最弱無敗の神装機竜 ~閃紅の彷徨者~   作:The Susano

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課題や期末試験で更新が遅れました。
しかも、前座だけで終わるというね……。
さらに言うと、この国の間はゾディアック出ないんですよね。カブトも出番少ないし

早く原作に入りたい。

サブタイトル『宿探しと悪巧み』


1-6(ブラックンド王国編)

「へっくし……!やっぱ、急ぐべきだったな」

 

ユミル教国を後にしたガレンは、すでにブラックンド王国内に入っていた。ユミル教国から南下しているため、雪によって行動を阻まれることはない。しかし、そもそも冬に突入している時点で寒いことに変わりはなく、ユミル教国で来ていた防寒着は手放せなくなっている。

今の街に入ったのは昼間だが、何か行事でもあるのかすでに大半の宿が埋まっているために、宿探しのついでに街の散策をやっている。

両替した後に露店で買った飴を食べながら、沈む日を見てそろそろやばいと思っていると、

 

「さっさと来いっ!」

 

「嫌!離して!」

 

そんな会話が路地裏から聞こえてきた。その瞬間、即座に飴をかみ砕いてそちらへ足を向けている自分に、親友の御人好しが移ったかと思いながら歩く。

途中から気配を消しつつ声の中心に向かうと、見るからにガラの悪い男の2人組が少女を縛って担ぎ上げたところだった。

 

「へへっ!手こずらせやがって。」

 

「離して!離せーー!!」

 

「悪いな、俺たちも請け負っただけだ。抜け出せるもんなら、抜け出してみろ―――」

 

「そうさせてもらおう」

 

ブーン、バシン!という音を立ててカブトゼクターが男の腕を弾き、少女のロープの端を器用に引っ掛けながら、そのままガレンに向かって飛んでくる。ガレンが左手で握っていたカブトクナイガンで、即座に少女のロープをバラバラに切り裂くとようやく存在を認識したのか、全員がガレンを見る。

 

「何だガキ。俺達はこいつに用があるんだ。さっさと失せろ」

 

「なら腕ずくで奪って見せろ。その格好は見た目だけか?木偶の坊」

 

男の恫喝に対して、カブトクナイガンを消しながら真正面から挑発で返すガレン。正直逃げたふりで誘導して警備兵に引き渡してもいいのだが、先程言っていた請け負ったという発言から、場合によっては揉み消される可能性もある。なので、ここで叩きのめして吐かせることにしたのだ。

 

「……どうやら死にてえようだな。クソガキ」

 

「腕自慢なら初めからかかってこい。筋肉バカ」

 

その瞬間、2人がかりで襲いかかって来たが、

 

「遅い」

 

悲しいかな、実力差があり過ぎた。1人目が突撃してくる勢いを利用して足を引っ掛けてつつ右腕で投げ飛ばし、ナイフで刺しに来る2人目を投げた勢いのまま足を蹴って転倒させる。

転倒した際に落としたナイフを奪うと、即座に2人のアキレス健を切り裂いて逃げ足を断つ。

 

「さて、いろいろと吐いてもらおうか」

 

「だ、誰が吐く(ザクッ)……!」

 

口答えした瞬間に2人の左手の指を1本切断するガレン。少女が見ている前で拷問するのは気が引けるが、放置するほうが害が大きいために即座に終わらせることにした。

 

「お前らにある選択肢は2つだ。黙って全身を切り刻まれるか、質問に答えて今日あったことをすべて忘れるかだ。命が助かる点で言うなら後者をお勧めする」

 

そこから先は早く事が運んだ。金で雇われたゴロツキに忠誠心があるわけがなく、ましてや生きるか死ぬかの状況でしゃべらないというのは命を手放すのと同じである。

聞き出すと、少女の家の宿屋を奪うためにやったらしい。郊外にあるにしてはいい条件らしく、『英雄の証』という大手の宿屋が金で買収しようしたが失敗したために、少女を人質にして脅すためにやったのだとか。裏付けを取る必要はあるが、証拠隠滅がされていない段階で無能のようである。

 

