ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~ 作:誤字脱字
繋ぎ回だからさ……
すみません、ほぼほぼ原作と同じでちょろっと手を加えただけの話しです
手抜きと云われても言いかえません!
作者が濡羽と絡ませたかっただけです!
次回で『〈悪雲〉:狐と猫』は終わりです
〈サフィールの街〉
襲撃なう
「かまんべーるちーず・ごーだちーず・せかいちーず」著作者:くー
より抜粋……
「……」
〈くずのは〉は、書かれた一文を筆で塗り潰しタメ息を付いた
「久方ぶりに自分で書きたいと云うから任せたというのに……小学生の作文以下じゃない。しかも……」
〈くずのは〉は、空に舞う
「現状を説明するにこれ以上の言葉は無いわ」
辺りを見渡せば数百を超えるワイバーンが、住処から追い出され〈サフィールの街〉へ向かい南下しており、視線の先では〈冒険者〉と戦闘を行っているのが確認取れた
そしてその中に黒い影がいる事にも〈くずのは〉は気付き眼を細めた
「
グリフォンの手綱をいっそう強く握りしめた〈くずのは〉は、
ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~
plus ultra!……え?作品が違う?わっちには関係ないし~
たおやかな姿を持つ白い女性が、まるで小春日和の残照の中を行くように、平然とサフィールの街並みをよぎっていった。
時節立ち止まってはなにかを考え、空を見上げて、また歩みを始める。
焦げたような匂いの黒煙が僅かに空気に混じり、周囲は喧噪に包まれている。魔法の炎は通常煙をたてないため、これはなにかに引火したということなのだろう。サフィールは戦闘状態にあるのだ。
白い美女を獲物と見定めたのだろうか、一体の
ダリエラはそちらを見上げようともせずに左手を挙げると、吐息のような声で呪文をつぶやいた。〈アストラル・ヒュプノ〉。それだけで不可視の網に絡め取られたように
錐もみ状に落下して土煙と瓦礫に沈む翼竜を背景に、白い女性は漆黒の羽ばたきに包まれるようにその姿をブレさせる。膨大な魔力を秘めた幻尾がまるで大気を愛撫するように艶めかしく揺れて、狐の耳を持つ漆黒の美女が現れた。
対象を深い眠りに落としその精神を凍り付かせる〈付与術師〉の呪文〈アストラル・ヒュプノ〉。攻撃力のないこの呪文であるにもかかわらず、それが起こした被害は甚大だった。
濡羽は小さくため息をつくと、さきほどまでと同じように歩みはじめた。
ビルの間を抜け、茂った緑の木陰の下をとおり、夕焼けの戦場を歩く。
不思議なことに〈闇精霊の従者〉も
濡羽は戯れに、あるいは自分に突進してくる火の粉を払うように、小さな呪文で彼らを止めた。止めるというそれだけのことで、濡羽は戦場に破壊と絶命を巻き散らかした。
〈付与術士〉のなかでも行動阻害呪文に特化した
濡羽はその言葉を体現したかのような歩みを見せていた。時には足を止め、時には何かを呟き、町を抜けてゆく。
濡羽は小さなため息をついた。
悪意や害意があったわけではない。ただシロエのギルドのメンバーだと思ってちょっかいをかけてしまったのだ。そして傷を受けた。
上から目線で小馬鹿にしていたことを濡羽は認めざるを得ない。シロエは特別だが、その仲間まで特別なわけはあるまいと思っていたのだ。いつも通りに愛想笑いをして、相手を思いやるようなちょっとした態度と仕草を見せれば、容易く溶け込めると思っていた。
事実、ミノリやセララ、五十鈴と言った娘たちにはなにも気づかれなかった。おそらくルンデルハウスという元〈大地人〉にもだ。
油断していたとは思わない。
多少距離をつめようとしてしまったのは確かだが、それはシロエやと同じ景色を見てみたいという誘惑に負けたせいだ。
トウヤという少年が、〈大地人〉の伝記作家の中に何を見たのかはわからない。正体が露見したとはおもわないが、トウヤという少年が特別な能力でダリエラの何かを見抜いたのは確かだ。
濡羽は、あの年端もいかぬ少年に哀れまれたのだ。
優しくしなくても良いよ。
そう言われた。
そんなささいなくだらないとも言える一言が、トゲとなって濡羽に食い込んだ。小さな痛みは無視出来ないほどに大きなものではなかったが、忘れてしまうには鋭く新しかった。
トウヤという少年を、ミナミに勧誘してしまったらどうだろうと悪戯心が湧いたのは事実だ。シロエにかまってほしかっただけだった。しかしあの少年はシロエの
戦場の空気を見てみてもそうだ。怪我を抑えて 逃げてゆく〈大地人〉の瞳は輝いていないか? 心なしか空気にリュートの音色が混じってはいないか?
