Undertale 落とされた人間   作:変わり種

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第7話 天使の消えた世界

「うーん…」

 

ぼんやりとする意識の中、僕は目覚めた。目の前にはのっぺりとしたオレンジ色の天井。たしか、ここはトリエルの家の中にある自分の部屋だったはず。

 

あれ、僕はなんでまた眠っていたのだろう。さっきまでは確かに起きていたはずなのに。

 

まだ働かない頭に代わって、その疑問に答えたのは視界を塞ぐように現れた彼女の顔だった。

 

「キャラッ…!?」

 

逆さまになった彼女の顔が、仰向けで倒れ込んでいる僕を覗き込んでいた。まじまじと見つめてくるその赤い瞳には、言い知れぬ恐怖に顔を引き攣らせる自分の姿が映っている。

 

どうやら彼女は四つん這いになって、倒れている僕を頭の方から覗いてきているようだった。あまりの恐ろしさに身じろぎ一つできないまま固まる僕。彼女はそんな様子を冷たく笑った。

 

「そんなに私のことが怖い?きみらの言うGルートでは散々世話になったじゃないか。そこまで怖がることはないんじゃない?」

 

「…っ。」

 

懸命に口を開こうとするも、漏れるのは小さな息だけ。唇がワナワナと震えるだけで、何も意味ある言葉を発することができない。

 

だって、目の前にいるのはあのChara(キャラ)だ。Gルートの最後で現れた悪魔。モンスターの住まう世界に落ちた、最初の人間(First human)。それにして、モンスター殺しはおろか人殺しすら厭わず、物語の最後では世界を破滅させた張本人だ。

 

あり得ないという驚きよりも、真っ先に心を支配したのは恐怖だった。

 

こいつは地上の人間を殺すためなら自ら毒を飲んで自殺する狂人だ。そんな人間が自分の目の前にいたら、何をされるかなんて分かったものじゃない。

 

仮面のような笑みを浮かべたまま、じっと自分を見つめ続けるキャラ。まずはこの状況だけでも打開しなければ。僕は勇気を振り絞って震える口を動かし、懸命に話しかけようとする。最初は喉に栓が詰まったようになって声という声が出なかったけれど、絞り出すようにして何とか言葉を口に出す。

 

「な…、なんでここに…。」

 

「理由を聞きたい?まあ、一番はきみがすでに私のことを知ってるっていうのが大きいかな。私の存在すら知らなければ、きみに意識されることもないからね」

 

極度の緊張の中、僕は混乱する頭を全力で回転させる。どうやら、自分がキャラを知っているということが、彼女が現れたことのトリガーになっているようだ。確かに、ゲームの中でもフリスクはEXPを貯めてLOVEを上げるごとに、自分の中のキャラの存在を感じていた。では、最初からキャラがいることを知っている自分であれば、彼女を感じることもできるということなのだろうか。もっとも、まだ断定はできないけれど。

 

「安心して。私はきみ以外の人には見えていない。君だけが感じることのできる存在だからね。ま、ちょっと例外はあるけど」

 

「ということは、きみは幽霊みたいなもん?」

 

「そうともいえるし、そうともいえない。ナプスタブルークみたいに独立した個を持っているわけではないからね。わたしはきみのソウルに依存した存在さ」

 

言うなれば、僕にしか見えない幻ということになるのか。あながち、幻覚だと考えたことは外れではなかったらしい。原因が精神的な問題ではなくソウルにあると分かったのはひと安心ではあるものの、同時になぜ自分のソウルの中にキャラがいるのか、疑問が出てくる。

 

「それにしても、酷い顔をしてるなあ。そんな引き攣った顔してたら、せっかくのフリスクの顔が台無しじゃないか」

 

「へ…?」

 

キャラの言葉を理解するのに数秒ほど時間を要する。そう、今の自分はどういうわけかフリスクの姿に成り替わっているのだ。キャラの瞳に映っている自分の姿は、まさにフリスクそのもの。服装など多少の差異こそあるものの、自分はフリスクになっていると考えて間違いはないかもしれない。もしかすると、キャラが自分のソウルにいることもこれと関係している可能性がある。

 

キャラはそんな僕がいつまでも怯えた表情をしていることが許せないらしい。そんなこと言われても、これほどの超至近距離に不気味な笑みを浮かべたキャラが覗き込んできていたら、誰だって恐怖を感じずにはいられないと思うんだけど…。

 

「少しはリラックスしな。ほら」

 

「にぇっ?」

 

差し伸ばされてきたキャラの手が、僕の頬をつまんで引き延ばした。思わずパピルスみたいな変な声が漏れる。あれ、幽霊だから触れないんじゃなかったのか。このキャラは幻ではなく、実体なのか?

