おんハピ♪ 〜Only Happy♪〜   作:赤瀬紅夜

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Lucky.8 んーと、わたしはすっごくついてるよ!

「それじゃ、アタシ達は他の部活回ろうか?どーする?」

 

そう言った流さんに、恋ヶ窪さんが質問で返した。

 

「ボク達だけで先に行っていいんですか?」

 

確かに、ナノちゃんの入る部活が決まったからって先に行って見知らぬ先輩ばかりの美術室に置いて行くにはいかない。

そう思って、未だ先輩と話してるナノちゃんを見ると、ナノちゃんの顔が………………ほころんでいることに気づいた。

きっと、好きな絵のことで先輩と話しているのだろう。

私は昔から、絵を描くのが好きだったナノちゃんを知っていた。だからこそ、きっとここは私たちは美術部からは出た方が良いのだろう。

 

「恋ヶ窪さん、私たちで先に行ってもいいと思う。ナノちゃんはこの部活に決めたようだしね。」

 

私たちの話す声が聞こえたのか、ナノちゃんがこちら側を向いて私に向かって唇だけ動かしてこう伝えた。

 

さ、き、いっ、て、て

 

と。 私はそれを頷きで返して4人で美術部を後にした。

 

 

ガラガラッ

 

美術室のドアを閉め、部室から出た所で3人で揃って頭を抱えた。

 

「う〜ん、次どこに行くのか全く決めてなくて困りましたね〜〜」

 

そう、ひまりさんが声に出した通りお昼を食べ終わった私たちは、ナノちゃんの希望で美術部に見学しに行く事は決まっていた。しかし、それ以降の計画を立てていなかった………。

 

悩んでいると、唐突に流さんがひまりさんに抱きついた。

「ひーまりーん、どこか行きたいとかないのー?」

抱きつかれたひまりさんが恥ずかしがって、声をあげる。

「ひゃうっ!砂川…さんっ、変なとこ触らないでくださいよ〜っ…。」

身をよじる様にして、流さんから離れようとするひまりさん。

そして、流さんが逃すまいとひまりさんを捕まえる。

 

そんなじゃれあいを、私と恋ヶ窪さんで一緒にぼーーっと見ていた。

 

……………。

 

すると突然、恋ヶ窪さんが赤い目を輝かせた。

 

「クンクン…!クッキーだ、クッキーの焼いてる匂いがしますよ!彩歌ちゃん…!」

 

そう言い切った恋ヶ窪さんに、さっきまでじゃれ合っていた2人が驚いて動きを止めて、こう言った。

 

「「え?」」

 

ひまりさんと、流さんの声は見事にシンクロしていた。

 

 

「クッキーのいい匂いがどこからかして来るんです。」

 

という、恋ヶ窪さんの情報を頼りにみんなで考えてみる。

 

「流石に、誰かが持って来たものって訳でも無いよねー?」

 

流さんの意見を聞くと、たしかに誰かが持ってきたお菓子とかの可能性もある。

 

だけど、良い匂いを嗅いだ恋ヶ窪さんはついさっき気がついた様なそぶりを見せていた。

 

「という事は…ひまりさん、この学園って家庭部とかあるの?」

 

そういえば、この前メモ帳を持ってたし、もしかしたら家庭部の場所を知っているのかもしれない。

そう思って、ひまりさんに尋ねてみた。

 

「か、家庭部ですか?確かあった気がしますけど………いまメモ帳出しますね〜」ゴソゴソ

 

そう言いながら、ひまりさんがポケットを探っている…………………しかし、ひまりさんの顔からだんだんと色が抜けていく。

 

「す、すみません彩歌さん〜。どこかに落として来ちゃったみたいです……。」

 

そう言って、あわあわとしているひまりさんをみて、さっきまで引っ付いていた流さんが思い出した様に呟いた。

 

「そういえば、家庭部ってこの2つ上の教室じゃ無かったっけ…?」

 

2つ上の教室………恋ヶ窪さんはよく2階分も離れているのに嗅ぎつける事が出来たのだろう?と、少し疑問に思う。

 

「そ、そうでしたね〜、ここは一階ですので、3階にあると思います〜早速行ってみましょうか?」

 

そう言ったひまりさんは、どこか落ち着きが無いようにも見えた。

さっき探していたメモ帳を失くしてしまったのかも。

 

 

そして、私たちは2つ上の教室である家庭部に向かう為に階段を登った。

2階に着いた時にちょうど家庭部のある3階の方から、生徒の何人かが降りて来る様で、話し声が聞こえて来た。

 

「それで、ぼたんは次はどの部活見学したいの?」

 

「わ、私の生きたい場所なんて、ありふれたものですが…………陸上部などに行ってみたいです。」

 

「陸上部…!いいね〜ぼたんちゃん!わたしも走ってみようかなぁ…ヒバリちゃんも一緒に走る……?」

 

どうやら3人ほどいる様で、一番先を歩いているのがぼたんと言われている子で緩めに髪を三つ編みにしている。

その次に瑠璃色の髪をストレートに背中に下ろして2人の会話を聞いているのが、ヒバリちゃんと呼ばれていた子だろう。

そして最後に階段を降りて来たのが、金色の様にも見えるオレンジ色の髪をショートにし、後ろでお団子に束ねている子で、ひまりさんよりも高めの位置にお団子を結んでいる。

 

すると突然、最後に歩いていた子が踊り場から数段下の所で足を滑らし、先を降りていた2人を追い越す様にして、私たちがいる階段近くの廊下に落ちて来た。

 

「ふぇぇ………」

階段から落ちて来た子が目を回して倒れていた。

 

