佇む少女は機械仕掛け   作:ロボッピ

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その立脚は前を向くために

「あ……ユキ」

 

「おお! よく来たな!」

 

 明日香達とのデュエルから一夜明け、ユキとレイはレッド寮にある十代達の部屋を訪ねていた。

 

「……あれ。隼人さんは?」

 

「あ……そっか。ユキは知らないんだっけ」

 

「……?」

 

 部屋を見渡してもいない隼人にお出かけ中かと考えたユキだったが、レイの言葉を聞いて首を傾げた。

 

「隼人さんはね。ペガサスさんにスカウトされてI2(インダストリアル・イリュージョン)社にカードデザイナーとして入ったんだよ!」

 

「ええっ!? 凄い……! いつの間に……」

 

「この前精霊界に行っただろ? その次の日に隼人はクロノス先生とデュエルして、推薦を認められたんだ! くうー……あれは燃えるデュエルだったなあ……!」

 

「隼人さんがね。僕とユキからは、道を切り開くのに早いも遅いもないことを教わったって」

 

「そうだったんだ……。あまりお話は出来なかったけど……デュエルを見て、そう思ってくれたのが嬉しいな」

 

「ああ! 今も夢に向かって気張ってると思うぜ! ああー! 思い出したら俺もデュエルしたくなってきたー!」

 

「グッドタイミング。ユキから十代さんにデュエルのお誘い?」

 

「本当か! 早速やろうぜ! ……っと、ちょっと待った。そういえばこの前まで寝込んでたけど大丈夫なのか?」

 

「もう、ばっちり。昨日も連戦でデュエルしていた?」

 

「そっかー、良かった! 一日安静にしてれば大丈夫だってカイバーマンが言ってたのに、ユキは結局一週間ぐらい寝込んでたからさ。心配してたんだぜ」

 

「僕もだよ! 起きた時、元気そうで本当に安心したんだから!」

 

「……何? そんなに寝込んでいたのか……」

 

「お、万丈目」

 

「万丈目さん、だ!」

 

 なにやら騒がしい部屋に文句の一つでも言ってやろうとやってきた同じくレッド寮の万丈目だったが、聞き及んでいなかった事態に眉をひそませた。

 

(万丈目さん、凄い沢山の精霊がいる……)

 

「俺も十代と同じ内容を聞いたからこそ、貴様を女子寮まで運んで、ちょうどどこからか帰ってきたジュンコとももえにお前らを預けて部屋まで運んでもらったんだがな」

 

「え……万丈目さんが運んでくれたの?」

 

「十代と分担してな。貴様は放っておくとどうなるか分からんからな……」

 

「……ありがとうございます」

 

「ふん……」

 

「あ! 分かったのよん! 万丈目のアニキ、末っ子だから妹がで——」

 

「ええい、黙れ!」

 

 沢山いる精霊の中からおジャマ・イエローが飛び出してくると、万丈目は余計なことを言わせまいと振り払った。

 

「ふふっ……そうなんだ」

 

「違ーう!」

 

(……えっ。ってことは僕を運んでくれたのは……)

 

 暴走した精霊との戦いで疲弊していたはずの万丈目の優しさに思わずビックリしていたレイだったが、気がついたさらなる事実に顔が一気に赤くなっていった。

 

「それより! 本当に体調は大丈夫なんだろうな。どこかおかしな所があれば言え」

 

「ううん、特に異常は……あ。そういえば、一つだけ……」

 

「なんだ!?」

 

「その……デュエルに勝ってドーハスーラさんに取り憑いていた人を切り離した時、身体に力が……漲ってきた感覚があったんです」

 

「……なに? 意味がわからんぞ」

 

「ユキもちょっと説明できない……。でも気を失う前に、そんな感覚がありました」

 

「ユキのとこはさらに大変だったって聞いてるぜ。きっとそんな相手に勝てて、安心したんじゃないか?」

 

「……そう、かも」

 

「なんだ……。まあ、無事ならいい」

 

「だな! 心配事も晴れたところでさっそくデュエルしようぜ!」

 

「うん……!」

 

 話が一段落つくと、二人は部屋では狭いからと表に出て行った。

 

「……レイ、翔。何をぼーっとしている?」

 

「へっ!? あはは……な、なんでもないよ!」

 

「……あれ。ユキは……?」

 

