Vanguard tale   作:九戸政景

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どうも、一番好きなロイヤルパラディンのユニットはブラスター・ブレードの片倉政実です。今回はファイト回ではなく、ちょっとした世界観の説明回やメインキャラクターの登場回です。
それでは、第2話を始めていきます。


第2話 The birth of the underground world Fighter

 異世界の住人であるフリスクとキャラとの出会いを果たした翌日、部屋のドアがノックされる音で龍聖は目を覚ますと、ベッドから体をゆっくりと起こし、眠たそうに目を擦りながらボーッとしたままで「はーい……」と答えた。すると、ドアはガチャッという音を立てて開き、そのままゆっくりと開いていくと同時に、龍夜が室内へと静かに入って来た。

「おはよう、りゅうせ──あはは、なんだかスゴく眠そうだね」

「……うん、昨日の夜にフリスク達にヴァンガードの事を色々と教えていたから……」

「あ……なるほど。それで、いつもよりも遅く眠ったから、そんなに眠そうなのか」

 龍夜は龍聖の返答に納得顔で頷いた後、勉強机の上に広げられたカードの山へ視線を向けると、「……よっぽど楽しかったんだな」と苦笑いを浮かべながら独り言ちた。そして、再び龍聖の方へ視線を向けたその時、廊下の方から二人分の足音が聞こえたかと思うと、ドアの陰から寝間着姿のフリスク達がヒョコッと顔を出した。

「おはようございます、リュウヤさん」

「リュウヤさん、おはようございます」

「うん、おはよう、二人とも。昨夜はゆっくりと眠れたかな?」

「はい、もちろんです」

「ゆっくりと眠れすぎてフリスクが中々起きられないくらいには……ね」

「ちょ……ちょっと、キャラ!」

「でも、それは嘘じゃないでしょ? まあ、向こうでお泊まり会をした時もそんな感じだったし、これは元からなのかもしれないけどね」

「う……それは確かに否定できないけど……」

「ふふ、だと思った。けど、それだけフリスクが落ちつけてる証拠なわけだし、悪い事では無いけどね」

 キャラがニコリと笑いながらそう言うと、「……まあね」とフリスクは安心したように笑みを浮かべた。そしてそんな二人の様子を龍夜は微笑ましそうな様子で見ていたが、龍聖の机の上に置かれた時計に目を向けると、両手を軽くパンパンと打ち合わせながら龍聖達に声を掛けた。

「さあ、そろそろ朝ご飯にしよう。せっかくの休日なんだし、時間は無駄にしないようにしないといけないからさ」

『はーい』

 龍聖はフリスク達と声を揃えて返事をした後、ゆっくりとベッドから体を出し、大きな欠伸をしながら龍夜達と共に自室を出ていった。

 

 

 

 

『いただきます』

 数分後、リビングに着いた龍聖達は、それぞれの席につくと、声を揃えて食事の挨拶をした。そして食べ始めてから数分が経った頃、「そういえば……」と龍夜は何かを思い出したように声を上げ、フリスク達と話をしながら朝食を食べていた龍聖に視線を移しながら声を掛けた。

「龍聖、昨日の夜に二人とヴァンガードの事について話したって言っていたけど、どこまで説明したんだ?」

「えっと……たしか用語とルールの簡単な説明と各クランの特色ぐらいだったかな? だから、今日は二人がもっとカードに触れるために一緒にカードショップまで行くつもりで、出来るなら二人が使いたいクランまでは見つけて、ファイト出来るまで行ければいいかなと思ってるよ」

「そっか。個人的には愛用している『シャドウパラディン』を推したいところだけど、勧めたところで必ずしも合うわけではないし、無理には推さないでおくよ」

「『シャドウパラディン』……たしか『ロイヤルパラディン』みたいなクランでしたよね?」

「そうだね。簡単に言えば、『シャドウパラディン』は『ロイヤルパラディン』と『ゴールドパラディン』のように仲間を呼ぶ事を得意としているクランだけど、『絆』をテーマとした山札からのコールやパワーアップの手段の豊富さを誇る『ロイヤルパラディン』、『イマジナリーギフト』の力で仲間を数多く場に呼び出し、様々なスキルで相手と戦う『ゴールドパラディン』とは違い、『シャドウパラディン』には『ユニットの退却』をコストにするユニットがいる事が特徴かな」

