ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

45 / 62
ちょっとやばいかも……タグ増やさなきゃ!

とりあえず7800字と言う多さに驚愕
前半→やっちまったぜ
中盤→少し休もうぜ?
後盤→やっちまったぜ
の構成になっています

区切りがついたのでIS書くか……


ネタ 答え合わせ?

ルディ

穴掘り → グレンラガン → シモン
火竜  → フェアリーテール→ ナツ
ナイスな展開 → ラインバレル → 早瀬
障害  → ブレイブルー → ジン

にゃんた

マーボー → FATE → 言峰
エト   → 月姫 → 666の因子の鹿の名前
赤い蛙  → ケロロ →ギロロ

レイネシア

プリキュアシリーズ


二匹のきつね『3』、『5』対面!

〈Plant Hwyaden〉

 

ミナミを治める実体不明の巨大ギルド。大災害後の混乱期に、〈大地人〉勢力を利用することで治安の改善を果たし、立ち上げられたギルド。西の誇る強者や古参が多数所属しており、かの〈放蕩者の茶会〉のメンバーも数名、所属している

ミナミにはアキバの〈円卓会議〉と同じような施政を預かる十人の席将達による〈十席会議〉が存在する

ギルドの本拠地は、ミナミの街から東方8キロメートルほど離れたイコマにある斎宮家の元別邸。

自治方針は『単一ギルドによるギルド間差別のない街』、『現実世界帰還のための勢力集結』など。完全平等を謳った組織ではあるが、その内情は派閥の乱立。

つづりはウェールズ語で「醜いアヒルの子」を意味すると思われる。

 

ここまでが現在までに私が調べた内容だが、どうも情報が隠蔽されている可能性がある

第一に単一ギルドによる差別をなくすなど、ほざいているがリアルでも解決できない差別問題がそう簡単に実現できるのか?私が思うに暴力もしくは脅迫で縛り上げているとしか思えない

第二に西の貴族達の動きがキナ臭い、反吐が出るほど臭くてたまらない。それだけで私は信用に足りないと感じている

第3に……ギルドマスターである西の納言『濡羽』

彼女の目的が不明過ぎる、協力者の情報にも彼女の目的が読めなかった

ただ、唯一わかっている事は彼女も『至っている』と言う事だけ……

 

 

 

「秘密事項項目:世界級魔法と冒険者」著作者:くずのは

より抜粋……

 

 

 

「西の納言『濡羽』……彼女はいったい……」

「あっ!くーちゃん、こんな所にいたんや!探したんやでぇ~」

 

舞台の軒裏、誰も通らなそうな通路に彼女は淡い光を灯しながら執筆していたのだが、聞いた者をみんな元気にさせる声によって手が止まる

 

「……ん、マリーでありんすか!どうしたなんし?」

「うちのギルドで舞台ショーやるっていったやんけ!くーちゃんも協力してなぁ~?」

「おおっ!そうでありんすか!ならわっち、『あの黄色い』のがよいざんす!」

 

舞台の片隅にひっそりと置かれた黄色い服を指差し、目を輝かせながらマリエールに訴えかけた

 

「ん~、くーちゃんの衣装もあるんやけど……アレ着たらうちの用意したの着てくれはる?」

「着るなんし~」

「わっかった!うちからヘンリエッタには言っといてあげる!」

 

マリエールは彼女と腕を組み、彼女は『アレ』と腕を組みながら衣装室へと向かっていくのであった

 

 

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

東の狐と西の狐そして百合……Why?

 

 

 

レイネシアの夕餐会は崩壊していた。崩壊しつつも、盛況だった。

大使館に用いられているマイハマ公邸の正面ドアは大きく開かれて、全ての招待客は、アキバの中央広場にあふれ出し、同時に、中央広場で夕暮れの祭りを楽しんでいた人々と入り交じった。用意されていたご馳走は、次々に広場へと運び出され、シロエが密かに発布した、今晩の売り上げはその全てを〈円卓会議〉が持つという契約のおかげで、在庫も切れよとばかりにありとあらゆる食べ物や飲み物が、人々には提供されているのだった。

 

そのせいで、レイネシアが意図したよりも、平均した料理や種類のレベルは下がってしまって、殆どお祭りというか、花見などに近い状況になっていた

 

そんな中、クラスティに広場に導かれてきたレイネシアを見ると、〈冒険者〉の間にはどよめきが走る。あの決起演説以来、〈円卓会議〉やあちこちの集まりには顔を出していたレイネシア姫だが、こうして広場に直接顔を出すのは、初めてと云って良かった

 

