佇む少女は機械仕掛け   作:ロボッピ

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胸中を託して

「……残念。触れない……」

 

「こっちの世界だとオイラ達は実体化できないんだ」

 

「毛づくろいしたり、ネジにオイル塗ったりしたかった……。でも、見えるようになったのは嬉しいな。これからもよろしくね」

 

「へへっ、よろしくな!」

 

「クリクリ〜」

 

 目の前で浮かんでいる精霊にユキは柔らかく笑うと両手を伸ばす。するときつね火とジャンクリボーは本当に頭を撫でられているかのように嬉しそうに笑ったのだった。

 

「……それで、嬢ちゃん達は今何をやってるんだ?」

 

 それから少し経つと、部屋に広げられたカードの数々にきつね火は尻尾の炎でクエスチョンマークを作った。

 

「デッキのカードを入れ替えてるんだよ」

 

「オイラ早速お役御免!?」

 

「ふふ……安心して? 今入れ替えてるのは、シングルデュエルじゃないと真価を発揮しにくいカードだから。機械族だけしか特殊召喚出来なくなるモンスターさんとか……」

 

「ほっ……。……ん? それってつまり……」

 

「うん。タッグデュエル用にデッキを作ってる」

 

 今度は尻尾の炎がエクスクラメーションマークへと変わり、それを見たジャンクリボーもネジの尻尾で真似をした。

 

(かわいい……)

 

「この前まで寝込んでたのに、なんでタッグデュエルをやる流れになったんだ?」

 

「部屋に決闘状が放り込まれてたんだ」

 

「しかも2通……」

 

「お相手は?」

 

「それが……どっちにも書いてなかった? 日時と場所とデュエル形式の指定はあったけど……」

 

「そりゃまた怪しいお手紙だな。本当に信じて大丈夫なのか?」

 

「その代わり『明日香様を賭けて勝負よ』! ……って書いてあったんだ。明日香さんを様付けで呼ぶ二人組といえば——」

 

 そして、勝負の時がやってきた。

 

「来たわね! ちびっ子達!」

 

「やっぱり……ジュンコさんとももえさん」

 

 ユキとレイはわざわざ借りられていた学園のデュエルコートに赴いた。するとそこで待っていたのは、やはりと言うべきかジュンコとももえだった。

 

「待ちかねましたわ!」

 

「ちゃんと指定された時間の5分前に来たよ!」

 

「そうではありませんわ」

 

「あんた達と決着をつけるこの日を待っていたのよ!」

 

「……け、決着? 僕たちと?」

 

「知らぬ間に因縁が生まれてる?」

 

 今ひとつ要領を得ない話を展開する二人に、ユキとレイは困惑を露わにしていた。

 

「ジュンコ、ももえ。こんな所まで呼び出して一体何の……えっ?」

 

 そこに明日香がやってきた。呼び出した二人しかいないと思っていた彼女はデュエルコートでその二人と向かい合っているユキとレイに気付き、目を丸くする。

 

「来てくれたんですね!」

 

(俺もいるぞ)

 

「このデュエル……勝った暁には、是非! わたくしを特訓相手にして下さいまし!」

 

「ちょっと! 抜け駆けはずるいわよ。アタシ達二人を、でしょ!」

 

「あなた達が?」

 

(どういう風の吹き回しかしら? 二人がそこまでデュエルに熱を入れるなんて……)

 

「……結局、どういうことなんだろ」

 

「明日香さんの特訓相手になるためにデュエルでアピールしたい……のかな?」

 

「僕たちが相手なのはよく分からないけど、そういうことならいっか。幼馴染タッグの強さを見せちゃおう!」

 

「うん……!」

 

「負けないわよ! こっちの幼馴染タッグの方が強いってところ、見せてあげる!」

 

「ええ! やりますわよ、ジュンコさん!」

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 些細な疑問は捨て置き、兎にも角にもデュエルの幕が上がった。

 

(フィールド、墓地、除外ゾーンがパートナーと共有されるタッグフォースルールか……。これはタッグの息が試されるぞ)

 

「僕のターン! 黒き森のウィッチを召喚! カードを3枚伏せてターンエンドだ!」

 

 身体よりやや大きめの黒いローブを羽織った美魔女が大の字で降り立つと、ローブに覆われた手をクロスしながら前屈みに座り込んだ。

 

黒き森のウィッチ 守備力1200

 

レイ&ユキ LP4000

 

フィールド 『黒き森のウィッチ』(守備表示)

 

セット3

 

手札3(レイ)、5(ユキ)

 

「お二人とも覚悟してくださいまし! わたくしのターン、ドローですわ。わたくし達の場にモンスターがいないことでマジックカード、魔獣の懐柔が発動できます! デッキからレベル2以下の獣族を3体、効果を無効にして呼び出しますわ」

 

「一気に3体も……!?」

 

「出番ですわよ! コアラッコ、ラッコアラ、モジャ!」

 

 出現した小さなドアを通り、三匹の愛くるしい獣が出てきた。コアラのような見た目をした生物は水溜りに仰向けで浮かび、ラッコのような見た目をした生物は木の上に登ってユーカリの葉を食べ、毛根のような見た目をした生物はその辺でピョンピョンと跳ね出す。

 

コアラッコ 攻撃力100

ラッコアラ 攻撃力1200

モジャ 攻撃力100

 

「わぁ。可愛いー!」

 

「獣は時に可愛さの中に怖さを潜ませていますわ。コアラッコとラッコアラを生け贄に捧げ、百獣王(アニマル・キング) ベヒーモスを召喚!」

 

 野生の勘が働き、二匹の獣は姿を隠した。するとピンク色の巨体、鋭い爪の生えた四つ足、研ぎ澄まされた牙を持ちし怪物が足音を響かせてフィールドまで歩いてきた。

 

百獣王 ベヒーモス 攻撃力2700

 

「うっ、可愛くない……」

 

 唸り声をあげる怪物に怯えたレイだったが、彼女の声が聞こえたのか怪物はしょんぼりとした表情になる。

 

「あっ、嘘だよ! 可愛いよ!」

 

「ベヒーモスは生け贄に捧げた数だけ、墓地の獣族を手札に戻せますわ。わたくしはコアラッコとラッコアラを手札に!」

 

 そんな隙を突いて二匹の獣は安全地帯へと避難した。

 

「さらに融合を発動しますわ! 今手札に戻したコアラッコとラッコアラを融合!」

 

(最上級モンスターを呼び出しながら、融合の消費を抑えた……!? ももえの速攻パワーデッキは、攻撃を凌がれると打つ手が無くなるほど手札消費が荒かったのに……)

 

 ももえのデッキを友人として以前からよく知っている明日香は、戦術の些細な変化を感じ取っていた。

 

「弱肉強食に打ち克つため、鍛えに鍛えてまた鍛えて! 融合召喚! 今こそ食物連鎖の頂点に! コアラッコアラ!」

 

 先程までの愛らしさはどこへやら。融合により生み出されたのは筋骨隆々な肉体と太い腕っぷしを備えた巨獣だった。隣に突然現れた巨獣に、怪物は頭を低くしてへりくだる。

 

コアラッコアラ 攻撃力2800

 

「そのまま効果を発動しますわ! 手札から獣族を1体墓地に送ることで相手モンスターを破壊できますのよ。黒き森のウィッチには消えてもらいますわ!」

 

