹の音が教室内に響き、唱花ちゃんのツボに入ったのかお腹を抱えて笑っている。
そろりそろりとわたし達はそれぞれの席に座る。
「はいはい、
「ハイハーイ! いますよぉ、センセー!」
銀色っぽい綺麗な白髪に金眼の帰国子女のティアちゃんは、いつも元気で、クラスの人気者だ。
「あー、わかったわかった、ちょっと静かにな、岸部。」
「ええと、次は
「はい先生、私は席についてますよ。」
「あ、えっと、さっきまでいなかったのにいつの間に……?」
久米川 小百合、通称さゆちゃんは、わたしが中学に上がってから知り合った子で、忍者みたいに素早く動けたりする。
綺麗な桃色のかかった白い髪をサイドポニーテールにしていて、結構高身長な子だ。
わたしと同じく高校一年生の姉さんがいるらしい。
ただ、あんまり自分の事とかを話してくれない気がするから、その辺はあまり触れない様にしてるけど。
「まあいいか、
「はーい、オレはいつでも居ますよっ!」
煙山 井荻、通称いおっちは、俗に言うオレっ娘?というものらしい。 最初はおねーちゃんと同じ感じかと余っていたけど、本人に聞けば敢えてそう自分で言っているらしい。
青色の混じった黒髪をボブカットにしていて、いつも首からペンダントを下げている。
さゆちゃんと昔からの知り合いで、多少の護身術を教えていたらしい、という噂もあるくらい仲良しさん。
「元気があって良いな、次、
「はいっ!」
そう言うわたしは、少しカールした黒髪を肩まで垂らして、紅い目を持った普通の子だ。
お姉ちゃんと同じ色の髪と目を持っていて、私自身この2つが気に入っている。
ただ、髪質はちょっとだけわたしの方がカール気味だったりする。
それでも、気に入っているのは、オネーちゃんと同じだから単純に気に入ってるんだと思うし、そう言っている。
少々シスコンだとか周りに言われるけど、おねーちゃんが好きなものは仕方ない…………本人の前では絶対に言わないけど。
と、なにかと紹介している間に先生がクラスの出席確認を終えたらしい。
授業の支度をしてそろそろ真面目にやらないと。
だって、今年はもう受験生だ。
わたしはあんまり運動が得意じゃないから勉強を頑張るしかない。
おねーちゃんと同じところに行きたいし、後輩としても少しは見てほしい。
周囲からは目標が高すぎるなんて言われるけど、あの高校に入らなければならない。
かの名門校……天之御船学園に。
授業を終えた休憩時間
そんな風に息巻いたものの、わたしは机に突っ伏して気力を無くしていた。
「あー、りんごは疲れました……。」
そう言うと誰かの声が聞こえる。
「鏡音 リンちゃん、大丈夫?」
机の上の腕の中に顔を埋めている為、誰が言っているのかわからないけどツッコミはしておく。
「……人を
りんちゃんと呼ばれることはあるが、名字を勝手につけられる覚えはない。
「はいはい、オレもそれくらいは理解できるよっと。」
この声はいおっちか。
何かとチョッカイをかけるのはいいけど、今わたしは疲れて眠いんだからそっとしておいて欲しい。
「今りんごは疲れているのです。 話しかけて欲しくないです。」
何となくおねーちゃんみたいな口ぶりで返答する。
「そっかー、疲れてるならオレんとこ来れないかぁ、せっかくさゆりーも誘ったんだけど。」
さゆりーというのは、いおっちが呼んでいる小百合ちゃんの呼び方だ。
わたしはさゆちゃんと呼んでいるけど、わたし達はお互いをあだ名みたいなもので呼び合っている。
席番号が近いということもあって、わたし達3人はよく一緒に遊んでいるからというりゆうもあったりする。
わたしは本来、いおっちからはりんりん、さゆちゃんからはこりんちゃんと呼ばれている。
さゆちゃんは、恋ヶ窪の「こ」と、林檎の「りん」を取ったあだ名を付けてくれたけど正直誰かわからなくて反応できない。
ガバリと顔を起こすと、わたしはいおっちに訪ねた。
「どこに行くの? 行くなら、りんごも行きたい!」
いおっちはそう言うわたしの顔を見るとニヤリと笑って言った。
「実は明日、温泉を無料で入りに行くんだけど、りんりんも一緒に行かない?」
家に帰ると、おねーちゃんがすでに帰ってきてて、おかーさんと話しながら玄関付近に荷物をまとめていた。
「あれ、おねーちゃんどこか行くの?」
わたしが靴を脱ぎながらそう尋ねると、おねーちゃんは説明しだした。
「実は、ボクの友達の家にお泊まり会を行く事になってるんですよ!」
羨ましいでしょうと胸を張って自慢げにしているおねーちゃんに、わたしはつい、冷たく反応してしまう。
「そーなんだ、楽しんできてね。 おねーちゃんが居なくてもりんごは平気だし。」
本当はこんな事言いたくないんだけど、気づいたら言ってしまう……。
おねーちゃんはわたしの言葉にむっとなると、少し怒った様な表情になる。
「そっか、りんごがそう言うなら寂しくないよね。 淋しくて泣いても知らないですよ!」
そういうと、荷物をそっちのけにして、部屋に戻ってしまった。
わたし達は一日中、口をきかなかった。
次の日、おねーちゃんが本当にわたしを起こしてくれなくて、11時に起きてしまった。
部屋を見渡すと、おねーちゃんが居ない。
一階に降りても、おねーちゃんがおらず、眠い目をこすりながらおかーさんにおねーちゃんがどこにいるか訊くと、どうやらおねーちゃんはもうお泊まり会に行ってしまったらしい。