シロエはやはり特別なのだ。シロエの瞳を借りてみれば、この薄汚れた掃き溜めのような世界も、別の色に見えるかもしれない。濡羽はそれを想像して、寂しく笑った。
シロエの教えがあの少年の刃なのだ。小さな痛みもシロエへと繋がる絆なのだとおもえば、どこか甘美に感じられる。そして同時に羨望を感じた。シロエには何かを伝える相手がいるのだ。濡羽にはいない。
しかし憎しみはなかった。朝靄の中で見たあの素直な少年の清澄さが濡羽から濁った感情を取り除いてしまったのかもしれない。
どうせ、濡羽などはいないような存在である。
〈アストラル・ヒュプノ〉の魔力でもとの姿が現れてしまったが、再利用規制時間が満ちればまたダリエラの姿と名前を取り戻す。そのダリエラさえ偽りの姿だ。濡羽ですらそうなのだから。
本物の自分などどこにもいはしないのである。
幽霊のような自分の滑稽さに小さく微笑んだ。
人を求め、求められたくて選んだ姿をうっとうしく思い、その姿から逃げだし、美しくも妖しい姿を得つつもその姿から逃げ出し、話しかけられるのも鬱陶しくて鋼鉄車両から姿を消した濡羽は、いままたその姿を変えてしまっている。
我が事ながら支離滅裂で、その悲惨さと滑稽さは、目を覆わんばかりだ。
なにを手に入れても砂のようにこぼれ落ちる呪いが濡羽にはかかっているようだった。余りにもすべてをかなぐり捨ててしまった濡羽には、もう、何を手に入 れればいいのかもわからない。棄ててしまった何かが価値あるものだったとしても、もう濡羽は後悔さえも捨ててしまっている。
そんな無明を唯一照らすのがシロエだ。濡羽の中のシロエはいつも横顔で、どこか遠くを見ていた。初めて出会った大規模戦闘の時の印象が強いせいだろう。言葉を交わすことが出来たいまでさえ、思い起こすシロエは遠くを見ているような表情ばかりを浮かべる。
その思い出を抱きしめるように濡羽は胸の前で白く小さな手を握り合わせた。
「濡羽様っ」
駆け付けて跪かんばかりに頭を垂れた騎士を濡羽は一瞥した。
ロレイル=ドーン。普段は気障らしく切りそろえた金色の髪は乱れ、聖騎士の鎧すら薄汚れている。犬のように濡羽を求めて山野を駆け回っていたのだろう。浅ましいその姿に侮蔑を感じ、濡羽は黙った。
濡羽を閉じ込めようとする名ばかりの親衛騎士団などにかける言葉はない。
しかしロレイルは、その無言を別の意味で捉えたようだった。
「濡羽様、ここは多少危険です。濡羽様の静止魔法であれば大事ないかと思いますが、避難していただけませんでしょうか?」
「この町を取り巻く状況は? ミズファは何をしているの?」
濡羽は尋ねた。
この町の状況は異常だ。
「この町はミズファ様の指示で戦場となっているようです」
「そう」
地面を見つめ、小さくシロエの名をつぶやいて濡羽は歩きだそうとして足を止めた
特に思う事はないので、またダリエラに戻るまでの戯れだと歩み進めた筈の足が止まったのだ
―――なぜ?