 巨獣が手を組んで叩き下ろすと、地面がひび割れていった。やがて魔女の下の地面も完全に割れてしまう。

 

「……! なら、望み通り消えてみせるよ! 速攻魔法、ディメンション・マジック!」

 

「なっ!?」

 

 しかし魔女が落ちることは無く、一瞬にして姿を消してしまう。その代わり先程まで魔女がいた場所にはこのひび割れを起こした巨獣の姿があった。

 

「僕の場に魔法使い族がいる時、自分のモンスターをリリースすることで手札の魔法使い族を特殊召喚して、その後相手モンスターを選んで破壊できるよ!」

 

「コアラッコアラが……! ……やられましたわ」

 

 先程まで巨獣がいた場所に現れた小さき乙女に怪物が照れている間に、巨獣は地の底へと落ちてしまった。

 

恋する乙女 攻撃力400

 

「レイちゃん、ナイス。融合モンスターを失うのは、使い手にとって結構ダメージがある」

 

「へへっ、ありがと! さらに僕は黒き森のウィッチが墓地に送られたことで守備力1500以下のモンスター……マジシャンズ・ソウルズを手札に加えるよ」

 

「ですが! そのようなモンスターでわたくしの大型モンスターを止める気なのですか?」

 

「試してみれば分かるよ!」

 

「なら試しましょう。ですがその前に……。先程墓地に送ったキング・オブ・ビーストはフィールドのモジャをリリースすることで蘇ることが出来ますわ。よって墓地から特殊召喚いたします!」

 

「……! さらにもう1体の大型モンスター……!?」

 

 小さな獣が進化を遂げていくと、黒い毛が急激に増え、中から黄金色の足が無数に生えていき、愛嬌のあった顔ですらもはや恐怖を感じるほど歪んでしまった。

 

キング・オブ・ビースト 攻撃力2500

 

(ユキの言う通り、融合使いが折角呼び出した融合モンスターを失えば、動揺が見られるものだ。しかし、今の彼女にそれは一瞬しか見られなかった……)

 

「これでも耐えられて? バトルですわ! キング・オブ・ビーストで恋する乙女に攻撃!」

 

 黒板を引っ掻いたような不快感のある雄叫びが響くと、耳を塞いだ乙女は尚も届いてしまう音をあからさまに嫌がった。

 

「くっ! 恋する乙女は攻撃表示の時、バトルでは破壊されない!」

 

「ですがダメージは受けてもらいますわ!」

 

「ううっ……!」

 

レイ&ユキ LP4000→1900

 

キング・オブ・ビースト 乙女カウンター0→1

 

「攻撃を受けたことで、キング・オブ・ビーストに乙女カウンターが乗ったよ!」

 

「構いませんわ。ベヒーモスで恋する乙女に攻撃!」

 

 涙目でへたりこむ乙女に怪物は頬をかくと、そっと近づいてデコピンにより攻撃を仕掛けた。

 

「これが決まれば、アタシ達の勝ちよ!」

 

「させない! トラップカード、ガード・ブロック! バトルダメージを0にして、さらに1枚ドロー!」

 

 しかし見上げる乙女に怪物は攻撃を躊躇し、慌てて手を引っ込めた。

 

(レイちゃんのデッキは乙女カウンターを乗せるために、ダメージを軽減するカードが多い。だから力押しではそうはやられない。だけど……)

 

(さすがにディメンション・マジックがあって、そこから大型モンスターが2体も来るのは計算外だったな……!)

 

 二度目の攻撃は防いだものの、開始早々の大ダメージに二人は焦りの色を顔に浮かべ、気を引き締め直していた。

 

「ベヒーモスにも乙女カウンターが1つ乗ったよ!」

 

 手を引っ込めた怪物に乙女は柔らかい微笑みを見せると、怪物はその笑顔に思わず見惚れてしまった。

 

百獣王 ベヒーモス 乙女カウンター0→1

 

「でもライフを半分以上削ったから、キューピッド・キスを恋する乙女に装備してもコントロールを奪う前にライフが尽きるわ!」

 

「しかもこれはタッグデュエル! 次はユキちゃんのターン。その戦術を成り立たせるのは、難しいようですわね。ターンエンドですわ!」

 

「ユキ、ごめん。いきなりダメージ受けすぎちゃった」

 

「ううん。レイちゃんだから、これだけのダメージで済んだ。無駄には、しないよ」

 

「……うんっ! 後は、任せたよ! 遠慮なくいっちゃって!」

 

ももえ&ジュンコ LP4000

 

フィールド 『百獣王 ベヒーモス』(攻撃表示、乙女カウンター1) 『キング・オブ・ビースト』(攻撃表示、乙女カウンター1)

 

セット0

 

手札2(ももえ)、5(ジュンコ)

 

「ユキのターン! 相手フィールドのモンスターの数がこちらより多い場合、巨大戦艦 ブラスターキャノン・コアは手札から特殊召喚出来る?」

 

 宇宙より飛来し戦艦がフィールドに降り立つと、弱点になる中心部のコアを守るために3つの遮蔽板を出現させた。

 

巨大戦艦 ブラスターキャノン・コア 攻撃力2500 カウンター0→3

 

(レイちゃんは遠慮しなくて良いって言ってくれた。恋する乙女はかなり特殊なモンスター……ユキが無理に扱うより、ここは……)

 

「……さらに恋する乙女を生け贄に、機械王を召喚!」

 

「……! 恋する乙女を手放しましたわね……」

 

 デートに呼び出された乙女が怪物に手を振って去っていくと、代わりに耐熱性に優れた超合金ロボットが参上した。

 

機械王 攻撃力2200

 

「機械王はフィールドの機械族1体につき、攻撃力を100ポイントアップする。ユキの場のモンスターは全員機械族。よって攻撃力200ポイントアップ!」

 

機械王 攻撃力2200→2400

 

「しかしその攻撃力では、わたくしのビースト軍団は倒せませんわ!」

 

「ブラスターキャノン・コアはバトルの度にカウンターを1つ取り除いて、取り除けない時に破壊される効果がある代わりに、戦闘では破壊されない」

 

「……! キング・オブ・ビーストを一方的に倒すおつもりですわね……!」

 

「そうではない? ……レイちゃん!」

 

「うん! 僕は伏せていたキューピッド・キスをブラスターキャノン・コアに装備する!」

 

「……! ま、まさか……!」

 

「永続魔法、機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)を発動しておいて……バトル! ブラスターキャノン・コアで攻撃。対象は……ベヒーモス!」

 

 乙女を見失って放心状態にある怪物に、戦艦がぶつかった。力の溢れる巨体に、戦艦といえども弾き返される。

 

レイ&ユキ LP1900→1700

ブラスターキャノン・コア カウンター3→2

 

「キューピッド・キスを装備したモンスターが乙女カウンターの乗ったモンスターに攻撃してダメージを受けた場合、ダメージステップ終了時にそのモンスターのコントロールを得るよ!」

 

「そのための戦闘破壊耐性でしたのね……!」

 

「タッグデュエルでその戦術を成立させてくるなんて……!」

 

 放心状態にあった怪物が意識を取り戻すと、乙女が消えた時にあの場にあった戦艦に彼女が乗り込んだと思い込んだ彼は、主人から離れてユキ達の場までやってきた。

 作戦を成功させレイに向かって小さく拳を上げるユキに、レイも親指を立てて嬉しそうに返す。

 