わたしはおねーちゃんと仲直りするかも選べずにおねーちゃんは私の前から居なくなってしまった。
「騙されたーーー!」
それから学校が終わった次の日。
わたしは正真正銘、無料で温泉に入れることになった。
……ただし、浴場内を掃除をしてからという条件付きで。
「いやさ、騙されたも何もオレも最初にりんりんに言おうとしたよ?」
「私も理由を説明しようと思ったら……こりんちゃんすぐ寝ちゃったんだもん。」
2人ともため息をついてブラシを床にこする。
ちなみに、わたし達の今の格好は半袖半ズボンの学校指定の体操服を着ている。
掃除しやすい様にと着替えたのだけれど、湿気で服が重くなって動きにくくなってる気がする……。
体操服を持ってきてと言われて何か変だとは思ったけど、まさか掃除をさせられる羽目になるとは……。
ここで掃除するちょっと前。
「はいっ着いた。 ここの温泉が無料で入れるところだよ。」
いおっちとさゆちゃんに連れられて来たのは、豪勢な温泉宿だった。
それじゃあ入ろうーと言って裏手側にある関係者用のドアに手をかける。
「いやいやいや、なんで関係者でもないのに入ろうとしてるの!?」
普通に表から入ればいいのではという前に、2人ともこちらを振り返ると、こう言った。
「いや、関係者だよ?」
事情を聞くと、いおっちはこの温泉宿の一人娘で、さゆちゃんをここで助けたことがあるらしい。
話を聞く限り、さゆちゃんが変な男に絡まれていたのをみかねて、その男を蹴り飛ばしたらしい。
それがきっかけで、この温泉宿をよく利用しているという、お得意様の久米川病院の院長の娘であるさゆちゃんと仲良くなったらしい。
さゆちゃんと、もう1人の姉(確か名前は牡丹と言っていた様な気がする)は、昔からお金や家族の繋がりを狙う輩が多く、その男もそのうちの1人だったらしい。
そんなこともあり、何かと忙しい時期の掃除に体力のあるさゆちゃんの手伝いをしてもらって、その日はお礼として温泉に入って貰うというギブアンドテイク的な約束が出来たらしい。
今回は、そんな約束事にわたしも巻き込まれたという事だった。
「そんなことないよ、こりんちゃん。 私以外の他の人にこのことをいおちゃんが行ったことないもん。」
そう言って、さゆちゃんは微笑んだ。
さゆちゃんって何かと表情を変えないイメージだったから、なんだか新鮮に映った。
「はい、お疲れ様〜ってね!」
いおっちが終了の言葉を発すると、わたしは思わずその場にへたり込んでしまった。
うーん、掃除するだけだと舐めてかかっていたけれど、以外に重労働だった。
昼過ぎくらいに集まって、1時くらいからやり始めて3時間ほど、みっちり掃除をすることになるとは……。
さゆちゃんは、温泉に入らずに帰って行ってしまった。
なにやら、お姉ちゃんが心配だということですぐさま家に向かったらしい。
「あと1時間くらいで入浴オッケーになるはずだから、それまでは休憩所にでも行って休んでいても良いよっ。」
オレはまだこれから準備があるからと言って、いおっちと一旦別れた。
体操服から着てきた服に着替えて休憩所に行って、いおっちに奢ってもらった牛乳の瓶の蓋を外す。
喉に冷たい液体を流し込みながら、なんだか満足した気分になる。
しばらくぼーっとしていると、そろそろ温泉に入れる時間になる。
「りんごも疲れましたし、温泉入ってゆっくりしよう……。」
1人そう呟き、脱衣所入ってから服を脱いでいく。
ブラのホックを外そうとする時に少しだけ手間取ってしまった。
……うーん、わたしの胸はまたもや成長を果たそうとしているらしい。
新しいブラを買いに行かなくてはと思いつつ、おねーちゃんを思い出す。
自分の身長や体型が成長をストップしてしまっているかもしれないと、おねーちゃんが日夜、戦々恐々としていると思うと、なんだかおねーちゃんに勝ってる気がしてちょっとだけ嬉しかった。
そろそろ入ろうかと思ったところで、脱衣所の入り口から声が聞こえてくる。
「流ちゃん! ボクこんなところに来たの初めてです!」
「そーでしょ、しーちゃんとか誘ってみんなで行きたかったんだよねー。」
「あぅ〜、2人とも待ってくださいよ〜。」
「ひまりさん、あんまり走んないで……。」
気になって、入口の方を見るとおねーちゃんが何人かの友達と一緒に入ってきたところだった。
わたしは思わず叫ぶ。
「ええーー! おねーちゃん!?」
「あれーー! なんでりんごが?」
それに続く様におねーちゃんも叫んだ。
「・・・・・2人とも・・・うるさいよ。」
おねーちゃんの友達のうちの1人がそう呟いた。
というわけで、まさかまさかの恋ヶ窪 椎名ちゃんの妹の林檎ちゃん回でした〜!
ひっそりと久米川 牡丹ちゃんの妹のさゆちゃんこと、小百合ちゃんも登場です!
他の中学のクラスメイト達も個性が強そうですね。
〜次回予告〜
彩歌と陽毬の2人は、お泊まり会に必要な食材を求めて商店街へ。
しかし、そこには思いがけない人物が居て……?
次回、Lucky.31 こんどから
更に、少年少女好き?というキャラメーカーを使って恋ヶ窪 林檎ちゃんを僕が作ってみました〜!
【挿絵表示】
中学校の名前ですが、あんハピ♪やおんハピ♪のキャラの名前の由来にもなっている西武鉄道線のメッセージロゴマークを縦読みしたものを参考にしました。
気になる人は是非お調べください。
ではでは、次回はもっと長くなるかも…?