その答えは直ぐに舞い降りてきた。地面に写る
その影は人の姿をしており、突然現れた影に警戒し前に出るロレイル=ドーンと同じ形をしていた。……違うとすればその影からは9本の影が繋がっているところ……
もしや、と思い徐に顔を上げて見れば――――
「久しぶりね、愛しの濡羽。ご機嫌いかがかしら?」
「あぁ……あぁ!〈くずのは〉様!」
シロエと同じく私を魅了し、そしてシロエとは違い私だけを見てくれている愛しの存在の登場に濡羽は、顔を綻ばせたが、彼女が口にした『ご機嫌』という言葉に再び顔を伏せてしまった
愛しの君の顔をもっと眺めていたいのだが、こんな醜い顔では愛想を付かれてしまうかも知れない。そんな思いから濡羽は一歩後ろへと下がってしまった
それを境に、何を勘違いしたのかロレイル=ドーンは警戒心を最大に引き上げ、剣を抜き〈くずのは〉に向けたのだ
「貴様何者だ!突然と姿を現し、更には濡羽様に対してその云い様!失礼にも程がある!ッ!それ以上近づくと斬るぞ!」
「………」
「……警告はしたぞ?恨むなよ」
違うのだ、と声を出して云いたい。
あの方は、貴方程度で止まるようなお人でなければ敵でもない
そんな事も判らずに剣を向けるロレイドは、なおも近づいて来るおの方に痺れを切らし剣を突き立てた
―――――っ!
キンっと甲高い音と共に何かが倒れる音が聞こえる
どちらがやられたの?……でも私に近づいて来る足音だけでは誰が近づいて来ているのかまでは判らない。あの方が、ただの親衛騎士程度に遅れを取るような人ではない事は判り切っていることだけれど、魔法を唱えた声も魔法の音もしなければ……不安になってしまう
私の心情など知らないとばかりに、足跡は近づき……私の頬へと手が添えられた
細く暖かい、手……手が導くまま顔を上げた先には、愛しの君が微笑んでいた
「ふふ、顔を上げなさい。綺麗な顔が台無しよ?」
「くずのは、様……」
久方ぶりの再開に、自然と瞳に雫が溜まっていくが、あの方はその雫さえその指で掬い上げ、自身の舌で舐め取った
「貴女を泣かせていいのは私だけよ、覚えておきなさい」
「は、はい…あっ」
私が返事をするや否や、あの方はポンと頭を撫で彼女の周りを浮遊する二つの鏡を伴いながら地に這うロレイドに腰を起こした
「さて……話は聞いたわ。この襲撃は貴女の所が原因のようね?」
「ッ!はい…そう、です」
彼女の問に私は、先程まで至福から一転、一気に気分を下がってしまった
どうでもいいと思ったからミズファの計画を承認したのだ。
求められたから閲兵も行った。
ミズファの思い描く夢、望みを叶えた結果、戦火は広がり、あの不機嫌そうな表情の少年がいるこの町まで広がりを見せた
濡羽に『笑ってなくても変な顔じゃないよ』などと手ひどい侮辱をした少年だ。
その少年の滞在する街を、私にトゲを刺し爪を立てたあの少年がいる街を叩き潰してよいのか? 私はその事に引っ掛かりを覚え……あの方の問にも曖昧に答えてしまった
そんな私の様子にあの方は、笑みをいっそう深めた
「ふふ、その表情を見れば理解出来るわ。貴女はあの子に影響を与えられたのね、それも心に残るような深く、そして小さい傷を……」
「あの子……〈くずのは〉様は何を?」
「知りたい?」
「えぇ、私は、「濡羽様!惑わされてはいけません!」……」
水を差してくるロレイドをこれ程までにも殺したいと思った事はない
あの方との会話に割り込んでくると思いや惑わすなど、アリもしない事を口にするロレイドに……
「……うるさい、椅子ね。」
私の想いが通じたのか、〈くずのは様〉は
余程、強く蹴られたのか
「躾がなっていないわね、濡羽?」
「ッ!貴様!「
これ以上の醜態は私の株を落しかねない、もし〈くずのは様〉に見捨てられたら私は、あの暗い部屋に閉じ込められてしまう
そんな事はされたくない、サレナクナイ……
「話が逸れたわね?……あの子は、『光』よ」
「『光』……」
私の意を読んだのか先程の遣り取りなど、無かったかのように話し始めた〈くずのは様〉は、あの子の事を『光』と云った
「そう、『光』……貴女が私やシロエに感じるモノをあの子は、みんなに与える事の出来る『太陽のような光』。私はそう思っているわ」
「たい、よう」
太陽……そのように例えられても私にとっての太陽はシロエ様であり、小さな痛みを与えた不機嫌そうな少年には温かみを……いや、感じた
あの子の刃でもあるシロエ様との絆は、甘美で温かく『太陽』のようであった
そうだ…あの子は、シロエに似た光を持っている。では、その光を濁していいモノなのか?