「十代とデュエルしにいったぞ。まったく、余計な心配を……」

 

「アニキと……」

 

 ユキがやってきてからずっと考え込んでいた翔はようやく二人がデュエルをすることに気付いた。万丈目とレイが部屋から出ていくと、また少し考えていた翔は顔を上げ、一歩を踏み出すのだった。

 

「「デュエル!」」

 

「ユキのターン、ドロー。お呼びとあらば即参上? 無頼特急バトレインを召喚」

 

 ユキの場にレールが敷かれると、そこを通って赤色の特急列車が場へと到着する。

 

無頼特急バトレイン 攻撃力1800

 

「効果発動。トレイン・レイン! このターンバトルフェイズを行えなくなる代わりに、十代さんに500ダメージを与える」

 

「いきなりか!?」

 

 燃料庫が開かれると燃料が噴射され、炎の雨が十代に降り注いだ。

 

十代 LP4000→3500

 

「先制パンチをもらっちまったか……!」

 

「仕掛けは上々。そのまま仕上げもご覧あれ? カード2枚伏せてターンエンド」

 

(ん……こいつ、いつもはアニキアニキと心配そうにするのに。十代ではなくユキのことを……見ている?)

 

 開幕からダメージを負った十代を心配するかと思いきや、翔は静かにユキのことを見つめており、万丈目は不思議そうにしていた。

 

ユキ LP4000

 

フィールド 『無頼特急バトレイン』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札3

 

「良いよユキー! 十代様も頑張ってー!」

 

「おう! 俺のターン、ドロー! 来い、フェザーマン!」

 

 大きな翼を生やした筋骨隆々なヒーローが空より参上した。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン 攻撃力1000

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

「……!」

 

十代 LP3500

 

フィールド 『E・HERO フェザーマン』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札3

 

「ユキのターン。ドロー!」

 

(明らかに攻撃を誘ってる。……けど、ここは)

 

「サイファー・スカウターを召喚!」

 

 赤外線センサーが取り付けられたマスクを被った冷徹なる機械兵士が場に降り立った。

 

サイファー・スカウター 攻撃力1350

 

「追撃のモンスターを出したか。強気だな」

 

 新たに場にモンスターを呼び出したユキは予め伏せていたトラップカード、アヌビスの呪いに視線を落とす。

 

(もし十代さんの伏せカードがユキの攻撃表示モンスターを全滅させるミラーフォースのようなカードでも、効果モンスターを全員守備表示にできるこのカードがあれば躱せる……)

 

「……バトル! サイファー・スカウターでフェザーマンに攻撃! このモンスターさんは戦士族とバトルを行うダメージ計算時のみ、攻守を2000上昇させる!」

 

「2000もか!?」

 

 罠を警戒しつつもユキは攻撃指示を送る。するとフェザーマンの位置を特定したサイファー・スカウターの肩に置かれた二つのランプのうち、上のランプが赤く光った。急所を見抜いたサイファー・スカウターは銃を構え、的確に標準を合わせる。

 

「けど、そうはさせないぜ! 通常モンスターのフェザーマンに攻撃が行われたこの瞬間! トラップカード、ジャスティブレイクを発動だ! 攻撃表示で存在する通常モンスター以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する!」

 

「なっ……!」

 

(まずい! これじゃあ守備にしても凌げない……なら!)

 

「カウンタートラップ、トラップ・ジャマー! バトルフェイズ中に相手が発動したトラップの発動を無効にして破壊する!」

 

「させないぜ! こっちもカウンタートラップだ! フェザー・ウィンド! フェザーマンがいるときに発動されたマジックかトラップの発動を無効にして破壊!」

 

「……! しまった……!」

 

 フェザーマンが天空に向けて手を掲げると雷が落ちてくる。感電を阻止しようと機械兵士と特急列車に絶縁体の膜が張られるが、羽ばたきにより放たれたフェザーマンの羽根が膜を切り裂いていくと、正義の鉄槌が下された。

 

(やられた……)

 

「へへっ。こっちの仕掛けも中々だろ?」

 

「……中々どころか上々、あるいはそれ以上です。カードを1枚伏せてターンエンド! 墓地のバトレインの効果で機械族・地属性・レベル10の除雪機関車ハッスル・ラッセルをデッキから手札に加えます」

 

(うう〜! さすが十代様! でもユキもダイレクトアタックされた時に自分の魔法&罠ゾーンのカードを全て破壊する代わりに特殊召喚できる大型モンスターを手札に加えた! 勝負はまだまだこれからだね……!)

