Vanguard tale   作:九戸政景

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どうも、一番好きなクランはロイヤルパラディンの片倉政実です。今回から、今作品の本編を投稿させて頂きます。よろしくお願いします。
それでは、早速第1話を始めていきます。


本章
第1話 Vanguard and seekers


「はあ……今日もダメだったなぁ……」

 夕暮れ時、ランドセルを背負った一人の少年が溜息をつきながら人が行き交う街の中をとぼとぼと歩いていた。彼の表情はどこか暗く、誰の目から見ても彼が落ち込んでいるのは明らかに分かるほどだった。そして彼は不意に立ち止まると、暗い表情のままで手に持っていたカードデッキを見つめ、とても申し訳なさそうに視界に入っていたデッキのエースであるカードへと声を掛けた。

「ゴメンね、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』。君の事を今日もあまり活躍させて上げられなくて……」

『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と呼ばれたカードから彼の言葉に対しての答えが返ってくる事は無かったが、カードに描かれている鎌を手にした禍々しい龍の姿に彼は勇気をもらったような気がした事で、ようやく彼の表情にも笑みが浮かんだ。

「ふふ……やっぱり君と彼(・)の姿を見ていると、なんだか元気が出てくる気がするなぁ……。もちろん、ただのカードだっていう事は分かってるけど、やっぱり僕にとって君達は相棒と言っても良い存在だから、そんな風に思えるのかな……?」

『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を夕日に翳しながら少年は小首を傾げていたが、やがてクスリと笑いながらカードをデッキに戻すと、服のポケットに入れていたもう一つのカードデッキを取り出し、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と白い鎧に身を包んだ騎士のカードへ微笑みかけた。

「今日はダメだったけど、今度こそ君達が賭けられていないファイトでも勝てるように頑張るつもりだから、これからもよろしくね。『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』、『ブラスター・ブレード』」

 そして、その言葉に応えるかのように『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』の目と『ブラスター・ブレード』の剣が煌めいたように見えた後、少年はニコリと笑いながら頷き、二つのデッキをポケットにしまい、再び自宅へ向けて歩き始めた。彼の名前は進導龍聖(しんどうりゅうせい)、『カードファイト!! ヴァンガード』という世界中で親しまれているカードゲームのプレイヤーである小学5年生だ。そして、今日も学校帰りに同じプレイヤーである友人達と共に近所のカードショップに寄り、『カードファイト!! ヴァンガード』による勝負──『ファイト』を楽しんでいた。しかし、彼の勝率はいつもあまり芳しくなく、その中には彼の相棒と言えるエース達を活躍させる事すら終わってしまったファイトもあった。そのため、龍聖はエース達に対してその事をいつも申し訳なく思っており、毎日兄に手伝ってもらいながらファイトの技術向上やエースを活躍させるためのデッキ構築の思案などを行っているのだった。

 そして歩き始めてから数分後、自宅の付近まで来たその時、不意に頭の中にある映像が流れ、「……え!?」という声を上げながら龍聖は立ち止まった。龍聖の頭の中に流れたのは、一人のニンゲンがある大きな穴に落ちる光景の他、落ちた先に住む様々な姿の住人達と交流し、時にはそれぞれの思いを胸に戦う光景。そして白いヤギのようなモノに対して微笑みながら手を差し伸べる光景だった。

「……これは、一体……?」

 龍聖は頭の中に流れていく映像に対して疑問の声を上げたが、それに対しての答えは一向に返ってこず、二人のニンゲンが笑顔で握手を交わしている映像を最後にそれは終わりを告げた。そして映像が終わった瞬間、背後からこちらに向かって走ってくる二つの足音が聞こえ、龍聖はゆっくりと後ろを振り返った。すると視界に入ってきたのは、先程までの映像の最後に出て来た青地に紫色のボーダーという服に青いズボンといった服装の細目の人間と緑地に明るいベージュ色のボーダーの服に茶色のズボンという服装の人間──フリスクとキャラの二人だった。

「え……ど、どうして……?」

 あまりに突然の出来事に龍聖の頭がパンクしそうになっていた時、フリスク達は龍聖の目の前で足を止め、息を切らしながら龍聖に話し掛けてきた。

「はぁ……はぁ……ねえ、突然で悪いんだけど、幾つか質問をさせてもらっても良いかな……?」

「う、うん……僕に答えられる事であれば……」

「……うん、ありがとう。それで、質問なんだけど……君は『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と『ブラスター・ブレード』という二枚のカードを持っているよね……?」

