ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

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2013年から執筆を開始して1年4か月…等々50話に突入

これも読者の皆様のおかげです

しかし、記念すべき50話目がこんな話でいいのか……

まぁいいか、クーだしw












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いーえっくす: 2月14日!そう今日は!『グォレンダァァァ!!!』後篇

〈ウァレンティヌス〉

 

3世紀頃のキリスト教の聖職者。正教会・カトリック教会・聖公会・一部ルーテル教会で聖人とされている。5世紀から15世紀までの千年間ウァレンティヌスは恋人達とは無関係の聖人であったが、15世紀、イングランドの詩人であるジェフリー・チョーサーが恋人とバレンタインデーを結びつけて以降恋人達の守護聖人のように語られる。

 

彼の逸話は、主にローマ皇帝クラウディウス2世が兵士の結婚を禁止し、ウァレンティヌスはこの禁令に背いて恋人たちの結婚式を執り行った。また彼は、結婚したばかりのカップルに自分の庭から摘んできたばかりの花を贈って二人を祝福した

だが彼の行為は皇帝を怒りを買い捕らえられ処刑されたのである

また監獄に居たとき、盲目の少女の眼を直したとも言われている

 

彼がなぜ、愛しい人にチョコを贈る日の起源になったのかは、ジェフリーの考えによるものだが、確かに彼は二人の仲を繋ぐ事の出来る聖人なのではないかと私は思う

 

なぜこうなった!狐の錬金術師:番外編 より抜粋…

 

 

「豆知識ででありんすな~?しかし……」

 

書き綴っていたペンを止め、にゃん太の指導の下、キッチンで奮闘する二人に視線を送る

苦戦しながらも〈ココニアの実〉をチョコにしていく二人の顔は真剣そのものであった

 

「恋の聖戦、勝者は一人だけ……どちらが選ばれようと悔いが残りんせんようにしてほしいでありんすね?」

 

彼女は本を懐にしまい込み、徐に立ち上がるとふらふらっと揺れながら玄関へと続く階段へと歩み始めた

 

「あれぇ~?どこに行くの、アップルマスター?」

「こなたの 部屋は甘ったるいでありんすぇ。 外の空気を吸ってきんす」

「了解!彼女達の恋の聖戦は僕が見ているよ!」

 

あ~い!と気が抜けた返事をして片手を挙げながら階段を降りる靴根は、バレンタインで浮かれるアキバの町へと解き放たれるのであった

 

「あれ?」

「どうしたのだ、ミノリ?」

「い、いえ。〈ココニアの実〉が減っています」

「……数え間違えではないのか?」

「くく、バレンタインは死んでいませんにゃ」

 

9本の尻尾に4の果実を隠しながら………

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

出来たでありんす!チョコレート風呂ッ!……狐は猫によって捕獲されました

 

 

 

〈大災害〉によって〈エルダーテイル〉に取り残された〈冒険者〉の男女の割合は男性が七割、女性が三割とも言われており、圧倒的に女性が少なく、男子に贈り物をすると言う羞恥心などが比較的に少ないゲームの中であってもチョコを貰えない男性は多く存在する

 

そんな中、2月14日の町の警備を任されたギルドの前には夥しい量のチョコの山とチョコを持ち、手渡す順番待ちをしている行列が出来上がっていた

聖戦に敗れた者達はその光景に血涙を流し歯を食いしばりながら眺め、行列に並ぶ者達は頬を染めながら自分の番を今か今かと待ち望んでいた

 

「ありがとうございます。大切に食べるよ」

「はい!ソウ様!」

「わぁ~!美味しそうなチョコですね!ありがとうございます!」

「きゃぁぁ!ソウ様!」

 

行列の先にいる人物は、〈円卓会議〉に席を置くギルドの長にして少年の顔立ちを残したイケメン武士・ソウジロウ=セタ……彼を『放蕩者の茶会』ではハーレム製造機と言う

 