 

ユキ LP4000

 

フィールド 無し

 

セット2

 

手札3

 

「今度はこっちから行くぜ! 俺のターン……ドロー! 来てくれ、ワイルドマン!」

 

 長い髪を束ねて纏め、背中に大剣を背負った大男が高所から素足で着地した。

 

E・HERO ワイルドマン 攻撃力1500

 

「ワイルドマンはトラップの効果を受け付けないぜ!」

 

「なるほど……そのモンスターでダイレクトアタックを」

 

「その前にこのマジックカードだ! R—ライトジャスティス! 俺のエレメンタルヒーローの数だけ、マジック・トラップを破壊する!」

 

「……! まずい……」

 

(アヌビスの呪いは守備にした後、そのターンでの表示形式変更を封じられるけど、どちらのモンスターにも効かない……!)

 

 羽ばたきと振られた大剣から放たれた一陣の風がユキの場に伏せられていたカードを全て吹き飛ばしてしまった。

 

(よし! これで一気に……!)

 

「……破壊された荒野の大竜巻の効果発動! セットされたこのトラップカードが破壊されて墓地に送られた場合、フィールドの表側表示のカードを1枚破壊する。フェザーマンを破壊!」

 

「なんだって!?」

 

 伏せカードが無くなり安心していた十代が驚く中、突風は竜巻となり、フェザーマンを巻き込んでしまった。

 

「そう来たかあ……!」

 

(魔法&罠ゾーンにカードがないとハッスル・ラッセルは呼び出せない。ダイレクトアタックは甘んじて受け入れるしかない……)

 

「戦士族専用装備魔法、最強の盾をワイルドマンに装備だ! 攻撃表示の時、守備力分攻撃力をアップするぜ! ワイルドマンの守備力は1600!」

 

「……!?」

 

 ワイルドマンが新たに大盾を授かると、大剣と一つとなり攻防一体の最強の武器となった。

 

E・HERO 攻撃力1500→3100

 

「攻撃力3100……!?」

 

「バトル! ワイルドマンでユキにダイレクトアタックだ! ワイルド・スラッシュ!」

 

 その武器の性能を余すことなく活かした剣さばきがユキを襲った。

 

「きゃあっ……!」

 

ユキ LP4000→900

 

「ユキっ!?」

 

「甘んじて受けるには手厳しい攻撃だった……」

 

「容赦はしないぜ! ターンエンドだ!」

 

(トラップの連携でモンスターを全滅させて、マジックで伏せカードを無くした上で、総攻撃力4000を超えるダイレクトアタックを狙ってたんだ……。……奇跡だけじゃない。その意味が分かってきた気がする)

 

十代 LP3500

 

フィールド 『E・HERO ワイルドマン』(攻撃表示)

 

セット0 『最強の盾』

 

手札1

 

「ユキのターン……ドロー!」

 

(奇跡のイメージは一旦置いておこう。全力を出すために、まずは基になる考え方を見直す……!)

 

(……ユキ?)

 

 ドローカードを確認したユキは十代の方を見ると、少しの間固まっていた。時間にして10秒程度、しかしその時のユキの目が翔にはやけに印象的だった。

 

「……無限起動ロックアンカーを召喚!」

 

 崖から伸びるワイヤーロープに重機が吊るされると、作業が始められる。

 

無限起動ロックアンカー 攻撃力1800

 

「召喚に成功したことで手札から機械族・地属性モンスター……ハッスル・ラッセルを守備表示で特殊召喚します!」

 

 作業により足場が安定したことで列車がそこを通っていくと、積もっていた雪が綺麗に吸われていった。

 

除雪機関車ハッスル・ラッセル 守備力3000

 

「ロックアンカーのもう一つの効果を使います……! ハッスル・ラッセルとロックアンカーのレベルをターンが終わるまで合計した値に!」

 

「なんだ!?」

 

無限起動ロックアンカー レベル4→14

除雪機関車ハッスル・ラッセル レベル10→14

 

「そして手札からマジックカード、アドバンスドローを発動? 自分フィールドのレベル8以上のモンスターを1体リリースすることで2枚ドローします。ロックアンカーをリリースして2枚ドロー……!」

 

「おおっ! そのカードを下級モンスターに使うかあ……!」

 

(……このモンスターさんなら。そのためにも今は守って、長期戦に持ち込む……!)