 

あまりの出来事に、頭が混乱する。

 

「あ、言い忘れていたけど、目と耳だけで私を認識しているとは限らないよ。人間なんだから、それ以外にも感じることはできるはず。触覚とかね」

 

キャラは僕の頬をつまみ回しながらそう言った。でも、感覚どころか実際にこうやってつまみ回してるじゃんと思ったが、手を伸ばしてみると普通の状態の頬が触れる。感覚では確かにつまみ回されている感じがあるのに、実際の頬は何もされていない。すごく不思議な感じだった。

 

どうやら、キャラの体自体には実体がないものの、幻覚として僕はそれを感じることができるようだ。ここでの幻覚には、視覚や聴覚以外に触覚も含まれるらしい。もっとも、まだまだ分からないことも多いが。

 

ようやく冷静になって物事を考えられるようになってきたものの、キャラは面白くなってきたのかまだ僕の頬をつまみ回している。落ち着いて考えると、この状況にはかなりヤバいものがあるかもしれない。自分の顔を逆さまにキャラが覗き込んでいて、文字通りの目と鼻の先に彼女の顔があるのだ。その上、あろうことか彼女は手を伸ばして僕の頬をつまみ回し弄んでいる。

 

流石にこの異様過ぎる状況には耐え切れなくなってきた。単純に怖いというのもあったけれど、何より近すぎる。最初は恐怖と驚きでそれどころではなかったが、今はどこを見て話せば良いか分からなくなってきた。

 

「あ…あの…。そろそろ、どいてくれません?」

 

「あ、悪かったね」

 

キャラは頬から手を離すと、覗き込んでいた頭を引っ込める。一方の僕も小刻みに震える手をついて起き上がると、ベッドの隅に座り直した。彼女もやがて、ベッドの上を四つん這いで移動したのち、僕の隣に腰掛ける。

 

ふとキャラの方を振り向く僕。先ほどは近すぎて顔しか見えなかったけど、今見ると彼女はなかなかに可愛らしい。いや、変な意味ではなく純粋にだ。服装こそ黒い襟付きのシャツに、緑地にベージュの太いラインが入ったセーターを重ね着していて、ドット絵で見ていたものに忠実だった。けれど、顔は血色の良いピンク色の頬が印象的な、落ち着いた顔付きのティーンエイジャーの子どもだ。見開かれた瞳と張り付けたような笑みは怖いものの、普通にしていれば可愛い少女だろう。肩に掛かるか掛からないかくらいの、ミディアムショートの茶髪もそんな彼女の雰囲気に合っていた。

 

思わずぼうっと彼女を見つめていると、偶然にも視線が合う。すぐに目を逸らしたものの、その場には若干気まずい空気が流れた。流石に僕もまずいと感じて口を開こうとしたが、その前に彼女が話し始める。

 

「私が現れた理由。まだ説明しきってなかったね。それに、きみがこの世界に来た理由も」

 

「え…うん…。」

 

「それは、きみに彼女を救ってほしいからさ」

 

「彼女?」

 

戸惑いながらも、僕はキャラに訊き返した。みるみる張り付けたような笑みから頬が下がり、暗く神妙な表情を浮かべるキャラ。見たことのないそんな彼女の面持ちに僕は驚いたものの、その後の話を聞き逃さないようすぐに意識を集中させる。

 

「さっきも話をしたけど、きみは”Player”として数えきれないほどのリセットを行ってきた。時にはセーブデータにも手を加えて、色々な展開や結末を貪ってきた」

 

「うん…。」

 

「無数のセーブデータ、無数のタイムラインの中で、フリスクは冒険を続け、あるときは真の平和主義者として幸せなエンディングを掴み取り、またあるときは冷酷な虐殺者となって私とともに世界を破滅へと導いた。また、どちらともつかない世界の中で、ある者は生かしてまたある者は殺し、エンディングを迎えたこともあった」