「『ユニットの退却』がコスト……つまり、勝利のために仲間を犠牲にする……と?」

「悪い言い方をすればそうなるかもしれない。けれど、俺は『ユニットの退却』は『仲間を犠牲にする事』じゃなく、『力を一時的に借りる事』だと考えているよ。『ロイヤルパラディン』が絆の力を用いて表舞台で光輝く英雄達で、『ゴールドパラディン』が煌びやかな鎧をまとって民達に希望を与える英雄達ならば、『シャドウパラディン』は仲間の力を一時的に奪う形で借りてでも影のように任務を遂行する英雄達。そんな感じにね」

「なるほど……」

「ああ。だから俺は、『シャドウパラディン』のユニット達が大好きなんだ。どこか邪悪な雰囲気ではあるけれど、自分達の目的を果たすためにしっかりと進んでいくそんな勇ましき黒騎士達がね」

 そう楽しげに語る龍夜の表情は、どこか誇らしげであり、そんな龍夜の様子に龍聖達が笑みを浮かべていると、龍夜は優しい笑みを浮かべながら再び口を開いた。

「まあ、今の話は俺個人の意見だから、参考程度に聞いてくれて構わないよ。もっとも、参考になったかは分からないけどね」

「……いえ、とても参考になりましたよ。そうだよね、キャラ」

「うん。それに……龍夜さんの『シャドウパラディン』への思いもとても伝わってきましたし、そんな風に思えるクランを見つけたいと思いました」

「ははっ、そっか。それなら良かったよ」

 フリスク達の言葉に龍夜は嬉しそうに笑いながら答えた後、リビングの壁掛け時計へと視線を向けると、「……っと、ちょっとゆっくりし過ぎたかな」と呟いてから龍聖の方へ視線を移した。

「もう少し話していたいところだけど、そろそろ部活の時間みたいだから、俺はさっさと食べてしまうよ。龍聖、すまないけど後片付けは頼んで良いかな? それと……カード代は後で精算するから、もし買うまでいくようなら払っておいてくれ」

「うん、もちろんだよ。今日も部活動頑張ってきてね、龍夜お兄ちゃん」

「ああ」

 微笑みながら答えると、龍夜は急いで朝食を食べ始めた。そして数分足らずで食べ終えると、「ごちそうさまでした」と手を合わせながら言い、自分の食器をシンクまで運んだ後、急いでリビングを出ていった。フリスク達はそんな龍夜の様子を不思議そうな様子で見た後、微笑みながらリビングのドアの方を見ている龍聖に問い掛けた。

「ねえ、リュウセイ。リュウヤさん、何だか急いでいたようだけど、何かあったの?」

「あ、うん。今日は『CF(カードファイト)部の』活動がある日だから、ちょっと急いでるみたいだよ」

「『CF部』?」

「うん。龍夜お兄ちゃんが学校で入っている部活動、言い換えれば集まりみたいな物で、日々ヴァンガードの戦術についての研究や特訓のためのファイトをしてるんだよ」

「へえ……そんな物があるんだ。という事は、リュウセイもそういうのに入ってるの?」

「まあね。ただ……フリスク達も知ってる通り、僕はそんなに強くないから、いつも友達から馬鹿にされちゃってるんだよね……」

「たしか、『ブラスター・ブレード』と『カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を賭けた勝負以外は、全然勝てないんだったよね?」

「うん。一応、それ以外のファイトでも勝てる時はあるけど、勝てない時の方がやっぱり多いかな。だから、いつも持っているカードを色々見てみたり、龍夜お兄ちゃんに相談したりしながら強くなるために日々頑張ってるんだ。このまま負けっぱなしなのも良くないし、彼らをしっかりと活躍させてあげたいからね」

 拳を硬く握りながら真剣な表情を浮かべて言うリュウセイの姿に、フリスクとキャラは一度顔を見合わせた。そして二人同時にクスリと笑うと、フリスクは微笑みを浮かべながらリュウセイに話し掛けた。

「リュウセイは本当に彼らの事を大事に想っているんだね」

「うん、もちろんだよ。何と言っても『ブラスター・ブレード』と『カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』はとても大切な僕の相棒だからね。そんな彼らから『先導者』と呼ばれている以上、これからはもっともっと頑張っていくよ。もちろん、新しい仲間である君達『アンダーテール』の皆とも一緒にね」