 

「カードを1枚伏せて……ターンエンド!」

 

除雪機関車ハッスル・ラッセル レベル14→10

 

ユキ LP900

 

フィールド 『除雪機関車ハッスル・ラッセル』(守備表示)

 

セット1

 

手札2

 

「ガンガンいくぜ! 俺のターン、ドロー! 頼むぜ、バーストレディ!」

 

 金色の兜を被った黒髪ロングの女性が場に降り立つと、指を弾いて火の玉を出しながらウィンクをして挨拶してきた。

 

E・HERO バーストレディ 攻撃力1200

 

「うっ。バーストレディかあ……」

 

「へへっ。レイとのデュエルを思い出すな。このデュエルでも活躍してもらうぜ! バトルだ! ワイルドマンでハッスル・ラッセルに攻撃!」

 

「ワイルドマンはトラップの効果を受け付けんからな……。十代としては強気に攻めていけるわけか」

 

 その健脚で山を信じられないスピードで駆け上がったワイルドマンは除雪作業をしていた列車をそのまま一太刀で分解してみせる。

 

「よし! 倒した!」

 

「このままバーストレディのダイレクトアタックが決まればユキのライフは0だ……」

 

「そうはさせない? トラップカード、時の機械—タイム・マシーン……! 戦闘で破壊されたモンスターを同じ表示形式でフィールドに呼び戻す!」

 

「うっ。復活させたか……!」

 

 剣を収めたワイルドマンは感じた気配に驚きながら振り返った。すると整備された道に突然出現した大型列車の中から先程破壊したはずの除雪列車が傷一つない姿を見せる。

 

除雪機関車ハッスル・ラッセル 守備力3000

 

「バーストレディじゃ倒せない……! カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

(よし。繋がった……!)

 

十代 LP3500

 

フィールド 『E・HERO ワイルドマン』(攻撃表示) 『E・HERO バーストレディ』(攻撃表示)

 

セット1 『最強の盾』

 

手札0

 

「ユキのターン、ドロー! ……! ふふっ。シュレツダーを召喚!」

 

 書類を裁断する機械が場に現れたかと思うと、ロボットの手足が生え、ガラス部分から放たれた光が目となって動き出した。

 

シュレツダー 攻撃力1600

 

「シュレツダーは手札の機械族モンスター1体を墓地に送ることで、そのモンスターのレベル以下の相手モンスター1体を破壊できる……! ユキは手札からレベル5の無限起動スクレイパーを墓地に送って、レベル4のワイルドマンを狙います……!」

 

「……!」

 

「よし! トラップは効かないけどモンスター効果なら……!」

 

 建設機械を分解したシュレツダーはその全ての部品をワイルドマンに投げつけた。とっさに盾で防ぎ、剣で切り裂くワイルドマンだったが、自身より大きい部品の物量に抗いきれず、飲み込まれていった。

 

「ワイルドマンが……!」

 

「やった! ……ああっ! でも十代様がピンチに!」

 

「何を忙しい反応をしているんだ貴様は……」

 

(厄介なワイルドマンを倒せた! 反撃のチャンス……!)

 

「ハッスル・ラッセルを攻撃表示に!」

 

 除雪作業を終えた列車は次なる目的地に進路を定めた。

 

除雪機関車ハッスル・ラッセル 攻撃力2500

 

「バトル。ハッスル・ラッセルでバーストレディに攻撃!」

 

 列車は進行を開始し、線路上の雪を根こそぎ掻き分けられるほどの巨大な板で逃げ場を塞がれたバーストレディはそのまま弾き飛ばされてしまった。

 

「バーストレディ! うっ……!」

 

十代 LP3500→2200

 

「けどお前のファイトは無駄にしないぜ! ヒーローの魂は次のヒーローに引き継がれる! トラップカード、ヒーロー・シグナル!」

 

「……! このタイミングでトラップを……」

 

「俺のモンスターが戦闘で破壊されたことでデッキからレベル4以下のエレメンタルヒーローが呼び出される! さあ、出番だ! バブルマン!」

 

 バーストレディがとっさに空に向かって放った火の玉が花火のように開くと、それが救援信号となり、泡を発射するポンプを腕に取り付けたマスクマンが駆けつけてきた。

 