 

僕の記憶の中に、それらの思い出が蘇ってくる。スナック菓子を片手に作業のようにパズルを解き、戦闘を抜け、会話を飛ばす。そこに思いやりなどという気持ちは存在しなかった。あるのは好奇心と、友達に自慢したいという自尊心だけ。最初は大切に思っていた登場人物達も、周回を重ねるうちにただのオブジェクトとしか思わなくなっていた。

 

「そしてある時、フリスクの決意は壊れた」

 

「えっ?」

 

キャラの言葉に、僕は思わず訊き返す。

 

「あるリセットを迎えた辺りから、この世界にイレギュラーが起こったんだ。リセットされても記憶が消えない。たとえ“本当のリセット”をしてもね。前のデータの記憶、いやその前の前のデータの記憶も、永遠に引き継がれ続けるんだ。そこできみに質問だけど、前のセーブデータの記憶が残った状態で、好き勝手に自分を操られて、世界を滅茶苦茶にされたらどう思う?それも、何度も何度も」

 

「……。」

 

「狂うよね。自分の意志とは無関係に、大切な人が目の前で殺されていくんだから。それも()()()()()()()()()()。私だって、たぶんそんなことをされたら狂うよ」

 

何も言葉を返せない僕に代わって、キャラがそう答えた。

 

まさか、そんなこと…。

 

突きつけられた過酷な現実に、僕はうな垂れる。本当に軽い気持ちでやっていたことが、こんなことに繋がるなんて。両手で顔を覆うように強く押さえた僕は、堪え切れずに嗚咽を漏らす。

 

「フリスクはそれでも健気に生きようとした。与えられた運命なら、それに従うしかない。けれど、いつかは幸せなエンディングを迎えることを信じていた。私も、フリスクのソウルの中にいたから、常にそれを感じていたよ。でも…。」

 

今まで淡々と話し続けていたキャラが、突然言葉を詰まらす。その声は震えていた。

 

「彼女の望んだエンディングは、二度と訪れなかったんだ。そして絶望した彼女の決意は壊れた。粉々にね…。」

 

それを聞いた僕は、閉じる瞼に力を込める。

 

「それから、彼女は姿を現さなくなった。私はすぐに、何が起こったのかを悟った。彼女はロードを捨てたんだ。そして、砕け散った彼女のソウルから私の意識だけが放たれた。砕けたソウルに向かって、私は何度も何度も説得したよ。でも、彼女は聞く耳を持ってくれなかった」

 

悔し気に、それでもどこか悲しさの詰まったような声で、彼女は続ける。

 

「フリスクの現れない世界は平和だった。だって、何も起こらないから…。セーブもロードもない。タイムラインが消費されることもない。分岐せず一方向にだけ、ただただ時間が流れる世界。けれどある時、再びこの世界を覗き見る者が現れた。主人公を操る、忌むべき特権を持った存在…。」

 

(プレイヤーだ)

 

キャラは僕の心を読んだかのように、敢えてそれを言わなかった。

 

「でも、そこに操るべき主人公はいない。決意が壊れたフリスクのソウルは砕け散ったまま、どこかにいってしまったからね。そして、操作対象がなくなったプレイヤーはどうなるか…、分かるかい?操るべき分身がいなくなったプレイヤーが」

 

「まさか…」

 

「その通り。自分自身がこの物語の主人公になるしかないってわけさ」

 

キャラの口から放たれた言葉に、呆然とするしかなかった。見開かれた僕の瞳は虚空を見つめる。

 

「もっとも、何もしなければゲームが始まらないだけで、きみがここに来ることはなかったんだ。けれど、フラウィはどういうわけか、きみをここに引きずり込んできた。正確には君のソウルを。何でそんなことができたのか、私にも分からないけれど…。」

 

続ける彼女。だが、放心状態だった僕の頭にはまったく入ってこない。それでも、キャラは構うことなく一方的に口を開く。

 

「とにかく、これがきみがここに来た理由。そして、私がきみの前に現れた理由。それは彼女を、フリスクを救ってほしい、ってこと。それだけさ」

 