「……ふふ、そっか。それならボク達もその思いには精一杯応えないといけないかな。ね、キャラ」

「そうだね。まあ、私達が戦う機会はあまり無いかもしれないけど、もしその時が来たら全力を出させてもらうよ」

「うん、その時はよろしくね」

「うん、了解」

「了解」

 フリスクとキャラの返事に対し、嬉しそうに頷いた後、仲良く話しながら朝食を食べ続ける二人の姿にクスリと笑い、龍聖は自分自身も再び朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

 朝食後、後片付けや戸締まりを終えた龍聖達は、近所にあるというカードショップへ向けて話しながら歩いていた。

「カードショップかぁ……向こうでは行った事が無いから、スゴく楽しみだなぁ……」

「フリスク達の住んでる『地球』では、何か流行ってるカードゲームって無いの?」

「うーん……特には無かったと思う。でも、『ニンゲン』と『モンスター』が手を取り合う事で、何か新しい物は生まれていくと思うし、その時はボク達もやってみようかな」

「そうだね。でもまずは……『カードファイト! ヴァンガード』のルールや戦術なんかをしっかりと覚えないといけないね。昨夜、リュウセイに説明をしてもらったとは言え、まだまだ知らない事は多いから」

「うん、そうだね。ところで……今から行くカードショップって、どんなところなの?」

「今から行くのは、『カードステーション』っていうところで、ボク達だけじゃなく、色々な人達が日々訪れているところだよ。それに、あそこならファイトテーブルも結構多いし、二人も他の人達がやってるところを見る機会は多くなると思うよ」

「なるほど……」

「因みに、『カードステーション』という名前の由来は、買い取りや販売でカード達を様々なファイター達という『駅』との中継駅になりたいという店主さんの思いがあったかららしいよ」

「なるほどね。まあ、それなら私達という『駅』にも色々なカード達を発車してほしいところだね。もっとも、どんなカードでも使いこなしてみせるつもりだけど」

「ふふ、キャラならたしかに出来そうだね──っと、二人とも着いたよ」

 龍聖の声でフリスク達が横へ視線を向けると、そこには『カードステーション』と書かれた銀色の看板が掲げられた一軒の大きめな建物があり、それに対してフリスクは嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ここが『カードステーション』……! ここに色々なカードが置いてあるんだよね?」

「そうだね。一つにつき数枚が入ったカードパックから特定のカードだけを買えるシングル売り、色々なカードが一つの箱の中に入ってるストレージまで色々な物があるよ。でも、フリスク達の場合は、スタートデッキを買うのが一番かな」

「スタートデッキ……?」

「うん、そう。でも、それについては入ってから説明するから、まずは中に入ろうか」

「うん、分かった」

「了解だよ」

 そして、自動ドアをくぐって中へ入ると、まだ客がいない店内のレジカウンターで作業をしていたオレンジ色のエプロン姿の短い銀髪の男性が龍聖を見ながらニコリと笑った。

「いらっしゃい、龍聖君──おや、今日は新しいお友達を連れてるようだね」

「こんにちは、拳輔(けんすけ)さん。彼女らは昨日できた新しい友達で、今日は彼女らに『カードファイト! ヴァンガード』のルールを教えたり、使ってみたいユニットがあるかを見に来たんです」

「ははっ、なるほど。新しいヴァンガードファイターの誕生は、カードショップの店主としても同じヴァンガードファイターとしても大歓迎だよ」

 拳輔と呼ばれた男性がニコニコと笑いながら言うと、龍聖は拳輔を手で指し示しながらフリスク達に視線を向けた。

「フリスク、キャラ、この人は『カードステーション』の店主で、『ノヴァグラップラー』っていうクランを使っている目加田拳輔(めかたけんすけ)さん。とってもカードについて詳しいし、ファイトも強いんだ」

「そうなんだ。えっと……拳輔さん、ボクはフリスクといいます。今はちょっと事情があって、龍聖のお家にお世話になっているんです。これからよろしくお願いします」

「私はキャラ、フリスクと同じで龍聖のお家にお世話になっています。これからよろしくお願いします、拳輔さん」

「うん、こちらこそよろしく。それにしても……まさか龍聖君にこんなに可愛らしいお友達が出来たなんてね。これはあ(・)の(・)子(・)や彼(・)ら(・)が黙ってなさそうだ」

