ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

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狐がマジになります

たまには働く狐をどうぞ・・・


『1』っぱい『8』っちゃけんした!

〈ホネスティ〉

 

〈アキバ〉の町に拠点を置く五大戦闘系ギルド、円卓会議11席の一席。ゲーム時代から、大規模戦闘における情報蓄積と情報公開を積極的に推し進めている。戦闘系ギルドでは人数750を誇るアキバの町で二位に付くほどデカイギルドだ・・・その割には影が薄い

ギルドマスターは〈先生〉と異名を持つ〈アインス〉。サブ職業が〈学者〉だかなんだか知らないけど、何処に〈先生〉の要素があるのか小一時間問い詰めたいほど謎な人物である

私の解釈ではあるが、〈ホネスティ〉といい〈アインス〉といい……影が薄い集団である

 

 

 

 

「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!~突撃!隣人のお宅~」著作者:くずのは

より抜粋……

 

 

 

 

「ん~、影の薄さはアキバで1番でありんすな。おおっと!?」

 

彼女は、明るい日差しに照らされて、白く飛んだような色合いを見せる景色や畑に視線を向けた

 

「おかえりなさーい!」

「おお、おっかえりー!」

「今回の作戦の功労者のご帰還でありんすな♪」

 

光り輝く畑に挟まれた農道を8人の〈冒険者〉が悠然と歩いてくるのであった・・・

 

 

 

 

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

え……誰?いや、テンションがハイッ!な賢狐だけど……

 

 

 

 

 

ザントリーフ大河にほど近い、漁具倉庫を一時的な本陣として借り受けていたマリエール達は、街の周囲に出していたパトロール部隊からの念話を中継し、防御計画を練っていた。

 

もうすでに半日以上、ゴブリン達の目撃情報はない。昨晩の奇襲作戦が功を成したのかゴブリン達は少なくとも山中の森の中へ完全に撤退したらしかったが……まだ油断はできない

 

誰もが緊張した面持ちで辺りを警戒しているが……駄狐は違かった

 

「りんご~りんご~……林檎が恋しいでありんす~………」

 

日に照らされて暖かくなった藁の山の天辺に陣取り、余計な日差しが当たらないようにマリエールが持ってきたビーチパラソルを横に差しながら、今は手に入らない林檎の事を思い焦がれていた……

 

本来なら臨時とは言え、この集団の参謀役についている彼女はマリエール達と共に防御計画を練らなくてはいけないのだが、昨日の作戦で役目は終わったとばかりに寛ぎはじめたのだ

 

夏季合宿に参加した新人は勿論、引率の中堅プレイヤーは「コイツ状況判っているのか?」「大丈夫か!アイツ!」と言った非常識な人を見る目を向けて、あまつさえ彼女の事を良く知る人は「あかん、ここまでニートが進行した」「駄目だアイツ……どうにもできねぇ」と哀んだ目を向ける始末

今、この場にいる〈冒険者〉は共通して「空気嫁駄狐」と考えただろう……

 

せめて夢の中で林檎とランデブーしようと、ホカホカと暖かくなった尻尾を枕に昼寝に入ろうとした彼女であったが……下から見上げてくる視線に気づき顔をあげた

 

「……なにをしていんすんでありんすか ?住人は避難するように伝えたはずでありんすぇ」

「お姉ちゃんは魔……〈冒険者〉?」

「今魔物って言おうとしたな!尻尾かッ!尻尾がいけありんせんのか!」

 

目線を下げた先には人形を腕に抱いた少女がオズオズと彼女を見上げ、話しかけてきたのだ

しかし、彼女の剣幕に押され一歩後ずさってしまった……子供に本気で怒るなよ、駄狐

だが、少女は口に溜まった唾を飲み込むとまた彼女を見上げて話しかけてきたのだ

 

「お母さんから聞いたの!街を守ってくれてるって!だからお礼がしたくて!」

「お礼?まだ早くありせんしか?」

「コレ!うちで取れたの!食べて!」

 

少女は下げていた鞄から瑞々しい球体の果実を取り出した

「林檎っ!」と声をあげ、藁の山を降りる彼女。しかし、少女の持つ果実がなんなのかわかると尻尾をクタンっと垂れ下げたのであった……

 

「梨、でありんすか……」

「うん!今年の出来は良いってお父さんが言ってたの!」

 

確かに日に照らされて艶々に光る緑の果実は食す前から「私甘いよ!」と訴えかけているように思えた、それも手渡す人が満面の笑みを浮かべた少女と来たものだ!……一部の人にはご褒美に違いない!

