佇む少女は機械仕掛け   作:ロボッピ

18 / 19
光景を捉えて

「「デュエル!」」

 

「ユキのターン! 永続魔法、補給部隊。1ターンに1度、ユキの場のモンスターが破壊されたらカードをドローします」

 

「今回はいきなり来たね!」

 

 ユキの場にエネルギーの補給を目的とした基地が建設された。

 

「十代とのデュエルでも似たような戦術を使っていたな。なるほど……あれがユキの得意戦術というわけか」

 

「その通り? さらにモンスターをセットしてターンを終了します」

 

(……セットか。リバース効果を持っているか、情報を非公開にすることがユキにとって有利に働く、といったところか。翔……お前はどう見て、どう動く?)

 

 木陰から亮が静かな立ち上がりになったデュエルを見守る中、ターンが翔へと回る。

 

ユキ LP4000

 

フィールド 裏側守備表示1

 

セット0 『補給部隊』

 

手札4

 

「僕のターン! スチームロイドを召喚するっす!」

 

 蒸気機関車がやってくるとそのヘッドライトの下には眠そうな半開きの眼があり、帯びた丸みがデフォルメされた可愛らしさを醸し出していた。

 

スチームロイド 攻撃力1800

 

(ううん……。ちょっとオモチャっぽい見た目。せめて内部の機械構造が剥き出しになってたら……)

 

 ユキにとっては亮以来となる久しぶりの機械族の使い手だけに、上がりすぎていたハードルは残念ながら超えられなかった。

 

「バトルっす! スチームロイドでセットモンスターに攻撃! スチームロイドは攻撃を受けた場合のダメージステップに攻撃力が500下がる代わりに、攻撃する場合は500上がるっす!」

 

 燃料を燃やして蒸気とやる気を出したスチームロイドは車輪のついた手を地面につけると、4つの車輪がついた足と合わせてスピードを出し、突撃していった。

 

きつね火 守備力200

 

スチームロイド 攻撃力1800→2300

 

「そんなに頑張らなくてもオイラは倒せるって!?」

 

 伏せられていた尻尾に火を灯している狐が姿を現すと、その突撃をモロに受けて星となった。

 

スチームロイド 攻撃力2300→1800

 

「きつね火の尊い犠牲は無駄にはしない? 補給部隊の効果でドロー!」

 

「よ、よし! カードを1枚伏せてターンエンドっす! どうっすかユキ!」

 

「今の攻撃がどうだったということなら……ユキにとっては有り難かった?」

 

「なんすと!?」

 

「きつね火は戦闘破壊されたターンのエンドフェイズに復活する不死身のモンスターさん? もう戻って良いよ」

 

「はいよっと!」

 

 吹き飛ばされたのは陽炎による光の屈折で生み出していた幻影だった。本物はちゃっかり攻撃を回避してユキの後ろへと避難しており、安全を確認するとユキの肩をジャンプ台にして戻ってくる。

 

きつね火 守備力200

 

(こ、これじゃあ、ただドローさせただけっす……)

 

(モンスターを残さないためにリスクがあっても攻撃に踏み切るのはおかしくはない。が……俺の目には攻撃可能だから攻撃したように映った。視野を広げるんだ翔。目先のことに囚われては、お前のデュエルは生きないぞ)

 

翔 LP4000

 

フィールド 『スチームロイド』(攻撃表示)

 

セット1

 

手札4

 

「ユキのターン! …………」

 

(……! あの目は……)

 

 翔はこちらを見つめるユキの目に既視感を覚えていた。

 

「……機巧蛙(きこうわ)磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を召喚!」

 

 フィールドに御神体として祀られている大きな岩が出現すると、ヒキガエルの形をしたロボットがその上に座っていた。曲げられた足の膝からは鉄骨を覗かせ、接合部が擦れる金属音を響かせながら手を顎に持ってきて何やら思案している。

 

機巧蛙— 磐盾多邇具久 攻撃力1450

 

「召喚に成功したことで効果発動。デッキから攻撃力と守備力が同じ機械族……深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを選んで、デッキの一番上に置きます」

 

 妙案を思いついたロボットは拳を手のひらに置くと、その後お腹にあるボタンを押して遠くにいる仲間と連絡を取り合った。

 

(次のターンの備えをしてきたっすか……。抜け目がないっすね)

 

「バトル! イワタテノタニグクでスチームロイドに攻撃!」

 

「スチームロイドは攻撃力が500下がるから……逆転されちまうのか!」

 

「……その弱点を突いてくるのはお見通しっす! トラップカード、あまのじゃくの呪い! このターンのエンドフェイズまで攻守のアップダウンは逆になるっす!」

 