「はい、時間が押しているから次の人~」

「えぇ!?もうですか!」

「ごめんね~………毎回の事だけど相変わらず凄いモテようだねぇ~、ソウジ?」

 

彼のサポートとして某握手会の剥し人の如くソウジロウから女性を剥すナズナはため息交じりに後ろに積もれた山を見上げた

 

「みなさんのお気持ちがこもっていますからね?大切に食べさせて貰います」

「これ全部か……アンタ大丈夫なのかい?」

「甘いモノは好きですから」

 

とてもではないが、甘いモノが好きで済むような量ではないのだが、目の前の少年は毎年、この量のチョコを食べきっているのだから凄い。

 

「…あたしゃ~、こんな量のチョコは、見ただけで胸焼けするよ」

「そうですか?でも、チョコだけではないですから……ほら、クッキー」

 

徐に山の中から一つの箱を取り出し開けてみると、綺麗に焼かれたクッキーが納められていた

ソウジロウに言われ山の一部を覗いて見ると確かにチョコだけではなく、焼き菓子やキャンディー、果物や鮭など色々なモノが包装されているようであった

 

「だとしても全部甘いモンだろ?私は体重を気にしちまうよ」

「え?ナズナはスタイル良いですよ?むしろ少し太った方がいいんじゃ……」

「ソウジ~?……それ以上言ったらお姉さん、怒るよ」

 

ソウジロウに笑顔と青筋を浮べながら頬を引っ張るナズナは投げやりに「次の人」と声をあげたが、いつに経っても人の列が動く事はなかった

 

「ん~?次の人~、時間が押してますからどうぞ~?」

 

まさか今年はコレでお終いなのかと思ったが、そんな事はない

ギルド仲間の話では、行列は町まで続いており後2時間は続くと連絡があったのだ

不思議に感じ、列の先頭で待つ女性に直接話を聞こうとしたのだが……まるでこちらが見えていないのか隣の女性と談話を続けていたのだ

 

流石に、二人は異常な事態が起きていると察し身構えた

衛兵システムの停止により、戦闘行為を行っても衛兵が召喚される事はないが、戦闘に移行してほしくはないのが本音。なるべく穏便に対処したいものだが、ここは大勢の人々が集まった〈西風の旅団〉のホーム前。……犠牲者がでるのであれば容赦しないと互いに武器に手をかけた

そして……自分達の後ろ、お菓子の山へと二人は同じタイミングで獲物を振り向いた!

 

……が、視線の先にはアップルパイを貪る一匹の狐

 

「「………はぁ~」」

 

2人は、それぞれ安堵の息をこぼした。この異常な出来事を起したのが目の前でアップルキャンディーを貪り砕く狐が起こした事態だと思うと妙に納得してしまうのだ

 

武器をしまい、いまだに林檎の蜂蜜漬けを舐め啜る狐に声をかけた

 

「クーさん、こんにちは」

「むしゃむしゃ…ぺろぺろ…」

「何時からいらっしゃったんですか?……たぶん、先程だと思いますけど」

「もきゅもきゅ……ズズズ……」

「流石ですね?これ…周囲の視野や気配をズラしていますよね?これがクーさんの口伝なんですか?」

「バリバリ…も「いい加減にしな!」ッ!尻尾は反則でありんしょう!」

 

いくらソウジロウが話しかけても返事を返さないで林檎系のお菓子を食べ続ける彼女に腹を立てたナズナは、彼女の尻尾を引っ張り無理やり菓子の山から引きづり降ろすのであった

だかしかし!手に持った林檎を放さないのは彼女クオリティー!