 

……そして、この〈ご褒美〉は彼女にも適応された

顔の頬はしだいに上がっていき、垂れ下がっていた尻尾も徐々に上がっていった、しまいには左右に揺れ出すほどに魅力的な笑顔であったのだ

 

「ありがとうございんす♪……ここはまだ危険でありんすぇ。 早くおっ母とおっ父の所にもどりなんし?」

「うん!頑張ってね!お姉ちゃん!」

 

彼女に手を振りながら走って去っていく少女の後姿を見つめながら、彼女は梨に齧りついた

 

「……たまには梨もおつでありんすね~、しかし、こな報酬もらいんしたら、わっち達も頑張りんせん といけなわぇ」

 

彼女は手に持ち梨を器用に弄びながら、町の外れへと動き出したのであった……

 

 

 

 

……街中の警備に出掛けた三人組の新人達から海岸線方向の白い波が立っているとマリエールに報告が上がって来た

 

駆けつけ、白い波を確認するだけで数は200を越していた

防衛は困難を極める……そう思うマリエールとはうらはらに、直継や新人達は各自、弓やナイフをもちいて先制攻撃の準備を整えていた……みなが一団となって町を防衛しようと考え動き出しているのだ

 

「マリエさん、いっちょ景気づけに号令頼むわ」

 

 直継は、大きく笑って云った。

 マリエールの気持ちは、その笑顔だけで青空に羽ばたくように軽くなる  

 

「わかったで。えっと。……あ、あんな、みんなな!今まで力を貸してくれておおきに。みんなの力で、チョウシの町は1人の犠牲者も出さず、多くの田畑を荒らされもせずに、ゴブリンからの攻撃はしのいだ。これは本当に嬉しいことや。でも、もうちょい。こっちの敵も倒さんと終わらん……。この町を守りきる事にならん。もう一戦、力を貸してや……。うち、みんななら出来るって信じとる。――ん、いこうっ!! 出陣やっ!!」

 

そうして、マリエールの号令をさかいに激戦を強いられるであろう海岸線での防衛線が幕をあげたのであった

 

そして、防衛線はなにも海岸線だけで行われている訳ではなかった……

 

海岸とは反対側、ザントリーフ大河から離れた農産地帯でも戦闘が行われそうになっていたのだ

 

数十を超すゴブリン、数十を超す魔狂狼(ダイアウルフ)が小隊を組み進軍中、それはまさに陸路を進む黒い波となってチョウシの街に襲いかかろうとしていたのだ……しかし、黒い波は一つの防波堤によって止められてしまう

 

金色に光る尻尾が九本、やけに露出度が高い着物、手には金と銀で構成された扇子……彼女が敵前を目の前にして只一人、優雅に歩きながら現れたのだか……

 

ゴブリン達は合計で100を超える。しかし、只一人に足並みを止めてしまったのは、彼女が醸し出す雰囲気がそうしなければならないとゴブリン達の本能に語りかけているからであった

 

「……まこと大勢いんすね、わっちは逃げたくなりんした よ?」

(海と山とで同時進行……〈冒険者〉は無能なゴブリンが思い付くとは思えない。だから、その裏をかく……いえ、ゴブリンは騒がしくなったから進軍してきたのかしら?)

 

彼女は彼女との会話を心から楽しむ様に尻尾を左右に揺らしらがら更に言葉を交わす……

 

「おひさに私と言葉を交わすのに……時間も余裕もないでありんすからね~」

(私は疲れたの……だから貴女がいる。でも時間も余裕も無いのは同意ね?)

 

彼女は手に持つ扇子を開き、敵前へと向けた

 

(大災害後、人々はこの世界に閉じ込められ絶望した……)

「しかし絶望から希望が生まれる……人の強い意思によって……」

(意思とは可能性の道標……可能性は大いなる力!)