(……良い連携だ。フィールドが共有される、タッグフォースルールならではだな)

 

「コントロールを得たベヒーモスでキング・オブ・ビーストに攻撃!」

 

 乙女を見つけようとしていた怪物はそれを邪魔するように雄叫びをあげる奇妙な生物を爪で薙ぎ払った。

 

ももえ&ジュンコ LP4000→3800

 

「これで場が空いた。機械王でダイレ——」

 

「——そうは問屋が卸しませんわ! 獣族モンスターが戦闘で破壊されたことで、手札の森の狩人イエロー・バブーンの効果を発動!」

 

「……! 手札から……」

 

「その効果で墓地の獣族を2体……コアラッコとラッコアラを除外することで、自身を特殊召喚いたします!」

 

 獣の討伐を感知した類人猿型の狩人が駆けつけてくると、ロボットと対面した。

 

森の狩人イエロー・バブーン 攻撃力2600

 

(一気にこっちも大ダメージと思ったのに……どうしよう)

 

 予想外のさらなる大型モンスターの登場に虚を突かれ、ユキは迷いながら手札を見た。そして少しの間考え込むと、決断して顔を上げた。

 

「機械王でイエロー・バブーンに攻撃! ジェットパンチ!」

 

「えっ、一体何を……!」

 

(この戦術は、明日香様の時にも使っていた……)

 

「ももえ! 機甲部隊の最前線よ!」

 

「……! なるほど。ダメージ覚悟でデッキから機械王より攻撃力の低い機械族を呼び出すつもりですわね」

 

「……その通り、です」

 

(ジュンコがユキの戦線維持戦術を読み切っている……。あまり相手の分析が得意ではなかったはずなのに)

 

 ロボットが腕をまっすぐ伸ばすと、腕そのものがジェット噴射で飛ばされて狩人を襲った。しかし狩人は華麗な身のこなしで二つの腕を避けると、逆に放った矢によりロボットを仕留めてみせた。

 

レイ&ユキ LP1700→1500

 

「機甲部隊の最前線でデッキから攻撃力0の無限起動ハーヴェスターを守備表示で特殊召喚! その効果でデッキから無限起動モンスター……無限起動ブルータルドーザーを手札に!」

 

 ロボットのパーツを再利用し、収穫用の農業機械が生成された。

 

無限起動ハーヴェスター 守備力2100

 

「メインフェイズ2に入ります。ブルータルドーザーは地属性・機械族をリリースすることで手札から守備表示で特殊召喚可能……ハーヴェスターをリリースして呼び出し、その効果でデッキから無限起動スクレイパーを守備表示で特殊召喚!」

 

 さらにそれらのパーツが再利用されていき、最終的には整地用の建設機械と壁面を削る重機が生み出された。

 

無限起動ブルータルドーザー 守備力2100

無限起動スクレイパー 守備力500

 

「カードを2枚伏せて……ターンを終了します」

 

レイ&ユキ LP1500

 

フィールド 『巨大戦艦 ブラスターキャノン・コア』(攻撃表示) 『無限起動ブルータルドーザー』(守備表示) 『無限起動スクレイパー』(守備表示) 『百獣王 ベヒーモス』(攻撃表示)

 

セット2 『キューピッド・キス』 『機甲部隊の最前線』

 

手札3(レイ)、1(ユキ)

 

「いくわよ! アタシのターン! アンタ達の場に同じ属性のモンスターが2体以上いれば、このモンスターは手札から特殊召喚できるわ!」

 

「……! ユキ達の場にいるのは、全員地属性……!」

 

「来なさい! 神禽王(しんきんおう)アレクトール!」

 

 赤く立派な双翼を羽ばたかせ、雄鳥がフィールドに舞い降りた。

 

神禽王アレクトール 攻撃力2400

 

「効果発動よ! 1ターンに1度、表側表示のカード1枚の効果をそのターン中無効にできるわ。アタシはブラスターキャノン・コアを選択!」

 

「うっ……」

 

 雄鳥の翠色の眼が光を発すると、見つめられた戦艦の機能が停止してしまった。それに伴い、出現させていた遮蔽板も消滅してしまう。

 

ブラスターキャノン・コア カウンター2→0

 

(まずい……。カウンターだけじゃなく、戦闘破壊耐性まで消えちゃった……)

 

「まだまだいくわよ。ハーピィ・ハーピストを召喚!」

 

 緑色の翼を生やした女性の鳥人が透き通った赤い長髪を靡かせ、優雅に降り立った。

 

ハーピィ・ハーピスト 攻撃力1700

 

「召喚に成功したから効果発動よ! このカード以外のアタシの鳥獣族モンスターと相手フィールドの表側表示モンスターを1体ずつ持ち主の手札に戻すわ! 戻りなさい! アレクトール! ベヒーモス!」

 

(折角奪ったモンスターを取り返された……!)

 

 鳥人が肩にハープを乗せ、奏でる。するとその音色が乙女の幻想を追っていた怪物の目を覚ました。そして鳥人が雄鳥の従者を向かわせ、彼の案内で怪物はジュンコのもとへとやってきた。

 

「もう一度アレクトールを特殊召喚!」

 

「……! そっか、まだ2体以上いるから……」

 

 案内を終えた雄鳥は仕える主のもとへと戻ってくる。

 

神禽王アレクトール 攻撃力2400

 

「さらに効果で機甲部隊の最前線を無効にするわ!」

 

「あっ。しまった……!」

 

「一度場を離れたから、また効果が使えるようになったんだ……!」

 

 雄鳥が今度は前線基地を見つめると、稼働していたレーンが停止してしまった。

 

(厄介な戦線維持戦術に上手く対応したわね……。あのカードを使えなくすれば、ユキの息切れが狙えるはずよ)

 

「フィールド・墓地で『ハーピィ・レディ』扱いになるハーピストがいることで、マジックカード、万華鏡—華麗なる分身—を発動! このカードでルール上『ハーピィ・レディ』として扱うハーピィ・レディ1(ワン)をデッキから呼び出すわ!」

 

(目まぐるしい展開……。ももえさんがパワーで押すのに対して、ジュンコさんは展開力で撹乱するタイプなのかな)

 

 鳥人に鏡が向けられると、驚くことに映し出された鳥人が鏡を抜けてフィールドに出てきた。

 

ハーピィ・レディ1 攻撃力1300

 

「このモンスターが場にいる限り、風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップよ!」

 

「ジュンコさんが呼んだモンスターは全員風属性……!」

 

神禽王アレクトール 攻撃力2400→2700

ハーピィ・ハーピスト 攻撃力1700→2000

ハーピィ・レディ1 攻撃力1300→1600

 

「覚悟はできたわね! バトルよ! アレクトールでブラスターキャノン・コアを攻撃!」

 

 鋭い眼光で敵を見定めた雄鳥は強烈な羽ばたきで羽根を飛ばした。

 

「……永続トラップ、魂のさまよう墓場を発動。……くっ……!」

 

レイ&ユキLP1500→1300

 

 鋭い羽根が戦艦を撃ち落とすと、その魂がフィールドに浮遊しだした。

 

「このカードがある限り、こちらのモンスターが戦闘で破壊されて墓地に送られる度に、攻守100の火の玉トークンが呼び出される」

 

火の玉トークン 守備力100

 

