ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

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『4』し!わっちの出番は…『6』?次回でありんすか…

〈ススキノ〉

 

現実対応で云えば札幌の位置に存在するイスカル地方に築かれた〈エッゾ帝国〉の首都とされる第三のプレイヤー都市

エッゾにおける〈冒険者〉の拠点であり、同時に〈巨人族〉の侵攻を食い止める為の防衛基地としての性格も持つ城塞都市は、〈大地人〉統治の中心として周囲の開拓村を取りまとめる政治機能も有していたが、〈大災害〉の直後は無法者と化した〈冒険者〉集団によって一時的な制圧状態にあった。その後、アキバからススキノへと本拠を移した大型戦闘系ギルド〈シルバーソード〉による鎮圧、そして治安維持活動が行われ、現在は平穏を取り戻しつつある。

 

なお、上記にあるように〈シルバーソード〉の治安維持活動が行われるように成ってからは食文化・製鉄業が主に伸びをみせており、特にエッゾ芋を使った料理のレパートリーの多さは他の4大都市と比べ比較にならない程だ

その原因は、元より北地に所属している為、濃産業は遅れを取っており出回る食材に限りがある事があげられ、少ない食料を余す事無く使い切る精神から産まれたモノだ

製鉄業に関しては寒気が辛い地方と言う事もあり、少しでも暖かい暮らしを求めての結果である

 

一時期、〈ススキノ〉を拠点に置いていた私に言わせれば林檎が少ない、薄着の女性がいない、治安が良くないの三重苦であった……

 

しかし、極地に似合うレアアイテムやレアモンスターの出現率が一番多い為、『強くなる』の一点に視線を合わせれば〈ススキノ〉程、理に叶った所はないだろう

 

 

「カマンベールチーズ・ゴーダチーズ・セカイチーズ」著作者:くずのは

より抜粋……

 

 

「まぁ、わっちは十分強いんしたから意味はありんせんでありんしたけどね?しかし…うわっちゃ!?」

 

本を懐にしまうと同時に彼女に向い、鋭い爪が振り下ろされた

慌てて振り降ろされた爪を回避した彼女は、にゃん太の背後に逃げ隠れると背中合わせになり、二匹を囲む魔物達と対峙する

 

「なんでわっちが、こな事をしなくてはいけんせんのでありんしょうかぇ!」

「くーち、そっちに行ったにゃ!」

「GAUUUU「黙りなんし!」ウガッ!がががあぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

飛びかかってくる魔物を彼女は、開いた扇子を大きく振りかぶりながら蹴りを入れ谷底に叩き落とす

落された魔物の叫び声が遠退いて行くのを尻目に二匹を囲む魔物の勢いは止まる事はなかった

 

「もういい加減にしてくんなましぃぃぃぃ!」

 

彼女の悲痛な叫びは山に……ボクスルト山脈に虚しく響き渡るのであった

 

 

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

とんふぁーきっく?……ロマンがありんすね……

 

 

 

ボクスルト

その名前は弧状列島ヤマトにおいても現実世界でも知名度が高く、地球世界でその場所は箱根。駅伝でもよく耳にする地域だが〈エルダー・テイル〉に置いては、元は山地の名称であったが、地域の名称にもなり、峠の名前にもなり、砦の名にもなった名称だ

 

現実でも〈エルダー・テイル〉としても有名なボクスルトではあるが、現実と違う所は中世、いや日本の時代で合わせれば戦国時代を思い描ける山道だ

道の幅は三メートルほどしかなく、馬車が通るギリギリの幅、時に縁石や杭で補強されている部分はあるが、その多くは赤土で雨が降ったらいかにもぬかるみそうに見える。

そんな不安定な道が、斜面に張り付くようにうねうねと続いている。右手は山頂に続くのぼり斜面で、杉のような樹木がみっしりと生えているし、左手は谷へと続く下り斜面で、目がくらむような落差を見せる景色もあった。

風景だけならまだしも、街道は山肌に張り付いているために地形の気まぐれで、少し登ってはまた下り坂になり、左に右にと蛇行しては、時に引き返している としか思えない切り返しさえあった。三月の山はまだ冬枯れの様相を残していたが、自然の生命力は強く、濃い緑の匂いとざわめきに満ちている。

 

 

そんな山道でなぜ二匹が戦闘を行っているかと言うと目下で立往生している二台の馬車が事の原因だ

 