「あはは……確かにそうかもしれませんね」

 拳輔の言葉を聞いて龍聖が苦笑いを浮かべていると、その様子にフリスクはキャラと顔を見合わせた後、不思議そうに龍聖に話し掛けた。

「ねえ、リュウセイ。そのあの子や彼らっていうのは、龍聖の友達なの?」

「うん、そうだよ。ボクと同じ『CFクラブ』に所属しているんだけど──」

 その時、「……あーっ!」という声が店奥から聞こえ、龍聖達が揃ってそちらに視線を向けると、そこではピンク色のパーカーに若草色のスカートといった服装の赤いツインテールの少女が驚愕した様子で龍聖達の事を見ており、少女の姿に拳輔は小さく溜息をついた。

「……聖凪(せいな)、店内ではあまり大声を出すなってあれ程……」

「あ、ごめんなさい……って、それどころじゃなくて! 龍聖君、隣にいる子達は一体誰!?」

「え? ちょっと事情があって、昨日からウチの屋根裏部屋に住んでもらってる子達だよ。それで、今日は彼女らに『カードファイト! ヴァンガード』のルールを教えたり、使ってみたいユニットがあるかを見たりしようと思ってるんだ」

「……つ、つまり……その子達とは何も無い……って事で良いんだよね?」

「……とりあえず、聖凪ちゃんが思っているような事は何も無いよ」

「そ、そっか……」

 龍聖の言葉に聖凪はホッとしながら胸を撫で下ろすと、人懐こそうな笑みを浮かべながらフリスク達へと近付き、スッと右手を差しだした。

「突然変な事を言いだして本当にゴメンね。私は目加田聖凪(めかたせいな)、苗字から分かると思うけど、私は拳輔お兄ちゃんの妹だよ」

「セイナ、だね。ボクはフリスク、そしてこっちはキャラだよ」

「よろしくね、セイナ」

「うん、こちらこそよろしくね」

 聖凪がフリスク達と握手を交わすと、フリスクは小首を傾げながらセイナに問い掛けた。

「ところでなんだけど……もしかしなくてもセイナはリュウセイの事が好きだよね?」

「え……う、うん……」

「やっぱりね。でも、安心して。たしかにリュウセイは優しくて素晴らしい子だと思うけど、ボク達にとってはあくまでも大切な友人というだけであって、そういう対象になる事は無いからさ。ね、キャラ」

「まあ、そうだね。でも、セイナがうかうかしてると、いつの間にか……って事も──」

「そ、それはダメ!!」

「……ふふ、ゴメンゴメン。今のはまったくの冗談だよ。だから、安心してよ」

「キャラ……もう、驚かさないでよ!」

「ふふっ……はいはい」

 安心半分怒り半分といった様子の聖凪の姿にキャラはクスリと笑った後、そのまま龍聖へ視線を移した。

「……それで、リュウセイはそれを聞いてどう思ったのかな?」

「……え、いや……聖凪ちゃんの気持ちは前から知ってるし、もちろん嬉しいけど……そういうのはまだ早いと思ってる……かな?」

「そう。まあ、お互いに好きではあるみたいだし、これ以上は突かないでおこうかな」

「……うん、そうしてもらえると嬉しいかな」

「うん、了解。ところで……セイナもヴァンガードファイターなのかな?」

「うん。私が使ってるのは、龍聖君と同じ『ロイヤルパラディン』だけど、デッキ内容は結構違うかな」

「……あれ、そうなの?」

「うん。龍聖君は『ブラスター・ブレード』がメインで活躍するように組まれたデッキだけど、私は『ソウルセイバー・ドラゴン』っていうユニットがメインのデッキだから、ところどころ同じユニットが入ってるくらいで、後は全部違うかな」

「なるほど……」

「因みに……二人は最初はどのクランを使いたいっていうのは、少しでも決まってる?」

 その聖凪の問い掛けにフリスク達はコクリと頷きながら答えた。

「ボクは二人と同じ『ロイヤルパラディン』を最初に使いたいかな。昨日、用語やルールを簡単に説明してもらった時、『ロイヤルパラディン』を使って説明してもらったんだけど、その時に『ロイヤルパラディン』の連携力がとてもスゴいと思って、もし使うなら『ロイヤルパラディン』が良いかなって思ったんだ」

「なるほど……キャラは?」

「私はリュウヤさんと同じで『シャドウパラディン』かな。今朝、リュウヤさんから『シャドウパラディン』について話を聞いた時に良いなって思ったのもあるけど、『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』はなんだか対になる存在みたいだから、それならフリスクと対になるのも面白そうかなと思ってね」