「なんとか壁を出そうってわけね。けどアンタの機械は残さないわよ! イエロー・バブーンでブルータルドーザーに攻撃!」

 

 狩人から放たれた矢が建設機械へと降り注ぐ。

 

「そうはさせない? 速攻魔法、瞬間融合! 自分フィールドのモンスターを使って、融合召喚を行う!」

 

「このタイミングで融合ですって……!?」

 

「ユキは機械族のスクレイパーと炎族の火の玉トークンで融合! 爆撃せよ、起爆獣ヴァルカノン!」

 

 降り注ぐ矢が届く前に全て燃え尽きたかと思うと、狩人は肩にある銃口から火の弾を放った大型ロボットの存在に気付いた。

 

起爆獣ヴァルカノン 攻撃力2300

 

「そのモンスターは初めて見たわね……。けど、その攻撃力なら!」

 

「攻撃は果たされない? ヴァルカノンが融合に成功したことで効果発動。融爆! このカードとイエロー・バブーンを破壊し、その後破壊したイエロー・バブーンの攻撃力分のダメージを与える!」

 

「なっ!?」

 

「そんな……イエロー・バブーンの攻撃力は2600もありますのに!」

 

 狩人が気付いた時にはもう遅かった。既に至近距離まで接近していたロボットは自身を起爆させる。

 

ももえ&ジュンコ LP3800→1200

 

「……やってくれたわね!」

 

(瞬間融合で融合召喚したモンスターはターンの終わりに破壊される。しかしあのモンスターには関係の無いデメリットというわけか)

 

「良いよ、ユキ! その調子!」

 

「うん……! これで攻撃可能なのはハーピィ達だけ。その攻撃力ではブルータルドーザーは倒せない」

 

「……カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

ももえ&ジュンコ LP1200

 

フィールド 『神禽王アレクトール』(攻撃表示) 『ハーピィ・ハーピスト』(攻撃表示) 『ハーピィ・レディ1』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札1(ももえ)、2(ジュンコ)

 

「レイちゃん。遠慮なく、いっちゃえ」

 

「分かった! 僕のターン、ドロー! デッキからレベル6以上の魔法使い族……マジシャン・オブ・ブラックカオスを墓地に送ることでマジシャンズ・ソウルズを手札から特殊召喚するよ!」

 

 墓場から魂が抜け出し、魔法使いの姿となって場に現れた。

 

マジシャンズ・ソウルズ 守備力0

 

「効果を使うよ! 自分の手札・フィールドの魔法カード……機甲部隊の最前線と魂のさまよう墓場を墓地に送って、僕はその枚数分……つまり2枚のカードをドローする!」

 

(機甲部隊の最前線は機械族専用のサポート……。僕には使いこなせない。けど、無駄にはしないよ。……来た!)

 

「僕の場にレベル1のモンスターがいることでマジックカード、ワンチャン!?を発動するよ! デッキからレベル1のモンスターを手札に加える! 代わりにこのターンで召喚できなかったら、2000ダメージを受けちゃうけどね」

 

(ものマネ幻想師のステータスコピーは元々の値だから、ハーピィ・レディ1がいる今はダメだ。なら……!)

 

「僕はディメンション・コンジュラーを加えるよ! そして召喚!」

 

 黄色い箱が出現したかと思うと、そこから手足が伸びていき、擬態していた魔法使いであることが判明した。中にはどうやら誰か入っているようだ。

 

ディメンション・コンジュラー 攻撃力500

 

「召喚に成功したことで墓地のディメンション・マジックを手札に戻すよ!」

 

「あの厄介な速攻魔法を……!」

 

(今……いや、まだよ……。もう召喚はしたんだから、すぐに使ってくるはず)

 

「儀式魔法、イリュージョンの儀式を発動!」

 

「ここで儀式ですって……!?」

 

「ディメンション・コンジュラーをリリース!」

 

 魔法使いが箱の形態に戻ると無数のチェーンで巻きつけられていく。そして身動きの取れない彼が炎で包まれた。やがて鎮火されると、そこにあったのはただの箱。本物はいつのまにか脱出に成功しており、自らの身体から一眼の救出者を送り出した。

 

「儀式召喚! その邪眼で虜にしてあげて。サクリファイス!」

 

サクリファイス 攻撃力0

 

「攻撃力0?」

 

「サクリファイスは相手モンスター1体を装備カードにして、ステータスを吸収することが出来るんだ!」

 

「なんですって!? その効果を使われたらアレクトールが……」

 

「その前に……モンスターゾーンから墓地に送られたディメンション・コンジュラーの効果発動! 僕の場の魔法使い族の数だけドローして、同じ枚数を好きな順番でデッキの上に戻すよ!」

 

「……仕方ないわね。ハーピィ・レディ1をリリースして、トラップカード、ゴッドバードアタック! フィールドのカードを2枚……サクリファイスと、ブルータルドーザーを破壊するわ!」

 

「なっ……! さ、させない! ディメンション・マジック! サクリファイスをサクリファイス・エスケープ!」

 

 身命を賭して低空飛行で突撃してきた鳥人に気づき、魔法使いは救出者を再び自身の中に入れると、脱出マジックの要領で消え去った。しかし建設機械までは手が回らず、そちらは特攻により破壊されてしまう。

 

「来て、ブラック・マジシャン・ガール! さらにディメンション・マジックの追加効果でアレクトールを破壊するよ!」

 

 特攻に気を取られていた雄鳥は背後を取られ、放たれた魔導弾をまともに受けてしまう。

 

(やっぱり使われたわね。出来たらあのカードを使った後を狙いたかったわ……)

 

(使わされた……。ここはサクリファイスとブルータルドーザーで攻めて、ディメンション・マジックは温存しておきたかったのに)

 

 カードの撃ち合いをした二人だったが、双方思惑を外されたことで苦い表情を浮かべていた。

 

「……墓地にマジシャン・オブ・ブラックカオスがいることで、ブラック・マジシャン・ガールの攻撃力は300上がるよ!」

 

「……ハーピィ・レディ1がいなくなったことで、ハーピストの攻撃力は300下がるわ」

 

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2000→2300

 

ハーピィ・ハーピスト 攻撃力2000→1700

 

「ディメンション・コンジュラーの効果で2枚ドローして……。……! 2枚戻すよ。マジックカード、モンスター・スロットを発動!」

 

 フィールドに三列のスロットのリールが出現した。

 

「このカードは僕の場のモンスターを選択して、それと同じレベルのモンスターを墓地から除外するんだ。その後1枚ドローして、引いたカードが同じレベルのモンスターだったら特殊召喚できるよ! 僕はマジシャンズ・ソウルズを選択して、ディメンション・コンジュラーを除外!」

 

 左のリールにマジシャンズ・ソウルズ、真ん中のリールにディメンション・コンジュラーの絵柄が表示されると、残る右のリールの回転も止まろうとしていた。

 

「そんなのそうそう成功する訳……。……! あっ……!」

 

「そう! デッキの上に戻したのはレベル1のミスティック・パイパー!」

 

 止まったリールに描かれていたのは赤色のマントを背負った青年だった。するとファンファーレが鳴り響き、その青年が実際に場に現れた。

 

ミスティック・パイパー 守備力0

 

「さらに自身をリリースして効果発動! 1枚ドローしてそれがレベル1モンスターならもう1枚ドロー出来る!」

 

「さっき戻したのは2枚……! ってことは!」

 

「このカードもレベル1! もう1枚ドローだ!」

 

 笛を鳴らした青年は光の粒子となってデッキに降り注ぎ、レイに新たな力をもたらした。

 

(やるわね……! 一応儀式モンスターを失わせたから、それ相応にダメージがあったはずなのに……!)