E・HERO バブルマン 守備力1200

 

「さらにバブルマンが呼び出された時に俺の手札とフィールドに他のカードが無ければ2枚ドローできる!」

 

「そんな手札の回復方法が……。けれどモンスターは残さない。シュレツダーでバブルマンに攻撃!」

 

 近づいてくるシュレツダーにバブルマンは標準を合わせてバブル・シュートを放った。しかしその泡を頭の裁断部分で全てシャットアウトしてみせたシュレツダーは泡が尽きた隙を見逃さず、裁断の勢いで起こした風をかまいたちのようにしてバブルマンを切り裂いた。

 

「ヒーロー・シグナルもあったのに、まさかこのターンで全滅させられちまうなんてな……!」

 

「こちらも容赦はしない? ターンエンド」

 

ユキ LP900

 

フィールド 『除雪機関車ハッスル・ラッセル』(攻撃表示) 『シュレツダー』(攻撃表示)

 

セット0

 

手札1

 

「望むところだ! 俺のターン……ドロー! ……! へへっ。マジックカード、闇の量産工場を発動! 墓地から2体の通常モンスターを手札に戻すぜ。さらに融合を発動だ! 今戻したフェザーマンとバーストレディを融合!」

 

「ここで融合……!?」

 

「融合召喚! さぁ、真打登場だ! フレイム・ウィングマン!」

 

 風と炎のヒーローの力が一つに束ねられ、赤と緑を基調としたヒーローが参上した。左の背より立派な片翼を、右手より龍の口を模した砲塔を生やしており、堂々たる立ち姿で相手を見据える。

 

E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力2100

 

「バトルだ! フレイム・ウィングマンでシュレツダーに攻撃! フレイム・シュート!」

 

(バブルマンで増えた手札が誤算だったな……。あそこから融合は難しいと思ってたのに)

 

(フレイム・ウィングマン……。そういえば最後はあのモンスターに恋する乙女を攻撃されて、やられちゃったんだよね。でもユキのライフはまだ残る!)

 

「まずいぞ! この攻撃を食らったら……!」

 

「えっ?」

 

 万丈目の迫真の声にレイが思わず素っ頓狂な声を漏らす中、シュレツダーの放った身を切り裂く風を次々と躱しながら迫ったフレイム・ウィングマンが左手の鋭い爪で逆に斬り裂いてみせた。

 

ユキ LP900→400

 

「フレイム・ウィングマンの効果発動! 戦闘で破壊し、墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「……!」

 

 さらにフレイム・ウィングマンは身体を翻すと右手をユキに向けた。そして龍の口の中で溜められていく火のエネルギーを前にしたユキは驚きで目を見開く。

 

「そんな効果があったの……!? シュレツダーの攻撃力は1600……!」

 

「決まりだな……」

 

 すると次の瞬間、爆発が巻き起こった。

 

「えっ!?」

 

「決めさせない……! 相手のユキにダメージを与える効果の発動を手札のジャンクリボーを墓地に送ることで無効にし……破壊する!」

 

「なっ……なんだって!?」

 

 それはジャンクリボーが身を挺して砲塔に詰まり、起こさせた暴発だった。機雷化したジャンクリボーを巻き込んだ爆発は到底耐えられるものではなく、フレイム・ウィングマンは地に伏してしまった。

 

「ジャンクリボー……ありがとう」

 

「クリリ〜!」

 

 ユキが語りかけるとジャンクリボーは彼女と同じように楽しそうに微笑み、ゆっくりとその姿を消していった。

 

「今のを躱すとはな……!」

 

「それどころかフレイム・ウィングマンを倒したよ!」

 

「くっそ〜! 今度こそ決まったと思ったのにな……! モンスターを伏せてターンエンドだ! 来い、ユキ! もっともっとぶつけ合おうぜ!」

 

「……はい!」

 

(胸がドキドキする……。けど、これは亮さんとは少し違う?)