「うん、持っているけど……もしかしてそれを賭けてファイトをしようとか!?」

「ううん……そんな事はしないよ。だって君は……その二枚のカードを相棒だと思っているんでしょ? だったらそれを奪うような真似はしないよ……」

「それなら一体どうして……?」

「えーと……それはね──」

 そしてフリスク達は、ゆっくりと息を整えながら自分達がどういった存在であり、何故龍聖に話し掛けたのかについての話し始めた。フリスク達の口から語られる話の内容に、龍聖は徐々に引き込まれていき、フリスク達が話し終えた瞬間にポケットに入れていた二つのデッキを取り出すと、デッキを見ながら嬉しそうな笑みを浮かべた。

「そっか……僕が君達を相棒だと思っているように、君達もそんな風に僕の事を思ってくれていたんだね……」

 微笑みながら龍聖が二つのデッキに語りかける中、キャラは少し不思議そうな様子で龍聖に話し掛けた。

「……ねえ、話をした側がこう訊くのもなんだけどさ……私達の話を疑ったりしないの?」

「……うん、疑わないよ。だって、君達は嘘をついているようには見えないし、僕に対して嘘をついたところで何も得は無いだろうからね」

「……そう」

「それに……君達が来る少し前、まるで君達が来る事を予言していたように君達や様々な人達の映像が不意に頭の中に流れ、その映像から君達がとても良い人なのは分かった。だから、僕は君達の話を信じるよ」

 龍聖がニコリと微笑みかけると、フリスクとキャラはゆっくりと顔を見合わせ、同時にクスリと笑ってから龍聖の方へ向き直った。

「……うん、ありがとうね、先導者君」

「どういたしまして。それと、僕には進導龍聖っていう名前があるから、出来ればそっちで呼んでもらえると嬉しいかな?」

「うん、分かった。さてと……それじゃあせっかくだから、ボク達も改めて自己紹介をしようかな?」

「うん、それが良いと思うよ、フリスク」

「分かった」

 キャラの答えに頷くと、フリスクは微笑みながら龍聖に対して自己紹介を始めた。

「ボクはフリスク。こことは別の地球に住むニンゲンの一人で、『セーブ』や『ロード』と呼ばれる不思議な能力を持ってるよ」

「そして私はキャラ。フリスクと同じニンゲンだけど、向こうではモンスターの家族と一緒に暮らしているよ」

「モンスターの家族……」

「うん。私達が住む地球には、ニンゲンとモンスターの二種族がいて、少し前まではモンスター達はイビト山という山の地下にある地下世界に閉じ込められていたんだけど、フリスクが地下世界に来た事でモンスター達は再び地上へと出てくる事が出来、今では二種族が交流し合いながら生活をしているんだ」

「けれど、次元の歪みの影響でボク達はこの世界へと飛ばされ、その先にあった『惑星クレイ』で『対話者(トーカー)』さん達と出会い、お互いの利害のために協力し合っているわけだね」

「なるほど……それで、君達がこの地球に来たのはフリスクの力で創り出されたカード達を渡しに来たから、だったよね?」

「うん。『対話者』さんや『ブラスター・ブレード』さん、そしてボクの三人が揃って君の姿を『視た』事から、ボク達のカードと君が関係しているのは、まず間違いないと思う」

「まあ……リュウセイからすれば、いきなりそんな事を言われてスゴく混乱してるだろうけどね」

「そう……だね。僕みたいな大切な相棒が賭けられた時くらいしか勝てないファイターが、そんな物語の登場人物みたいな出来事に遭うなんて思ってもみなかったけど、君達の事を信じると決めた以上、最後まで君達の事を信じてみるよ」

「リュウセイ……うん、ありがとう。それじゃあ早速カードを渡しちゃうね」

 フリスクはニコリと笑ってからズボンのポケットから件のカードを取り出し、それを龍聖へ差しだした。龍聖は「ありがとう」と言いながらそれを受け取ると、パラパラと軽く捲りながらカードの内容に目を向けた。

「……スケルトンにロボット、半漁人に恐竜みたいなモンスター……君達の仲間には本当に色々な人がいるんだね」

「そうだね。でも、皆大切な仲間で友達だよ」

「大切な仲間で友達……ふふ、なんか良いね。それで、君達のクランは『アンダーテール』っていうみたいだね」

「クラン……確か、『ロイヤルパラディン』や『リンクジョーカー』のようにユニットがそれぞれ所属している物だったよね?」

「うん。クランはデッキを組む際にはとても重要な物で、別に複数のクランを織り交ぜたデッキを組んでも良いんだけど、基本的にはクランは統一した方が良いかな。旧シリーズって呼ばれてるカード群にある『盟主』っていう能力を持ったユニットをデッキに組み込むなら尚更ね」