僕は無言のまま俯いていた。自分の何も考えなかった軽はずみな行動のせいで、彼女の決意が壊れた。そして、この世界から消えてしまった。そんな彼女を救えというのか。その原因をつくった張本人である自分が。彼女の決意を粉々になるまで破壊した、この自分が。

 

「自分にそんなことはできないと考えているのかい、きみは?」

 

キャラの声が近づく。顎に手が当てられ、無理やり顔を上げさせられた。もちろん物理的にではなく、顎を持ち上げる感覚があっただけなんだけれども、体が反射的に動いてしまう。

 

「それこそ、何もわかっちゃいないね…」

 

真正面から自分を見つめるキャラの顔は、彼女らしからぬ涙に濡れていた。見開かれていたはずの真っ赤な瞳は、細く険しい目つきで僕を睨みつけている。そして、絶えず凍り付いた笑みを浮かべていた口元は、悲しみに歪んでいた。僕はこんなキャラの顔を知らなかった。

 

「…ゴメン。ソウルレスの私にこんな顔をされても、何も説得力はないよね…。自分でも分かってる。けれど、これだけは言わせてほしい。フリスクの決意を立て直す力を持っているのは、かつてプレイヤーだったきみだけだ」

 

「…でも、僕はフリスクをそんな状況に追いやった張本人だ。できるわけない!」

 

睨みつけてくるキャラから、僕は再び目を逸らす。そんなことを言われても、自分にフリスクの決意を立て直すことなんて、できるはずがない。自分はそこまでできた人間なんかじゃないのだ。ただ彼女の心を傷つけ、余計に絶望を与えるだけに決まってる。

 

それを聞いたキャラは急に押し黙った。僕が振り向くと、彼女は暗い表情のまま俯いていて、その瞳は前髪に隠れて見えなかった。だが、やがて彼女は小刻みに震えながら、静かに口を開く。聞こえたのは、今までに聞いたことのない程に暗くて低い、怒りに満ちたおぞましい彼女の声だった。

 

「やる前から諦めるのか?あれだけのことを、ただそれが“できる”ってだけでしてきた君が。散々あそこまで世界を滅茶苦茶にしておきながら、何もせず逃げると?何一つツケを払わないで?」

 

前髪の隙間から覗かせた彼女の瞳が、赤く光った。

 

突然、自分の体に衝撃が走る。何が起こったのかを理解する前に、首が強く締め付けられた。目を開くと、キャラが恐ろしい血相で僕の首を絞めていた。力は徐々に強まり、視界が狭まってくる。懸命に彼女の手を払おうとするものの、ただすり抜けるだけで僕の腕は虚しく空気を掻いた。

 

「いいかい?きみは私にソウルを差し出した身でもあるんだ。今さら逃げることなんて、できるとでも思っているのか?」

 

僕の目の前で、みるみる彼女の瞳が落ち窪んでいく。あれは、Gルートの最後で見たキャラの姿に他ならなかった。朽ち果てた死体のような黒く落ち窪んだ瞳。滲み出るおぞましいまでの狂気。底なしの恐怖に僕の顔は引き攣った。とにかく叫んで助けを呼ぼうとするも、うまく声が出せない。そうしている間にも、視界はさらに狭まっていく。

 

(ヤ、ヤバイ…。このままじゃ……。)

 

懸命に息を吸おうともがき苦しむ。無我夢中で手を動かし、キャラの手を振り払おうとする。しかし、無駄な足掻きだった。徐々に意識が遠のき、何も物事が考えられなくなる。そんな中、ぼやけ始めた僕の視界に、再び彼女の顔が映った。

 

「…お願いだ。彼女を助けて。それができるのは君しかいないんだ…」

 

薄れゆく意識の中、僕はふとキャラの顔が元に戻っていることに気づいた。その顔はすっかり赤くなっていて、酷く泣きじゃくっているようだった。間もなく、首を絞める力が弱まる。

 

「っ、はぁっ……。」

 

解放された僕は、酷く咳き込んでその場にうずくまる。激しく脈打つ心臓。吐き気を催すものの、顔をしわくちゃにしながら何とか息を整える。そして、彼女の問いに答えようとすぐさま顔を上げた。

 

だが、そこに彼女の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、僕はそのあと何もせずただトリエルの家に留まっていた。

 