「……あれ? という事は、ボクが『ロイヤルパラディン』を選ぶのを知ってたの?」

「まあね。フリスク、『ロイヤルパラディン』を結構気に入ってるようだったし、仲間と共に戦うみたいなのは好きでしょ?」

「ふふ、まあね」

「ふふっ、だと思ったよ。という事で、フリスクは『ロイヤルパラディン』、私は『シャドウパラディン』にしようかな」

「そっか……という事は、二人とも『イマジナリーギフト』が『フォース』のクランになるんだね」

「『イマジナリーギフト』……たしか、各クランに割り振られた能力なんだっけ?」

「そうだよ。『イマジナリーギフト』には万能型の『フォース』に攻撃型の『アクセル』、守備型の『プロテクト』の三つがあるんだけど、置かれたサークルにいるユニットのパワーを上げる『フォースⅠ』とパワーじゃなくクリティカルを上げる『フォースⅡ』みたいに更に二つに分かれていて、また少しだけ与えられる能力に違いがあるの。そして、そのファイト中に『イマジナリーギフト』を獲得したら、もう一つの方はそのファイト中には獲得できないから、そのデッキに合った方を選ばないといけないね」

「なるほど……やっぱり、中々奥が深いんだね……」

「そうかもしれないけど、そういう点も『カードファイト! ヴァンガード』の面白いところだと思ってるよ。それに、結構運の要素も絡んでくるから、スタートデッキを買ったばかりの人が、結構やってる人に勝つなんていうこども普通にあるしね」

「そうなんだ……という事は、たとえばボクとリュウセイがファイトして、ボクが勝つみたいな事も普通にあるんだね」

「そういう事。因みに、拳輔お兄ちゃんの『ノヴァグラップラー』は、『アクセル』っていう『イマジナリーギフト』を持っていて、これは主に呼び出せるユニットの数を増やせる『イマジナリーギフト』だね」

「なるほど……拳輔さん、『アクセル』にも『フォース』みたいに違いはあるんですか?」

「うん、もちろんあるよ。『アクセルⅠ』はサークルを増やす上にそこに置かれたユニットのパワーを大きく上げて、『アクセルⅡ』はパワーの上がり方は控えめだけど、獲得する度にデッキからカードを1枚ドロー出来るってところかな。因みに、もう一つの『プロテクト』は、さっき聖凪が言ったように守備型の『イマジナリーギフト』で、『プロテクトⅠ』は相手からのアタックを完全に防ぐ事が出来る疑似カードの『プロテクト』を手札に加え、『プロテクトⅡ』は置かれたサークルにいるユニットのパワーを上げる上に他のユニットへのアタックをガードしたくて『インターセプト』という行動をする時、ガードをするのに必要なシールドの値を上げられるんだ。まあ、今は使う予定のクランが持つ『フォース』の違いだけしっかりと覚えて、『アクセル』と『プロテクト』に関してはとりあえず覚えておく程度でも問題は無いよ」

「「分かりました」」

 フリスクとキャラが頷きながら同時に返事をすると、拳輔は満足げに頷き、「さてと……」と言いながら商品が納められている棚へと視線を向けた。

「それじゃあ……今回は『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』のスタートデッキを一つずつって事で良いのかな?」

「はい、お願いします」

「うん、分かった。後……今、ちょっとしたキャンペーン期間中だったから、二人には『フォースⅡ』の『ギフトマーカー』もつけておくよ。パワーこそ上がらないけど、相手に与えられるダメージが上がる分、いざという時にはかなりのプレッシャーを掛けられるから、上手く使えるように研究をしてみてね」

「はい、ありがとうございます!」

「ありがとうございます、拳輔さん」

「どういたしまして」

 拳輔はニコリと笑いながら答えた後、棚から『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』のスタートデッキを一つずつ手に取り、それをレジカウンターに置いた。そして、財布を取り出しながら龍聖がレジカウンターに近づき、拳輔が「おや……」と少し驚いた様子を見せると、龍聖はニコリと笑いながら静かに口を開いた。