 

「こんな大規模な口伝は流石は〈くずのは〉!……って言いたい所だけど、アンタの事だ。順番待ちの列を見て嫌気がさしたんだろ?くだらない事に口伝を使ってんじゃないよ」

「どう使おうとわっちの勝手でありんす?もきゅもきゅ……」

「はぁぁ……手に持った林檎をまず放そうか?……それでアンタもソウジにバレンタインチョコをあげにきたのかい?」

「え!?クーさんから貰えるんですか!嬉しいなぁ~」

 

大方、昔馴染みの『放蕩者の茶会』メンバーであるソウジロウに届けに来たのだろうとナズナは訪ね、ソウジロウも意外な人物からチョコが貰えると思い素直に喜んだのだが、彼女から帰ってきた言葉は二人の期待するモノとまったく異なっていた

 

「わっちが?ハーレム小僧に?ハッ!尻尾でお湯を沸かしんす!」

 

――――まるで加工場に送られる豚を見る目であった

可哀そうな、それでいて醜いモノを見る様な視線、本当に対象の人物が嫌いじゃないと向ける事がない視線である

 

では何をしに?と首を傾げる二人であったが、彼女がナズナに向って投げ渡された物体によって彼女が何をしにココまで来たのかわかる事になる

 

「っと!これは……〈ココニアの実〉?加工も何もしていないじゃない!」

「ってクーさんがいない!?」

「あの~…まだですか?」

「口伝も解けてる!?」

 

投げられた〈ココニアの実〉に意識が向いた一瞬で、彼女は消えて無くなり、周囲も先程のやり取りなど知らないとばかりに動き出したのであった

 

いきなり動き出した行列に戸惑いながらも今度、飲みに誘おうと思うナズナであった

 

 

いきなり消える!これこそ狐クオリティー!!!

 

 

 

 

「きょうはな~?バレンタインなん。それで……ジャジャーン!私から直継やんにあげる」

「おぉ!マジか!マリエさん、ありがとう!」

 

場所は変わり、アキバでも有名な世界樹の元に二人の男女が向かい合い、女性が男性にチョコを渡していた

 

アキバのヒマワリこと〈三日月同盟〉ギルドマスター・マリエールと〈記憶の地平線〉所属の守護戦士・直継だ。二人の関係は秋の運動会の時から噂が流れており、彼女の所属するギルドでは付き合うまで秒読み?まさか既に!?と囁かれる程に有名なのだ。……交際している可能性は高いが、二人を物陰から見守る青年の為にも只の友達という可能性を残しておいてあげたい

 

 

そんなことより、マリエールからお菓子を貰った直継は、すぐにその場で中身をあけ食べ始めた

男性には貰って直ぐに食べるのは恥ずかしいと後で食べる意見が多数を締めていると言うのに、なんの抵抗も無しに本人の目の前で食べ始める直継は普段の様子では想像できないが、モテ男としての条件をクリアしているのではないだろうか?

 

マリエもまさか、その場で食べてくれるとは思っていなかった。いや、願っていたのだが、いざ目の前で食べてくれると嬉しさと恥ずかしさから照れを隠す為に背を向けてしまう

 

「それでな?私、思ったんよ…直継やんは、私の事どう思っているのかなって?」

 

恥じらう乙女と化したマリエールは、モジモジと手をくねらせながら頬を赤く染めて気になる相手の返事を聞こう言葉を口にしたが、直継はそれどころではない

テキストフレーバーに力が宿った現代、〈ココニアの実〉は、期間限定だが強力な自白剤へと変貌を遂げて直継は操られるがままに、「お、お、お、」と連呼している

 

ここで「おパンツが好き」とでも言った日には二度とマリエールに顔を見せる事は出来ない、二人の関係も影が差してしまう。そんな危険な状況の中―――――

 

「お、お、おぱ、おぱん「言わせねぇ祭り!でありんす!」グハッ!?」

「くーちゃん!?」

「何時ぞやの借りは返しんした!そいで!」

 

――――1匹の狐が、直継の頭を蹴り飛ばしインターセプターを果したのだ

いきなりの狐の登場に驚くマリエールの心境など関係ないとばかりに彼女は、マリエールに体を向けると眼を光らせながら彼女の胸に顔を埋めるべくマリエールに向かって走り出した――――