 

「バトルだ! ブラック・マジシャン・ガールでハーピストに攻撃!」

 

「はあっ!」

 

 ブラック・マジシャン・ガールがステッキを鳥人に向けると、紫色の魔力を帯状にして放った。翼を羽ばたかせて回避を試みた鳥人だったが足が巻き込まれ、そのまま身体が魔力の奔流に飲み込まれていった。

 

「くうっ……!」

 

ももえ&ジュンコ LP1200→600

 

「よし! これで全滅だ! カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「……そうはいかないわよ! ハーピストが墓地に送られたターンのエンドフェイズにデッキから攻撃力1500以下の鳥獣族を手札に加えられるわ。この効果で加えた超重禽属コカトリウムを墓地に捨てて、永続トラップ、ヒステリック・パーティ発動! 墓地のハーピィ・レディを可能な限り呼び戻すわ!」

 

「……! 折角倒したのに……!」

 

 上空から傷を癒す光が降り注ぐと、鳥人は翼を思い切り羽ばたかせ、華麗に交差する動きを見せてフィールドに舞い戻った。

 

ハーピィ・ハーピスト 攻撃力1700→2000

ハーピィ・レディ1 攻撃力1300→1600

 

レイ&ユキ LP1300

 

フィールド 『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃表示) 『マジシャンズ・ソウルズ』(守備表示)

 

セット1

 

手札1(レイ)、1(ユキ)

 

「ナイスですわ、ジュンコさん! わたくしのターン、ドロー! 墓地のコカトリウムはわたくし達の場の獣族・獣戦士族・鳥獣族のいずれかをリリースすることで呼び戻せます! ハーピィ・レディ1をリリースして復活させますわ!」

 

 鳥人が自身の周りに風を起こしたかと思うと、止んだ瞬間には代わりに金属で形成された鳥が現れていた。

 

超重禽属コカトリウム 攻撃力1300

ハーピィ・ハーピスト 攻撃力2000→1700

 

(良い塩梅で機械族チック。心をくすぐられる……)

 

「コカトリウムはデッキから同条件の種族を除外することで、ターンの終わりまでそのモンスターの同名カードになり、さらに同じ種族・属性・レベルになりますわ! この効果でモジャを除外いたします!」

 

 変幻自在の金属で出来た鳥はその身体を毛根のような獣へと変えていった。

 

超重禽属コカトリウム→モジャ

種族 鳥獣族→獣族

属性 風→地

レベル 4→1

 

(……ロボットっぽさが無くなった……)

 

「さらに(ケン)タウルスを召喚!」

 

 鎧を纏った生命体が場に現れた。下半身は四本足が生えた犬の胴体、頭部も犬の顔をしているのだが、上半身から二本の腕が生えて剣と盾をそれぞれ装備している。

 

犬タウルス 攻撃力1500

 

「マジックカード、烏合の行進! わたくしはこのターン他のマジック・トラップを発動できなくなりますが、自分の場の獣族・獣戦士族・鳥獣族1種類につき、1枚ドローします!」

 

「……! コカトリウムはモジャになって獣族、ハーピストは鳥獣族……」

 

「犬タウルスは……まさか、獣戦士族……?」

 

「その通りですわ! よって3枚のカードをドローします!」

 

(……上手いわね。消費をリカバリーしているのは勿論。ももえのデッキはモンスターの効果で大型モンスターを呼び出すことができるから、デメリットをある程度抑えられる。その証拠に……)

 

「さらにモジャとなっているコカトリウムをリリースすることで、キング・オブ・ビーストを墓地から特殊召喚しますわ!」

 

「……! そのためにコカトリウムを墓地に送ったんだね……!」

 

(……自分が突破口を開くだけじゃなく、パートナーの助けになること。それも勝つために大事なんだって、伝わってくる……)

 

 先程のヒステリック・パーティに隠されていた意図にようやく気付いた二人は、タッグデュエルの奥深さを突きつけられた気がしていた。

 

キング・オブ・ビースト 攻撃力2500

 

「自身の効果で呼び出したコカトリウムは除外されますわ。バトル! キング・オブ・ビーストでブラック・マジシャン・ガールに攻撃!」

 

(全ての攻撃が通れば、ももえとジュンコの勝ち……!)

 

 雄叫びを防ぐ術は無く、音波を浴びたブラック・マジシャン・ガールは倒れてしまった。

 

レイ&ユキ LP1300→1100

 

(どちらのモンスターのダイレクトアタックでも通ればライフは尽きますわ。ここは相手の防御手段がモンスターの特殊召喚である可能性を警戒して……)

 

「さらにハーピストでマジシャンズ・ソウルズに攻撃しますわ!」

 

「……僕は手札のマジクリボーの効果を発動するよ!」

 

「……! ここで手札のモンスター効果ですか……!」

 

「ダメージを受けたターンのバトルフェイズにこのカードを手札から墓地に送ることで、墓地のブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚できる!」

 

「クリリー!」

 

 青紫色の帽子を被ったクリボーが現れると、その手に持ったロッドで倒れているブラック・マジシャン・ガールに治癒魔法をかけた。降り注ぐ光の粉で傷が癒えたブラック・マジシャン・ガールが礼を伝えると、マジクリボーは笑ってその場から去っていく。

 

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2300

 

(ブラック・マジシャン・ガール……! 攻撃力が2000のままだったら、足りましたのに……)

 

「……ハーピストの攻撃を中断しますわ! 犬タウルスでマジシャンズ・ソウルズに攻撃!」

 

 四本の足を巧みに動かし、犬の兵士が魂に勢いよく剣で斬りかかった。

 

「ダメージ計算時に犬タウルスの効果を使いますわ。デッキから獣族・獣戦士族・鳥獣族のいずれか1体を墓地に送ることで、バトルフェイズが終わるまで攻撃力をそのモンスターのレベル×100アップします!」

 

「でもマジシャンズ・ソウルズは守備表示! ダメージは受けませんよ!」

 

「ええ、その通りですわね。わたくしはレベル3獣族のペロペロケルペロスを墓地に送りますわ」

 

犬タウルス 攻撃力1500→1800

 

 わずかに大きくなった剣で斬られた魂はひとたまりも跡形もなく消え去った。

 

「マジクリボーの効果発動! 僕の場の魔法使い族モンスターが戦闘で破壊されたことで、墓地のこのカードを手札に戻すよ!」

 

「……! 厄介ですわね……」

 

 ブラック・マジシャン・ガールを治癒したマジクリボーはそのままレイのもとへと戻ってきた。

 

犬タウルス 攻撃力1800→1500

 

「ですがペロペロケルペロスにも墓地で発動する効果がありますのよ。わたくし達が戦闘、または相手の効果でダメージを受けた場合。墓地のこのカードを除外することでフィールドのカードを1枚破壊できますわ!」

 

「うー……そっちも厄介だね」

 

「お互い様ですわね。カードを3枚伏せてターンを終えますわ!」

 

ももえ&ジュンコ LP600

 

フィールド 『キング・オブ・ビースト』(攻撃表示) 『ハーピィ・ハーピスト』(攻撃表示) 『犬タウルス』(攻撃表示)

 

セット3 『ヒステリック・パーティ』(使用済み)

 

手札0(ももえ)、2(ジュンコ)

 

(……確かに厄介。けど対処する手段はある……。ブラック・マジシャン・ガールでハーピストに攻撃すれば、効果を使われる前にゲームエンドに持っていける。……でも、焦っちゃダメ。ドローしてから、考えよう)

 

「ユキのターン……ドロー! ……!」

 

(…………よし。そうしよう!)

