ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

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あけましておめでとうございます

今年も文章力がほしいです。あとオリジナルティ・・・
後半、原作どうりだし・・・


初めての試みとして三点リーダーを多様しています
※好感度更新


『19』でありんす!わっち流奥義!

休刊のお知らせ

現在、〈くずのは〉の気力がzeroな為「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!」を休ませて頂いております

〈くずのは〉の気力が回復次第、執筆してゆきますので今後ともよろしくお願いします

 

by くずのは

 

「さすがに今回は頭が回らないわね。でも…………」

 

〈くずのは〉は辺りを見渡した。そこには〈くずのは〉が倒した敵がドロップしたであろう多くのお金やアイテムが無造作に散らばっている。しかし、街の中央広場からは、破壊音や獣の遠吠えが聞こえまだ戦闘が行われている事が容易に想像できた……

 

「……ふぅ、まだ弱音を言っている場合じゃないわね?」

 

一息ついた後、〈くずのは〉は目の前に広がるアイテムの山を見る気もせずに街へと歩き出した……

足取りは重く、〈くずのは〉のコンディションが最悪な事が目に見てわかったが〈くずのは〉は歩みを止めない!まだ敵と戦っている仲間を助ける為に〈くずのは〉は歩き続けたのであった…………

 

「…………少しぐらい拾っておけばよかった」

 

……〈くずのは〉の足取りが重かった理由がアイテムに足を引かれていた訳ではないと信じたい

 

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

未知への一歩・・・・リンディ茶でありんすな!

 

 

 

〈くずのは〉が街に辿り着いたのは、紫色に近づきつつある夕暮れ時であった……

広場に沿うように並び立つ建物は所々、崩れ落ち戦闘の激しさを物語っていた。そして焼け焦げた臭いが広場を満たしている

 

脳裏によぎる嫌なイメージを払拭させる為にも〈くずのは〉は、広場の防衛をしている新人パーティー……ミノリとトウヤ、セララを探し回った。しかし、〈くずのは〉の思いは杞憂で終わった。

中央広場から少し外れた大十字路に見覚えのある姿の3人が忙しなく動き声を上げていたのだから……安堵の息を付き彼女たちを称える為に微笑みながら近づくが、その笑顔は段々と氷の様に固まっていった

 

………泣いているのだ

セララが…トウヤが…見知らぬ少女が…そしてミノリが泣き悲しんでいた

 

 

間に合わなかった、と思うと同時に〈くずのは〉に恐怖と言う感情が襲い掛かった……あの子達がもう笑わなくなってしまうのか?……不安と焦りが入り混じり恐怖と言う名の感情を形作っていってしまう

 

あの子達に近づき声を掛けてあげたい!……でも思いとは裏腹に足は棒の様に動かず、喉からは擦れた声しか出なかった。このまま途方に暮れるしかないのか、と思い浮かべた瞬間―――

 

「まだです……助けて下さい。シロエさんの力が必要ですっ」

 

―――ミノリの思いを乗せた声が聞こえた

胸の中にしっかりと閉じ込めた喪失感を押し殺し僅かな希望に縋る声

表情は先と変わらず凍ったままであるが、体は劇鉄を起こした様に動き出した

 

〈くずのは〉達の思いは一つ……あの目を失わせる訳にはいかない!

 

「………情報書換(オーバーリライト)・対象〈念話〉。開放」

 

襲い掛かる恐怖を跳ね除け、ミノリとシロエの会話に割り込みを掛けた

 

『場所とそこにいるメンバーを列挙』

「わたし、トウヤ。五十鈴さん。セララさん。そして蘇生しないルン『私もいるわ』 ッ!?……そ、蘇生しないルンデルハウスさん。場所はチョウシの町の中央付近、大十字路」

 

〈くずのは〉の割り込みにシロエとミノリは声には出さないが驚き驚愕した。個人同士の念話に第三者が入り込んだのだから………しかし、今この場において彼女の登場はマイナスではなくプラスになる。そう判断しミノリは驚愕を隠しながらもシロエに報告を続けた

 