 

「行かせねぇ祭りだ!」

「ひでぶ!?」

 

――――が、幾千の頭部襲撃(ツッコミ)のおかげでリカバリーの速くなった直継の手によって逆襲のインターセプターが果されてしまった

慣性の法則よろしく、いきなり首襟を掴まれた彼女は、勢いをつけたまま首を引っ張られ直継の手に捕まれた猫の様にグッタリとうな垂れた

 

「油断も隙もあったもんじゃねぇな!なにするつもりだよ、パンツ神?」

「ま、まりーに……贈り物で…ありんす…」

「ん~?うちに?直継やん、放してあげてぇ」

 

直継の手から逃れた彼女は、尻尾の中から〈ココニアの実〉を取り出すとマリエールに手渡し、凄まじいダッシュで走って、そのまま世界樹でクイックカーブ、その後、ひょっこりと木から顔を出してこちらを盗み見る行動にでた

 

「友チョコでありんす~」

「……え?友チョコ!?くーちゃん、おおきにな~」

 

彼女の奇行に最初は戸惑っていたマリエールも友チョコと言われれば彼女の行動は理解もできるし、女子高出身だった事もあって女子同士のチョコのやり取りに何の抵抗もなかった……チョコではなくチョコの原料である事は謎であったが

 

「そうや!くーちゃん、アメちゃんいるかぁ~?美味しいで」

「後で取りに行きんす」

「ありゃ?」

 

いつもの彼女であれば甘いモノと林檎があれば直ぐに寄ってくるのだが、今日に限り一向に木の影から出てこようとはしなく、此方の様子を窺うのみであった

 

「どうしたん、くーちゃん?」

「らしくないぜ、パンツ神?」

 

2人もいつもと違った行動をとる彼女を不思議がり声をかけるが、狐が口にした言葉によって羞恥心が爆発する事になった

 

「……わっちの事は気にせずに続きをしてくんなまし?わっちは影ながら見守りんすによりて!そ~れ!キース!キース!キース!」

「くーちゃん!」

「小学生かテメェは!」

 

マリエールはその場で顔を真っ赤に染め、直継も顔を赤く染めているが、彼女を取っちめる為に世界樹へ近づいていったが、既に狐の姿はどこにもなかった………

 

 

いきなり消える!これこそ狐クオリティー!!!

 

 

 

 

アキバから遠く離れた西の地に、この世界には不自然な装甲車をビルの上から眺める二人組がいた

 

一人は、浪士風のボサボサした総髪の男・カズ彦、もう一人は緑色の髪に『蛙』と書かれたTシャツを着た男・KR

この二人は元『放蕩者の茶会』であり現在は『Plant hwyaden』に所属し『十席会議』においては、第七席と第九席に席を置く権力者であった

 

「まだ見ているのかい?……いくら信用出来ないからって用心し過ぎだよ?」

「………」

「納得出来ないのは、わかるけど今の俺達は『放蕩者の茶会』ではなく『Plant hwyaden』だ。割り切ろうぜ?」

「………」

「はぁ~」

 

いくら話しかけてもカズ彦から返事は返ってこない、ただ一心に装甲列車を見つめるのみで、流石のKRもこの状況にはタメ息しか出て来なかった

どうしたモノかと頭を抱え彼の興味を引く事の出来る話を探して……ある人物が思い浮かんだ

 

「そう言えば、前にカナミがヤマトに向っているって話をしたのって覚えてる?」

「あぁ…………ッ!まさか!?」

「いや、カナミから連絡は来ていない。あの時は言ってなかったが……俺達の旅には一人、同行者がいたんだ」

「……同行者?」

 