知ってることはすべて言ったようだったので、約束通り命は奪わずに金的を叩き込んで気絶させると、ガレンは頭を掻きながら少女に向き直る。

 

「見苦しい物見せて悪かったな。怪我はないか?」

 

「あ、ありがとう。ママに頼まれて、買い物に行ったら、突然掴まれて……」

 

「なるほど、お使いか。その歳で偉いもんだな」

 

頭を撫でるガレンに目を細めて喜ぶ少女。ふと、先程の男が少女の家が宿屋であることを思い出す。

 

「なあ、ちょっと頼みがあるんだが―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夕暮れ亭』、ブラックンド王国のとある街の郊外にある宿屋である。郊外とは言っても都市の中にある上に、最も遅く閉まる門と都市の中心の間にあるために、そこそこ繁盛している。そこの女将であるエレノアは、帰りの遅い娘の心配をしていた。

先日宿の買収を断ってから妙な噂が立っており、客足がまばらになって来ているのだ。しかし、直接的な嫌がらせはなかった上に門にぎりぎりで駆け込む人もいるので、十分にやりくりできているために特に心配していなかった。今日も娘がお手伝いとして買い物に行ったのだが、なかなか帰りが遅いために不安になっているのだ。

 

夫は明日の仕込みをしており、宿の仕事もひと段落しているので探しに行こうかと思った矢先だった。

 

「ただいまー!」

 

元気な娘の声が響き、心配が杞憂に終わったことに安堵の息を吐く。

 

「おかえりなさい、レンリ―――。その方は?」

 

娘の無事を喜ぶと同時に、連れて来た男に不信感を持つエレノア。初対面である以上は当然の反応だが、レンリはにっこりと笑って紹介する。

 

「私を助けてくれたガレンさん!宿に留めて欲しいんだって!」

 

そう言って、何があったかを説明するレンリ。ガレンがレンリを助けた際に頼んだのは宿の紹介である。子供を使うのは気が引けたが、このチャンスを逃して街中で野宿するのはゴメンだからだ。

娘からの説明である程度不信感が薄れたのか、エレノアはこちらに向き直る。

 

「母のエレノアと申します。娘がお世話になりました」

 

「ガレンです。こちらとしても、無視する訳にもいかなかったので。ところで、まだ空き部屋ってありますか?」

 

会って早々に打算が入ってような言い方になってしまったが、すでに日が沈んだために無理なら野宿である。すると、エレノアはニコリと笑って頷き、宿の内部に案内する。

 

「普段なら満室になっていましたが、巷に流れる噂でこの有様……って、お客様に話す内容ではありませんでしたね」

 

「いえいえ。稼ぎ時に客が来ない辛さは知ってますから」

 

一時期、とある商会の手伝いをしていた時に客の呼び込みで四苦八苦していたことを思い出すガレン。人がいるのに来てもらえないというのは、存外に辛いものである。

 

「ところで、街の宿の大半が満室でしたが、ここで何か行われるんでしょうか?来たばかりで何も知らないので」

 

「この街の闘技場で、明日から機竜の大会が行われるんです」

 

聞くと、この街の闘技場はかなり大きいらしく、不定期に機竜による大会もあるらしい。今回行われる大会は、ブラックンド王国の将軍が戦力としてスカウトするという噂が流れ、国中の腕自慢が集っているようである。

 

「なるほど。(そりゃ宿が埋まるわけだ。国に仕えるチャンスなら、参加人数も多くなるのは当然か)その大会の受付ってまだ行われてますか?」

 

「?ええ。当日に参加する人も多いので、事前に登録した人とは別枠で行われたはずです。勝ち抜けるのは僅かですけれどね」

 

その言葉を聞いて、ガレンは内心でニヤリと笑う。先程の宿が何もしないということはないだろう。ならば、こちらから出向いて餌になるのが1番手っ取り早い。それに、久しぶりに試合による命がけを経験しておきたかったところである。

そんなことを考えていると、1人の男性が現れる。

 

「仕込み終わったぞって、客か?」

 

「ガレンさん。レンリが世話になったそうよ」

 

「おお、そうか!レンリの父、ラヴァルだ。宿の主人兼、厨房を任されてる」

 