 

十代 LP2200

 

フィールド 裏側守備表示1

 

セット0

 

手札0

 

「ユキのターン! 墓地のスクレイパーの効果を自身を除外して発動します! ユキの墓地から機械族・地属性のモンスターを5体デッキに戻すことで、カードを2枚ドローする?」

 

「うっ。そんな手を用意してたのか! ここでさらに手札を増やされるのはきついぜ……!」

 

(不利な状況なのに、楽しそう……)

 

「墓地からバトレイン、サイファー・スカウター、ロックアンカー、シュレツダー、ジャンクリボーをデッキに戻して2枚ドロー……! ……永続魔法、遮攻カーテン! ユキの場のカードが破壊される場合、その1枚の代わりにこのカードを破壊できる!」

 

 ユキのフィールドが半透明のカーテンで囲われていった。

 

「出た! ユキの戦線維持戦術だ!」

 

「身代わり効果か……。あのカードが機能している限り、一発逆転は狙いにくくなるな」

 

「さらにマジックカード、ダウンビート! ハッスル・ラッセルをリリースして種族・属性が同じでレベルが1つ低いマシンナーズ・メタルクランチをデッキから特殊召喚する……!」

 

 除雪列車が消え去りオレンジ色の戦車がやってきたかと思うと、パーツが展開されて手足が伸ばされていき、人型のロボットが颯爽と現れていた。

 

マシンナーズ・メタルクランチ 攻撃力2800

 

「さらにメタルクランチを呼び出したことで効果発動。デッキから機械族・地属性モンスター3体を見せて、その中から十代さんがランダムに選んだ1体を手札に加える!」

 

「お! 俺が選ぶのか。こういうのってワクワクするよな!」

 

「確かにカードパックを開ける時みたい? ユキが選んだのはサイファー・スカウター、穿孔重機ドリルジャンボ、弾丸特急バレット・ライナー!」

 

「……真ん中だ!」

 

「了解した? 残りのカードはデッキに戻して……穿孔重機ドリルジャンボを召喚!」

 

「選ばれたのはそいつか!」

 

 ゴムクローラーを回転させて現場に辿り着いたのは削岩作業用の重機。太い二本のアームからは動かすために必要な油圧シリンダーをのぞかせている。

 

穿孔重機ドリルジャンボ 攻撃力1800

 

「エンジンの始動を確認? バトル! ドリルジャンボでセットモンスターに攻撃! ドリルジャンボの攻撃力がその守備力を超えていれば、超過分の戦闘ダメージを十代さんに与える!」

 

「げっ! 貫通効果か!?」

 

 エンジンにより歯車が回転していき、油圧による動力が伝達されると、アームが力強く振り下ろされた。

 

「クリッ!?」

 

ハネクリボー 守備力200

 

「うおっ!?」

 

十代 LP2200→600

 

 その一撃は凄まじく、羽の生えたクリボーが倒された衝撃が地割れとなってそのまま十代にも襲いかかった。

 

「倒した! メタルクランチのダイレクトアタックでユキの勝ち!?」

 

「……いや……」

 

「これは……?」

 

 ハネクリボーの残滓が光のヴェールとなって十代を覆っていく。

 

「ハネクリボーが破壊されたことで、このターン今から俺が受ける戦闘ダメージは0になる!」

 

「……! ……むぅ。防がれた……」

 

「助かったぜ、相棒」

 

「クリクリ〜」

 

 ピンチを迎えても相棒の力を信じていた十代とその信頼に応えてみせたハネクリボー。両者が嬉しそうに笑い合うと、ハネクリボーは完全に十代を守るヴェールへと姿を変えた。

 

「攻撃を行ったドリルジャンボはエンジンを冷ますため、守備表示になる?」

 

 一通り作業を終えた重機はアームを下ろし、エンジンを止めて休憩の時間に入った。

 

穿孔重機ドリルジャンボ 守備力100

 

(出来ることなら決めたかったけど、想定はしていた。だからこその布陣……。決め切れないなら、守り切るのも一つの手。十代さんの一手とユキの一手。どちらが上手(うわて)か……勝負!)

 

「カードを1枚伏せてターンエンド……!」

 

ユキ LP400

 

フィールド 『マシンナーズ・メタルクランチ』(攻撃表示) 『穿孔重機ドリルジャンボ』(守備表示)

 

セット1 『遮攻カーテン』

 

手札0

 

「十代様、手札だけじゃなくフィールドのカードも無くなっちゃった。ちょっと厳しいかな……?」

 

「しかしユキのライフも400しかないからな。引き次第では逆転もあり得るだろう」

 

「行くぜ! 俺のターン……ドロー!」

 

 追い込まれた十代はその逆境にも諦めることは考えず、可能性に手を伸ばして引き抜いた。

 

