Fate/EXTRA-CCC 〝Repeating world〟   作:あるてぃめっと羊

1 / 1
No.1 Fast Stage
#0 全て忘れて


静かに、落ちていく。僕はどうしてしまったんだろう。

 

周りを見渡せば全てが黒色だ。まっくろだ。何も無い、なにもない、ナニモナイ。身体の力が抜けていく。瞼を開けているのか閉じているのかさえも分からなくなってくる。何も見えず、何も聞こえず、何もかも分からなくて。自分が何であったかさえも、薄れて来てしまった。

此処は何処で、自分は一体何だったのか。真っ暗闇に落ち行きながら遠のく思考で考える。

感じられるのは落ちていく感覚だけ。どうする事も出来ずに瞼を閉じていれば、どぽん、とまるで水に入ったかの様な感覚に見舞われた___が、息はできる。苦しくない。

 

瞼を開ければ視界いっぱいに広がる'0'と'1'の数字。青い海の様な場所。ならば此処は何処なのか、どうやら僕は電子の海へとダイブしてしまった様だ、なんて少し非現実じみたことを考える。だがそんな事を考えている間にも身体が少しずつ薄れて行っていた。意識も一緒に薄れて行く。このまま僕は消えてしまうのか。量子になって溶けてしまうのか。不安に思うもそんな心さえ消えていく。…意識が、薄れて行く。何もかも、無くなってしまいそうな、そんな一瞬前。…桜のある校庭に誰かが見えた気がした。

 

ぽつり、一人で立っている君がいる。眩しくて、僕なんかじゃきっと触れられないと思っていた人。いとおしいひと。くるくると景色は変わる。楽しそうに僕へ微笑む君、慌てる君、悪戯っ子のような笑みを浮かべる君。色々な君が見えた。

 

…そう、きっと僕は君が好きだった。大好きだった。…もう、名前も思い出せないけれど。

 

最後に見えたのは寂しそうに微笑む君と泣き叫ぶ僕。

 

 

嗚呼、どうして、僕は君を________

 

 

 

 

________________

 

 

風に頬を撫でられた気がして、重たい瞼を開ける。

すると、視界が桃色で埋め尽くされ少し驚いてしまうも、あまりの美しさに思わず息を吐いた。穏やかな風が吹き、はらりひらりと桜が舞う。…どうやら此処は桜の木の上のようだ。それも、随分と大きくて立派らしい、自分が背を預ける桜の幹はかなり太い。

ふと、髪や服に着いていた花びらを払おうと己の身体へ目を向けた時、小さな違和感に気が付いた。

 

自分が着ていたものは見た事ない制服。これはセーラー服…だろうか。それに銀色の髪の毛。自分の髪の毛は銀色では無かったような気がして、…待て、元の色は、何だったか。

 

 

自分について考えはじめると止まらない。いや、考えても考えても分からない。

 

 

自分の名前は?自分は何処の人間なんだ?此処は何処?僕はどうしてこんな場所に?

 

 

ずきん、と頭が痛んだ。……もしかして、だが。…自分は記憶喪失になってしまった、と言うのか。

 

 

「……嘘だろう、…僕は、一体…?…………名前、なまえ…僕の、名前だけでも……」

 

 

胸に手を当て考える。一人称が僕、という事に対しては不思議と違和感は湧かない。ならば元々僕という一人称を使っていたのだろう。頭をフル回転させ、必死に朧気な記憶の中から自分の名前を探した。

 

…そう、自分の名前、は、

 

 

「………えら、ん。…えらん。エラン。ええと、僕は…エラン、エラン・シルフィーネル。えらん、エラン……うん、僕は、エランだ。」

 

 

漸く浮かんだ一つの単語、一つの名前。エラン。エラン・シルフィーネルという名前を言葉にすればしっくりときたのでこれが自分の名前だと納得すればうんうんと頷いた。

 

 

エラン・シルフィーネル。それが僕の名前だ。

 

 

名前を、思い出したは良いものの、…他の事は何一つ思い出せない。自分が何者で、此処が何処で、どうしてこんな姿をしているのかさえも、思い出せないのだ。…ここで頬を撫ぜてくれる風は随分と気持ちがよかったから。…まあ、眠くなってしまうのは当然で。

 

 

「…眠ったら、マズイかな。……ううん、でも、何もわからないし…どうしようも、ないし………此処、心地良いし。……ふふ、ねむってしまおうかな。」

 

 

正直、自分の名前を思い出しただけで満足出来たのだ。他の事が全く分からなくても、名前があれば、大丈夫な気がして。…次第に瞼が落ちてくる。桜の花びらもひらひらと眼下へ散っていく。

このまま眠ってしまっても良いだろう、なんて思えばあとは眠るだけ。今度は薄桃色の花びらに包まれながら、木の幹へと背を凭れ掛けさせて夢の世界へと戻ろうとした、………その時だった。

 

 

「おや、そんな所で眠ってしまうのですか?落ちてしまったら、危ないですよ。」

 

 

下から、誰かの声が聴こえた。穏やかな少年の声。それは何故か、…聞いただけで安心してしまうような、優しい声色だった。




はあい!!と言う訳で羊さんの登場です!めえ〜。

最初なのに短いですよね…でも羊さん的には長すぎず短過ぎずが好きなので、これから執筆しつつ安定した長さにできればな、と思っています。

さて、月の裏側へ迷い込んでしまったエランさん。果たしてエランさんは何者なのか?エランさんを見付けた少年は一体誰なのか!分かってしまって居る方は多いと思いますが、次回までお待ちください〜!

次回!!『目と目か合う瞬間に好きだと気付いt』(嘘)

です!お楽しみに…☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:50文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。