「……! なるほど……そんなコンボが」

 

 岩から飛び降りたロボットが舌を伸ばしてパンチを放つと、慌てて手を上げていたスチームロイドはモロに食らいそうになる。しかし時空が歪みいつのまにか上げていた手が地面につくと、その上をパンチが通過していった。攻撃による隙が生まれたロボットに全速力を乗せた突進が炸裂する。

 

スチームロイド 攻撃力1800→2300

 

ユキ LP4000→3150

 

(ふぅ。なんだ……ちょっと嫌な予感がしてたっすが、なんてことなかったっす)

 

(……安心するな、翔。ユキが反撃を予想していたのであれば、デッキトップ操作の意味合いは変わってくる……!)

 

「補給部隊の効果でドロー! さらにメインフェイズ2に入り、融合を発動します!」

 

「なっ……! このタイミングで融合っすか!?」

 

「今ドローしたナイト・エクスプレス・ナイトとフィールドのきつね火を融合……! 銀河を駆ける騎士よ、灯火を照らす(あやかし)よ。光焔となりて活路を開け!」

 

「任せろ嬢ちゃん!」

 

 機械騎士が変形して急行列車となり渦へと走っていくと、きつね火も元気よく飛び込んでいき、その力が束ねられる。

 

「融合召喚! 爆撃せよ、起爆獣ヴァルカノン!」

 

 渦から爆発と共に現れたのは鋼鉄の身体を持ちし巨大ロボット。その巨体から響く咆哮が大地を揺るがしていく。

 

起爆獣ヴァルカノン 攻撃力2300

 

「ヴァルカノンが融合召喚に成功したことで効果発動! このカードとスチームロイドを破壊して、墓地へ送られたスチームロイドの攻撃力分のダメージを翔さんに与える!」

 

「そんな……!?」

 

 すると地面から吹き出したマグマが大爆発を巻き起こす。そして止んだ頃には、フィールドにいた2体のモンスターは跡形もなく消え去っていた。

 

翔 LP4000→2200

 

「……け、けど! それじゃあユキの場もがら空きっす!」

 

(そうだ。そしてその先まで考えるんだ。無策で場を空けはしないだろう。つまり……)

 

「心配には及ばない? 墓地のイワタテノタニグクの効果を自身を除外して発動。墓地の攻撃力と守備力が同じ機械族モンスターを守備表示で特殊召喚できます。ナイト・エクスプレス・ナイト、安全第一でただいま到着?」

 

 先ほど連絡していた仲間が紆余曲折を経て、ようやくユキの場に辿り着いた。

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト 守備力3000

 

「守備力3000……!?」

 

(モンスターを失った状況から超えるには難しいステータス。超えられなければ、同様に高い攻撃力で攻勢に移れる……!)

 

「ターンエンド」

 

(……ユキは反撃を食らっても大丈夫なように備えてたんすね。つまり僕の伏せたカードが何か、とまでは分からなくても。スチームロイドの弱点を簡単に突かせず、迎撃を狙ってくる可能性を……予め見据えていた)

 

 翔は先程の十代とのデュエルも加味して、ユキの考えを推察していた。相手の立場に立って、物事を考えていた。そんな彼の目に亮は変化を感じ取っていた。

 

ユキ LP3150

 

フィールド 『深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト』(守備表示)

 

セット0 『補給部隊』

 

手札4

 

「僕のターン……ドロー! ドリルロイドを召喚!」

 

 採掘用の乗り物が現れると、鼻に位置するドリルと足代わりのクローラーが同時に回り始めた。

 

ドリルロイド 攻撃力1600

 

「バトル! ドリルロイドでナイト・エクスプレス・ナイトに攻撃っす!」

 

「えっ!?」

 

 前進しながらドリルが守備表示で横を向いている列車の側面に触れると、削れた部分にドリルが押し出されていき、やがてドリルロイドは列車を通り抜けていった。

 

「ドリルロイドは守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算前にそのモンスターを破壊するっす!」

 

「……! それじゃあ反射ダメージも発生しないまま、ナイト・エクスプレス・ナイトが一方的に……! むぅ……なら、補給部隊の効果でドローします!」

 

「カードを2枚伏せてターンエンドっす!」

 

(戦線維持戦術が厄介っすね。けど、さすがに守備力3000のモンスターをすぐに倒されたのは計算外だったはずっす)

 

翔 LP2200

 

フィールド 『ドリルロイド』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札2

 

「ユキのターン、ドロー。……!」

 

(よし。ブラスターキャノン・コアが来てくれた! あのモンスター相手に守勢に回るのは避けたい。ここは攻め入る!)