『……安全確保は』

 

ミノリの意を読み取りシロエも問い詰める事無く周囲の状況を把握すべく質問を続けた

 

「海岸線の防衛網に穴は無いわ、陸の敵も私が全て滅したから心配はない。奇襲の可能性はあるけど私がいる限り、この子達には指一本も触れさせないわ!」

 

〈くずのは〉の目はミノリと同じく使命感、彼女達を絶対に悲しませはしないと言う使命感を秘めていた

 

「シロエ兄ぃ、ルディのやつを助けてくれよっ」

 

いきなり〈大地人〉(ルティ)を囲む周りから強い声が聞こえた。

 

「ルディ兄はねっ。バカだけど、間抜けだけど、強くて格好良いんだよ。ルディ兄は俺達を助けようとしたんだよっ」

「ルディを連れてきたのはわたしなの。ううん、わたしじゃないんだけど、ルディが来たがったのを止めなかったのっ。シロ……エさんっ。何か出来るならっ」

「……シロエ、指示を」

 

混乱したような声は先ほどの少女とトウヤだった

一週間と言う短い期間にこれほどまで思ってくれる仲間を得る事ができた〈大地人〉(ルティ)に少し嫉妬してしまうが、今は一刻も争う事態なのだ、〈くずのは〉はシロエに指示を煽った

 

『セララに指示。蘇生呪文を詠唱』

「はいっ」

 

間髪いれずにミノリは返答した。

なぜ、とも、それは効果がなかった、とも反駁はしない。ミノリは完全にシロエを信頼している。“シロエさんならば何とかしてくれる”と信じて念話通信をしたのだ

 

それはもちろん都合の良い思い込みだろう。

シロエさんにだって出来ないことはある。でもそれは些細なこと。出来ないことは、出来ない

不安や喪失感は今も湧いてくる。でもシロエさんが私達の為に動いてくれている、だから私は……

 

シロエさんを信じる私を信じますっ!

 

始めて〈くずのは〉さんと出会った時の事を思い出し、クスリと小さく笑みが零れた

 

『脈拍が強くなった気がします……。けど、意識は戻りません』

「150秒待機。トウヤは周辺警戒。五十鈴さんはMP回復歌を。150秒後に今度はミノリが蘇生呪文」

『はいっ』

 

ミノリの返答に阿吽の呼吸でシロエの新しい指示が飛ぶ……皆が疑う事無くシロエに従っている中〈くずのは〉だけはシロエの指示に疑問を持ったのは経験の差であろう

 

「……シロエ、貴方は何をしようとしているの?」

『…………』

 

返答はなかった。しかし、痺れを切らした〈くずのは〉の舌打ちによって沈黙は破られた

 

『………僕はある人から〈魂魄理論〉と言うモノを聞きました』

「…………」

『その人曰く人は魄と言われる肉体の根源的なエネルギー「気」、と魂と呼ばれる「精神エネルギー」から成り立っていると推測しています』

「面白い理論ね?でも今は時間が 『HPとMPと関りがありますっ!』……ッ!そう言う事ね.」

 

シロエの狙いがわかってからは〈くずのは〉の行動は速かった………

 

「150秒経過。蘇生呪文を投射します」

「150秒後にもう一度セララの蘇生呪文。そのまま交互に詠唱!シロエ、貴方は5分以内にコッチに来なさい!」

『わかりましたっ。……くずのは「アレ」は持っていますか?』

「愚問ね……でも「アレ」だけでは決定力に欠けるわ……何か策はあるのかしら?」

『……あります』

「そう、なら早く来なさい」

 

念話通信を一方的に切り横たわる〈大地人〉に目を向ける。セララの蘇生呪文により一時的に脈拍が強くなったが、依然として顔に生気は無いままで今にも命の灯火が消えてしまいそうであった

 

「……もし死んであの子達から笑顔を奪っていくのなら、私が〈大地人〉を皆殺しにしてあげるわ」

 

