フルボトルバスターでゾンビを退治するお話 作:ランブルダンプ
「あはは……いてて」
「夏休みって楽しいね!」
「そうだねー毎日が夏休みならいいのにね」
「毎日が夏休みなら毎日遊びに来ていい?」
「勿論、私も可愛い従姉妹に会えるのは楽しいし」
「あたしもお姉ちゃん好きだよ!」
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なら毎日を夏休みにすればいいんだね!
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新学期も始まり暫くした頃、一つのニュースがテレビで流れた。
『路上で人が人を喰い殺した』というニュースだ。
夕御飯を家族皆で食べている時にそのニュースをパパが目にするや否や、急に食事を止めて二階の自分の部屋に籠ってしまったのだ。
「パパどうしたんだろう?」
「あの人も仕事で忙しいんでしょ。そっとしといてあげなさい」
ママはそう言ったけど、あたしはいつもと違うパパの雰囲気が気になったのでこっそりパパの部屋の扉から耳をすませた。
「海外でプロジェクトを進めていた奴は何を考えている!?ニュースを見たぞ、何故俺にすぐ知らせなかった!!」
「何?お前はあのウイルスの恐ろしさが分かっていないんだ!!映画もビックリの現象が現に起きてるだろう!?人が人を喰うんだ!!何故人で試した!!」
…………?
「人が人を……アマゾンズ?」
夏にお姉ちゃんの家に泊まったときこっそりお姉ちゃんとパソコンで観たやつだ。
血がバーって出たり、食べたり。
私はそれをお姉ちゃん相手なのを想像してちょっと楽しくなったっけ。
会いたいな……
「ええい!お前と話してもらちが開かん!俺が直接行く!!」
「最悪ロンドンを包囲して封じ込める。人類の危機だ」
部屋からごそごそと音がして出てくる雰囲気だったので、慌てて自分の部屋へ避難する。
パパが慌ただしく一階へ向かい下で準備している間にこっそりパパの部屋に潜り込む。
子供の頃、入ってはいけないと言われてた部屋だ。
何故かは理由を訊いても教えてくれなかったけど、電話の内容的に何か大変なものを作ってるのかな。
フラスコがいくつも刺さっている。
机の上にはネズミのようなものからネズミからかけ離れたものの剥製が置いてある。
机の上には何だか難しい資料がホッチキスで留められて無造作に積み重なっていた。
まだパパは戻ってこない。
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「遥!?入っては駄目だと言っただろう!?」
パパが戻ってきた。
「パパ、あれなぁに?」
「知らなくていいものだ。さ、部屋から出なさい。パパはこれからアメリカへ行ってくる。ママといい子にしてるんだよ」
有無を言わさず追い出された。
あたしは部屋に戻ってさっきパパの部屋から取ってきた資料を読む。
あたしが居たっていう印象が強くてまさかあたしが資料を取ったなんて思いもしないだろう。
資料をよく読み込んで、吟味した。
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一週間後、あたしは世界を永遠に夏休みにする事にした。
パパの血筋、つまりあたしはこのウイルスに抗体を持っているらしく、また普通の人も抗体を持っている事があるらしい。
件のウイルスは今あたしの手の中にある。
厳重なセキュリティを掛けているかと思ったら、部屋の本棚の奥の一部がくり貫かれていて、その中に埋め込まれた冷蔵機能付き金庫に入っていた。
四桁の数字を入れるだけ。
一週間片っ端からパパに関係する数字を試してたら開いた。
セキュリティがカバガバ過ぎる気がしないでもないが、盗みに来た人は抗体が無い限り例外無くゾンビと化すんだからこの緩さも致し方無しか。
まさかあたしが盗むなんてパパは思い付きもしなかっただろうし。
パパの個人的な資料にはお姉ちゃん一家は平気であると書いてあった。
ただママはそれから外れていた。
人間は非日常が好きなんだろう。
ジェットコースターだってお化け屋敷だって、はたまた映画やテレビや読書で日常とは違うものを求めている。
非日常がお好き、ではもっと好きになりますよ。
ここは東京、もっとも人が居る都市。
パパからママへのメールをこっそり覗いたら今は公表を控えているものの、ロンドンで抑えきれず世界中で島国を除いて感染が確認されているそうだ。
だから日本に居てくれとも書いてあった。
うん、この交差点で撒こう。
症状は6時間程で段々と現れる。
家に帰って立て籠り、ある程度時間が、一週間くらい経ったらお姉ちゃんに会いに行こう。
帰り道に近所のリサイクルショップに立ち寄る。
「おばさーん、居る?」
声を掛けると中からゾンビが出て来た。
「うん、ならこのお店にあるもの貰ってっていいよね」
死人に口無し。
東急ハンズで買った鎌で首を刈り取り、玩具コーナーを物色する。
近所にライダー好きの人が居るのか、オーメダルが置いてあったり意外と穴場なのだ。
「お、アマゾンズドライバーだ」
丁度鎌持ってるし、やらかした事を鑑みるにあたしに合ってるベルトだ。
箱から出して動作を確認し、店長の首に声を掛ける。
「これ貰ってくね~♪お代はちゃんと死なせてあげたって所で!」
ベルトを着けてスキップをしながら家路を駆ける。
辺りの家から悲鳴と怒号が聴こえてくる。
「あはは!あはは!毎日が夏休み!」
来年まで待たずにお姉ちゃんに会える事についつい笑みがこぼれる。
「ママ、ただいま!家が汚れるの嫌だから外出て来てよ!」
この後、妹に会いに従姉妹の遥ちゃんは鎌を片手に旅行開始。
「やーがーて、ほしがふーるーほしがふーるー♪」
すべての元凶。