以前の話では、カナミが〈エルダーテイル〉に復帰をしており各地で出会った仲間とヤマトに向って旅をしていると言うモノであった

〈大地人〉のエリアス、NPCのコッペリア、中国サーバーで出会ったレオナルド。

その他にもKRが意図的に隠した、伝えなかった人物がいると言う事は、今後カナミと合流する際に力になってくれて尚且つインデックスに存在を知られてはいけない人物。そして……俺達が知っている人物と言う事だ

 

盗聴されていないか辺りを警戒し、KRに続きを促した

 

「……誰なんだ?」

「本人には言うなって口止めされていたんだけどね?……仕方ない、特別だ。神出鬼没・天真爛漫・天上天下唯我独尊!カナミの右腕と言っても過言ではない人物!その名は「わっちでありんす!」ツぁぁぁぁぁ……」

 

人は目の前で予想もしない出来事が起きると思考が停止すると言われている。それは脳が事前に予想していた出来事以外の結果が起った際に混乱しない為の処置だと言われている

カズ彦も例に漏れず、いきなりビルの上から紐無しバンジージャンプを決めたKRと彼を突き落す形で現れた旧友に完全に思考を停止させたのだ

 

「口の軽いヌシには、お仕置きでありんすぇ……んにゃ?kingカズじゃありんせんでありんすか!!元気にしていんしたかぇ?お~い、king~?」

 

自分の目の前で手を振る狐にもビルの下から「飛び降り自殺だ」や「駄狐!テメェ!」など色々と聞こえてくるが、彼の耳には届く事はなかった

彼の頭の中には、旧友であり恩師でもある彼女がなぜいきなりこの場にいるのか不思議でならなかったのだ

 

そんな中、一向に動く気配を見せないカズ彦に飽きたのか、彼女は彼の手に〈ココニアの実〉を握らせると段ボールを被りながらその場を後にしたのであった

 

 

これが狐クオリティーの真実!!!

 

 

 

 

暗く―――冷たく――――1寸先も見えぬ暗闇に一匹の狐は毛布に包まりながら寝息を立てていた

 

朝起きた時には、町が色めいており〈冒険者〉や〈大地人〉と身分も関係なしにみんな笑顔を浮かべていた

朝食をとり、今日がバレンタインデーだと気付いたのは再び毛布に包まり惰眠を取っている頃である

 

みんなが楽しそうに、幸せそうに今日と言う日を楽しんでいるが、自分にはチョコをあげる人はいない―――いや、今は傍にいない

 

彼にチョコを渡したい、なんなら私を捧げたい!

 

思う気持ちが先行し町へ出ようとしたが………インティクスに捕まった

貴女には関係の無い事、貴女の気持ちは届かない―――そんな事は自分が良く知っている事だが他人に言われれば自然と涙が出て来た

 

せめて夢の中だけでも貴方にこの思いを伝えたい!

覚めてしまった眼を再び閉じれば町もいつも通りの色に戻っているだろうと思い眼を閉じかけたが――――

 

目の前に置かれた〈ココニアの実〉と手紙に体が飛び上がった

 

いつのまに?だれが?まさかインティクスが?

不安と期待で振るえる手を必死に動かし手紙を開く。そこには―――

 

 

『 愛しの濡羽へ私の気持ちを込めて…… byくずのは 』

 

―――――と一文だけ書かれていた

 

濡羽は、舞い上がりそうになる気持ちを押え込みながら〈ココニアの実〉を胸に抱いて毛布に包まった

 

あぁ、私を思うって頂ける貴女にも夢で良いから会いたいと思いながら―――――

 

 

 

 

「ただいま~もど~「僕はカレーが大好きだ―――!!!」わっちは林檎が大好きでありんす――――!!!」

「対抗してんじゃねぇよ!駄狐!」

「ふでぶ!?」

 

帰ってきて早々に奇声をあげるシロエに感化され連れられて彼女も声を上げたが、直継に頭を叩かれた

目尻に涙を浮かべ頭を摩る彼女は、自身を叩いたのが直継であった事に驚きを露わにした

 

「んにゃ!なぜになしてパンツ君はココにいるでありんしょうかぇ!?」

「あん?そりゃ~、ココが俺の帰る家だからだよ」

「違いんす。今日はマリーとにゃんにゃ「言わせねぇ祭りだ!」ひでぶ!」

 

先程とは比べものにならない強さの拳骨を落とされ彼女は地に伏せるが、彼女はへこたれない!なぜなら彼女は狐であるから!