〈くずのは〉にとって〈大地人〉は、自身の身内に入らず取るに足りない存在ではあるが身内が絡むなら手を差し伸べる。だが、身内が悲しみ結果となった場合は、覚悟はいいな?と考えているが為に出た言葉であったが―――

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

―――彼女の身内はドン引きであった

セララは特に同じ様な台詞を〈ススキノ〉で聞いていた為、ドン引きする3人よりも顔を青くさせたのであった

 

〈くずのは〉の暴言のせいで只淡々と作業が続けられる。彼女達はルティを助けたいと心から思っている!しかし、それと同じくらいに〈大地人絶滅〉の危機を強く、魂で感じて作業を行うのであった

 

二回目の蘇生呪文をかけ終えた時と同じタイミングで空からグリフォンが飛んでくる

チョウシの町の長い中央通りはグリフォンのとって絶好の滑走路だったようで、翼を微動だにさせず揚力を利用して滑り込むグリフォンの背でシロエとアカツキは、疾走する馬よりもなお速い対地速度を気にも掛けずにグリフォンから飛び降りた

同じように地面に着地したが、膝を折ってショックを軽減したシロエに比べて、やはり前衛職のアカツキは、ほとんど重力を感じさせないような動きで前方に疾走、燕のような動きで石造りの建物の屋根にまで飛び上がって消えた

 

そして手をふるトウヤに向かって駆け寄るシロエを確認した〈くずのは〉はミノリに指示を飛ばす

 

「ミノリ、トウヤをパーティーから外し私とシロエをパーティーに誘いなさい」

「はい」

 

ミノリは無駄な事を尋ねずに頷く。〈くずのは〉は兎も角、シロエを信頼しているが為に行動は速かった。逆にパーティーから外されたトウヤは苦渋の色を浮かべる

トウヤが浮かべる表情の理由が手に取るようにわかった〈くずのは〉は〈大地人〉に言った言葉と正反対な優しい声でトウヤに語りかけた

 

「シロエがやろうとしている事は現状のステータスが高いほうがいいの……トウヤ、貴方は無力ではないわ。貴方の思いは必ず〈大地人〉(ルティ)に届いているわよ。」

「……だけど、俺も」

「貴方は今、貴方に出来ることをしなさい?ヒーラー2人補助が1人。シロエは勿論、私もシロエの補助をするわ。……今、奇襲にあったら誰が私達を守ってくれるのかしら?」

 

ハッと顔をあげ「任せてくれ!」と明るい表情でトウヤは返し辺りを警戒し始め、シロエは〈大地人〉の状態を確認し終えた

 

「五十鈴さんだっけ? そのまま〈瞑想のノクターン〉を詠唱続行。いまから新しい魔法を使う。結果の責任は僕が持つけれど、このことは他言無用だ」

 

シロエはあえてきつい口調で新人プレイヤーに話しかけた。

 

「納得できないなら諦めるか、ここから去って」

 

シロエの言葉に、そこに集まった面々は誰一人ひるむことなく首を振る。〈くずのは〉だけは『新しい魔法』と言う所に反応はしたが、今問い質す事ではないと傍観を貫いたが……

 

「じゃぁ、始めるよ」

 

シロエはアイコンから魔術特技を選択する。使用するのは〈マナ・チャネリング〉は〈付与術師〉特有の、いわゆる「何に使うのかよく判らない」呪文である。

その効果は「パーティー全員のMPを全て合計し、平均する」というもの。

詠唱が響くに従って、パーティ全員からMPが吸収されて、シロエに集ってくる。シロエはこの中では飛び抜けて高レベルだ。

そのシロエが詠唱した〈マナ・チャネリング〉は、30レベルにも達していない〈冒険者〉にとってはとてつもない重圧だろう。

ミノリもセララも、顔色がどんどん青ざめてゆく。MPがどんどんと吸収されていく、立ちくらみにも似た喪失感に耐えているのだ。五十鈴だけが唯一、蒼白な顔をしながらも、ルンデルハウスの手をしっかり握ったまま、哀切な古謡を口ずさみ続ける。

 