トウヤ達より先行し辺りを見渡していた二匹は、視界の悪いこの山道では、直線で見晴らしが利くような部分はほとんどない為、低空を飛んでいたのだが、トウヤ達の進行上に、二台の馬車が立往生をしているのを発見したのだ

 

問題の解決は簡単、立往生している原因が、ゆかるみに車輪が飲まれ動けない。ならば馬車の重量を軽くしぬかるみから脱出すれば良いだけ……試練にする必要もない案件だがトウヤ達にとっては真新しい試練と言う事もあり、彼らに対処してもらう予定であったが、馬車の乗員……商人達の反応を窺うに積荷である木箱にあきらめが付かないように伺えた

 

 

このままトウヤ達と接触させても良いのだが、おそらくトウヤ達は商人達に手を貸す

そうすると周囲の警戒が疎かになってしまう。最悪、商人達に警戒してもらえば危険は減るだろうが商人の顔色を見るに一昼夜を過ごしている様に感じ疲れきった彼らの警戒網などザルに等しいだろう

 

視界が悪く、足場も不安定なこの場において魔物に奇襲され商人を守りながら対処することは、経験の浅いトウヤ達には荷が重いと感じたにゃん太は、とあるアイテムを使用し魔物のヘイトを自身に集めたのだ

 

当然の如く、駄狐は反対したが事は既に遅し

アイテムの効果で集まって来た魔物と猫に文句を叩き突けるが暖簾に風、募る苛立ちを爆発させた駄狐は、次々と谷底に魔物を落とし、倒して行ったのだ

 

ボクスルトの魔物のLVは決して高くは無いのだが、武器による攻撃力の低い彼女ではにゃん太のように瞬殺する事ができなく、ひらすらけり落とした

 

―――――――――蹴って蹴って蹴り落した

 

戦闘を終えたのは、トウヤ達が広げた場所まで商人の荷物を運ぶのに用いた時間、2時間の間、彼女達は戦い続けたのだ

 

突き出た岩に腰を下ろし、少年組達と同じ様に昼食を取りながら自身のHPとMPを確認していく。〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)が出て来たのであれば話は変わっていただろうが、強敵と云う強敵は出現されなく2人のHP,MPは3割ほど無くなる程度に収まった

 

HP・MP回復を含め昼食を作り始めるにゃん太を尻目に二時間戦い続けた彼女はへばってグリフォンに寄り掛かっていた

 

「くーち、周囲の魔物は一掃しましたが、警戒はして欲しいですにゃ」

「うにゃ~……雑魚の相手ほど疲れるモノはありんせん。おかげでわっちの尻尾に輝きがましんした」

「LVでもあがりましたかにゃ?」

 

にゃん太の問に尻尾を振って応えた彼女は、懐から長細い単眼鏡を取り出しトウヤ達を盗み見た

 

「わっちをこなに働かして憎い人でありんすね!第一、素人衆装備の剣などこなにいりんせん でありんしょうに!」

「おや?荷物の中身を見ましたのかにゃ?」

「あい、木箱にぎょうさん、『鉄の剣』が入っていんした。方向的にはイコマが目的地でありんしょうが、しとつとてのこさず売る事は出来ないでありんしょうね?」

「ふむ……需要と供給の問題ですにゃ?」

「めんどう事は〈くずのは〉にパスでありんすが、イコマの〈冒険者〉が買うには些か弱すぎるでありんす」

「ふむ…」

 

確かにイコマは、現在〈Plant hwyaden〉(プラント・フロウデン)の本拠地と隣接した地帯と言う事もあり、今更手低レベルの武器を好き好んで買う〈冒険者〉はいないだろう……

首を傾げるにゃん太は、スープを掻き混ぜる手を止めずに一人呻ると、商人達を遠目で見て理解したとばかりにお玉をあげた

 

「買うのが〈冒険者〉でも使うのが〈大地人〉ですかにゃ?」

「だから~手数話はパスでありんす~」

 

折角出した答えだというのに出題者からの返答はない

しかし、逆に考え〈くずのは〉であれば間違いを指摘するのであれば兎も角、答え合わせはやり得ないと自己完結したにゃん太は、険しく顔を歪め掬い出したスープをお皿に盛りつけた

 

