フルボトルバスターでゾンビを退治するお話 作:ランブルダンプ
これはゾンビ映画を割と見る人の中では鉄板だと思う。
『バイオハザード』の映画みたいなモンスター相手だと銃が必須だろうけど、『ゾンビランド』とか『ロンドンゾンビ紀行』みたいな一般的なイメージのゾンビ相手ならホームセンターの工具を改造したりして立ち向かえる。
いつコレが起きたのかは分からない。
どこかの国の細菌兵器なのか隕石にゾンビウイルスがついていたのか。
取り敢えず分かるのは、お話の中だけに居たゾンビが現実の世界で歩き回っているという事だ。
私が居たのはホームセンターではなく家電量販店だった。
そもそもなんでここに居るのかと言えば学校の帰り道に仮面ライダー関連の玩具を買おうと寄ったのが原因だった。
おこづかいが貯まったので、何か安くなってる玩具はないかなと探しに来たのだ。
去年は装動におこづかいを大体使ってしまったが、今年は創動のスタークだけ買って他の事には使わなかった。
なので今私の手元にはベルトとその他の商品を買えるだけのお金があったりする。
「クローズドラゴンは売り切れかぁ……ベルトとハザードトリガー、フルフル……バスター……」
値札を見て予算に収まる買い物になるように計算する。
先にプラモのコーナー見たのはいけなかった、BD1号機欲しい。
決めかねてる私はこの時気づかなかったが、後で監視カメラを見たら人が急いでお店から出て行っていた。
「あれ?」
ふと我に返り辺りを見渡す。
辺りに全然人の気配が無くなったからだ。
「どうしたんだろ?レジに人は……」
見たら誰も居ない。
腕時計を見ても、まだ4時で店員が居なくなる訳がない。
「あれー?」
一階降りてテレビの置いてあるコーナーへと行ってみる。
やはりその階にも誰も居なかったが、テレビが情報を教えてくれた。
『臨時ニュースです!只今入ってきた情報ですが、全世界的に謎の奇病が発生している模様です!』
『最初に確認されたのはロンドンの市街地で人が人を補食するという痛たましい事件でした、それが急激に世界中で起こり始め……』
「デンジャラスゾンビィ……」
つい、誰も居ないのでそう言ってしまった。
そして冷静になって呟く。
「え、ドッキリ?」
デマもありそうだけどポケットのスマホを取り出してTwitterを開く。
タイムライン上では支離滅裂な文章や動画、文字、海外のニュースで溢れ帰っていた。
「わぁグロい」
早速殺されたゾンビの写真上げてるのは流石だと思う。
……これはドッキリでもここまで手が込んでるなら引っ掛かってもいいかもしれない。
ドッキリじゃないなら生命の危機だ。
「えーっと、まず食料と武器辺りかな?」
余りに常識外過ぎな展開なので普段通りの行動をする事にした。
旅行コーナーからスーツケースを引いてきて水と食料、缶詰辺りを片っ端から詰めていく。
替えの服とかその他諸々も。
幸い私は小柄なのでこの建物の食料で当分は持つと思う。
そして何より大事なのは武器だ。
「武器……ゴルフクラブとかバットとか包丁とか?」
どれもしっくり来ない。
普段から振り回してるもの……もの……
「あ」
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『フルボトルバスター!!』
これだ。
そこそこの重さ、子供が振り回す前提の耐久力、何より私のテンションが上がる。
こないだ夏休みに年下の従姉妹と遊んだときに「お姉ちゃんバグスターね!敗者にふさわしいエンディングをみせてやるー!」とガシャコンキースラッシャーで襲い掛かられてめっちゃ痛かったのを思い出した。
私も家で火縄大橙DJ銃を振り回してるのでこの手の玩具が一番手に馴染む。
「もっと破壊力が欲しいよね」
側にぶら下がってた新品のフルボトルセットを開けて4つとも装填した。
『アルティメットマッチデース!』
「おお、いいじゃん」
その時外から悲鳴が聴こえてきた。
「……Are you ready?……できてるよってね」
私はフルボトルバスターを担ぐと必殺技待機音を鳴らしながら外へと駆け出して行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
訳が分からない。
今日は本屋のバイトが有るから早めにお店に着いたのに誰も居ない、店長に電話しても出ない。
仕方なく帰ろうとしたら正気を失ってる人に追いかけられる。
「……っ!何がどうなって!」
最初に叫んだのが不味かったのだろう、私が逃げる先でどんどん追手が増えていっている。
「どこか……隠れる場所は……!」
元々体力が無い方なのにこんな急に運動なんて……
既に息が切れ掛けてるが、普段滅多に出さない本気でひたすら走る。
商店街を抜けた所で足がもつれて転んでしまった。
短い悲鳴が漏れる。
急いで立とうとした所で足に痛みが走った。
「っ!」
走れない。
後ろを振り返ると引き離した化け物がじわじわと迫ってくる。
「ひっ……嫌……!」
その瞬間だった。
『アルティメットマッチブレイク!!』
迫る化け物の群れに小柄な影が飛び掛かり、音声と爆発音を響かせながら化け物の一人の頭を地面に叩き付けた。
「…………え?」
「今の私は、負ける気がしねぇえええ!!」
機械から斬撃音を響かせながら少女が吼える。
余りに荒唐無稽な光景に脳が理解を拒む。
また一人、少女が化け物を殴り倒す。
あの化け物は音に反応するのか私には目も向けずに一人無双する少女へと向かっていく。
「あ、危ない!」
少女の背後を化け物が取り襲い掛からんとした瞬間たまらず声を上げる。
しかし、少女は冷静にポケットから赤い機械を取り出し、カバーを開いてボタンを押した。
『ハザードオン!!……マックスハザードオン!!』
音を鳴らし始めた赤い機械を遠くへと投げつけた。
何体かの化け物がその音の大きさに気を取られて体を向ける。
次の瞬間
『フルフルマッチブレイク!!』
注意を外した敵を片っ端から殴り倒し、遂に少女は私を追ってきた化け物を全て退治してしまった。
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「フー……説明書に人に振り回してはいけませんって書いてある理由がよくわかったよ……」
立派な鈍器だコレ。
なりきり度の凄さでテンションがMax大変身過ぎる。
もしドッキリなら立派な殺人者な訳だが、まあその時は龍騎の浅倉みたいに生きていけばいっか。
「あ、あの……」
「ふぁい?」
あ、そもそもの理由忘れてた。
人助けじゃん。ここは先手を取って、
「無事ですか?」
「え?えぇ、はい」
「それは良かった。このまま安全な所まで送りましょう」
「えっと、はい……ありがとうございます?」
混乱してる混乱してる。
まぁ元人間あっさり殴り殺すとか非常時にしてもヤベー奴だし謎の人で通しておくか。
「あの、お名前は?」
「エボルトです」
とっさに出る偽名って便利。
この後文明は次第に崩壊し彼女はフルボトルバスターを振り回し、ゾンビ狩りの少女『エボルト』として無駄に名前が広がっていくのだが、それはまた別のお話。