シロエは半眼に付せたまま魔術の効果を体感する。「パーティーの仲間」から回収したMPのほとんど全てが、シロエに現在握られている。幽かな気配でしかないが、シロエはシロエの中に他人の精神の残り香を感じているのだ。ミノリの生真面目な魔力の気配、セララの優しい魔力の気配。それらが、いまやシロエの管理する魔術野に展開されている。

その中にはセララのもの、五十鈴のもの、そして他ならぬルンデルハウス自身のMPも含まれているはずだ。

微妙に味わいの違うMPは、根源的な「精神のエネルギー」として混交され、シロエの導きに従って、魔術的回路を形成し、「仲間」へと接続される。

 

シロエはそれらのMPを等分して「再配布」する。

シロエは急激な流出により貧血のような感覚に満たされる。

「ミノリは蘇生、セララは連続ヒールっ。くずのは「アレ」をっ」

 ここまでは前座だと思わせるかの様にシロエは指示を続ける。時間は短い。おそらくチャンスはただの一度、ただの一言だろう。

 

〈くずのは〉は懐から「アレ」を取り出しシロエに投げ渡した

 

「ここから先は時間との勝負だ。質問や時間を浪費させるのは厳禁だよ」

 

シロエは自分の言葉の響きがまだ空中にある内に〈くずのは〉から渡された〈黄泉返りの冥香〉を使用する。死んだ仲間を、一時的にゾンビにして蘇らせるマイナーなアイテムだ。

 

「〈黄泉返りの冥香〉は、活性した〈大地人〉の魂を、肉体に強引に接続する策。3分後の確実な死亡と引き替えに、3分間だけ……〈大地人〉(ルティ)をこの世界に引き戻すわ」

 

困惑の視線をシロエに送る五十鈴に対し〈くずのは〉が代わりに説明する

それで判ったのだろう。大粒の涙をこぼす五十鈴の手が、ルンデルハウスの手をぎゅっと握りしめる。

 

「あ……」

 

うっすらと。まるで夢を見るように瞳を開くルンデルハウス。

五十鈴はその手を握ると、涙をぽろぽろとこぼす。ルンデルハウスに意識があるのかどうなのかは、判らない。目を開けたのも、ただの肉体的な条件反射であるかもしれないのだ。

 

「ルディ……?」

「ミス・五十鈴……。ああ、みんな。そうか……。僕は、どうやら……死んじゃったらしいね」

 

ルンデルハウスは僅かな時間の中で、いままでの事情を把握していたのだろう。小さく笑うと、まだ力の戻っていない声で、周囲に言葉をかける。

 

「みんな、いやだなぁ。……そんな顔をするなよ。戦いの結果、命を落とすなんて当然だろう?」

「――とう、ぜん」

 

トウヤの言葉に、クーの耳がピクリと動いた

 

「それでも僕は冒険者になりたかったんだ。ミス・五十鈴を責めるのはやめておくれよ? 頼み込んだのは僕なんだからさ」

「いえ、わたしだって気が付いていましたっ。気が付いていて、放置していたんですっ」

 

ミノリが叫ぶように声を漏らす。その言葉で、一人を除く全員が悟った。いままで冷静に行動してきたミノリも、内面では随分と動揺していた事に、だ。

 

「はははっ。うん、ミス・ミノリ。ありがとう。……気にする事はない」

「いいや、気にす「うにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」……」

 

シロエは言葉を遮り、一匹の狐が吼えた

 

「わっちは遺言を聞きたいわけではありんせん!ルンパッパ。この程度おねんするやつが冒険者を名乗って貰っては困りんす。それでは さらさら 足りない 。……こな 場末の路地裏で果てるために何を学んだんでありんすぇ。〈冒険者〉とは自由な反面、生き抜く覚悟と、そのためにはどんな 事でも工夫するといわす黄金の精神が必要でありんす!つまりJo☆Jo☆!」

「クー姉!?」

「さらさらまったく覚悟が足りないでありんす!ルンパッパっ」

「どうすればいいって云うんだっ! 貴女はっ!!」

 

 ルンデルハウスの瞳の中には悔しさとやりきれなさが一杯に給っていて、潤み、流れ始める。

 