 

「ブラスターキャノン・コアは自分フィールドのモンスターが相手より少ない場合に特殊召喚できます! さらにジェイドナイトを通常召喚!」

 

 宇宙より巨大な戦艦が飛来すると、さらにそこから緑を基調とした一機の戦闘機が出動した。

 

巨大戦艦 ブラスターキャノン・コア 攻撃力2500 カウンター0→3

ジェイドナイト 攻撃力1000

 

「バトル! ブラスターキャノン・コアでドリルロイドに攻撃!」

 

「やらせないっすよ! 攻撃宣言時にダブルリバース! スーパーチャージ! 攻撃の無力化! その攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させるっす! さらに僕の場に機械族ロイドモンスター1体しかいないことで、2枚ドローっす!」

 

「……!」

 

 ドリルが高速回転されると前面に発生した空気の渦が戦艦から放たれた砲撃を全て遮ってしまった。

 

(……補給部隊でドローさせてばかりっすからね。また大型モンスターが来てもおかしくないとは思ってたっす。それでもナイト・エクスプレス・ナイトに続いてそのモンスターもすぐに倒されたら、さすがに苦しいはずっすよね。このターンはそのための……予備工作っす)

 

(躱された……。けれど攻撃表示しかいなければあのモンスターの真価は発揮されない。戦闘破壊されないブラスターキャノン・コアがいるこちらの方が有利。そうなると怖いのは……)

 

「……カードを1枚伏せてターンを終了します!」

 

ユキ LP3150

 

フィールド 『巨大戦艦 ブラスターキャノン・コア』(攻撃表示) 『ジェイドナイト』(攻撃表示)

 

セット1 『補給部隊』

 

手札3

 

「僕のターン! ドリルロイドを守備表示に変更するっす!」

 

(えっ……! 何故……?)

 

「僕のモンスターが攻撃表示から守備表示になったターン、そのモンスターにのみこのカードは装備できるっす! プリベント・スター! さらに僕はブラスターキャノン・コアを選択!」

 

(なるほど。そのための守備表示。1ターン凌いだのもそのため? ただ……)

 

 ドリルロイドの身体が発光し内部から星が発射されると、ブラスターキャノン・コアの身体に埋め込まれていった。その軌跡が糸電話のように2体のモンスターを繋ぐ。

 

「ドリルロイドへの装備と同時にブラスターキャノン・コアを選択……?」

 

「これにより選択した相手モンスターは攻撃と表示形式の変更が封じられ、さらに装備モンスターが破壊されたらゲームから取り除かれるっす!」

 

「……! むぅ……」

 

(こう着状態を望んでいる? これではお互いに攻められない)

 

「……さらに! フィールド魔法、メガロイド都市(シティ)発動っす!」

 

 出現した複数の近未来都市を透明の管が繋いでいく。するとそこをドリルロイドが通っていった。管は未来における道路であり、展開されたのは交通機関であった。

 

(このフィールドは結構良い……! ……じゃなくて。このタイミングで使ってきたなら、守勢に回るのか攻勢に転じるのか分かるかも)

 

「メガロイド都市の効果を発動するっす! このカード以外の僕の場のカードを破壊することで、ロイドカード1枚をデッキから手札に加えるっす!」

 

「サーチ効果……。……!? あっ、まずい……!」

 

「気付いたっすね。けどもう遅いっす! 僕はドリルロイドを破壊してエクスプレスロイドを手札に加えるっす!」

 

 管が自動で取り外され別の管が装着されると、ドリルロイドと入れ替えで新たな乗り物が翔のもとに辿り着いた。

 

「プリベント・スターの効果発動っす! ブラスターキャノン・コアを除外!」

 

 張り詰めていた光の糸が消え失せていくと、埋め込まれた星ごとブラスターキャノン・コアは姿を消してしまった。

 

(やられた……! 自分で自分のモンスターを破壊することで、ユキのモンスターを除去するなんて。しかもその上でデッキから任意のロイドを持ってきたということは、攻勢に転じてくる……!)

 

「エクスプレスロイドを守備表示で召喚っす! 効果で墓地から2体のロイドモンスター……スチームロイドとドリルロイドを手札に戻すっす!」

 

 新幹線を模した乗り物モンスターがマッハでやってくると、休んでいた仲間を連れてきていた。

 

エクスプレスロイド 守備力1600

 

(ユキはそう簡単にまた大型モンスターを呼び出せないはずっす。だから、このカードでこっちが大型モンスターを出せば手詰まりが狙えるっす!)