 

「神機王ウルを召喚」

 

 赤を基調としたロボットが稼働音と共に現れ、鋭い金属の一本足を軸に両手を横に伸ばして着地した。

 

神機王ウル 攻撃力1600

 

「さらにマジックカード、渾身の一撃を神機王ウルを対象に発動……!」

 

(これは……俺とのデュエルでも使用したコンボか!)

 

 ユキが発動したカードから白いオーラが出てくると、ロボットの身体を包み込んでいった。

 

「選択したモンスターはこのターン戦闘では破壊されず、またその攻撃で発生するお互いへの戦闘ダメージは0に。そしてそのモンスターに攻撃された相手モンスターはダメージ計算後に破壊される……!」

 

「なっ! ここでそんなカードを……!」

 

「バトル! 神機王ウルでキング・オブ・ビーストに攻撃!」

 

 ロボットが軸足を中心に回転を始めると、独楽のように移動していき、オーラを纏った爪を獣に向けて薙ぎ払った。

 

「……僕はダメージステップで、トラップカード、捲怒重来(けんどちょうらい)を発動! このカードをキング・オブ・ビーストに装備して、攻守を500上げる!」

 

(一体何を……?)

 

 黄金色の足を束ねて身体を軸に薙ぎ払い対抗した獣だったが、オーラに触れた瞬間、その身体は現世から消えてしまった。

 

「装備モンスターがフィールドを離れたことで捲怒重来が墓地に送られた場合、さらなる効果が発動するよ。しかもこのターンに発動していたから、1枚ドローの効果じゃなく、2枚ドローして1枚捨てる効果が適用される!」

 

「そのためでしたのね……」

 

「ドロー! ……ユキは超電磁タートルを墓地に!」

 

(……! あれは墓地から除外することで、相手ターンのバトルフェイズを強制終了させるモンスターだったわね……!)

 

「さらに神機王ウルはバトルダメージを与えられない代わりに、相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる?」

 

「まさかっ……!?」

 

「ハーピスト、犬タウルスにも攻撃を仕掛け、渾身の一撃の効果で破壊する!」

 

 ロボットは勢いを絶やすことなく回転移動を続けていくと、彼女達のフィールドのモンスターを一掃する紫電を走らせた。

 

「……犬タウルスの効果で獣戦士族の暗黒のマンティコアを墓地に送りますわ!」

 

「それでも破壊は免れない?」

 

 鳥人を守るように盾を構えた兵士だったが、その盾をすり抜けるようにオーラを纏った爪が通過し、そしてロボットが一周し終えると通り道には何も残っていなかった。

 

「ブラック・マジシャン・ガールでダイレクトアタック!」

 

 ももえに向かってブラック・マジシャン・ガールがステッキを突き出すと、魔力を帯状にして放とうと集中力を高めていく。

 

「ぐぬぬ……。トラップカード、恐撃ですわ! わたくしの墓地からモンスターを2体……イエロー・バブーンとコアラッコアラを除外することで、攻撃表示モンスター1体……ブラック・マジシャン・ガールの攻撃力をターンが終わるまで0とします!」

 

「……!? 攻撃力を……」

 

(……危なかった。選択を間違えていたら今頃……)

 

 主のピンチに2つの霊体が出てくると、お気に入りのブーツを掴まれたブラック・マジシャン・ガールは集中が途切れてしまい、その隙にステッキを弾かれてしまった。

 

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2300→0

 

「ダイレクトアタックは受けますが、ダメージは有りませんわ!」

 

「防がれた……。カードを1枚伏せて、ターンを終了します。これでブラック・マジシャン・ガールの攻撃力は、元通りに」

 

 ようやく霊体を振り払ったブラック・マジシャン・ガールはステッキを拾いあげた。

 

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力0→2300

 

「ハーピストの効果でコカトリウムを手札に加えますわ。さらに暗黒のマンティコアは墓地に送られたターンの終わりに、手札かフィールドから獣族・獣戦士族・鳥獣族のいずれかを墓地へ送ることで特殊召喚できます! コカトリウムを墓地に送って復活させますわ!」

 

「……! モンスターを残された……!?」

 

(あちらも良いタッグだな。どちらもパートナーにモンスターを残して、戦術のサポートに繋げている)

 

暗黒のマンティコア 攻撃力2300

 

レイ&ユキ LP1100

 

フィールド 『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃表示) 『神機王ウル』(攻撃表示)

 

セット1

 

手札1(レイ)、0(ユキ)

 

「よく繋いだわ! アタシのターン、ドロー!」

 

「後はお願いしますわよ! 伏せていた永続魔法、魂吸収を発動! このカードがある限り、わたくし達はカードが取り除かれる度に1枚につきライフを500回復します!」

 

(このタイミングで……? ……そっか。烏合の行進のデメリットで使えなかったんだ)

 

「任せなさい! 暗黒のマンティコアをリリースしてコカトリウムを復活させるわ! その効果でデッキからハーピィ・レディ1を除外!」

 

「まずいね……。あんまりライフを回復されちゃうと、ペロペロケルペロスの発動が防ぎにくくなっちゃう」

 

「うん……。コカトリウムも場から離れたら除外されちゃうし……」

 

(この状況ではこちらが除外を避けるのにも限度がある。長期戦は……不利)

 

 再び場に現れた鳥が今度は鳥人の姿へと変形していった。変形対象となった鳥人の魂は、ももえの後ろに置かれた門へと飛び込んでいき、命の源となって二人に降り注ぐ。

 

超重禽属コカトリウム→ハーピィ・レディ 攻撃力1300

種族・属性・レベルの変動無し

 

ももえ&ジュンコ LP600→1100

 

「装備魔法、D・(ディファレント・)D・(ディメンション・)R(リバイバル)を発動するわ! 手札を1枚捨てることで、除外されているモンスターを1体攻撃表示で特殊召喚するわよ!」

 

「……! まさか。コアラッコアラを……」

 

「ベヒーモスを捨てて……来なさい! ハーピィ・レディ1!」

 

「えっ……!?」

 

(何故……? もう1枚の手札を捨ててコアラッコアラを呼べば、ベヒーモスをコストに効果を使えたのに……)

 

 怪物が爪で空間を切り裂くと、次元の狭間から鳥人が帰還した。

 

ハーピィ・レディ1 攻撃力1300→1600

超重禽属コカトリウム(ハーピィ・レディ) 攻撃力1300→1600

 

「さらにハーピィ・パフューマーを召喚よ!」

 

 女性の鳥人がビンを片手に現れると、調合を終えた香水を振り撒いた。

 

ハーピィ・パフューマー 攻撃力1400→1700

 

(見ていてください。明日香様)

 

(見逃さないでください。アタシ達のデュエルを!)