「と言う訳で後は任せんした、シロエェェ?」

「キラーパス!?」

 

いきなり〈くずのは〉から〈クー〉に変わったのも驚いたが、まさかの問題の丸投げに更に驚いてしまった

 

「えぇっと、時間もないし聞いてほしい」

 

 グリフォンの背で書き上げた、字の乱れる書類をとりだして、シロエはルンデルハウスに差し出した。

 

「それは……」

「契約書、ですか?」

 

シロエがバックから取り出したのは確かに契約書だった。シロエが用いる最高の素材から作り出した「妖精王の紙」に「刻竜瞳のインク」で書いた、この世界にたったひとつしかない手製のアイテムだ。

 

「契約書。

 〈記録の地平線〉代表シロエは、ルンデルハウス=コードと以下の契約を締結する。

 ひとつ。シロエはルンデルハウス=コードを、この書面にサインが行なわれた日付時刻を以て、ギルド〈記録の地平線〉へと迎え入れる。

 ひとつ。ルンデルハウス=コードはギルド〈記録の地平線〉のメンバーとして、その地位と任務に相応しい態度を以て務める。

 ひとつ、〈記録の地平線〉はルンデルハウスの任務遂行に必要なバックアップを、両者協議のもとできうる限り与える。これには〈冒険者〉の身分が含まれる。

 ひとつ、この契約は両者の合意と互いの尊敬によって結ばれるものであり、契約中、互いが得た物は、契約が例え失効したとしても保持される。

 以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、両者は記名のうえ、それぞれ一通を保管する」

 

 息をのむ音が聞こえる。

 

「〈冒険者〉――?」

「それは、シロエさん。それはっ」

 

――答えは簡単であった

 

 ルンデルハウスは〈大地人〉だ。

 そして3分後には確実に、死ぬ。

 〈大地人〉は復活できない。

 ゆえにルンデルハウスは消滅する。

 

――ならば。

 そう、答えは明白。「3分間の間に、ルンデルハウスを〈冒険者〉にする」。

シロエが考え付いた最大の救済方法であり、〈エルダー・テイル〉において規格外の……新しい魔法の使用であった

 

シロエはルンデルハウスの鼻先に、契約書を差し出す。

 

「僕のサインは入れてある。後はキミだけだ」

「――け……ん……しゃ」

「君が望むなら」

 掠れたような呟きを漏らす、泥にまみれた〈妖術師〉の青年にシロエは声を掛ける。

 

「これはリスクのある契約だ。キミはこの契約によって何らかの変質を受け、いままでとはまったく違った存在になってしまうかも知れない、。〈冒険者〉はこの世界ではまだ新顔で、今後どのような騒動に巻き込まれるかも判らない。おそらく君が思っているほどの栄誉は、〈冒険者〉にはない」

「僕がなりたいのは……冒険者で、〈冒険者〉じゃない。困ってる人を助けられれば、細かい事は気にしないんだ。……僕は、冒険者だっ」

「では」

 

指しだしたペンを震える手で掴んだルンデルハウスは、そのペンを取り落としてしまう。〈黄泉返りの冥香〉の効力は切れかけている。おそらくいまのルンデルハウスは、魂と魄の間の情報疎通がいまだに不確かなのだ。

 

「ルディ……。大丈夫」

 その手を五十鈴が支える。

 

「ルディと一緒に、わたしも書くから」

 

後ろから抱きかかえるようにルンデルハウスを支えた五十鈴が、それを手伝うトウヤが。回復呪文を詠唱し続けるミノリとセララが、ルンデルハウスの署名を見守る。

震える指先は仲間の励ましで温められ、魔法のインクはルンデルハウスの署名となった。燃え上がった署名の輝きは黄金色の燐光となり空に舞った

 

「一度死ぬんだ。ルンデルハウス。……君は大神殿で復活する」

どこかで何か大きなルールが動いた手応えを感じながら、シロエは語りかける。拡散する魄(はく)が粒子状に舞い上がり、アキバの街へと転送されるのを見送るのであった

 

