最弱無敗の神装機竜 ~閃紅の彷徨者~ 作:The Susano
モチベーションの低下、バイト、インターンなどが被って時間が経ってしまいました。
しかも、原作の方の終わりが見えてくるという……。
とまあ、複雑な心情は置いといて、本編どうぞ
サブタイトル『始まりの一幕と強者の邂逅』
「これで出場登録は終了です。時間に遅れた場合は参加は取り消しとなるのでご注意下さい」
「ありがとうございます」
闘技場の受付で登録を済ませるガレン。会話だけを切り取ると普通だが、冬にも関わらず汗で水浸しになっている姿は、人を驚かせるには十分過ぎる衝撃である。まあ、会話できる体力が戻っているだけまだマシなのだが。
(危ねぇ、まさか寝過ごすとは思わなかった)
これが水浸しの原因である。しばらく野宿だったために宿のベッドで眠るとかなり深く寝てしまったらしく、起きた時には大慌てで準備を整えて飛び出したのだ。ギリギリで間に合ったらしく、自分を最後に受付は終了していた。ちなみに、予選は今日の昼過ぎである。
「しっかし、参ったな。飯食い損ねた」
必要最小限で来たために財布も宿の中なので、一度宿に戻らなければならない。出来れば情報収集もしたかったのだが、時間の狂いはどうしようもない。
そんなことを考えながら歩いて宿に戻ると、ラヴァルがテーブルを拭いているところだった。
「おう。慌てて出て行ったようだが、どうやら間に合ったようだな」
「ギリギリも良いところだがな。お陰で腹が減ってしょうがない」
自分のせいとはいえな、と空笑いをするガレン。すると何を思ったのか、ラヴァルが厨房に入ると、プレートに料理を載せてやって来た。
「掃除中だから部屋で食ってくれ。後、晩に皿洗いくらいは手伝え」
「いや、それは構わないが……。良いのか?」
「昨日あんな担架切っておいて何言ってんだ。それに、不戦勝はこっちの後味が悪いからな」
そう言ってプレートを無理矢理渡すと、ラヴァルは掃除に戻って行った。こうなると食べなければ勿体ないので、ガレンは部屋の机にプレートを置く。
元々は朝食用なので品数自体は少ない。丸いパンが2つと、サラダ。そしてシチューである。とりあえず戴くことにし、シチューを口に運ぶ。
「……!」
美味い。塩は少ないが、煮込まれた野菜や鶏肉が良い味を出している。出されたパンも少々固い程度で、出されたシチューに付けるとちょうど良く柔らかくなる。肉も煮込まれてスープがしみ込んでおり、噛むほど味が広がっていく。サラダもあっさりとして口の中をリセットできるため、飽きることなく食べ進めることができる。正直、シチューはおかわりを所望したいくらいだった。
楽しみながら食べているため、あっという間に食べ終わっていた。単純なものとはいえ金を取るには十分、代金の内訳によっては足りないような気がする。
少々ずれた時間に食べたために昼食は軽めにしておこうと考え、厨房の流し場に持っていく。宿から出ると探索のために町をぶらつく。機竜大会の影響でかなりの賑わいを見せており、アクセサリーを扱う出店が多い。
(これだけ賑わうと情報は集まりやすいが、鍛錬する場所は全くないな)
適当な店で買ったパンを齧りながら、そんなことを考えるガレン。郊外とはいえ夕暮れ亭の敷地はそこまで広くはないために、あまり体を動かせる場所はない。それに、下手に動いて不審者扱いされるのも面倒である。そんなことを考えていると、不意に路地の方から声が聞こえた。
「本当なのか?『夕暮れ亭』ていう店が外れって言うのは」
「俺も噂を聞いて確認したからな「その話、俺にも聞かせてくれないか」?」
話に割り込むガレン。そこには、見るからに旅人と情報屋の密談のような状況だった。突然現れた少年に嫌そうな顔をする情報屋だが、銀貨を指で弾いて渡すと手の平を返すように嬉々として喋り始めた。
曰く、外装はともかく内装が見窄らしい、料理が不味い、店員が無愛想で待遇も悪い、料金も高いなどなど、かなり扱き下ろされていた。もっとも、実際に泊まった身から言えば、悪口を盛りまくっただけにしか聞こえない。
「ありがとよ、参考になったぞっと」
そう言うともう1枚銀貨を投げ渡す。割り込んだ迷惑料と情報代は大きかったが、意外なところで収穫があったのは運が良かった。
「すまねぇな。話に割り込んじまって」