ゲームとは異なり、ここでは1日の時間が自然に流れていた。本来であればすぐに地下に向かい、トリエルと戦うことになるはずだった。けれども、僕は新たな家族の一員としてトリエルに迎えられ、夕食まで共にしたのだ。

 

食卓を飾ったのは、本来このルートでは食べられるはずのないカタツムリパイ。想像していた見た目とは異なり、こんがりとついた焼き目が美味しそうなごく普通のパイだった。もっとも、切り分けたときにゴロゴロと出てきた黒い塊には少し閉口したけれど。

 

気になるのはその味だったが、あんな出来事があった僕には料理を味わって食べる余裕なんてなかった。トリエルが腕に縒りを掛けてつくったものなのだから、本当は頬がこぼれ落ちるほどに美味しいのだろう。けれども、口に入れてもサクサクとした触感と独特の歯ごたえがあるだけで、何も味は感じない。トリエルには本当に申し訳がなかった。せっかく彼女が僕の到着を祝ってつくってくれたのに。

 

そのうちに気持ちが悪くなってきた僕は、彼女に謝ると早めに自分の部屋に戻った。そんな様子を酷く心配されたものの、疲れているのだと言って僕は何とか誤魔化す。正直、トリエルの顔を見ているだけでも辛かった。夢で見たあの光景が重なってくるからだ。目を見開いて驚きの表情を浮かべる彼女。青いローブを赤黒い血に染めて、苦しみに顔を歪める姿。

 

今にも溢れ出しそうな涙を必死に隠して、僕は駆け込むように自分の部屋に入った。

 

そして、ベッドに腰を掛けると、深く息を吸い込んで心を落ち着かせる。涙を拭った僕は、胸に手を当てて心臓の鼓動を確かめた。

 

ドクン、と脈打つ小さな心臓。しばらくそうしているうちに、どうにか気分が和らぎ、荒くなっていた息も穏やかになった。

 

そのままベッドに仰向けに寝転んだ僕は、天井を見つめる。のっぺりとした、何の変哲もないただの天井。そして、ゆっくりと息を繰り返しながらいま一度、先ほど起こった出来事を振り返ってみた。

 

 

 

 

 

僕の前に突然現れたキャラ。

 

彼女はこの世界で起きたことをありのままに話してくれた。プレイヤーとしての僕の身勝手な行為が、世界をぐちゃぐちゃに破壊し続けたこと。イレギュラーにもある時から、フリスクの記憶が消えなくなったこと。そしてそれが原因で、彼女の決意が壊れてどこかに消えてしまったこと。

 

それを招いたのは、全て自分の所為(せい)に他ならない。

 

気づかぬうちに、僕は重い罪を犯していた。全ては自分の楽しみのため。そんな理由で僕は口に出すのも憚られる非道なことを平気で行い、彼女を絶望の淵へ陥れたのだった。

 

にもかかわらずキャラは、僕にしかフリスクを立ち直らせることはできない、と言った。

 

何故だろう。普通であれば、全ての元凶をつくった張本人である僕は、最もフリスクに恨まれる存在のはずだ。殺されても仕方のないくらいに。そんな僕が彼女に謝ったところで、赦してくれるのだろうか。いや、絶対に赦してくれるはずはない。

 

そんな時、キャラの言った言葉が蘇る。

 

(やる前から諦めるのか?あれだけのことを、ただそれが“できる”ってだけでしてきた君が。散々あそこまで世界を滅茶苦茶にしておきながら、何もせず逃げると?何一つツケを払わないで?)

 

そうだった。

 

赦すか赦さないかなんて、フリスクが決めることであって、僕が決めることではない。少なくとも僕は、散々世界を滅茶苦茶にしてきたツケを払わなければならないのだ。それこそが僕が犯してきた罪を償う唯一の方法なのかもしれない。

 

僕はそう信じるしかなかった。もし、彼女が赦してくれなかったら、その時はその時だ。殺されようが、永遠にこの世界に閉じ込められようが、甘んじて受け入れるしかない。

 

ぼんやりと寝転んでいた僕は、拳を強く握る。

 

これは、僕の罪の償いと彼女を救うための旅。もはや、生易しい気持ちで歩んでいいものではない。僕にはプレイヤーとして、罪を犯した者としての責任があるのだ。

 

僕の決意は、さらに深まった。

 

 

 

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