「『盟主』……?」

「うん。簡単に言えば、自分の場に共通しないクランのユニットがいる時に攻撃が出来なくなる能力で、例を挙げるなら『ロイヤルパラディン』の『盟主』持ちのユニットがいても、『リンクジョーカー』のユニットが一枚でも場にいたら、その『盟主』持ちのユニットは攻撃が出来なくなる感じだね。もっとも、この『アンダーテール』の中にはそれを持っているユニットはいないみたいだけど」

「……そっか」

 カードを熱心に見ながら言う龍聖の言葉にフリスクがどこか嬉しそうな笑みを浮かべていたその時、何かを思い出した様子のキャラがポンポンとフリスクの肩を叩いた。

「フリスク、カードは渡し終えたんだし、私達はそろそろ帰ろう。向こうの皆も何か新しい発見があったかもしれないし」

「あ……それもそうだね。ちょっと名残惜しいけど、帰らないと皆が心配するからね」

「うん」

 そして、フリスクは未だに熱心にカードの内容に目を向けている龍聖へ再び視線を向けると、その様子に苦笑いを浮かべながら声を掛けた。

「ねえ、リュウセイ」

「……うん? どうしたの?」

「えっとね……スゴく申し訳ないんだけど、そろそろ『惑星クレイ』に帰らないといけないんだ」

「あ、そっか……『惑星クレイ』には、君達の帰りを待っている仲間達がいるんだもんね」

「うん……リュウセイとはもっと話していたいところだけど、皆の方の進捗状況も気になるし、一度帰って安心させてあげたいからね」

「……うん、僕もそれが良いと思う。大切な人を安心させてあげたいという気持ちは、僕も分かるからね」

「……そっか」

 フリスクはニコリと笑いながら言うと、体の奥にある力を目覚めさせるイメージを浮かべながらキャラと手を繋ぎ、能力を使用する準備を始めた。そして『惑星クレイ』から地球に来る時にも感じた『大丈夫だという感覚』で準備が出来た事を確認した後、龍聖に声を掛けた。

「じゃあね、リュウセイ」

「リュウセイ、私達のカードをしっかりと使いこなしてね?」

「うん、もちろんだよ。それじゃあバイバイ、二人とも」

「「うん!」」

 フリスクとキャラは同時に返事をすると、龍聖に向かって手を振りながら『惑星クレイ』へ転送しようとした。しかし──。

「あ、あれ……?」

 いつまで経っても戻る様子が無かったため、フリスクは「おかしいな……」と独り言ちながら再び体の奥にある力を目覚めさせるイメージを浮かべ、能力を使う準備を整えた後、改めて自分達を『惑星クレイ』へ転送しようとした。だが、何度同じ事を繰り返しても転送される様子が無かったため、フリスクの顔は驚愕の色に染まった。

「嘘でしょ……『惑星クレイ』に戻(・)れ(・)な(・)い(・)……!?」

「戻れないって……まさか、あの転送能力は一歩通行だったとか!?」

「そんなはずは……でも、どうして戻れないんだろう……?」

 フリスクとキャラの表情に不安と恐怖の色が浮かび始めたその時、突然フリスクのポケットから甲高い音が鳴り始めた。

「この音って……」

「地下世界に来たばかりの頃にトリエルさんが持たせてくれた携帯電話の着信音……!?」

 フリスクはすぐに携帯電話を取り出すと、驚きから震える手で携帯電話を操作し、掛かってきた着信に出た。

「……もしもし?」

『もしもし、フリスク君。そっちの進み具合はどうかな?』

「ガ、ガスター博士……」

 電話を掛けてきた人物──ガスター博士の声にフリスクは安心感から目に涙を浮かべながら答えると、『惑星クレイ』にいるガスター博士はフリスクの様子に対して『ふむ……』と声を漏らした。

『その様子だと……何かトラブルが発生したようだね。フリスク君、現在の状況を詳しく教えてくれるかな?』

「あ、はい。実は──」

 フリスクは現状に焦りと不安を感じながらも龍聖に事情を理解してもらった事やカードを渡せた事、『惑星クレイ』と地球を行き来できなくなっている事を話した。そして話が終わると、ガスター博士は『……なるほど』と少し不安げに独り言ちたが、フリスク達をこれ以上不安にさせないためにすぐに気持ちを切り替え、落ち着いた調子で話を始めた。