クラスティにエスコートされた姫は少し視線を俯かせた、貞淑そうで、それでも恥じらいに頬を染めた完璧な笑みをみせる。その様子は初々しくて、まさに夢のような美しさを見せる美少女ぶりだった。

 

びっくりさせられたのは、その装いだった。

レイネシアは、デニムのマーメイドラインスカートをはいている。秋物らしい若草色のシャツの上には、丈の短いボレロ風のジーンズジャケット。長いスカートがお淑やかだが、カジュアルなファッションだった。黒いリボンが編み込まれた長い銀の髪が背中で揺れている。貴族達が着る服ではなく、自分達に近い服装だったのだ

憮然としたクラスティに導かれて広場の南側に進んだレイネシアは、そこに急遽作られた大きなソファベンチに腰を下ろす。

 

“黒剣”アイザックがトレードマークの剣を鞘走らせ、警備上の理由から姫はこちらの長椅子から動けないということ、しかしこの広場にて祭りの夜を分かち合いたいこと、そして望むものであれば、何処の誰でも、この四阿にて挨拶をすることが出来る旨を伝えると、〈冒険者〉のざわめきは一層大きくなった。

 

そんなシロエの眼下で、広間の動きは続いている。

飲食とレイネシア姫の周りの人だかりはそのままだが、新しい音楽と人だかりが発生しているのだ。ギルドホールから続く石畳の道の両脇には、ずらりとソウジロウ親衛隊が並び、その中央は広く空いている。

 

その空間の先頭を歩いてくるのはマリエールだった。

ウェーブする緑の髪に、光が差し込んでくるような無邪気な笑顔。魅力的に揺れる大きな胸を、すっきりしたデザインのジャケットに押し包んで弾むように歩いてくる。

ファッションモデルとしては失格なのかもしれないが、ステージ代わりの通路の先端までやってきて四方に手を振っているのが、らしかった。

 

続いて現われたのはヘンリエッタ、そしてアカツキだった。

いつもは少女趣味な服を着ているヘンリエッタ、黒づくめの忍び装束のアカツキ。だがしかし、今日ばかりはそれでは目的が果たせない。ふたりは〈三日月同盟〉お勧めの、少しだけエスニック風味の入ったカジュアルなチュニックに巻スカートをはいている。アレンジ違いの衣装をまとった2人は、年の離れた姉妹のようだ。

 

殆ど観客の視線を意識せずじゃれ合う二人を横目にマリエールは、すっとステージカーテンの方を指差した

観客の視線はマリエール達に集められていたので気付かなかったが、どうやらもう一人登場しているようであった

気がついた〈召喚術士〉が呼び出したのだろう、〈光の精霊〉はマリエールの指差す先を照らす、そこには―――

 

「へ?」

 

―――黄色い着ぐるみが佇んでいた

 

「ひ、ヒャッッハァァァァァァァア!」

 

呆気にとられる周囲を物ともせず、黄色い着ぐるみは奇声を上げて変てこな上下運動を行いながら、ステージの外、レイネシアが腰を下ろすベンチまで全力で走り始めたのだ

 

「ひっ!」

「ヒャッッハァァァァァァァア!」

 

奇声をあげながら此方に向かってくる黄色い化物に恐怖し、声を漏らすが化物は止まらない、あわやレイネシアまで後数メートルと言う距離で黒い影(アイザック)が二人の間に入り込み―――

 

「梨汁ぶっし「なにやってんだ、このアマッ!」ぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

黄色い着ぐるみの力を利用し、一回転するやいなやステージへと投げ返したのであった

 

「シロエ、さん」

「あ、お疲れ、ミノリ」

 

遠慮がちに掛けられた声は、ミノリのモノだって理解してはいるが、同じギルドの仲間の奇行に頭を悩ませ広場から視線を上げることが出来なかった。

 

「いまの声ってクー「言わないで、ミノリ」……お疲れ様です、シロエさん」

 

現実を受け入れたくない、しかし受け止めなくてはいけない。

あの駄狐の起こす厄介事は毎回、限度を知らないが今回の奇行は大勢の住人に目撃されている。〈冒険者〉同士の集まりだけなら笑い話ですむが今回はレイネシアがいる。貴族への対応もあるっているのにあの駄狐めぇぇ……

 

「いや、待て。駄狐は着ぐるみを着ていたし花魁口調で話していない。気付いたのもアイザックさんやクラスティさん、僕達ギルドの面々だけのはず。……一般の〈冒険者〉の奇行で片付けられるのでは?うん、そうに違いない!」

 