 

息を大きく吸い、そして敵に向かい叫んだ

 

『刮目せよッ!可能性の力をッ!』

「「「「GGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」」」」」

 

彼女達の叫びをさかいに黒い波は彼女を蹂躙すべく一斉に襲い掛かってきた

鳴り響く大地とモンスターの雄叫びに彼女の姿は一瞬で掻き消された……が

 

情報書換(オーバーリライト)・〈フレアアロー〉ッ!』

 

凛とした言葉が呟かれた瞬間、黒い波は紅に飲まれ……爆ぜた

突然起きた紅の爆発にゴブリン達は足を止めてしまった……戸惑うゴブリン達に更なる死へと誘う言葉が響き通る

 

情報書換(オーバーリライト)・〈サンダーボルトクラッシュ〉ッ!』

 

紫の閃光がゴブリン達を瞬時に通り過ぎ・・・ゴブリン達を無へと帰した

発動した技は妖術師にとっては馴染み深い二つ・・・しかし、特性が全く異なったモノに変化し半数以上の敵を喰らい消し去ったのだ

敵戦力は半減、足取りも止まり絶好の追撃のチャンスになったが、無数に散らばる金とアイテムを背に彼女は苦渋と困惑の表情で頭を片手で押さえ込み・・・膝から崩れ落ちた

 

『予想外ね……たった2回使ってこのざま……世界に手を加える事の代償、か』

 

HPは削られてはいない、MPの減りも戦闘には影響はない。だが、表情は必死に何かに耐えているようであった……この場において悪はゴブリン、正義は彼女にあるが現実は残酷であり、彼女が倒れたのは敵にとっても好機、ゴブリン達は彼女を避けるように進軍を開始した

 

『ッ!……後2回、使用したら落ちるわね?敵も私も……でも……』

 

彼女は苦痛の表情のまま考えた

海岸線での防衛班の消耗具合、援軍到達時間のロス、敵残勢力、敵増援の可能性……10秒で消耗1%、時間ロス5%、敵勢力36%オーバー、増援確率防衛状況にて変化、現在46%……

 

脳内で描く計算式が埋まっていくにつれて彼女の表情は厳しくなっていく……

 

『余力はなさそうね……あの子からの報酬もあるし、この二ヶ月間楽しかったからいいわね?』

 

彼女は覚悟を決め二つに割れる黒い波に狙いを定めた

 

『死、……この世界において〈冒険者〉には無縁の産物だと思われているけど、シロエは気づくかしらね?リアルでは起きえない死が……この世界での死と言うモノが……まぁ、私が第一人者になるのですもの、少なかれシロエの知識としてやくだてるでしょうね?』

 

クスリと笑い、彼女は詠唱を開始し始めた

 

「我れ雷を呼ぶ天より来たり雷は審理の雷ッ!・〈ライト ――パアァァァン! ッ!」

 

彼女の詠唱が終わる瞬間、先行していた黒い波が鋭い破裂音と共に吹き飛ばされていたのだ

後からの破裂音に驚き、詠唱を中止して後を振り返ると吹き飛ばされた黒い波と多数のキノコがそこには存在していた

 

思考が止ったのは一瞬、彼女は直ぐに状況を把握すると、先程とは違う笑みを浮かべた

 

『やってくれるじゃない……これが合宿で得た力なのね、ミノリ?そうと決まれば・・・我れ雷を呼ぶ天より来たり雷は審理の雷ッ!〈ライトニングネビュラ〉ッ!』

 

彼女は先程の破裂音〈泣きキノコの絶叫〉の被害を受けていないゴブリン達に狙いをさだめて広範囲攻撃魔法を打ち放った

 

『成長……素晴らしい事だわ!……影にシロエが見えるのが気に食わないけど、ミノリの思いが確かに伝わったわ!だから!』

 

彼女が撃ち放った青紫色の輝きが収まった先には、瀕死状態のゴブリンや麻痺状態のがまだ戦意が衰えないまま彼女を睨みつけている

 

『私達は貴方達を通さない。少しでもあの子達の負担が減るように導いてあげないといけないわね!』

 

抑えようの無い激痛はいつのまにか消えていた……いや、消えてはいない

彼女の頬から流れ落ちる汗がやせ我慢をしていることを語っているのだが、若者の成長を垣間見た喜びからアドレナリンが分泌されているのだろう

 

彼女は足取り確かに目前の敵に扇子を構えた

 

『ここは私の舞台!さぁ!一緒に踊ってあげましょう!』

 

黒い波に一匹の狐が逆らったのであった………

 

 

NEXT ザオリク!ザオラル!ええっと……メガンテ?

