おんハピ♪ 〜Only Happy♪〜   作:赤瀬紅夜

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Lucky.9 くっきー

身体測定と部活動の見学をした月曜日から3日が経過し、今日は14日の木曜日。

 

火曜日、水曜日と雨続きだった日から、

今日の天気模様は今朝見たニュースで「本日の予報は曇りのち晴れ、朝方のパラパラとした雨に気を付けて」という事だった。

 

しかし、学園へと向かう私の周囲にはパラパラとした雨では無く、シトシトと雨が降っていた。

 

「土砂降りにならなかっただけマシかな。」

 

そう1人つぶやいて、私は早足で天之御船学園へ向かった。

 

小雨と言うよりは、霧雨のような雨粒が傘や制服の袖を濡らす。

シットリとした湿気の中、ふと道の傍に屋根のあるバス停を通過する。

そのバス停に雨宿りでもしようかと考えたけれど、私の不幸《悪天候》の場合一定の所で留まっていると、さらに天候が崩れる事も多いから、それなら早めに学園に向かった方が良い。

 

バシャッ

 

水溜りを何となくローファーで踏む。

少しだけだけど、気分がスカッとした。

 

…………今日はまだ始まったばかりだし、学園にすら着いていない。

 

ローファーで水溜りを踏んだせいか右足が少し重いようにも感じる。

 

でもこの重みはきっと気のせいなんだろう。

今日、天之御船学園に到着して、また友達と喋ったり、菜野花と遊んだりするのに抵抗を感じているだけなのだと思う。

 

抵抗……というよりは罪悪感に近いのかもしれない。

 

私は、自分に対してこんなにも幸せになっても良いのだろうかと疑問に思ってしまう。

 

今まで、私は不幸側の人間と思ったことは、なにも小平先生が入学式のあの日に指摘した時だけじゃ無い。

 

初めて私がよく雨に降られると自覚した時。

 

親友だった菜野花と離ればなれになってしまった時。

 

中学の時にみんなが楽しみにしていた修学旅行が雨模様になった時。

 

 

いくらでもある。

 

 

……………………………いけない。

 

また雨のせいか、物事をどんどんと悪い方へと考えてしまっていた。

 

少し急ごう。

 

早足で歩いていくうちに天之御船学園の校舎が見えてきた。

 

雨に負けないように、自身の不幸に負けないように、

 

1日の中で頑張っていこう。

 

そうやって、

 

くよくよした考えを捨てたところで………

 

私は自分の居場所になりつつある学園に到着した。

 

ーーーーー

 

雨雲はどこに行ったのか、午前中の授業が終わりお昼になった所で空は晴れ渡っていた。

 

「今日もわたし達と食べましょうよ〜。」

 

その声に応え、私は机をくっ付ける。

 

そうして、いくつかの机を繋げてみんなでお昼ご飯を食べる為に固まった。

 

その面々は、私、さっき声をかけたひまりさん、そのひまりさんにお昼のお弁当を作ってもらっているナノちゃん、そしていつも私達とお昼を食べたがる流さん、最後に机が遠いので椅子だけ持って来ている恋ヶ窪さん達だ。

 

みんなで机を固めた後、ひまりさんが意気揚々と立ち上がり「恒例行事」を始めた。

 

「それでは〜、皆さん手を合わせて下さ〜い。」

 

そう言ったひまりさんの掛け声とともに5人でそれぞれ両手を合わせる。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

食事に感謝して5人でそう言った。

 

………流石にこの歳になって恥ずかしいけど。

 

 

というのも、身体測定があった日の次の日の事。

 

ひまりさんがせっかくだからみんなでいただきますと言いましょう〜と提案があった。

 

流さんのいいんじゃない?という言葉と昨日にナノちゃんがひまりさんに説教を食らっていたので、なし崩し的に決まった。

 

私は言い出したその日のみだと思っていたから、まあいいかなぁくらいに考えていたけど、もはや恒例行事と化してしまった。

 

そうして、みんなで少し恥ずかしそうにしてお昼を食べる。

 

しばらくご飯を食べながら喋っていると、話題は家族の話になった。

 

「本当に困った妹なんですよ…。」

 

と、恋ヶ窪さんが珍しく苦い顔をしてそう言った。

 

「しーちゃんそう言うけどさ、どういう妹ちゃんなわけ?」

 

流さんの問いかけに恋ヶ窪さんがしんなりとして答える。

 

「それがですね、性格がさっぱりしていると言えば聞こえが良いんですけど、要は飽きっぽくて何でもすぐ辞めちゃってて。理由を聞いても、お姉ちゃんにはカンケーないしとか言ってどっか行っちゃうし。」

ボクより背が高いし、運動神経抜群に良いですし、知らない人とすぐ仲良く……とブツブツと不満をつぶやいている。

 

というか、最後の方とか単純にほめてる気もするけど…。

 

余りの妹さんへの愚痴のオンパレードに、私たちは顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ふぁーー。」

 

昼下がりの授業中、流さんのかすかな欠伸の音が聞こえてきた。

 

いくら幸福クラスといえども、高校のカリキュラムは受けないといけない。

 

お昼を食べた後に受ける授業はやはり眠気が襲う。

 

今の受けている授業は数学I。

 

今日が初めての授業だったけれど、教科書の範囲が順調に進んでいくのを受けながら実感した。

 

確か、吾野先生という名前だっただろうか。

 

珍しい白銀の髪に、頭の上に髪の毛が跳ねていてアホ毛のようになっている。

 

のんびりとした口調での説明なのに、内容がしっかりと理解できる。

 

因数分解の公式を黒板に書いている間に、私はひっそりと周りを見渡してみた。

 

相変わらず流さんは眠そうにしているけれど、何とか授業について行こうと目を擦っている。

 

流さんと反対側の席についているナノちゃんとその隣の席のひまりさんに目を向けると、もっと驚くべきことが起こっていた。

 

ナノちゃんが真剣に机に向き合って書きものをしている思いきや、よく見ると、スケッチブックに絵を一心不乱に描いているだけだし、ひまりさんに関していえば眠気に負けたのか、机に上に突っ伏してすうすうと心地好さそうに寝息を立てている。

 

この2人はすでに手遅れだったのかもしれない……。

 

心の中で、先生が2人の姿を発見しないようにと祈りながら、恋ヶ窪さんが座る左前の方の席に目を向ける。

 

3人中2人が眠気に襲われ、1人が授業を受けていないという状況の中、恋ヶ窪さんはどうなのか……?

 

だがそこには、真面目にノートを取り真剣な表情で黒板を見つめる恋ヶ窪さんの姿があった。

 

 

そこではたと気付く。

 

私も他の子を見ているだけじゃなくて勉強しよう。

 

恋ヶ窪さんによって、勉強のスイッチが入った気がした。




タイトル関係なくちゃった。

〜次回予告〜

遂におんハピ♪も10話に突入!次は……え?彩歌の語りじゃないの?

次回、Lucky.10 めまぐるしく

何が起こるのか……。

2週間ぶりですかね。

天野御船学園→天之御船学園という間違いに気づきました。
変換が悪いんだーー(責任転嫁)
一応、今までの話での間違いを変更してきました。
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