『……こちら側からそちら側に行けた事は間違いないし、本当ならば戻って来る事も可能なはず。という事は、行き来をするには何か条件があるのかもしれないね』

「条件……ですか?」

『ああ。そしてそれはたぶん……先程君が渡したあのカードなんだと思う』

「カードが行き来するための条件……」

『まあ、まだこれは仮定に過ぎないけどね。ただ、そのカードを渡す事は私達の目的の一つだったわけだから、一時的に借りてそれを試すのは出来るから、それは後でやってみるとしても、まだ先導者君──リュウセイ君から正式に返してもらうわけにもいかない。だから、とても申し訳ないが……こちらで何か別の方法を見つけるまでは、そのリュウセイ君の世話になってくれ』

「……分かりました。ところで……さっきから疑問だったんですが、どうしてこっちとそっちで通話が出来ているんですか?」

『うん……説明してあげたいのはやまやまなんだが、実はその理由は私達にも分かっていないんだ』

「え……それじゃあどうして電話を?」

『先程、『ロイヤルパラディン』側の王とアズゴア王の間で協力関係が結ばれたんだが、それをどうにか伝えようと待機組で考えていた時、メタトン君が電話を掛けてみたらどうかという案を出してくれてね。ダメ元でそれを試したところ、このように通話が可能だったというわけさ』

「なるほど……」

『とりあえず、何か新発見があったら逐一報告するよ。そちらも何か新たな出来事があったり、トラブルが発生したりした時には私の方へ連絡をしてくれ。まあ、まだ試してはいないが、他の皆の携帯電話とも繋がるだろうから、話したい事が出来た時や心細くなった時には電話を掛けると良い。こちら側の皆も君達の事を心配しているからね』

「……分かりました。ありがとうございます、ガスター博士」

『どういたしまして。それでは、まずは君達の現状を話さないといけないから、とりあえずこれで失礼するよ。フリスク君、キャラ君にもよろしく』

「はい。ガスター博士、皆にもボク達は無事という事を伝えてもらっても良いですか?」

『ああ、もちろんだ。では……』

 そして、ガスター博士との通話が終わると、キャラとリュウセイが不安げな様子でフリスクに話し掛けた。

「フリスク……どうだった?」

「うん。ガスター博士が言うには、そのカードがボク達が『惑星クレイ』と地球を行き来するための条件かもしれないって。ただ、リュウセイから返してもらうわけにもいかないから、とりあえず後でその実験をする事にはなったよ。それと……行き来するための他の条件を見つけるまでは、リュウセイにお世話になった方が良いって言ってたんだけど……」

「リュウセイの世話になるって事は、リュウセイの家に泊まらせてもらうって事だよね……。でも、それは流石に申し訳ないというか……」

「そうだよね……」

 フリスクとキャラが暗い表情で話す中、龍聖が「大丈夫だよ」とフリスク達にニコリと微笑みかけると、フリスク達は同時に驚いた様子で龍聖の方へ視線を向けた。

「大丈夫って……?」

「実は……今、お父さん達が仕事の都合でよそに行ってて、ウチには僕と龍夜(りゅうや)お兄ちゃんの二人しか住んでないんだ。だから、龍夜お兄ちゃんさえ説得できれば、何とかなると思う。まあ……もし説得できてもお父さん達の部屋を使うのは難しいと思うから、二人には屋根裏部屋で寝泊まりしてもらう事にはなるけど……それでも良いかな?」

「うん、もちろんだよ。でも……問題はお兄さんをどう説得するかだよね……」

「うん……リュウセイみたいにすぐに信じてくれるなら全部話しても良いけど、そこが分からない以上はどうにも出来ないよね」

「確かにそうだよね……」

 三人が腕を組みながらどうしたものかと考えていた時、「……龍聖?」という声が聞こえ、龍聖達がそちらに顔を向けると、そこにいたのは学生服姿の一人の男子高校生だった。

「あ、龍夜お兄ちゃん。今帰り?」

「ああ、部活動が少し長引いちゃったからな。ところで、そっちの二人は?」

「あ、うん……今日知り合った友達だよ」

「ん……そっか」

「……えっと、それでね……実は龍夜お兄ちゃんにちょっと話さないといけない事があるんだけど……」

 龍聖が話し辛そうにしながら不安げな表情を浮かべていると、龍夜はニコリと微笑みかけながら弟の肩をポンと軽く叩いた。

「龍聖、落ち着いて話してごらん。大丈夫、話はしっかりと聞くからさ」

「龍夜お兄ちゃん……うん、ありがとう」

「どういたしまして。それで、何を話したいんだ?」

「うん、あのね──」

 そして、龍聖はフリスク達と出会った経緯やフリスク達が描かれたカードの件、フリスク達を自宅に泊めたい件などを話した。その間、龍夜は怪訝そうな表情などを一切浮かべず、龍聖が話し終わるまで優しい笑みを浮かべ続けていた。