「いんや、情報代奢ってもらえたんだからラッキーだぜ。で、宿はどうすんだ?」
「いや、もう宿は取ってんだ。『夕暮れ亭』をな」
その言葉に驚く旅人。今さっきまで凄まじく悪い噂を聞いた宿を取っているとは思わなかっただろう。
「ついでに言っとくぞ。さっきの奴、情報屋の偽物だ。あれだけ悪い噂を出したら、逆に興味を持たれて確認しに行く奴が必ず現れる。それで失敗したら信用失って破滅だからな」
「……仮に今のが本当なら、なんで言わねぇんだよ」
「噂は火と一緒でな。大きい炎にいくら水をかけても無駄なんだよ。打ち消すには、より大きい炎で上書きしないとな」
そう言うと、ガレンは旅人を連れて歩き始める。まだ宿が決まってなかったようなので、噂の真偽も兼ねて『夕暮れ亭』を紹介することにしたのだ。担保として宿代1日分を払うのは若干痛かったが。
旅人の名前はフォースというらしく、この街には今朝着いたばかりらしい。真っ先に宿を取ろうとしたところ、先程の話を聞いて路地裏に連れられた所をガレンが見つけたらしい。
そうやって喋りながら『夕暮れ亭』に着くと、エレノアにフォースを紹介して手続きを行ってもらう。料金を払うと時間が迫りつつあったので、闘技場に向かう。
ついでにフォースも一緒である。曰く、面白そうだから、らしい。
闘技場でフォースと別れて受付に向かうと、今朝のことを持ち出されてからかわれたものの、問題なく待合室に通された。
待合室には既に多くの参加者が集まっていた。見た目の強さがピンキリなのは、機竜での勝負ということと当日での応募だからだろう。かなりの強さと断じることができる者はかなり少ない。
壁にもたれようと、歩きながら考えていると、
「ほう。つまらん奴らしか居らんと思えば、中々のガキがいるな」
とそんな声が聞こえた。
声の方を向くと、ガレンは無意識に身を強張らせた。
全体的には、着ている暗い蒼の外套も相まってかなり影が薄い。体躯もそこまで大きくはなく、むしろ小柄な部類に入るだろう。顔立ちも幼げで、一見すると少年のようにも見える。
しかし、一定以上の強さを持つ人には目の前の人物は化け物にしか見えない。ガレンも訳あって強さに関する目は肥えている方だが、間違いなく待合室にいる中でも最強、今まで会った人でも最上位である。この場で戦闘になれば、誰かを盾に奇襲や不意打ちを仕掛け続けてようやく五分五分と判断する。
「また随分な物言いだな。いや、言える力を持ち合わせてるからこそのセリフか」
そう言いながら外套の男の隣にもたれかかる。これほどの実力者を相手に、無防備でいるのは流石に愚かと言える。だが、この場限定ならば話は別である。
「力量を察していながらも、俺を前に無防備でいるとはな。愚者か?蛮勇か?」
「なーに、あんたがこの場で暴れないなら、俺はその威を借りるだけだ。気づく力量がある奴なら、手を出す馬鹿はいないだろうからな」
「ふっ、歳の割に中々に食えん奴だ。力の差を理解しつつも物怖じせず、逆に利用すると堂々宣言するのだからな」
そんな会話をしていると、この場にいる全員に呼び出しがかかる。これから移動らしく、一斉に待合室から闘技場に向かうことになった。移った場所は、砂地の上に乗っかった石造りのフィールドである。
(機竜大会にも関わらず機竜を渡されない。そして、申し訳程度の落下防止の砂地。てことは……)
『さーて始まりました!機竜大会を明日に控えた前日の大会!申し込みに間に合わなかった、哀れな使い手への最後の挑戦!その内容は……!舞台上でのバトルロワイヤルです!!!』
(やっぱりか)
ガレンは周囲を見回す。試合内容に呆然とする者、ニヤリと笑う者、そんなこと知らんと言わんばかりに睨む者。様々な反応をしている。
『では、ルールの説明です。武器の使用は一切禁止。選手の皆様には自身の体で戦って貰います。舞台からの落下によって失格のため、気絶しても舞台上に残っていれば問題ありません。機竜大会に進めるのは2名までです。なお、選手を殺害した場合は
ガレンが上を見上げると、ドレイクが周囲を見渡していた。機竜による戦力的には心許ないが、人間相手の問題ならば、あっても対処が効くだろう。
『さて、選手の皆様。準備の方は良いでしょうか!?機竜大会に進むのは果たして誰なのか!試合開始です!!』