それはあってはならない。この光は私を照らすものだから……
自問をすれば答えはおのずと判り、今尚警戒心を解かないロレイル=ドーンに私は指示を出した。
「出来うるかぎり多くの
「っ!。……しかし、よろしいのですか?」
「〈西の納言〉の命令です」
「あら?本当にそうなのかしら?」
「ッ!貴様!まだ「控えなさいロレイド」ッ!しかし!」
「私は控えなさいと言ったのよ?」
「ッ!はっ!」
三度目はないとばかりに声を強めて嗜めればロレイドは、身を縮こませ私の後ろへと下がっていった
「私は自問自答しました。少年の滞在する街を、叩き潰してよいのか?と……でも答えが出ないのです。その代り、私の庭に光が届かないのは許させるか?と思えました」
「そう」
答えは、許せない
濡羽はヤマトの主であり、ここは濡羽の庭である。光がない庭など、そこは地獄でしかない。そんなこと許せるはずがないのだ
「私の答えは……間違っているのでしょうか?」
「私が言える事はただ一つよ。貴方が抱く感情もこの戦場も貴女が現実を直視して来なかった為に起きていると言っていいわ。……でも貴女は少し歩き始めた。そして貴女は命を
「なれば貴女様も―――」
一緒にきてくれるのですか?と口にする前に首を振られてしまう
「いいえ行かないわ。だって貴女がした命はギルドマスターとしての命。貴女のギルドに
「……」
「なれば力を貸してください」
「私に命令する気?」
「いいえ……これは〈西の納言〉の濡羽ではなく、貴女様の濡羽からのお願いです。どうか御助力を……」
真っ直ぐに頭を下げれば後ろから驚愕と頭を上げる様にと説得をする声が聞こえるが、そんなモノどうでもいい
貴女様に願いを届けるには、地位も立場も捨てありのままの自分を曝け出さなければいけないのだから……頭を下げて駄目なら土下座して駄目なら私は、貴女様の靴さえ舐めて見せる
しかし、下げた頭にポンとつい先ほどまで感じていた温かさが宿った事に再び雫が溜まっていった
「最高ね、濡羽?……ならばその願い聞き入れましょう!貴女の悪を討ちに!」
顔を上げれば、貴女様は見慣れぬ衣装に身を包みながらも光の中へと消えて言ってしまった
それが何なのかは今の私には理解できない……それでも私には、貴女様が私の為に動いてくれている事実だけで胸が一杯になった
「あぁ……〈くずのは〉様…」
「濡羽様?」
「ッ!……命は下した筈です。早く行きなさい」
「ッ!はっ!」
その言葉は電流のようにロレイルの全身に痺れ渡り平伏したまま飛びずさるロレイルは二言目もなく、一気に町へと駆け出してゆく
ロレイルの甲冑をふりかえって、濡羽は時間が来たのを知った。自分の影がもやもやと姿を変えていき、九つの尾は空気を撫でるように姿を変えてゆく。効果が停止していた〈情報偽装〉が再起動し新たな姿を形作っていく。
濡羽の時間はおわり、ダリエラが帰ってくるのだ。
その曖昧な境界線で濡羽は微笑んだ。いつもの投げやりなそれではなく、自分がちゃんと微笑を浮かべていることに驚きをおぼえながら、濡羽は久しぶりにギルドマスターとしての命令権を行使する決意をする。
「シロ様。――わたしもあの子たちに少しだけ助力をしましょう。短い日々でしたが、旅の仲間として遇してくれましたからね。シロ様は気づくでしょうか。邪 魔だと思うでしょうか。あるいはよくやったと……? これはただの気まぐれ、贈り物ではありません。ですから、はやく……濡羽は、シロ様の声が、聞きたい です」
長く伸びた影から九つの尾が長く伸び、鴉と羽毛のエフェクトとして飛び去ったあと、そこにいるのは穏やかな風貌のひとりの〈大地人〉物書きだった。
彼女は戦場に降りしきる白い燐光の中で、小さなハミングを始めた。
それもまた〈大地人〉の知らない、地球の流行歌だった。
NEXT kingと猫と脳筋と狐