「……っていう事なんだけど、良いかな……?」

「…………」

「……やっぱり、ダメ……かな?」

「……いや、良いよ。そういう事ならこの二人を放っておくわけにはいかないからさ」

 龍夜がニコッと笑いながら答えると、龍聖とフリスクは心から安心した様子で胸を撫で下ろしたが、キャラだけは不思議そうに小首を傾げた。

「……でも、どうして私達の話を信じてくれたんですか? 私達と出会う前に予感めいた物を感じていたリュウセイならまだしも、お兄さん──リュウヤさんは私達とは本当に初対面なのに……」

「はは、確かにそうだ。でも、リュウセイの話を聞いていた時、君達の目も見ていたんだけど、そこに俺を騙してやろうという思いとか悪意みたいなのとかは感じなかった。むしろ、心からの助けを求めているような感じだった。だから……かな?」

「リュウヤさん……」

「……まあ、ウチはそんなに裕福っていうわけでも無いけど、父さん達からの仕送りや俺のバイト代なんかでそこそこな暮らしは出来ているから、生活面は安心してくれ」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうございます、リュウヤさん」

「どういたしまして。さて……それじゃあ皆、早速帰ろうか」

「うん!」

「「はい」」

 リュウヤの言葉にリュウセイが嬉しそうに、そしてフリスクとキャラが揃って返事をした後、リュウセイ達は様々な話をしながらリュウセイ達の家に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 その日の夜、龍聖が自室でデッキの調整を行っていると、突如コンコンとドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と言いながら龍聖はドアの方へ顔を向けた。すると、ドアを開けて入ってきたのは、嬉しそうな笑みを浮かべたフリスクとキャラの二人であり、フリスクの手には『アンダーテール』のカードが握られていた。龍聖はその二人の様子からある事を感じ取ったが、それは直接二人の口からも聞きたかったため、ニコリと笑いながらフリスクに話し掛けた。

「その様子だと……どうやら『実験』は成功したみたいだね」

「うん、ガスター博士の予想通りだったよ」

「この『アンダーテール』のカード群は、『惑星クレイ』と地球を行き来するためのパスポートのような物なのは間違いないようだね」

「ただ、一枚でも欠けていればそのパスポートとしての機能は発揮されないみたいだから、どれか一枚だけ借りるみたいな事は出来ないかな」

「……つまり、仲間は一人でも欠けちゃいけないって事だね」

「そうなるね。だから、向こうに戻る時には今みたいにカードを全て借りる事になるけど、その時はゴメンね」

「ううん、別に良いよ。それで、向こうに残っている家族や友達の様子はどうだった?」

「うん、皆元気だったよ。それに、『ロイヤルパラディン』だけじゃなく、『ユナイテッド・サンクチュアリ』の他クランや新世代の『リンクジョーカー』達とも協力関係を結べたみたいで、次は他の国家の様子を見に行きながら別のクランとも協力関係を結びに行くつもりみたい」

「うん、それなら良かったよ」

 嬉しそうに話すフリスクの様子に龍聖が口元を綻ばせながら答える中、キャラはふと机の上に広げられているカードへ視線を向けた。

「……あれ? もしかして、デッキの調整中だった?」

「うん。まあ、いつもやっている事ではあるけどね」

「そっか……ねえ、リュウセイ。私達もそのカードゲームを覚えたいって言ったらどう思う?」

「え……それはもちろん嬉しいけど、いきなりどうしたの?」

「うん……ガスター博士の話だとしばらくはここにお世話になるわけだから、それなら私達も覚えた方が良いんじゃないかってフリスクと話し合ったんだ」

「この世界でそのカードゲームが流行っているのは知ってるし、いつかは誰かとやる事にもなるだろうから、覚えておいても損はないと思ったんだ。それに、しっかりと覚えてしまえば、龍聖の練習相手にもなれるしね」

「フリスク……キャラ……」

 和やかに微笑むフリスク達に対して龍聖は少し驚いたような表情を浮かべていたが、すぐに嬉しそうに微笑み返した。

「うん……ありがとう、二人とも」

「どういたしまして」

「それじゃあ早速色々教えてもらっても良いかな?」

「うん、もちろん!」

 そして、フリスクとキャラが机に近付いた後、龍聖の部屋は龍聖達の楽しそうな話し声で満ちていった。




第1話、いかがでしたでしょうか。次回は『アンダーテール』デッキでのファイト回……と言いたいところですが、恐らく次回はファイト回にはならないと思います。ですが、カードの効果やデッキの内容などは考えていますので、近い内には書けると思います。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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