おんハピ♪ 〜Only Happy♪〜   作:赤瀬紅夜

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Lucky.31 こんどから

「それでは、そろそろ行きましょうか〜」

 

そう言いながら、ひまりさんはキャリーバッグから取り出した布製の手提げ袋を手に持ってドアを開けた。

今の時刻は9時を少しばかり過ぎたくらい。

もうすでに商店街に立ち並ぶお店が開き始めた頃なのかもしれない。

私もひまりさんの後に続いて外に出る、もちろん、お金や財布も持っていく。

その時の空は、曇り空の隙間から少し陽の光が差し込んでいて、綺麗だった。

 

 

商店街に着くと、そこそこの人が道々に居る。

商店街は、店が連なって立っている所を道を挟むようにガラス製でアーチのように天井があしらわれていて、商店街と言う割にはかなりおしゃれな外観をしていた。

 

「彩歌さん、どこのお店から入りましょうか〜?」

 

ひまりさんが嬉しそうに辺りを見渡して訊いてくる。

私自身もこの商店街に来たことは初めてだったし、なによりもどこに何があるかすらもわからない。

その辺のお店を適当に見繕って入るのも何だか気が引ける。

悩んでも仕方ないし、見て回った方が早いかな。

 

「ひまりさん、この辺に何かあるか私は知らないから、見て回らない?」

 

そう尋ねると、ひまりさんはにっこり笑って頷いた。

 

お洒落な服屋さんに、雑貨がたくさん置いてあるお店、それからこじんまりとした書店があるなど、初めてみる商店街の姿に私たちは足を止めてはお店を見て回っていた。

 

「色んなものが売られているんだ……」

 

そう私が呟くと、ひまりさんがお店にあった小物を手に取りながらこう言った。

 

「そうですね〜、割とお店の種類が豊富だと聞きましたし、どこかに大型のスーパーのようなお店もあるそうですよ〜」

 

大型のスーパーか……。

この辺にできたって聞いてたけど、まさかこの商店街の中にあるとは思わなかったな。

 

「ひまりさん、それじゃその大型スーパーを探してみない?」

 

ひまりさんは私の言葉を聞いて、持っていた小物をそっと棚にしまいこう言った。

 

「どこにあるか判りませんが、探しましょ〜!」

 

その表情は、宝物を探す少年のように輝きに満ちていた。

 

 

 

「ええと、メモ用紙は〜っと、あれ? 見当たらないですね〜」

 

なんとか探し回って大型スーパーを探してから、入店した直後のこと、ひまりさんが持ってきていた荷物を確認しようとしていると、何やら手間取っているみたいだった。

 

「ひまりさん、どうしたんですか?」

 

声をかけるとピクリッと震えたあと、恐る恐るというような動作でこちらを振り返る。

 

「あの〜、実は持ってきていた買い物リストを忘れてちゃいました〜」

 

少ししょんぼりしながら、私にそう話した。

買い物リスト……そう言えば、ひまりさんが私の家を出る前に何かメモ帳に記していたな。

忘れちゃったものはしょうがないし、せっかく楽しくお買い物してるから、あんまり責めないほうが良いよね?

 

「それは残念だけど、また思い出しながら買い物しようよ、ひまりさん」

 

「そ、そうですね〜、わたし今から何とかして買うもの思い出します!」

 

そう言ってひまりさんは頭を抱えてウンウンと考えている。

なんだか見ていて微笑ましくなって私は優しい気持ちでひまりさんを見つめていた。

 

 

「っと、こんなものですかね〜」

 

ある程度の食材を買い込んだ私たちは、大型スーパーから商店街の道へと戻ってきた。

それぞれの手には、スーパーの名前であるきららやスーパーと書かれたビニール袋を持っている。

 

「いや、結構買い込んだね。 私あんまり1人で食材とか買いに行かないからなんか新鮮かも」

 

ご飯は両親が材料をいつのまにか買ってきてしまっていたので、自分で買いに行くという経験は、私にとっては初めてだったりする。

ひまりさんの方はとても満足そうで、自分で持ってきた袋に食材を入れて持っている。

 

「そうなんですか〜、わたしはよく一人で色々買いに行きますよ〜」

 

一人で、か。

少し話が変わっちゃうかもしれないけど、こうして友達と買い物に出かけるなんて今までなかったかも。

今までじゃ考えられなかったけど……

 

「それにしても、さっきにお店は色々なものが売ってましたね〜」

そう、ひまりさんは嬉しそうに語る。

ついつい考え事をしてて、危うく聴きそびれるところだった。

 

「そ、そうだね、食材メインの何でも屋さんみたいな所だったし」

実際に、大型スーパーと言っておきながら、店内にスポーツ用品(テニスのラケットとか)、衣料品(可愛らしい服とか)なんかも置いてあって食材を買いに行く以外にも何かと楽しめた。

 

「彩歌さん、荷物も荷物ですしそろそろ帰りましょうか〜」

 

私もひまりさんの言葉に同意して歩き出そうとした時、遠くの方から声が聞こえた。

 

 

「ねえねえ〜! もしかして会った事ある?」

 

商店街の反対側の方の入り口から、金髪のようなオレンジ髪を頭の上でお団子にした子が、こちらに呼びかけながら走ってくる。

途中息を切らして私たちのところにたどり着くと、目を輝かせて話し出した。

 

「もしかして、身体測定の日に私たちって会ったことある?」

 

私とひまりさんは顔を見合わせて首を傾げた。

うーん、どこかで観たことあるような気もするんだけど…………あっ、あの時階段から落ちてきた子か。

 

「確か名前は……花子さん?」

 

おぼろげな記憶を頼りに言葉を紡ぐ。

私の言葉を聞いた花子さん?がまたもや目を輝かせて必死に頷いている。

 