「今は話せないんですけど、フリスクとキャラはちょっとお金を持ってないので、僕が代わりに払います」

「……ああ、さっき言っていた事情という奴だね」

「はい……さっきも言ったように、今は話せませんけど、いつもお世話になっている拳輔さんや聖凪ちゃんにはいつかお話しますね」

「……分かった、それじゃあその時を楽しみにして待ってるよ。聖凪もそれで良いかな?」

「うん! 龍聖君がいつか話してくれるって言うなら、私もその言葉を信じて待つ事にするよ!」

「拳輔さん、聖凪ちゃん、本当にありがとうございます」

「ありがとうございます、拳輔さん、セイナ」

「二人ともありがとうございます」

「どういたしまして。さてと……会計が終わったら、早速ファイトしてみるかい? 開店直後の今なら、お客さんも殆ど来ないし、何か分からない事があったら、僕や聖凪もサポート出来るから」

「あ……はい、やってみたいです!」

「元々、しっかりとやれるようにするのが目標だったし、その機会に恵まれたっていうなら、それを無駄にするのは良くないからね」

「決まりだね。それじゃあ早速会計をしようか」

「はい」

 そして、龍聖は会計を済ませると、フリスクに『ロイヤルパラディン』のデッキを、キャラに『シャドウパラディン』のデッキを手渡した。

「はい、どうぞ」

「うん、ありがとう、リュウセイ」

「リュウセイ、ありがとう」

「どういたしまして。さてと……それじゃあそろそろ二人の初ファイトと行こうか」

「「うん」」

 フリスクはキャラと共に返事をすると、揃って店奥にあるファイトテーブルの一つへ向かって歩き、向かい合う形で席に座り、手に入れたばかりのデッキをケースの中から取りだして、中に入っているカードを確認した。

「……うわぁ、本当に色々なカードがあるんだね……!」

「こっちも色々なカードが入ってるみたいだよ。まあ、フリスクの方にどれだけ色々なカードがあろうと、負けるつもりはさらさら無いけどね」

「ふふ……その言葉、そっくりお返しするよ。『ロイヤルパラディン』の絆、キャラにも見せてあげるよ!」

「……そう、それならこっちは命を賭してでも任務を遂行する覚悟を見せてあげようかな」

 声は静かではあったが、二人はお互いに負けたくないという気持ちからバチバチと火花を散らしており、その姿に龍聖は頬をポリポリと掻きながら苦笑いを浮かべた。

「二人とも……その気持ちは大切だけど、楽しむ事も忘れないでね?」

「うん、それはもちろんだよ」

「楽しみながら勝つ。それが今回のファイトの目標だからね」

「うん、それなら良いや。さてと、それじゃあ二人とも、まずはプレイマットや『ギフトマーカー』の準備、それぞれのFV(ファーストヴァンガード)になるユニットを出してくれるかな?」

「FV……あ、このG0(グレードゼロ)のユニットだね?」

「そう。それで、そのユニットをプレイマットのヴァンガードのサークルに裏向きで置いて──」

 龍聖の指示に従い、フリスク達は次々準備を進め、シャッフルと相手がカットをしたデッキを指定の場所へ置いた後、最初の手札となる5枚のカードを引いた。そして、手札のカードを確認すると、フリスクは難しい顔をした。

「う……思ったよりも手札が悪いかも……」

「……あ、そういう時は引き直しをしてみたら?」

「引き直し……そういえば、始める前に一回だけ出来るんだっけ?」

「そう。何か戦略がある時は別として、最初の手札はG0を除いた全てのグレードが1枚以上あるのが基本になるから、戻すならG0と3枚以上あるグレードから数枚の方が良いと思うよ」

「そっか……それなら、ボクは2枚戻すよ」

「それじゃあ私は……うん、1枚戻そうかな」

 フリスク達はそれぞれ戻すカードを決めると、それをデッキの一番下に戻し、再び自分でシャッフルをしてから相手にデッキを渡し、それをカットした。そしてお互いに相手からデッキを受け取ると、それを定位置へと置き、戻した数と同じ数をデッキから引いた。そして、じゃんけんで先攻後攻を決めた後、裏向きになっているFVを静かに掴んだ。

「……キャラ、準備は良いかな?」

「……いつでも良いよ、フリスク」

「分かった。それじゃあ始めようか」

「了解」

 キャラの返事にフリスクはコクリと頷いた後、キャラと声を揃えながら『カードファイト! ヴァンガード』の始まりを告げる言葉を口にした。

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」




第2話、いかがでしたでしょうか。次回はロイヤルパラディンとシャドウパラディンのデッキによるファイト回ですが、フリスクとキャラの使用デッキは既存のスタートデッキになる予定です。
そして最後に、今作についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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