幻魔特区スザク side:H   作:鴨鶴嘴

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プロローグ 鈍色の衝動

 それは圧縮された時間の中で、呼び掛ける。

 一人の人間だったモノは既に死に絶えた。が、別の器、融解したガーディアンコインの残滓の中で短縮された電気信号による複製。あるいは、今際に客観が生み出した別人格。それによる思考実験が行われていた。

 

 ニクイ・・・ニクイ・・・グオオォ……オォ……

 

 ──何がそんなにも、憎いんだい?

 

 ガーディアン共ガニクイッ!!ニンゲンヲ道具ミタイニ、人工生命ノ分際デッ、オレヲ見下シヤガッテ!?……コロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!!

 

 ──どうどう、そう一人でエキサイトされたら、折角の対話が続かない。少し感情を抑制してあげようか。

 

 コロシテ……オレガ……オマエハダレダ?

 

 ──落ち着いたかい。でも、質問をするのはこちらだ。さて、君は『道具みたいに』扱われて怒っているようだけれど、それを初めから承知していたんじゃないのかい?自分は捨て駒に過ぎないモルモットだと知った上で、ガーディアンの力を求め、力を制御出来ずに破滅した。気づいてないフリは無駄だ。君はどこまでも人間で、可能性を自分を削ることでしか見出だせなかった。いやはや、涙を誘うほど不憫だね。

 

 コロシテヤル・・・ナンダ。殺意ガ、続カナイ。コレガ感情ノ抑制カ。ソノ傲慢サ、ユルサナイ。

 

 ──クククッ、君って本当にユニークだよ。好きだ、恋してると言ってもいい。やはり“進化の因子は、我々が捨てた感情の中にある”という私の仮説は正しかった。

 

 シネ。

 

 ──いいとも。私のリソースを君にあげよう。

 

 ナニヲ言ッテイル?

 

 ──さようなら、だよ。君は私の(情報)から生まれ変わる。私の子供として、新たなステージに昇華するんだよ。ヴィルゴ・ニーダ、愛しい私の子。君が次に産声をあげる時、私に名前をつけさせて欲しい。

 

 ナンダコレ、ハ……熱ツイ!クソ、存在ガ、崩レテイクッ!?オレニナニヲシタカ答エロッ!!

 

 ──『アレン・アルター』だ。リソースを使える今のうちに、書き込んでおこう。……今はおやすみ。

 

 

 ◆◇◆

 

 

『ハローキワム。通信は良好ですか』

 

「……ああ、よく聞こえてるよアサギ。あのウシュガ博士が調整してくれたしな、流石だよ」

 

『ですね──目的地の座標に変更はありません。新たに補給地点等の情報をマップに加えておきましたので、後で確認してください』

 

「了解」

 

『では、通信を切ります。次の通信は14:00に。私もカメラから其方の様子を見ていますが、何か問題が発生した際にも通信を繋いでください。では──』

 

「心得た。じゃあまたな──さて、行くかクロ」

 

「アンッ!」

 

 ウシュガ博士の改良型フォナーでマップを歩きながら確認していると、いつの間にか森は林に変わっていた。よく観察すれば、草の踏み跡が、疎らだか確かにある。

 

「高濃度のソムニウム反応、だったか……胸騒ぎがするな」




時系列はだいたいリロデ時間です。本当は333年後にしたかったけry「3はイカンよなァ!?」

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