「ガレンです。よろしく頼みます。明日の朝は期待させて貰いますよ?」

 

「それは挑戦状か?受けて立つぜ!」

 

ガレンの含みのある笑みに、ラヴァルも笑い返す。もっとも、山賊のような強面の笑みは中々に凶悪なのだが。ついでに、レンリの容姿がエレノアの血であることも分かった。

昼間に大会の手伝いをしていたラヴァルによると、当日参加の選手の試合は最後らしく、朝食後に受付に行っても十分間に合う時間だった。

 

その後、案内された部屋に入ってルールを聞かされてエレノアが戻ると、ガレンは部屋のベッドに身を投げ出す。しばらく道中では野宿だったので、久しぶりに気が抜ける。それと同時に、明日の機竜大会について考える。

ユミル教国での模擬戦もそこそこ強かったが、戦力確認が主なので負けても問題ないと考える者もいた。しかし、明日の大会は負けたら終わりなので、必死で勝ち残ろうとするだろう。激戦は必須、負けが分かったならば、その技術を盗むような気概で挑むべきだろう。

 

そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。開けた先にはラヴァルが立っており、その顔はかなり真剣な表情をしていた。

 

「どうしました?真剣な顔して」

 

「いや、レンリに聞いたんだが……、襲われたんだろ。英雄の証に」

 

「すまんが、敬語は省かせて貰うぞ。……ここで話すのも何だから、入ってくれ」

 

話の内容が内容なので、敬語を即座に止めて部屋に招き入れるガレン。部屋にあった椅子にラヴァルを勧めてベッドに座ると、事の次第を詳しく話す。

 

「あの野郎。直接手を出さねえからって見逃してりゃ、いい気になりやがって……!」

 

「分かってるだろうけど、乗り込むなんて真似はすんなよ。下手をすれば町が敵に回る」

 

「分かってらい。この程度でキレてりゃ宿の主人なんてやってられっか」

 

そうボヤくラヴァルだったが、娘に手を出されたことにイラついているため、かなり柄が悪い出で立ちになっている。その怒りは分かるが、物的証拠がない以上は動けばこちらが牢屋行きである。

 

「しばらくは様子見するしかないだろうな。まあ、手を出されればその限りじゃないけど」

 

「そう簡単に出すか?今回の奴らは雇われた馬鹿だが、瞬殺した時点で雇い主にも情報が行くだろ。手練れを除いては来ないと思うが」

 

「相手の目的はここを潰すこと。なら、俺を利用して評判を落とそうと画策するはずだ。幸いにも、参加したら死にかけてもいい大会があることだしな」

 

「機竜大会か、……っておい、まさかとは思うが、自分を餌に理由を作る気か?」

 

ラヴァルの正気か?という顔に、ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるガレン。幸い、相手が誰なのかは割れている。後は、襲って来た相手から言質を取れば十分である。

 

「……出場を辞めさせる気は無いが、これだけは聞かせろ。なんで協力する。お前に利点なんざ全く無いだろ」

 

「なーに、聞いた時から出る気だったからな。それに、留めてもらう宿が無くなることを知って、放置するのはないだろ。後は、ただの自己満足。あんたの家庭を見てると、懐かしい気持ちになるからな」

 

最後の言葉には、どことなく寂しさが漂っていた。少なくとも嘘ではないだろうとラヴァルは、ため息を吐きながら頭を掻く。職業柄、この手の相手は、一度決めると頑固ということを知っているからだ。

 

「……とりあえず、信じてやる。もし本当にやるってんなら、予選で躓くんじゃねぇぞ」

 

「おいおい、当たり前だろ?むしろ優勝しろ位言ってくれよ」

 

「バーカ、無様を晒すんじゃねぇって意味だよ」

 

そう言って部屋を出て行くラヴァル。ガレンはそれを見送ると、ベッドに横たわって寝ることにした。明日からの面白い忙しさに笑みを浮かべて。




夏休みも将来に関わるあれこれに時間を取られるので、また更新が空くかもです。

しかもそれより先に、アニメ化したありふれた職業で世界最強を作りたい。しかし時間がーー!!

まあとりあえず、気長に待ってて下さいな。

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