「マジックカード、戦士の生還! 墓地から戦士族モンスターを1体手札に戻すぜ」

 

「ハネクリボー以外は戦士族……。一体誰を?」

 

「俺が戻すのはバブルマンだ! さらに手札がこのカード1枚の時、バブルマンは特殊召喚できる!」

 

「……! そっか。この状況だからこそ……」

 

 招集に応えて再び水色を基調としたヒーローが場に見参した。

 

E・HERO バブルマン 攻撃力800

 

(ここでバブルマンを呼び戻すか……やるな。しかし守備で出してもドリルジャンボの貫通効果を受ければライフは0になるからな。十代は背水の陣で挑むしかあるまい)

 

「手札・フィールドに他のカードがないからバブルマンの効果で俺はさらに2枚のカードを…………ドローッ!」

 

 バブルマンがノズルの水圧を入れ替えて水流を放つと、十代の背に降り注いだ。滝行のごとくそれに耐えながら、十代はさらに2つの可能性を手にする。

 

(どうくるかな……)

 

「……いくぜ、ユキ!」

 

「……!」

 

(やっぱり十代さんは……攻めを選んできた! 後は……!)

 

「速攻魔法、バブルイリュージョン! こいつはバブルマンがいる時に発動できるぜ。このターン俺は1枚だけ、手札からトラップカードを発動できる!」

 

「なっ……! 手札からトラップを!?」

 

「早速使わせてもらうぜ! マジスタリー・アルケミスト! フィールド・墓地から4体のHEROを除外することで、墓地から1体のHEROを召喚条件を無視して特殊召喚する!」

 

(召喚条件を……ということは、融合召喚でしか呼び出せないモンスターも……!)

 

「フィールドのバブルマン。墓地のフェザーマン、ワイルドマン、バーストレディを除外!」

 

 除外されたカードがポケットにしまわれ、一度やられてしまったヒーローが復活を果たす。

 

「頼んだぜ。マイフェイバリットヒーロー!」

 

 翼と龍を備えしヒーローが地面を突き破り、山の頂点へと腕を組んで着地した。

 

E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力2100

 

「あの状況からフレイム・ウィングマンを!? 十代様、凄い……」

 

「だがフレイム・ウィングマンでは……」

 

「いけるさ! 仲間の力を借りれば! マジスタリー・アルケミストは『地』『水』『炎』『風』の全ての属性を除外して発動したら、さらなる力を発揮できる! ワイルドマンは地属性!」

 

「バブルマンは水属性……!」

 

「バーストレディは炎属性だ!」

 

「フェザーマンは風属性だったな……!」

 

 黄土色、水色、赤色、白色の光の球体がフレイム・ウィングマンに集い、身体に吸収されていく。するとオーラが彼を包み込むと同時に、彼を中心として波動が放たれた。

 

「仲間の力を得たフレイム・ウィングマンの攻撃力は倍になり、ユキのフィールドの表側表示のカードの効果は全て無効になる!」

 

「……!? そんな……!」

 

 その膨大なるオーラがフレイム・ウィングマンの力の糧となると共に、波動に触れた者の心を浄化していった。

 

E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力2100→4200

 

(まさか、ここまでのことをしてくるなんて……。……戦闘ダメージは防げる。けれど……)

 

 ユキは伏せカードに手を伸ばそうとしたが、フレイム・ウィングマンと光を遮れなくなったカーテンを見ると、その手を止めた。

 

「バトルだ! フレイム・ウィングマンでメタルクランチに攻撃! マジスタリー・シュート!」

 

 山の頂点から飛び降りたフレイム・ウィングマンは滑空しながら右手をメタルクランチに向け、砲塔から虹色の光線を放った。見る者を虜にするような美しい一撃が、ロボットを包み込む。

 

ユキ LP400→0

 

 ユキは予想を上回られて放たれた一撃から目を逸らさず、その余波を受け入れたのだった。

 

「やられました。あなたは……奇跡も起こせるデュエリストでした」

 

「ん? どういうことだ?」

 

「とてもワクワクするデュエルだった……ということです」

 

「俺もだ! ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

 

 十代は中指と人差し指を自分の額に向けると、掛け声と共にユキに指先を力強く突き出した。指で隠れていた満面の笑みに、ユキも思わず笑みをこぼす。

 

「ユキ……。ちょっといいっすか?」

 