もしこの場に第三者が居ればトウヤ達の食事と比べ猫と狐の食事は貧富の差を感じてしまう所だが、実際には違う

にゃん太の腕前で作られたスープは三つ星シェフに並ぶほどの技量で作られており、駄狐が提供した林檎は現在、ヤマトで取られる林檎のなかでも一級品の品質を持った者であり、下手な食事よりもリッチな食事となっているのだ

 

 

閑話休題

 

 

食事を終え、手に付いた果汁を舐めていた彼女は、急に慌しくなってきた目下に耳を忙しなく動かしながら崖から身を乗り出して様子を窺った

 

「うみゃ?お祭りでありんしょうかぇ?」

「危ないですにゃ………あれは恐らく『北風の移動神殿』ですにゃ」

 

彼女の首元を掴み上げたにゃん太は、だれる猫の様に吊られた彼女を尻目ににゃん太は説明を続けた

 

「吾輩も直接目にした事は多くはありませんが、復活拠点として遠征に出る冒険者が所持していくアイテムだと聞いた事がありますにゃ」

「ふ~ん」

「それだけですと、別段なんの事もありませんにゃ。しかし……その復活拠点を〈望郷派〉(オデュッセイア)が所持していることが怪しいとは思いませんかにゃ?」

 

〈望郷派〉(オデュッセイア)……アキバでも耳にした事のあり、元の世界へ帰ることを至上目的として掲げた組織。それだけを聞けば無理もなく、ある意味すべての〈冒険者〉の気持ちを代弁するような集団であるはずだが、彼らの思想は過剰な程の陰鬱な色彩を放っており、シロエも警戒していた事を思い出したにゃん太は、なにか知っているだろうと彼女に話しかけるが無関心

 

もしかしたらトウヤ達に降りそそる火の粉に成り得るのではと感じたにゃん太は、影ながら動き出す事を決めたのであった

 

「……これは少し調べた方がよさそうですにゃ~」

「絶対!拒否しんす!」

 

 

 

 

 

尚も引き下がらず、にゃん太の腰にしがみ付く駄狐を引きづり回し、些か眼を離す事とになってしまうが、これもトウヤ達の為だと割り切り情報を集めた。

もとより、〈記録の地平線〉のサブリーダーの様な立場上から〈円卓会議〉に良く顔を出していたにゃん太の情報量は、彼らより多く〈望郷派〉(オデュッセイア)とされる集団<オデュッセイア騎士団>の根拠もない信念、彼らが所属する〈Plant hwyaden〉(プラント・フロウデン)の動向、なにより〈ヤマト〉における〈冒険者〉と〈大地人〉の親交状況………

 

これらを考慮し彼らの本来の目的と他に何か別の意図があると読んだにゃん太は霊峰フジを中心に周辺の変化に探りを入れた……そして―――

 

〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)の巣、ですにゃ」

 

もぬけの殻となった〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)の巣を発見したのだ

リアルになった〈エルダー・テイル〉において作られた存在である魔物は兎も角、自然と共に生きる〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)のような原生物が独自の生態系を作り生息している事は既に確認済み

現に〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)は霊峰フジを生息地にしており、多くの数が生息している事は周知の情報だったが、この状況を顧みて何者かによって生態系が崩された事を理解した

 

生態系が崩される原因は多くあるが一番の理由は……強者の介入

しかし、霊峰フジにおいての強者は〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)、リーダー核になれば同じ個体だとしてもLV80に届くモノまで存在しる。それが狩られる立場に追いやられるとしたら〈冒険者〉の介入があったと言う事になる

 

「しかし、〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)を狩り尽すまで何が彼らをそこまで追い立てますかにゃ?レベル上げだとしてもレベル格差の大きい〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)は割に会わないにゃ……くーっちは、どう思いますかにゃ?」

「わっちでありんすか~?……もしも~し、わっちわっち!」

 

にゃん太にリアルで引きづり回されていた彼女は服や尻尾に付いた泥や葉っぱを落しながら、にゃん太に顔を向けるが、答えるつもりがないのか懐から<呼出水晶>を取り出し誰かと通話をし始めたのだ

 

もとよりちゃんとした返答が帰って来ないと判っていたにゃん太は、更に考えを纏めていった

 

〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)を狩って利になるような事は、素材と経験値。ですが、〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)の素材程度ならそれほど苦労も無く手に入れる事も出来ますにゃ」