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口伝  情報書換 〈オーバーリライト〉

 

実は一話において、設計図を書き荒らしていた時に習得

実用は林檎の丸焼きから……

自分の名前、所属ギルド、種族、メイン職業、サブ職業、敵情報、アイテムなどのデータエリアを存在自体から書き換えることが出来る

レベルに関わらず使用できる特技・魔法を変化させる事が出来るが、リアルタイムで動く情報を書き換えるには脳のキャパティシティを越えてしまうので多様はできない

彼女の場合、『クー』と『くずのは』が2人で処理を行う事でリアルタイムの書換に成功している

西の狐は情報を偽装し書き換えているが、東の狐は存在自体から自身の精神力とキャパで書き換えている

 

 

 

情報書換・フレアアロー

特性である『矢』と『炎』を『円』と『爆発』に書き換えた結果、従来の炎の矢を撃ち込む単体攻撃魔法が広域に紅のドーム・球体を作成、ドーム内とドームに触れる対象に対して大威力の爆発が発生する

対象がバッドステータスを受けていると、塵粉となり1分後に中威力爆発が発生し追加ダメージを与えるようになる。

 

情報書換・サンダーボルトクラッシュ

武器で直接攻撃する魔法と武器の合わせ技ではあるが、『雷』を『雷光』レンジを『S』から『L』に書き換えた結果、武器を振るった範囲内の対象に雷光のエフェクトが走り、ダメージを与える事ができる。

威力はそこそこ止りだが、LV差によって即死効果が付属される

 

 

おまけ

林檎の丸焼き

〈デザイナー〉を〈料理人〉に書き換えた

 

 

 

 




「わりぃ、ミノリ。飲み物あるか?」
「はい、トウヤ」
「サンキュな」
「・・・・うん」
 
トウヤに今日、3本目になる水筒を渡すミノリの顔はなにか負に落ちないと言う感じであった

「ん?どうしたんだよそんな顔して?」
「・・・おかしくない?今まで戦った敵がみんな、なんていうか」
「どこか……弱っていますね?」
「うん」
「へぇ?弱ってるならいいじゃん!」
「ミス・五十鈴の言う通りだ!気にする事ではないよ」
「そうだな!ルティ兄」

頭より体が先に動く彼らは特に気にした様子をなく軽く流してしまったが、ミノリとセララは違った

「……ここに来る前に戦闘をしているって事ですね?」
「はい……でも、広場を防衛している私達の前っていう事は街の外で戦っているんです」
「……一体誰なんでしょう?」

正体が知れない援軍に頭を傾げる2人にトウヤの声が響いた

「おい!あれなんだ!」

トウヤが指差す先には青紫色の輝きを放つまばゆい電光が巻き起こっていた

「あれは妖術師の特技〈ライトニングネビュラ〉ではないかな?」
「へぇ~ルティも撃てるの?」
「……機会があればお見せしよう」
「なんだよルティ兄、覚えてないのかよ」
「あれは高LV技なんだよ」
「うわぁ~!また見えた!すごいね~!」

そんな3人とは裏腹にミノリとセララは思案な顔つきで話し合っていた

「今回の合宿で引率した〈冒険者〉の中に〈ライトニングネビュラ〉を連続で発動できる人って知ってますか?」
「……私、小竜さんから聞きました。『クー』さんが恐ろしい速度で連射してたって」
「……確かにクーさんなら、出来そうな気がしますね」
「合流しますか?」

セララの問に少し考えた後、ミノリは否っと答えた

「私達が行っても足手まといになるだけです、私達は変わらずこの周辺の防衛をしましょう」
「・・・クーさん大丈夫ですかね?」

セララの心配はミノリも抱いていたが・・・

(頑張ってください!クーさん!)

仲間を信頼する事にし、心の中でエールを送ったのであった



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