「そうだよっ、私、実は花小泉 杏って名前があるんだけど、友達のヒバリちゃんがはなこって呼んでくれるんだっ!」

 

私のことは、はなこって呼んでくれるとうれしいな〜、と嬉しそうに話す。

そうか、てっきり花子という名前かと思ったけど、花小泉から文字をとってはなこなんだ。

そう、なんとなく理解して、実際に呼んでみる。

 

「私は西沢 彩歌っていうの、これからよろしくね、はなこ…さん」

 

うーん、私の性格上、どうしてもさん付けで呼んでしまう……。

 

「よろしくねっ、アヤカちゃん!」

 

「う、うん、よろしくね」

 

なんだかいつも楽しそうな子だな、そう感じた。

 

私たちの自己紹介を聞いて、ひまりさんも慌てて名乗る。

 

「わたしは、玉上 陽毬といいます〜、はなこちゃんもお買い物ですか〜?」

 

そう言ってひまりさんは買い物袋を持っている方の手を挙げた。

はなこさんは首を振ってこう言った。

 

「違うよ、今家を出てここに来たら見たことある気がするなーって思ったから思わず声をかけちゃっただけだよっ♪」

 

……凄い何となくで行動してるのか、記憶力が良いのか私には分からないな……。

 

「あの〜、はなこちゃんってどこに住んでるんですか〜? 話を聞く限り割とこの辺のようですが〜」

 

ああ、それならアッチだよ、と言ってさっきまでいた商店街の反対側にある入り口を指差した。

 

ソコは、私が不幸を発揮していないのにも関わらず暗雲が立ち込め、カラスが飛び回っていて如何にも不吉な印象を受ける。

さらに良く観てみると、道路を挟んだ先に住宅地が広がっていて、その中でも一際目立つ一軒家が立っている。

なぜ目立つかというと、明らかに雰囲気が他の家よりもドロドロしていたからだ。

 

……私の目の前にはとんでもなく不幸な子がいるのかも知れない。

 

そう考えてしまうほど、その光景は異様だった。

 

 

「それじゃあ、またね〜!」

そう言って、船長か何かのように片手をピシリと額につけて敬礼のポーズをとっている、はなこさんに手を振って別れた。

 

あれからしばらくおしゃべりをしてから荷物も重いし、また学園でということになった。

重い荷物を運びつつ、何とか私の家まで帰ってこれた。

 

「おつかれさまです〜、わたし食材たちを冷蔵庫に入れてきますね〜」

そう言って、ひまりさんは黙々と手を動かした。

 

私も手伝おうと試みたけど、ここはわたしが〜!と息巻いていたので、無理に止めるのも少し気が引けて、荷物だけ運んでリビングで1人待っている。

チラリと冷蔵庫のあるキッチンを見てみれば、ひまりさんが用意を終えたのか、満足そうにしてこちらにお皿を運んでくる……って、お皿!?

 

「彩歌さ〜ん、お昼ご飯できましたよ〜」

 

良く見てみると、ひまりさんの格好も割烹着を着たものになっている。

冷蔵庫に食材を入れながら料理もしてたって事……?

なんて凄い人なんだ、ひまりさんは……。

 

「あ、ありがとうひまりさん。 朝どころか昼もご飯作って貰えるなんて……」

 

「気にしなくて良いんですよ〜、因みに、今回はお蕎麦にしてみました〜」

 

麺つゆや、薬味まで用意された美味しそうなお蕎麦が私の眼の前に並んだ。

これネギを切ったり、海苔を用意したり、お蕎麦も茹でるのを考えると同時進行でやってのけたのは、私にとっては驚きでしかないんだけど、うん、食べようかな。

 

「いただきます」

 

「わたしもいただきます〜」

 

2人して蕎麦をすする。

 

蕎麦をすする音だけが響く部屋で、何となく話しづらくていると、インターホンが鳴った。

 

「だ、誰か来たみたいですね〜」

 

蕎麦を口にすすりながら、ひまりさんが顔を上げてそう言った。

 

「もしかして、恋ヶ窪さんたちかもしれないから、私行くね」

 

私は急いで蕎麦を片付けると、玄関のドアを開けた。

するとそこには、恋ヶ窪さんに流さん、そしてナノちゃんまでもが揃っていた。

 

蕎麦を食べていた時の時間は1時ちょっと前くらいだったけど、流さんたちが来てから、あっという間に時間が過ぎた。

私の家の中で、流さんが持ってきたゲーム機を遊んだり、ちょっとうたた寝をみんなでしてしまったり、ナノちゃんが持ってきたお菓子をみんなでおやつとして食べたりしているうちに、3時30分くらいになっていた。

 

「いやー、また負けちゃったー、しーちゃんもう1回!」

 

嬉しそうに流さんがそう言いながら、またもや恋ヶ窪さんに持ってきたゲームで勝負を挑もうとしていた。

 

「ふたりとも・・・その辺に・・・・・しな・・い・・・?」

 

ナノちゃんが2人の様子を見かねたのか注意を促していた。

 

「あの〜、わたしもやってみたいです〜」

 

そろそろとひまりさんも参戦しようかという時だった。

唐突に流さんが立ち上がって叫んだ。

 

「忘れてたーーー!」

 

その声に、みんなが視線を流さんに向ける。

 

「ふぇ……何を忘れていたんですか〜?」

 

ひまりさんが流さんに恐る恐る尋ねる。

流さんは、みんなの顔を見渡した後にこう言った。

 

「ね、みんなで温泉に行かない?」




というわけで、次回からは温泉回!

あの子とも合流しますよ……?

〜次回予告〜

温泉宿へと向かった彩歌たち。

しかし、そこには椎名の知り合いが居て……?

次回、Lucky.32 だきついて

これからどうなる!?
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