「わっちわっち!今、富士山にいるでありんす!それで事故っちゃって100万円よこすなんし!」

「なれば経験値、でしょうかにゃ?でもレベル格差が……」

「え?ふざけるな?わっちはいつなるときも真面目でありんすよ!……そんで100万~」

「レベル格差……ッ!低レベルの〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)で戦い方を学び高レベルの〈鋼尾翼竜〉で経験値を得る!……まるで初心者のレベル上げ、いや初心者のレベル上げなのでしょうにゃ」

「え?いいでありんすか!……引き渡し場所?どこでありんすか ?」

「〈大地人〉のレベル上げ……パワーリングが目的なら納得いきますし、ボクスルトの商人の積荷も納得がいきますにゃ」

「鋼鉄車両?それは、どこにいんすか!」

「ですが、〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)を狩り尽すまでの大所帯をどのように……鋼鉄車両?」

 

戦力にならないと思われた駄狐の口から思わぬワードが飛び出し、にゃん太は彼女の方を掴んだ

 

「くーっち!今だれと話しているにゃ!」

「ふぇ?ちんどんやに『わっちわっち詐欺』をしておりんす」

「ッ!」

 

ちんどんや……駄狐が云う〈ちんどん屋〉がにゃん太も知る彼ならば、その情報に間違いはない

むしろ、彼女の交流関係を吟味しても〈ちんどん屋〉など〈放蕩者の茶会〉に所属していた彼しか当て嵌まらなかった

 

「いまその車両はどこにいますにゃ!」

「ご隠居も興味がおありで?取引先は今、フェヴァーウェル川下流付近らしいでありんすよ 」

 

居場所を聞き出すやいなやにゃん太は〈グリフォンの笛〉を取り出し、吹き出した

空へと鳴り響く音色は、グリフォンを呼び出す為に、広く深く音を響かしていき、そしてその音色は二重になって響き渡った

当然の様にアイテムの効果で二頭のグリフォンが舞い降りてくる

しかし、〈グリフォンの笛〉で呼び出せるグリフォンは一頭のみ……ならば誰がもう一頭呼び出したのか?

 

 

 

―――――――答えは決まっていた。

 

 

 

「くずのはっち?」

 

後を振り向けば降りてきたグリフォンに絡まれる駄狐……もとい〈くずのは〉が手綱を引き寄せ頬を寄せてくるグリフォンを嗜めていた

 

「その呼び方は辞めなさい。私はあの子達の元へ行くわ」

 

彼女がトウヤ達を見に行くと言ってくれた事に対しにゃん太は、嬉しく思う反面、状況を考えるに〈くずのは〉には戦力としても知力としてもこちら……鋼鉄車両へ一緒に来てもらいたいと考えていた

 

トウヤ達の監修が出来ない事を心苦しく思うが、この件の対処に遅れたら生態系が壊れ行き場を失ったモンスターが周辺の市町村に被害を与えるかもしれない。彼女にも此方に来てもらう為にも声を掛けようとするが――――

 

「ですが、今優先すべき「統率の取れていない〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)はどこにいるかしら?」ッ!まさか……」

「えぇ、行き場所を失った〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)があの子達のいる町へ向かっているわ」

 

―――すでに時は遅し。核となる高レベルのリーダーを失った〈鋼尾翼竜〉(ワイバーン)は、周辺に散らばってしまっていた

ならばここで行動を共にするのは下策、一方はこれ以上被害が広がらないように元凶を討つ、もう一方は本来の目的である少年組の護衛に周った方が良いと結論を出したにゃん太はグリフォンに跨り空に上がった

 

「セララさん達を頼みましたにゃ!」

「えぇ任せなさい。それと……コレを持っていきなさい!」

「ッ!」

 

〈くずのは〉の手から宙に投げられたモノを掴み懐にしまったにゃん太は、鬼気迫るとばかりにグリフォンを翔けさせたのであった

遠退いて行くにゃん太を見送り、自身もグリフォンに跨った〈くずのは〉も宙へと浮かび上がる

 

「猫にはああは云ったけどあの子がいるから心配ないわね?ならば私は……甘えん坊に発破を掛けるのみ、ね」

 

そして狐を乗せた鷲獅子は、少年組が奮闘する町へと向かって飛んで行くのであった

 

 

 

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