 

(二人とも……)

 

 一瞬だけ向けられた視線に明日香は驚いた。友人としてこれほど真剣な表情を見たのは、初めてだった。

 

「パフューマーが召喚に成功したことで、デッキからハーピィ・レディ—鳳凰の陣—を手札に加えるわ。このマジックカードを発動するには、このターンデッキ・融合デッキからの特殊召喚とバトルフェイズを放棄して、さらに場に3体以上の『ハーピィ・レディ』を揃える必要がある! 今、アタシ達の場のモンスターは全員それぞれの効果で『ハーピィ・レディ』として扱われているわ!」

 

「……! なんて厳しい制約……」

 

「来るよ、ユキ!」

 

「発動! 華麗なる舞を見せてあげなさい!」

 

 七色の羽根がフィールドを縦横無尽に飛び交い、視界を塞いでいく。とっさに二手に分かれたブラック・マジシャン・ガールと神機王ウルだったが、三人のハーピィ・レディによる三角形の頂点が疾風怒濤の勢いで円を描き出し、逃げ場を塞がれてしまった。

 

「アタシ達の『ハーピィ・レディ』の数までユキ達の場のモンスターを破壊し、破壊したモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターの数値分のダメージを与えるわ! ヴァルカノンの借りは返すわよ!」

 

「……!?」

 

「ブラック・マジシャン・ガールの攻撃力は2000、神機王ウルの攻撃力は1600……ということは」

 

「片方の破壊を防げたとしても、残りライフ1100のユキ達は耐えられない……!」

 

(……凄い……。ジュンコ、ももえ。あなた達を突き動かす……強い気持ちが、デュエルを通して……伝わってくるわ)

 

 次第に描く円が小さくなっていき、少しずつ獲物が追い詰められていく。そして羽根が止んだ頃、ハーピィ達は一点に集まっていた。

 

「やりましたわ、ジュンコさん!」

 

 フィールドのどこを見渡しても、獲物の姿は完全に消え失せていた。

 

「ええ! やっ……。……! パフューマーがいない!?」

 

 そして一点に集まっていたハーピィは二人だけだった。

 

「……トラップカード、はさみ撃ち……! ユキ達のモンスターを2体、ジュンコさん達のモンスターを1体破壊する……!」

 

「ええっ!?」

 

「まさか……鳳凰の陣で破壊する前に……!?」

 

「先に……破壊していた?」

 

「つまり鳳凰の陣では破壊は行われなかった! だから僕達へのダメージも……0だ!」

 

レイ&ユキ LP1100→1100

 

(あれを……防ぐのね。決まったと……そう思わせるほどの、攻撃だったのに)

 

「嘘でしょアンタ……。アタシ達が、どんな思いで……」

 

「強い信念を……カードを通してユキも、レイちゃんも感じています。けど……ユキ達も、ここで絶対に成し遂げたい想いがあるから……。だから、負けたく……ありません」

 

「……!」

 

「ユキ……」

 

「……ええ、そうですわね。ジュンコさん。ここで折れるほど、わたくし達の思いは弱くありませんよね!」

 

「……当然よ!」

 

「ならカードに託して戦いましょう! マジックカード、ビーストレイジを発動しますわ! わたくし達のモンスターはゲームから除外されているわたくし達の獣族、及び鳥獣族の数×200ポイントアップしますわ!」

 

「アタシ達が除外してるのはコアラッコ、ラッコアラ、モジャ、コカトリウム、イエロー・バブーン、コアラッコアラ……全部で6体よ!」

 

「1200の全体強化……!?」

 

 ここまで戦いを繰り広げてきたモンスターの魂が、今もなお戦い続けるモンスターの糧となって取り込まれていった。

 

ハーピィ・レディ1 攻撃力1600→2800

超重禽属コカトリウム(ハーピィ・レディ) 攻撃力1600→2800

 

(ダメージは回避したが、モンスターを全て失ったことに変わりはない。ここで高攻撃力のモンスターが2体というのは、素直に厳しい状況だな)

 

「ターンエンドよ! さあ、思う存分かかってきなさい! それでも勝つのは、アタシ達よ!」

 

ハーピィ・レディ→超重禽属コカトリウム

 

ももえ&ジュンコ LP1100

 

フィールド 『ハーピィ・レディ1』(攻撃表示) 『超重禽属コカトリウム』(攻撃表示)

 

セット0 『魂吸収』 『D・D・R』 『ヒステリック・ハーピィ』(使用済み)

 

手札0(ももえ)、0(ジュンコ)

 

「行きます! 僕のターン……ドロー!」

 

(レイの手札はマジクリボーを含めて2枚か……。超電磁タートルを頼りにユキに繋げる手もあるが、ユキも手札は0だ。場の状況だけじゃなく、ペロペロケルペロスの存在もある。これ以上の長期戦はジリ貧と言わざるを得ないな)

 

「レイちゃん。ここで勝負をかけよう」

 

「うん! お願い、ユキ!」

 

「一体何をするつもりなのでしょう……?」

 

「墓地のスクレイパーの効果を自身を除外して発動します……! ユキ達の墓地から機械族・地属性のモンスターを5体デッキに戻すことで、レイちゃんはカードを2枚ドローできる!」

 

「そんなカードを残していたのね……! けど、魂吸収で回復させてもらうわよ!」

 

(私もユキの戦線維持戦術を封じたことで息切れしたと思っていたわ。それだけに頼らず、崩れた戦線を立て直す術を築き上げていたのね……)

 

「僕はブラスターキャノン・コア、ハーヴェスター、ヴァルカノン、ブルータルドーザー、神機王ウルをデッキ・融合デッキに戻して……。カードを2枚……ドロー!」

 

 こちらも戦いを繰り広げたモンスターが起き上がると、主のために残る力を全て振り絞った。それらの力を糧とし、2枚のカードが引き抜かれる。

 

ももえ&ジュンコ LP1100→1600

 

(あの時みたいに魂吸収を破壊するカードは無い。ユキの言う通り、ここで勝負をかけるんだ!)

 

「マジックカード、救魔の標! このカードは1ターンに1枚だけ発動出来る。その効果で墓地の魔法使い族効果モンスター1体を手札に戻すよ。マジシャンズ・ソウルズを手札に! そしてデッキからレベル6以上の魔法使い族……マジシャン・オブ・カオスを墓地に送って効果発動!」

 

「またそのモンスターを特殊召喚するつもりね……!」

 

「……いや! 僕はもう一つの効果を選択するよ! このカードを墓地に送って、墓地からブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚だ!」

 

 疲弊していたブラック・マジシャン・ガールだったが、自分を呼ぶ声が届くと、満面の笑みを浮かべてフィールドに舞い戻った。

 

「ブラック・マジシャン・ガールは墓地のブラック・マジシャン、マジシャン・オブ・ブラックカオスの数×300ポイント攻撃力をアップする! マジシャン・オブ・カオスはフィールド・墓地ではブラック・マジシャンとして扱われるよ。だから攻撃力は600アップだ!」

 

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2000→2600

 

「それでもアタシ達のモンスターには一歩及ばないわ!」

 

「だからこそ……! マジックカード、魔法石の採掘を発動します! 手札を2枚捨てることで、僕達の墓地からマジックカードを1枚手札に戻すよ!」

 

「マジックカードを……!?」

 

「この状況で使えるカードは……。……渾身の一撃ね! でもこっちには2体いるのよ。アタシ達の有利は変わらないわ!」

 