ドレイクによる開始の銃撃が空に上がると、一気に状況が動き出す。とは言っても、積極的に相手を排除する者と逃げに徹する者が大半を占めている。
(じゃ、こっちも始めるか)
ガレンの場合はどちらでも無かった。と言うより、すでに敵がいたと言うべきか。試合開始前から獲物を見るような目で見ていた5人が、一斉に襲いかかってくる。しかし、この程度で慌てているようではカブトに選ばれてはいない。
(想定通りと言えばそうだが……、正直期待はずれもいい所だな)
5人の攻撃を捌きながらの感想がこれである。やみくもに殴りかかるだけの勢い任せの攻撃では、一撃与えることさえできない。むしろ、幻神獣を相手にするよりも楽である。
(喧嘩慣れしてる奴なら少しは癖がありそうだが、それすらないとはな。舐めてるのか、プロを雇う金を渋ったか)
相手の裏事情をぼんやり考えながら、フィールドの人が減ってきたことを察して反撃に移る。
馬鹿の一つ覚えのように殴りかかる相手を、誘い込みながら勢いを殺さずに投げ、後ろにいた関係ない相手に向かって投げ飛ばす。敢えて見せた隙に迫る相手を躱しながら挟み撃ちになるように誘導。羽交締めにしようとする相手の足を蹴り倒して後ろに回り込み、いざ殴ろうとしていた相手めがけて蹴り倒す。
即座に3人がやられたことに残り2人が逃げようとするが、1人が他の選手にぶつかったのを確認すると、もう1人をガレンは確保する。その際、しっかりと腕を組み伏せている。
「さーて、誰に依頼されたか教えて貰おうか」
「な、何のことだ……!」
「あれだけ睨み付けて気づかない訳ないだろ。まぁ、だいたい『英雄の証』が雇ったんだろ?」
「……!」
何で分かったと言わんばかりの顔に、ガレンはニヤリと笑う。予想と確認を兼ねて言ったが、ほぼ確信してのセリフだった。宿の買取で誘拐をやらせる相手である。邪魔者を消せる絶好の舞台があるなら、迷わず飛びつくと判断したのだ。最もここまで相手が弱いのは流石に想定外だったが。
「まあ、そんなことはどうでもいい。ただし、内部の戦力も教えてもらわないとなあ?」
「し、知らない!ただ、ペンダントはめたガキを潰せって命令されて……!選手で当てはまるのはあんただけだったから……!」
「チッ……。無駄に知恵が回るな」
舌打ちをして相手を場外に蹴り倒すと、減った他の選手に狙いを定める。幸い、外套の男を除いてはそこまで強い相手はいなかったので、フィールドを駆け抜けながら片っ端から戦闘不能に追い込んでいく。たとえ相手を失格にできなくても動けないように立ち回ることで、負けない戦い方を行っていった。
結果として、後4人というところまで残ることができた。
「やはり最後まで残るか。見込み通りの男だ」
「そりゃどうも。できればあんたとは機竜で決着をつけたいがな」
外套の男と向かいあって話していると、互いの後ろから相手が迫ってくる。この2人は最初から組んでおり、コンビネーションによってこうして残っている実力派である。最後は同時に不意を打って終わらせるつもりだったが、
「ふん」
「はぁっ!」
集まった人の中で、特に極まった2人には全く通じなかった。外套の男は後ろを向いた状態で手の甲で顔面を殴り、鳩尾を蹴り飛ばして気絶させる。ガレンは後ろに回し蹴りを放って顔面をそのままフィールドに叩きつけ、相手はその衝撃によって気絶。
最終的には、2人とも場外まで相手を引きずって放り投げることで試合が終了した。
『し、試合終了!両者、最後は圧倒的な強さを見せた終わり方です!本戦に進んだ選手、ガレン選手とブレット選手に盛大な拍手を!』
観客の拍手に包まれる中、ガレンとブレットは1度互いに視線を合わせながら、それぞれ入り口に向かって歩いていく。ちょうど同時に入る形になったが、2人は一言も話さずに行った。
ちょっと詰め込み過ぎましたかね?
これだけ期間が空いたにも関わらず、僅かしか進まず申し訳ないです。
リアルでは内定、研究室による卒論作成(時間的余裕はある)、人手不足によるバイト三昧(危うく扶養控除に引っかかりかけた)。安定する頃には就職してそうだな、こりゃ。
暇はあっても文章化に手間取るし、これでいいのかと自問自答。小説家は凄いわ。
失踪する気はありませんが、やる気が失せそうなこの頃です。