いつものシロエなら行わない、客観的で歓楽的な考え方にミノリは驚き、声をかけようとするが―――

 

「座りなよ」

「え、でも……」

 

クロエと言う渾名からは想像できないような綺麗で爽やかな笑顔を向けられてしまったら何も言い出せないで素直に応じる事しか出来ないのであった

 

 

 

 

「はぁ……」

「お疲れですか、姫?」

 

夕餐会はなし崩し的に、広場における宴へと変わり、〈円卓会議〉の許可もあることから皆が挙ってレイネシアに挨拶に来た。

大勢の住民の対応に体力を使い果たしたレイネシアは、流石にぐったりとして、長椅子に姿勢を崩して小さく手を振るぐらいしか出来ないでいた

 

「人気者ですね、姫は?……好意に迎え入れられていると思いますよ」

「私もそう思います。だからこそ、一人一人を大切に思い対応しなくてはいけない!…と思ったのですけど、流石に……」

 

クラスティは「お疲れ」とまた声をかけ、グラスをレイネシアに渡す

レイネシアも受け取り、口に付けた。ほんのり甘く、冷たい果実酒は疲れた体を癒すように染み渡っていった

 

「ふぅ、礼をいいます、クラスティ様」

「いえ、大切な姫に倒られでもしたらいけませんし……まだ大物が来ていませんからね」

「大物…ですか?〈円卓会議〉の皆さんは〈記録の地平線〉以外は来ましたし……すると、シロエ様でしょうか?」

 

大物と言うモノは大きな権力を持った人、または団体だと思っていたレイネシアはアキバの町において最高の権力を持つ〈円卓会議〉に席を置く〈記録の地平線〉マスター・シロエが来るものだと身構えたが、クラスティからの返事は違った

 

「シロエ君は、今警戒体制の指揮を取っていますよ、よかったですね?嫌いなシロエ君が来なくて」

「なっ!?……嫌いとかではなくて少し苦手なだけです!……シロエ様が来るのでないとするといったい誰が?」

「立場や法の権力もあれば『力』の権力もあるのですよ?……っと来ましたね」

 

眼鏡を開け直し、体を向けた先にはステージとは反対側のレイネシア側。長椅子の後であった

 

レイネシアもクラスティに続く形で後を振り返ろうとしたが、頭の両脇から伸びてきた手によって頭を拘束されてしまった。その手は冷たく思わず「ひっ」と声を零すが、耳元で囁かれた言葉によって緊張の糸は解れていった

 

「二回目かしら?ごきげんよう、レイネシア」

「く、クー様ですか?」

 

拘束が解かれ、振り返った先にはいつもの西の貴族が着そうな着物ではなく、青い長袖に黒いベスト、同じ色だが足元の方がフワフワなレースがついたスカートを穿いた〈くずのは〉が笑みを浮かべていた

 

「……最初からその格好で来れば良いものを……なんです、あの着ぐるみは?」

「着ぐるみシリーズの新作よ。知り合いに亀の着ぐるみを常時装備している〈冒険者〉がいるのだからマネしたくなってみただけよ」

 

黒いオーラを醸し出しながら嫌味の言い合いをする二人を尻目にレイネシアは〈くずのは〉が『力』の権力者だと言うことが腑に落ちなかった

確かに彼女も〈冒険者〉であるから不死と言う恩恵と絶対的な戦闘能力を持ってはいる。しかし、それはこの地に住まう〈冒険者〉全員に言える事であり、クラスティが大物と云うほどの『力』は持っていない様に感じたのだ

 

「姫、私達の間では「ペンは剣より強し」と言う言葉があります。彼女は『剣』ではなく『ペン』なのですよ」

「へぇ?」

 

いきなり目前の女性をモノに例えた事に唖然とするが、言葉が足りなかったか、と呟くとさらに言葉を重ねた

 

「言論の力は武力よりも大きな力をもつと言う意味を持ちます。……姫もご覧になったでしょう、ルンドスタード卿から大金を騙し取るあの手口を」

「あ…」

 

思い出すのは、夕餐会の光景……

一時は終息し解決したと思われたトラブルを掘り返し、反撃とばかりにある筈のない約定を矛にルンドスタード卿に脅迫を仕掛ける〈くずのは〉は確かに言論の力、むしろ相手を貶める力を大いに持っていると納得した

 

「ふ……私のレイネシアに手を出してただで済むとは片腹痛いわ」

 

やっている事は犯罪なのだが、それを正当化する〈くずのは〉

確かに大物かもしれない……

失笑しかできないレイネシアに〈くずのは〉は思い出したとばかりに一枚の紙を渡した

 