「「「「……………………………………。」」」」

 

あまりの出来事に、私たち4人全員とも呆然として言葉を発せないでいると、さっきまで喋っていた2人が慌てて階段を駆け下りて来て、さっきの子に駆け寄った。

 

「は、はなこ!階段から落ちるなんて…!」

「はなこさん、しっかりしてください!わたくしなんかが、はなこさんに話しかけたばっかりにこんなことになってしまうなんて……。」

 

た、大変な事になってしまった。

どうにかして私たちも助ける手段が無いかと探そうとした時に、トテトテとまたもや3階の方から降りて来るのが………ってあのぬいぐるみみたいなロボットって確か、、、

 

「ち、チモシー!触らせて〜〜!」

 

バッと倒れていたはなこ(と呼ばれていた)が立ち上がってチモシーに駆け寄っていった。

 

「もう、触らないでよね!こう、機密な機械なんだから。」

 

そう言いながら、追いかけっこをして私たちが来た二階の方へ駆け降りて行った。

 

それのやり取りを見た2人は安心したのか、ホッと息を吐いてから、私たちに向き合ってこう言った。

 

「さっきは、あたし達のせいで迷惑かけてごめんなさい。」

 

「お礼を言いたいのは山々なのですが、はなこさんを追いかけないと行けないので、先に失礼しますね〜。」

 

そして、2人は急いで階段を降りて行った。

 

 

「嵐の様な人達でしたね……。」

 

恋ヶ窪さんの呟きにみんなで揃って頷いた。

 

 

階段を登り、しばらく歩いて家庭部の使用している調理実習室前に着いた。確かにこの距離になれば、恋ヶ窪さんが言っていたクッキーの匂いが漂ってきた。

 

早速入ってみようという事で、4人揃ってドアを開けると………

 

そこには、クッキーを美味しそうに食べている先輩達の姿があった。

 

そのうちの一人であろう先輩が、こちらに声を掛けて来てこう言った。

 

「ようこそ家庭部へ、と言ってもさっき来た一年生達………というか、雲雀丘って子がクッキーを焼いてくれて今はみんなで食べてる所なんだけどね。」

 

「良かったら食べてみて。」と、私たちにクッキーが何枚か入った包み紙をくれた。

 

雲雀丘………って事はさっき会った内の一人である、ヒバリちゃんと呼ばれていた子だろうか…?

 

「早速だけど、食べてみようー!」

 

流さんはそう言いながら、包み紙を開けてクッキーを食べ始めた。

ちょうど4枚入っていた様で、分け合えれた。

 

それぞれのクッキーが動物の形をしていて、私のはパンダの形をしたものだった。

 

一口かじってみると、焼きたてなのであろう少しだけ温かく、生地の甘さと包み込む様なバターの香りが効いていて、とても美味しかった。

 

これ美味しいと幸せそうにしているのであろう、3人を見てみるとひまりさんだけ、一口だけかじったクッキーを持ってプルプル震えている。

 

「どしたのひまりん?何かあったの?」

 

そう流ちゃんが聞いたら、ひまりさんは全員を見てこう伝えた。

「わたし、も〜っと美味しくクッキーを焼いてみせます…!今から作り始めるので、他の見学はお願いします!

また帰り際に寄って来て下さいね〜」

 

……どうやら、和食料理店「鳳玉亭」の看板娘としての、料理魂に火が着いてしまったようだ。

 

 

そして、私たちは家庭部を後にした。

 

「ひまりんって料理作る時に、あんなに気合いを入れるなんて知らなかったなー。アタシ達は次の部活見学に行こうか。」

 

「行きたいところあるんですか?」

 

流さんの提案に恋ヶ窪さんが疑問を持ってそう聞き返した。それを受けて、流さんがニヤリと笑って答えた。

 

「中学生の頃に水泳が得意だったから水泳部見に行かない?」

 

 

 

………………………

 

 

そして、その日の帰り道。

 

流さんが行きたいと言っていた水泳部に顔を出して、流さんがそのまま入部手続きを済ましている間に、私と恋ヶ窪さんで美術部にいるナノちゃんを呼びに行った。

流さんは、手続きが終わり次第ひまりさんの所に向かうようだった。

 

ナノちゃんはいたく美術部を気に入ったらしく、私たちと別れた後に入部をして、早速絵を描いていた様だった。

 

そして3人で調理自習室に向かい、ひまりさんと流さんと合流して一緒に帰ることになり、今に至る。

 

「陽毬、このクッキー美味しい・・・。」

 

「嬉しい事言ってくれますね〜、菜野花さん。明日からお弁当作って来ますからね〜。」

 

どうやら、ひまりさんの料理魂も再燃するらしい。

 

 

 

 

今日、一日で色んなことがあった。

 

 

ナノちゃんに会ったり、

 

 

部活をまわったり、

 

 

こうして帰り道に友達と帰れるなんて、

 

 

入学したての頃は考えられなかった。

 

 

 

今はこの5人で、これから色んなことを経験していきたいと思う。

 

 

「これが、もしかして幸福って事なのかな」

 

 

みんなと別れた後、

 

私はひとり、そう呟いた。




こんばんは、レッドです!

〜次回予告〜

まだまだ終わらないよ!

次回、Lucky.9 くっきー

なぜか最終回みたいな感じがでてますが、まだまだおんハピ♪は続きます。

今回を通して、彩歌ちゃんも少しだけ自分を肯定できるようになったのかも知れません。

次の更新は、色々立て込んでいる為、2週間後となります。

ではでは〜〜
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