ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~ 作:誤字脱字
4500は書きましたが・・・懲りずに過去編!
・・・暖かい目で読んでください
・・・転機とは他の状態に転じる切欠
・・・訪れた者は善悪関係無しに今の自分を壊す事が出来よう
・・・まさにその転じっぷりは神の采配が如く
・・・だが、忘れないでほしい
・・・妄信の神などに縋る事は意味が無い事を
そして信じて欲しい。人間の可能性を・・・・
ログホライズン~わっちがお狐様でありんす~
番外 自由そして始まり
霊峰フジ
現実世界の富士山を元に創られたこの山は山頂までの道のりは高所程難易度が増えていくわかり易い設計をしており、山頂にある祠やパワースポットなどからレベルアップに合わせたステータスへのボーナスが少しだけ受けられると言う登り損なフィールドである
だが山下に広がるフジ樹海も含めフジ一帯は絶好の高LV狩場な為、人気が有り攻略・解析が進んで現在では「通り抜けるは容易」と言われる次第
そんな残念な場所に真夜中、それも限界LVに達した8人のプレイヤーが集まるのは些か……いえ、大いに不思議なことである
私もカナミに今回の件を相談されなかったら決して立ち寄らなかったわ
今回の件……シロエの調教もとい救済。シロエと言う本がカナミの手によって本から人へと成り代わる。本来ならカナミ一人で物足りる事だけど……妙に大人ぶったシロエには自分と同LVもしくは近い力を持つものがいなくては転機とはならない
……まったくもって面倒くさい相手だわ
人知れずため息を溢す私の目の前では当事者や救い手が暢気にやれ「寝落ちしそうだった」やら「尻が爆発祭り」とほざいているのを見ると自然と二度目のため息が出てしまう
長距離移動も画面越しだと単純作業の繰返し、誰が始めた訳でもないけど挙って欠伸や背伸びをしていた
……どうも〈エルダー・テイル〉には無駄なモーションアクションが有り過ぎると思うのは私だけかしら?
背伸びしかり欠伸しかり、アクションボタン一つで陽気に動き回るアバターを見ると自分だけが今こんなに考えて動いているのかと思い現実でも頭が痛くなっってくる
先程まで否定的な考えをしていたモーションアクションから「頭を抱える2」を選択し、動きに合わせて三度目のため息をつくのであった
「……〈くずのは〉、プランはどうなっている」
「吾が輩も聞かせてほしいですにゃ~?」
「………KR、猫」
タイミングを見計らった様に唯一の〈放蕩者の茶会〉メンバーの常識人である二人に話しかけられ眉間によった皺と頭痛が和らいだ気がした
「ご存知の通りカナミの要請でシロエの救済よ。愚図共に痛め虐げられた心を救う為に今回はシロエと同じ力を持つ者を近くで感じて貰って井の中の蛙だったことを知って貰うわ」
「自分と同等の力を持つ〈放蕩者の茶会〉では気を張るなっと言った所か?……自分が一番と思い込んでいる小僧にはちょうど良いな」
「二人とも些か言葉が悪いですが若者の更生とは腕がなりますにゃ~?ですが……」
にゃん太は私達を軽く注意した後カナミとシロエに視線を送り――
「力うんぬんと言うよりカナミ嬢と冒険を楽しめば自然と肩の荷が降りて
全てを理解したかのように顎を擦りながら私にウィンクを飛ばしてきたのであった
「……無駄に似合い過ぎだな」
「……えぇ、むかつくほどにね」
画面の向こう側でもキャラクターと同じ事をしているであろう猫に苛立ちを覚えるのであった
〈エルダー・テイル〉のモーションアクション……力を入れ過ぎよ
◆
………面倒くさかった
誰もが皆、僕を頼り必要としてくれていた、最初は嬉しかった。僕を必要と仰ぎ共に冒険し目的を達成すれば感謝の言葉を言われ、また違う人に誘われる