「……! はい。なんですか?」

 

「良ければその伏せていたカード……教えて欲しいっす」

 

「問題ない? 伏せていたのはトラップカード、挑発……。相手メインフェイズに指定した自分のモンスターがいる限り、そのターン相手は攻撃するならそのモンスターに攻撃しなきゃいけません」

 

「そんなカードを伏せてたんすか……!?」

 

「昨日と同じ手ではやられないように……。他の手でも大丈夫なように。その、つもりだったけど……まだまだだったみたいです」

 

(ジャンクリボーでフレイム・ウィングマンを破壊した時点で……ユキはかなり有利だったはずっす。なのに攻めと両立させて、守備表示のドリルジャンボを用意しておくことで次のターンの防御まで見据えていた……?)

 

「次はやらせない? もっともっと練り上げて、一度きりの奇跡にしてみせます」

 

「おう! 楽しみにしてるぜ!」

 

(ふふっ。面白い人……。亮さんが面白い奴って言ってたのは、こういうことだったんだ)

 

「お疲れ、ユキ! 十代様も素敵でした! あ、僕ともデュエルして! 僕だってあの時より強くなってるんだから!」

 

「へへっ、知ってるぜ。試験の時に見てたからな。俺もまたやりたいと思ってたんだ!」

 

「「デュエル!」」

 

(……なんだ。翔のやつ、見ないのか)

 

 続けてレイと十代のデュエルが始められると、翔は部屋へと戻っていった。扉を閉め、ベッドへと倒れ込むように身体が預けられる。

 

(お兄さんは、僕よりユキにリスペクトデュエルを継いで欲しいのかな。僕にはお兄さんの真意が……見えないよ)

 

 昨日の電話で言われたことを反芻し、再び翔は考え込んだ。しばらくして翔は身体を起こす。

 

(お兄さんはそれ以上何も言ってくれなかった。けどユキのデュエルを見てみたら、確かに僕に足りないものを持っている気がした。それがなんなのか、ハッキリ知るためには……見ているだけじゃ、ダメなんだ!)

 

 立ち上がった翔は勢いよく扉を開くと、さらなる一歩を踏み出した。

 

「恋する乙女でバーストレディに攻撃! 一途な想い! 光子化(フォトナイズ)の効果でエッジマンの攻撃力分上がってるから、攻撃力は3000。これで終わりだ!」

 

「それはどうかな?」

 

「えっ?」

 

「トラップカード、異次元トンネル—ミラーゲート—! 攻撃対象になったエレメンタルヒーローと攻撃モンスターのコントロールを入れ替えてダメージ計算を行うぜ!」

 

「レイちゃんのお株ごと奪うコントロール奪取戦術……!?」

 

 金色の鎧を纏ったエッジマンを誘惑して肩と力を貸してもらった乙女がバーストレディに切れ味の鋭い斬撃を放ってもらったが、斬り裂かれたのはバーストレディを映した鏡だった。鏡の破片は因果応報となって乙女に襲いかかる。

 

レイ LP1400→0

 

 ちょうどレイと十代のデュエルの決着がついた。十代のガッチャに対し、レイも同様に返し、二人とも楽しそうに笑っていた。

 

「なんだ翔。今更デュエルを見に来たのか?」

 

「そうじゃないっす。ユキ……僕とデュエルしてくれないっすか?」

 

「……! 喜んで」

 

(……本当だ。昨日、亮さんが言った通り……)

 

 その申し出を聞いて、ユキは昨日帰り際に亮に言われたことを思い出していた。

 

「明日、十代のところに行くのであれば……。もし翔からデュエルを申し込まれたら、受けてやってくれないか」

 

「……? ええと……機械族の使い手だって聞いているので、十代さんとのデュエルが終わったら元々お願いしようと思ってて」

 

「いや……悪いが、ユキの方からは頼まないでくれないか」

 

「え……。……何か理由が、あるんですね」

 

「ああ」

 

「分かりました。亮さんの言う通りにします」

 

「……助かる」

 

 そして今、翔にデュエルを申し込まれたユキはそれを快諾していた。

 

(……そうだ。翔。相手を知るためには……まず自分自身を見つめ直すんだ。そうして初めて、相手のことが理解できるようになる)

 

「「デュエル!」」

 

 その様子を近くの林から亮が見つめる中、戦いの火蓋が切られたのだった。

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