「……小切手?ってこの金額は!?」

 

手にした小切手には7桁の数字が書かれていた

 

「巻き上げた金よ、穢らわしい貴族の金でも金は金。好きに使いなさい」

 

大金を手にし固まるレイネシアを一目見て微笑み、優しく頬を撫でた後、〈くずのは〉はつかを返した

 

「驚きましたね、全額渡してしまっていいので?」

「レイネシアも子供ではない。汚い金だとわかっていても自分の利、いえ違うわね。……アキバの住人の利の為に使うでしょう。それに私には不要なモノだわ」

「なるほど……っと、どちらに?」

 

納得するクラスティを尻目に〈くずのは〉は森の方へと足を向けていた

 

「貴方に言う理由はないわ、でもそう、ね……黒幕に会いに行くと言っておきましょうか?」

 

口元を狂しく歪めながら彼女は笑う

森の中へ消えていく彼女の後姿を見て、クラスティはルンドスタード卿が言った『魔女』と言う言葉があながち、嘘ではないと感じるのであった

 

 

 

 

アキバの街の外れも外れ。もっとも北側の境界に近い雑居ビルのひとつ

そこから眺められる風景からは〈ログ・ホライズン〉と書かれた看板が掲げられているビルを貫く樹齢何百年だか判らない巨大な古木が伺う事ができ、ビルの中は辺りの暗闇を照らすように光が灯っていた

 

「……何か面白いモノでも見えたかしら?」

「えぇ、それはそれは、愛おしき、そして羨ましい光景が見えますわ」

 

古木からの光はビルまで届かず、照らすのは淡い月明かりだけだというのに二人は古木を眺めながら言葉を交わした

 

「それは良かったわね?っと言えば満足かしら……いい加減、化けの皮を脱いだらどうかしら……濡羽?」

「何をおっしゃいますか、わたしはダリエ「私を騙すのは万死に値する、剥ぐわ」――ッ!?」

 

ダリエラと名乗る美女の言葉は〈くずのは〉の言葉と展開された方陣によって遮られた

方陣から湧き上がる黒い魔力の奔流は一瞬でダリエラを飲み込み、瞬く間にダリエラと言う皮を剥いでいった。奔流が終わる頃には藍色と赤で編まれた幾何学模様のローブを纏った〈大地人〉ダリエラは消滅し、彼女がいた場所には漆黒のゴシックドレスを身に纏い、先端を雪の白で染めた耳と尻尾を持つ〈冒険者〉濡羽が佇むだけ

 

皮を剥がされた濡羽はと言うと、ヒラヒラと白い手を泳がせた後、〈くずのは〉に笑いかけたのあった

 

「素晴らしい概念魔術ですね?―――私の〈情報偽装(オーバーレイ)〉など一瞬にして剥がされ晒されてしまいましたわ」

「私がわざわざ足を運んでいると言うのに偽りの姿で迎えた貴女が悪いわ」

「それは…そうですね。貴女様をお迎えするには些か配慮が足りなかったようですわ」

「その通りよ、気をつけなさい」

 

いつも通りな傲慢な態度で、言葉を言い放ち懐から出した金色の扇子で風を扇ぐ

月夜に照らされている事も相まって、その姿は一種の芸術にも思えたが、濡羽が薄ら笑いを浮かべた瞬間に、芸術は崩壊した

 

扇いでいた扇子を閉じ、舞うように濡羽の目の前まで飛ぶとその扇子で彼女の顎を持ち上げたのだ

 

「………なに」

 

不機嫌に呟かれた二文字、持ち上げているのは扇子だと言うのに真剣を喉元に突き刺されている様な剣幕感を醸し出していた

 

―――しかし、彼女の笑みは崩れなかった

 

「ふふふ、皆さんから聞いていた通りの方、いえ、聞いていた以上の方だと思いまして」

「……人から聞いた人物像などゴミ屑と一緒よ、吐き気がする」

 

苛立ちながら言い返す〈くずのは〉に、笑みを保ったまま濡羽は否と答えた

 

「……実は私、一度、貴女様に会った事も話した事もあるんですよ?」

 

扇子を突き刺されたままだと言うのに濡羽は一つの石に腰を下ろした

 

「覚えてはいないでしょうが、あの時、私は守ってもらえて、求めてもらえて、与えてもらえる……そんな小さな幸福が欲しくて仕方ありませんでした。でも貴女様は―――」

 

濡羽の漆黒の瞳が真っ直ぐに〈くずのは〉に向けられた

 