皆が僕の存在を認め僕の居場所が出来上がっていくのを感じていた
だけど
何時からだろうか……去っていくプレイヤーの背中を見ていると自分が良いように使われていると感じるようになったのは……
それからだ、僕に近づいてくるプレイヤーが僕に利害しか求めていないと思う様になったのは……
一度は姿、性別を変えて〈エルダー・テイル〉を心から楽しもうと努力した
でも長くは続かなかった
もう一人の自分が強くなっていくにつれてこのキャラクターでも僕の性格のせいもあるのか利用されているだけと感じてしまうのだ
だから……面倒くさくなった
人とコミュニケーションをとる
辞めようかとも思ったけど、全ての人があの人達みたいに利害を求めている人だけではないと信じ引き続きプレーした
おかげで直継や純粋に好意を向けてくれるソウジロウとも出会えた
数少ない友と呼べる人と冒険をするだけでもいいんじゃないか?と思い始めた矢先、彼女からのチャットが届いた
『シロエ~!今からフジに行こ~!アキバの町にあるカフェに集合!待ってるからね~!あっ!友達も連れてきて良いよ!』
……こちらの都合など関係無しに一方的にチャット切られたけど
彼女の名前はカナミ
あるダンジョンでいきなりパーティーに誘われたのが始まりだ
こちらも直継とソウジロウの三人組、あっちはカナミと狐尾族の女性の二人組。なんでも仲間と一緒に攻略しようとしたらリアルの都合が合わなかったらしい
最初は街の人と同じで利害を求めている人だと思った……でも違った
彼女達は純粋に〈エルダー・テイル〉を楽しんでいた
効率の攻略法は?レアドロップの法則は?…僕に言い寄ってくる人達が第一声に発していた言葉だけど彼女達は―――
『シロエ、早く行こう♪この先に虹の橋があるみたいだよ!』
『早くしなさい愚図、そっちは正規のルートだわ。虹の橋に近いのはこっちよ』
攻略もレアアイテムも関係無しに只の背景エフェクトを見る為だけに楽しんで攻略していたのだ……罵倒されたけど
一緒にいた直継やソウジロウも驚いていたがダンジョンを進んでいくに連れて顔に笑みが零れていった……僕の顔にも笑みが零れていたであろう
ダンジョンを攻略し街に戻ってきてからは質問とフレンド申請の嵐であった
一回だけ一緒に冒険しただけの仲なのにフレンド申請はどうなのか?と思ったけど勢いに負けて了承してしまった。直継達は直ぐに登録していたけど
きっとその時、心の奥では彼女に何かを求めていたのかもしれない
そして僕がカナミを他の人と違うと感じたのは『死霊が原』の時だった
なんでも指揮官が足りないという事で誘われた。他のパーティーは彼女の仲間である〈放蕩者の茶会〉と言うメンバーらしい
……正直、ギルドの関るのは気が進まなかったけど彼女と一緒なら大丈夫かと思い参戦した。あとに〈放蕩者の茶会〉はギルドでなく集団と言われて驚いたけど、いつの間にか直継やソウジロウを含め僕まで〈茶会〉メンバーとして数えられていたのは更に驚いた
カナミ……傍若無人大雑把で大胆、自由な人だと思った
だけど僕の考えは間違いだった
「ギャシャァァァァァオン!」
「遅いですにゃ~?行きましたにゃ、くずのはっち!」
「……今度『っち』付けしたら殺るわよ!〈ライトニングネビュラ〉!」
「ッ!ォォォン……」
「いいわ!もっといい声で歌いなさい!〈ライトニングネビュラ〉!」
「あは♪くーちゃん絶好調だね?」
「……純粋に眠くてハイなだけだと思うぞ」
急に誘われたフジ登山、カナミといれば悩みなんてふっ飛ばしてくれると思い先のチャットの答えを了承したけど……カナミだけではなかった
前の時には分からなかったけど〈茶会〉全員が自由な人だった