(ユキ)

 

(うん)

 

 全ての策と手札を費やして魔法石の採掘を発動させたレイはユキに力強い眼差しを向けた。そしてユキも力強く頷くと、レイは手を伸ばした。

 

「僕が加えるのはこのカードです! そして……発動だっ!」

 

「……! その、カードは……!」

 

 フィールドに出現したのは三列のスロットのリールだった。一番左のリールが止まり、ブラック・マジシャン・ガールの絵柄が表示される。

 

「モンスター・スロット……ですって!?」

 

「先程と違い、デッキの上のカードは不明ですのに……! それに! そのカードを使うには同じレベルのモンスターを墓地から除外する必要があるはずですわ!」

 

「僕が墓地に送ったカードにブラック・マジシャン・ガールと同じレベル6のモンスターはいないけど……」

 

「機械王のレベルは6。ユキ達はこのカードを除外します……!」

 

「……!」

 

 真ん中のリールが止まり、機械王の絵柄が表示される。

 

「けど、それはつまりレイのデッキにはレベル6が多くは入ってないってことよ!」

 

「確かに……数は多くありません。でも今ここが勝負の瞬間だと思ったからこそ、可能性に賭けたんです!」

 

(このドローに、全てを懸ける!)

 

「…………ドローッ!」

 

 響く心臓の鼓動が様々な感情を巡らすと、その全てが1枚のカードに託された。そしてスロットの最後のリールが止まる。

 

「僕が引いたのは……ミュータント・ハイブレイン!」

 

 モンスターの絵柄が表示されると、鳴り響いたのはファンファーレだった。

 

「レベル6……!?」

 

 絵柄が飛び出し、身長3メートルを超える突然変異体が出現した。

 

ミュータント・ハイブレイン 攻撃力0

 

ももえ&ジュンコ LP1600→2100

 

「……ですが! その引き当てたモンスターで場を覆せなければ意味はありませんわ!」

 

「やってみせる! ミュータント・ハイブレインでハーピィ・レディ1に攻撃!」

 

「攻撃力0のモンスターで攻撃するっていうの!?」

 

「ミュータント・ハイブレインは相手フィールドにモンスターが2体以上いる場合、攻撃宣言時に効果を発動できるんだ! その効果で相手の攻撃表示モンスター1体のコントロールをバトルフェイズが終わるまで得て、さらにその奪ったモンスターと相手モンスターでバトルを行わせる!」

 

「ここで……コントロールを奪う効果ですって……!?」

 

「効果発動だ! テレキネシス・ハンド・フォース!」

 

 変異体が手をかざすと、念力により鳥人の心を意のままに操り、金属の鳥へと攻撃を行わせた。鳥もとっさに迎撃を行うと、両者とも地面へと叩きつけられた。

 

ももえ&ジュンコ LP2100→2600

 

「相打ち……!?」

 

「……! こ、これでは……ペロペロケルペロスの効果が使えませんわ……!」

 

(……信じてたよ。レイちゃんなら、ここ一番でコントロール奪取戦術を決めてくれるって)

 

 はさみ撃ちで破壊する相手モンスターをユキは迷っていた。決断の決め手になったのは、親友への信頼だった。

 

「ブラック・マジシャン・ガールでダイレクトアタック! 黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)!」

 

 ブラック・マジシャン・ガールがステッキを両手で持ち、天に掲げる。するとステッキの先に紫色の魔導弾が生成され、放たれた。魔導弾は同士討ちにより空いた場をそのまま通過していき、ジュンコへと命中した。

 

「うううっ……!」

 

ももえ&ジュンコ LP2600→0

 

 この一撃により、決着がついた。悔しそうに涙ぐむジュンコの肩に、ももえがそっと手を乗せる。

 

「……お見事でしたわ。二人とも」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます。ももえさんもジュンコさんも……強かったです」

 

「ううっ……! アタシ達は負けたのよ……」

 

「お互いに全力を出して戦えば、勝つ人と負ける人が出る……。けどそれは……負けた人が抱いていた信念が否定されたわけではない、です」

 

「……!」

 

 ジュンコのもう一方の肩にも手が乗せられた。思わずジュンコが顔を上げると、そこには明日香がいた。

 

「私が見ない間に強くなったのね。……いや……。私が見ようとしなかっただけ、かしら」

 

 デュエルアカデミアでは女子は全員オベリスクブルーに所属することになる。またオベリスクブルーはエリートコースであり、ももえとジュンコはそのことに安心していた節があった。セブンスターズの一件があってから強くなるために特訓相手を探していた明日香はそういった事情もあって彼女達に見向きもしていなかった、と感じていた。

 

「……アタシ。この前、明日香様に特訓なんてしなくても強いって……言いました。けど……」

 

「明日香様に振り向いてもらうために特訓を始めて……気付いたんです。わたくし達が現状に満足している間も、みんな強くなっていることを。わたくし達は置いていかれたまま立ち止まっていた……だから、明日香様の目に映らなかったのだと、ようやく……分かったんです」

 

「それに気付いた途端……凄く、怖くなって……。見て見ぬふりしてた分析も勉強してっ……それなのに、勝てなくて……」

 

「……そうね。けれど、負けは終わりではないわ。これからは一緒に特訓して、勝利への糧にしましょう」

 

「……!? え……」

 

「よろしいのですか? その……勝利したら、という話でしたが」

 

「負けたらダメ、なんて言ってないでしょう?」

 

「「明日香様ーっ!」」

 

「きゃあっ! ……もう、二人とも」

 

 二人に一斉に抱きつかれ、明日香は困ったように笑ったのだった。

 

「ジュンコ、ももえ。私のデュエルも……見てくれないかしら」

 

 そうしたまま少し時間が経った頃、二人が落ち着いてきたところに明日香は話しかけた。

 

「はい! 見せてください!」

 

「わたくしも見たいです! お相手はどなたでしょうか?」

 

「……ユキ! 前にしたリベンジの約束……果たさせてもらうわよ」

 

「喜んで。ただ、再戦は受けても……リベンジは阻止させてもらいます」

 

「あ、あれ? 特訓はユキちゃん達とされていたのでは……?」

 

「……? 違うわ。特訓は三沢くんにお願いしていたのよ」

 

「ああ。試験が終わった後に相談を受けてね」

 

「ええっ! そ、そうだったんですか!?」

 

「……それは意外でしたわね……。オベリスクブルーに誇りを持っている明日香様が、イエローの三沢さんに相談しているとは……思いもよりませんでした」

 

(……そっか。だから僕達に挑んできたんだね)

 

「確かに、そう思われても仕方ないかもしれないわね。けど、私が何よりも誇りにしたかったのは……」

 

 明日香はユキがレイのデッキに紛れ込んだカードを返してもらい、シングルデュエル用にデッキを組み直したことを確認すると、青いグローブをはめて彼女と向き合い、デュエルディスクを構えた。

 

「デュエリストとしてのプライドよ」

 

「……!」

 

 その眼光はいつにも増して鋭く、射るような視線で貫かれたユキは焦りを生まないよう一度深呼吸を挟んでからデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

 

 こうして一つの幕が下り、そしてまた新たな戦いの幕が上がったのだった。




初のタッグデュエル回。シングルに比べて使える枚数の多さから、思った以上に複雑で手間取りましたが、満足のいく仕上がりになりました。
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