「私の欲している幸福を全て持って、そして与える事もできる。……憧れました、貴女様に。そして……持っている幸福を自ら捨てる貴女様に憎しみを覚えました」

 

向けられた瞳は閉じられ、脳裏に何かを思い出しているのかそっと口が開く

 

「こう見えて私、努力家ですの。……貴女様に近づければあの方にも振り向いて貰えると思い頑張ったんです。――でもね、ダメでした。」

「当たり前だわ、私は私であり貴女は貴女でしかない。虚像を纏っても所詮は偽りでしかないのよ」

 

今まで口を閉ざしていた〈くずのは〉は、先より鋭い視線を濡羽に送りながら言葉を言い放つが、濡羽は頬を染め更には瞳を潤ませながら〈くずのは〉を見つめ返した

 

「えぇ、えぇ、判っています。でも私は今、貴女様に近づけた事に心躍っていますわ。……見向きも言葉も貰えなかった私が―――貴女様の御眼に入れて貰えるのですから」

 

一粒の雫が濡羽の頬を伝った。そして膝元に置かれた両手を大きく広げ〈くずのは〉に向けたのだ

 

「あの方にもですが私は……貴女様にもわたしの隣へ。わたしと共に歩き、わたしに与えてほしいと思っていますわ。どうか私と共に。〈Plant hwyaden〉へ」

 

いまだ瞳を潤ませて、〈くずのは〉の返事を待つ濡羽に対して〈くずのは〉は―――

 

「………」

「――ッ!?」

 

ニコリと笑みを浮かべ、濡羽を迎え入れるように両手を広げた

感極まり、濡羽は涙を流しながら〈くずのは〉の胸に飛び込んでいった

 

 

 

 

 

 

――――が、反転

 

ふわっと浮き立つ足、回る視界、何が起きたのか判らず困惑する中、濡羽が投げ飛ばされたと理解できた時には、また違った状況、地面から感じる冷たさと口元と口内に感じる暖かさに違和感を覚えるのであった

 

目を大きく開き、驚く。目に映るのは先程、両手を広げ私を受け入れてくれた筈の彼女。そんな彼女が私を押し倒し口を口で塞ぎ、更には舌を絡ませているのだから

 

途中で息苦しくなり、舌から逃げようとするが、舐め回され甘い息が零れるだけで新しい酸素を取り入れることを阻害されてしまう

 

意識が朦朧とし始めた頃、口元や口内を侵食していた熱さはなくなり、逆に体の中に冷たい空気を取り入れる事が出来た

 

息も絶え絶えにする濡羽を尻目にスッと唾液で濡れた濡羽の唇を指でなぞり、自身の唇を持っていく〈くずのは〉。そして微笑んだ

 

「確かに貴女は私が目をかけるまで成長したわ。……私好みの真っ直ぐで純粋で、そして歪んでいる」

 

息を整える濡羽の頬を撫でながら、でもね、と言葉を続ける

 

「私もここでお気に入りを見つけたの。……彼女の『思い』がある限り傍にいるって言う約束もある。……決して貴女の『思い』が彼女に劣っていると言う訳ではないの。もっと単純な話し、……どっちが早かったか、よ」

「……で、でわ、私の元には」

 

体を起しながら、悲しみに顔を染める濡羽に対し〈くずのは〉は軽く頬に口付けした

 

「そうね、いかないわ。でも……私にはアキバの街に肩入れをする理由も、〈大地人〉に肩入れをする理由もない。だから、そうね…」

 

〈くずのは〉は立上り、濡羽に手を伸ばした

 

「貴女の言う『あの人』を落とす事が出来たなら私も貴女の元へ行きましょう。だから―――成長し続けない、愛しい濡羽?」

 

 

月明かりに照らされる中、濡羽は笑みを浮かべながら〈くずのは〉の手を取るのであった……

 

 

 

 

NEXT  おうふ、ネタ切れた

 




余談
「貴女様の口付け……情熱的でしたわ。でもどうして?」
「近くにいれない貴女に対してのご褒美よ」
「ご褒美ですか?」
「えぇ、本当ならお気に入りにもしたいけど、3人は子供達だし、一人は眼鏡がガードしてるのよ。……貴女なら、ね?」
「私だけ……」

百合乙ッ!


余談
「しかしよく、衛兵が来ませんでしたよね?」
「ん?えぇ、衛兵は来ないわ。データを偽装したから」
「偽装…それが貴女様の〈口伝〉ですの?」
「ふふふ、私を口説けたら全てを語るわよ、だから……」
「わかっていますわ。私も『あの方』を口説きますわ」
「えぇ、上出来よ」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。