フジのレイドボスを赤子の様に攻め立てる〈茶会〉メンバーはみんな自由な人で、登山の最中にゃん太さんやナズナさんに攻略とかルートではなくゲームとはこと離れた話が出来、楽しんで昇れた。戦闘でもKRやくずのは(さん付けすると怒られた)の知識の量や采配に純粋に驚いた
僕は要らないのでは?と思ったけどそれは違った
役割通りみんなが動いているのだとわかったんだ。街の人とは違い利害の為、僕一人に頼っているのではなく楽しんで攻略する為に全員がみんなを信頼し頼って動いている事に……
なんだかそれは……
「シロエ!補助よろしく~♪」
「ッ!インフィニティフォースッ!」
「OK~!ありがとうシロエ♪」
とても居心地がよかった
◆
「いや~綺麗な朝日だね~!」
「そうだね~♪これは一杯やりたくなるねぇ?」
「おう!俺は未成年だけど、これはおパンツなみに美しいぜ!」
「フジノタツカミを10分撃破……ありえんな」
「にゃ~このメンバーだと不思議に思わないのが恐いですにゃ」
「ははは、僕もこんな短時間で倒したのは初めてですよ」
カナミとナズナ、直継は純粋に日の出を誉め、KRとにゃん太、ソウジロウは自分たちが成した成果に驚きながらも日の出を眺めていた
そんな中、みんなとは少し離れた所で岩に腰を預けらがらシロエは手で朝日を遮って目を細めた
「眩しいのは朝日だけかしら?」
「……くずのは」
シロエの後に立ち鋭い視線を向けながら〈くずのは〉はシロエに語り始めた
「貴方が眩しいと思うのはカナミ達よね?自由でやりたい事を自由に行っている〈放蕩者の茶会〉。……違うかしら?」
有無を言わせないとばかりに睨み付ながら問う〈くずのは〉。傍から見たら尋問をしているかのように感じ、シロエも若干冷や汗を掻きながらも〈くずのは〉に答えた
「そう、だと思います。彼女ら〈放蕩者の茶会〉は自由でなんにも縛られてなくいて正直……羨ましいです」
ポツリポツリと言葉を紡いでいくシロエに〈くずのは〉は目を閉じ素直にシロエの言葉を聞き入れた。そしてシロエの言葉が終わるとゆっくりと目を開け静かにシロエに問いたのであった
「シロエ?貴方は〈放蕩者〉って意味を知っているかしら?」
「え?……自分の思うままに振る舞ったり、やるべきことをやらず自分のやりたい放題にする人、ですよね?」
「えぇ、そうよ。……そして貴方はカナミに誘われてその一員になっているわ」
シロエは呆気に取られて口をポカーンと開けたが、すぐに〈くずのは〉の言った言葉の意味を理解し驚き目を見開く
「でも!僕は「囀るな小僧!」ッ!」
先程とは打って変って激情とも言える罵声がシロエの反論を塞ぎ説いたのだ
「貴方が愚図に縛られて生きるのも良し!でも私達の様になりたいのならなればいいわ!……そうでしょ、カナミ?」
「え?」
〈くずのは〉が振り返った先には先程まで朝日を堪能していたみんなが此方を向きシロエに笑みを送っていた
「うん!クーちゃんの言うとおり!シロエは…シロ君は難しく考え過ぎ!シロ君のやりたいようにやればいいと思うよ!」
後先も考えない大雑把で大胆な言葉。
だけどシロエは恥ずかしそうに頬を掻きながら笑みを溢すのであった
「第2回!少年よ!大志を抱け!~根暗眼鏡編~」著作者:くずのは
より抜粋・・・・
◆
「こなしてシロエは綺麗になって腹黒眼鏡の第一歩を踏み出したのでありんした。ちゃんちゃん♪」
彼女は本を傍らに置き、グラスに僅かに残った果実酒を一気に呷った
「いま思うとわっちがカーミンと会いんしたのも〈エルダー・テイル〉の転機でありんしたね~?しかし……」
彼女は新しい果実酒の栓を明けらがら、ふっと月を見上げた
「……わっち、あの時えらい眠くて何を言ったか覚えていないのよぇ」
月を見上げること数秒……
「わっちは過去を振り返らん狐でありんすゆえ~♪」
何事も無かったように飲み直すのであった
本編も徐々に文字数を増やしていきます