 

 

「シロエ兄ちゃん!俺達、神殿に行ってくるよ!」

「わかった。マリ姐には僕から言っておくから行っておいで」

「サンキューな!兄ちゃんっ」

 

アキバに向かう4人を見送りながらシロエは藁の山の天辺に陣取り、あくびをかいている狐へと林檎を投げ渡した

 

「おおっと……コレは口止め料でありんすか?」

「そんな事無いよ……たんなるお礼」

「そうでありんすか、ならありがたくちょうだいしんす♪」

 

久しぶりに嗅ぐ林檎の香り我慢出来ずにその場で齧りつき始めた狐を横目に収めながら、シロエは静かに語り始めた

 

「……ミノリ達の為だとは言え随分と大きな事をしてしまった感じがします」

「シャクシャク」

「この世界のルールに干渉する魔法。エターナルアイスの古宮廷で出会ったリ=ガンの言う通りなら世界級規模の魔法になりますね」

「……シャクシャク」

「世界を変える程の魔法。……〈冒険者〉が持つには大き過ぎる力だとは思いませんか?」

「シャクシャク…ゴックン!……そうでありんすね~、わっちから言えるのは只一つ」

 

シロエから渡された林檎を綺麗に食べ終えると、シロエの問い掛けに答えるように身体を向けた

 

「大いなる力には大いなる責任が伴う。……シロエェェも使い過ぎには気をつけた方がよいでありんすよ?」

「はは、ありがとうクーさん。……でも確信が持てたよ」

「うにゅ?」

 

先程までの爽やかなイメージが払拭され、シロエの背後には禍々しい黒々としたオーラが醸し出されていく

 

「ずっと謎だったんだ、〈ススキノ遠征〉での林檎の丸焼き。それだけじゃない、本来〈呼出水晶〉には召喚機能はない事も」

「?」

「僕はにゃん太班長の発見から「アレ」に気づいた。そしてにゃん太班長の発見はクーさんのお風呂から導きだしたって言っていました」

「っ!?……ほ、ほらシロエェェ?マリーが待っていんすよ?」

「もし『不可能を可能にする魔法』が開発されていたのなら……そして決定的なのは―――」

「黒い!?シロエなのに黒い!助けてー!マリー!」

「さっき、シロエ『も』使い過ぎには気をつけて……言いましたよね?」

「うわ~ん!シロエェェがいじめる~!」

 

彼女はシロエから逃げ出したのであった・・・・・

 

逃げた後に救いはあるのか!?…決してないであろう

 

 

 

 

NEXT 類は友を呼び寄せる

 




NG クーの魔力

シロエは半眼に付せたまま魔術の効果を体感する。「パーティーの仲間」から回収したMPのほとんど全てが、シロエに現在握られている。幽かな気配でしかないが、シロエはシロエの中に他人の精神の残り香を感じているのだ。ミノリの生真面目な魔力の気配、セララの優しい魔力の気配。それからクーの「りんご~林檎~リンゴ~」……クーさんの「アップルティー~アップルパイ~」黙れッ!駄狐!

後日、クーの魔力を受け取った5人は語る「体臭がリンゴ臭になった気がすると・・・」


NG ジーク・ジオン!

「あちきら は今一人の馬鹿を失ったぇ。 これはあちきら の敗北を意味するのかぇ? 否!これは始まりなの だ! ウェストランデに比べ我がイースタルの国力は30分の1以下である。にも関わらず今日まで戦い抜 いてこられたのは何故か! それはあちきら の戦いに林檎があるからである。わっち の敵、そいで 諸君らが痛い目で見ていたルンデルハウス=コードは死んでありんすぇ。 何故だ!……まぁ、どうでもいい事なんで 置いておこう。我がイースタル国民よ!今こそ収穫の時!そいで 笑いの種を胸にこめて立ち あがるのだ! 食の優良種たる我らこそが人類の正しき未来を救う事が出来るのである。そーれ・アップル !!!」

「………何してるのかな?」
「なんでも夢で見たんだと

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