芋虫と同じ方法でニョキニョキと床を這いずりテトラの方へと近づいていったのだ

 

「テトー…どうでありんしたかぇ?」

「ん~……失敗?結局、にゃん太さんに美味しい所を持って行かれたって感じ?」

「そうでありんすか~」

「それより今のあっぷるんの方が蝸牛みたいだよ?」

「わっちは狐でありんす~」

 

9本の尻尾を振りながら狐だとアピールする彼女ではあるが、いまだに地べたにΛの字で動き回る彼女は9本の尻尾が甲羅の様に見えて蝸牛と言われても仕方がない……むしろ尻尾が9本もある狐は狐とは言わない

 

「くーち、くーち」

「なんしょうご隠居?」

「汚いから起き上がるにゃ。お客さんですにゃ」

 

ウダウダと部屋中をΛ_Λ_と動き回る彼女であったが、流石に階段を芋虫走行で降る事は出来なかった様で手摺に跨り、スリ落ちて一階へと降りて行った

下でにゃん太に着物の裾が捲れると小言を言われるが、聞き耳を持たないとばかりに玄関へと向かった

 

玄関の先には、見知った顔の今朝〈ココニアの実〉の店で見かけた少女が両手一杯に花束を持って彼女が出てくるのを待っていた

 

「こんばんは!……え、ええっと今日はバレンタインでお二人にもチョコをあげようとしたんですけど、もう〈新妻のエプロンドレス〉は売ってなくて…それで……これを!」

 

徐にセララは、にゃん太に鮮やかな紫色の花束を、彼女には林檎の様に真っ赤な花束を手渡してきたのだ

予想していたとは言え実際に色鮮やかな花束を受け取った2匹は満面の笑みを浮かべながら愛おしく花束を抱きかかえた

 

「ありがとうございますにゃ、セララさん。大事にしますにゃ」

「甘いモノに飽きていた所でありんした。ありがとう、セララララララ」

「にゃん太さん、くーさん……『ラ』が多いです」

 

何気ないやり取りだが、この関係は〈ススキノ〉に囚われていた頃から続く彼女達だけのやり取り、変わらず変わる事のない関係を表しているようでセララも2匹に連れられるように笑みを浮かべた

 

すると花香を嗅いでいた狐はピクピクと鼻を動かし二階を見上げた後、にゃん太に視線を移し、八重歯を見せながらにゃん太に話しかけた

 

「ご隠居、今日はカレーでありんすね?セララララも誘うよろし!」

「それは名案ですにゃ!…セララさん、どうですかご一緒に?」

「はい!」

 

にゃん太に手を引かれセララは、終始笑顔を浮かべながら階段を昇って行くのであった

 

 

 

 

 

NEXT 模様替え?……っは!わっちの毛皮を剥ぐつもりでありんしょう!

 




おまけ

鉢植えの前に3人の影……『記録の地平線』では狐組と呼ばれる駄狐に師事を受けてしまったモノ達だ

「ルンパッパ!リンリン!師匠命令でありんす!」
「なんだい、ミストレアス?」
「この花の世話をするがよろし!」
「わぁ!綺麗な花ですね!」
「わっちの大切なモノでありんす!頼みんしたよ?」

上機嫌で二人の間を通り過ぎる師匠に笑みで答える弟子達であったが……

「枯らしたら……わかっているでしょうね?」

すれ違いざまに呟かれた言葉に背筋を凍らせるのであった

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