 

「マジックカード、ビークロイド・コネクション・ゾーン! このカードでビークロイド融合モンスターの融合召喚を行うっす!」

 

「ここで専用融合魔法カード……!」

 

(攻勢に……いや、それ以上の……勝負を賭けてきた……!)

 

「手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを融合っす! 出でよ! スーパービークロイド—ジャンボドリル!」

 

 都市に組み込まれているターンテーブルに3両の乗り物が到着すると、車体が連結されていく。そして蒸気によるエネルギーを有し、それによりクローラーとドリルの回転の鋭さが増し、さらに潜水機能までついた新たな乗り物が完成した。

 

スーパービークロイド—ジャンボドリル 攻撃力3000

 

「ビークロイド・コネクション・ゾーンの効果で特殊召喚されたビークロイドは効果では破壊されず、効果も無効化されないっす!」

 

「……! 耐性の付与……」

 

(あの耐性があることで効果破壊という突破手段は封じられた。そして大型モンスターを連続して失ったユキが攻撃力3000のモンスターを戦闘破壊するのは容易ではない。相手の状況も鑑みた良い戦略だ)

 

「……相手がモンスターの特殊召喚に成功したことで速攻魔法、終焉の地を発動します! このカードの効果でユキはデッキからフィールド魔法を発動させる!」

 

「なっ! ここでフィールド魔法っすか!? それじゃあメガロイド都市が……!」

 

「そのフィールドも悪くないけど、ユキ好みのフィールドに変形してもらう? ユキが選ぶのは……転回操車!」

 

 水色だったターンテーブルが金属の重みを感じるような赤みを帯びた茶色へと塗り替えられていく。そして都市自体も塗り替えられていくと、重厚な機関車等を停める停車場へと変貌を遂げた。

 

(……これでいい。あのフィールド魔法に他にも効果があるかもしれないし、何より恐れていた事態だけは避けられる)

 

(戦闘する時にもう一つの効果でカイトロイドを墓地に送っておこうと思ったっすが……仕方ないっすね。なら、切り替えて大ダメージを狙うっす!)

 

「バトルっす! ジャンボドリルでジェイドナイトに攻撃!」

 

 慣れないフィールドで動きにくそうにしていたジャンボドリルだったが、蒸気を下に噴射することで空中に浮き、ジェイドナイトと空中戦を繰り広げた。そして放たれたレーザーを潜水用のプロペラを回転させて弾いたジャンボドリルは攻撃の隙を突いて接近戦に持ち込み、強烈なドリルの回転を食らわせ、撃墜してみせた。

 

「うっ……!」

 

ユキ LP3150→1150

 

「ジェイドナイトが戦闘で破壊されたことでデッキから機械族・光属性・レベル4のモンスター……ビック・バイパー T301を手札に加え、さらに補給部隊でドローします……!」

 

(大型モンスターが厳しいなら、小型モンスターの連携で突破を図るかもしれないっすね。ここは念のため……)

 

「カードを1枚伏せてターンエンドっす!」

 

「いいぞ、翔! このまま押し切れー!」

 

翔 LP2200

 

フィールド 『スーパービークロイド—ジャンボドリル』(攻撃表示) 『エクスプレスロイド』(守備表示)

 

セット1

 

手札0

 

「まだまだこっから! 巻き返せるよ!」

 

「うん……! ユキのターン、ドロー!」

 

(………よし。それでいこう。そうすれば仮に防がれても……)

 

「マジックカード、予想GUY(ガイ)。ユキの場にモンスターがいない場合、デッキからレベル4以下の通常モンスターを1体呼び出せます」

 

(X—ヘッド・キャノンとビック・バイパー T301の連携による相打ちも選択肢の一つだけど、ここはこっちの道へ進む……!)

 

「来て。レアメタル・レディ!」

 

 突如として強力な電磁場が発生すると、そこには希少な金属の鎧に身を包んだ女性の機械戦士が現れていた。

 

レアメタル・レディ 守備力900

 

「さらに転回操車の効果を発動? 手札を1枚……ビックバイパー T301を墓地に送ることで、デッキから機械族・地属性・レベル10のモンスターを1体手札に加えます」

 

「なっ……大型モンスターをサーチするフィールド魔法、っすか……!」

 

(終焉の地は僕の特殊召喚に反応して発動されるカード。どうやら手詰まりを避けるための手を用意していたみたいっすね……!)

 

「弾丸特急バレット・ライナーを手札に加えて、ユキの場が機械族・地属性モンスターのみのため特殊召喚?」

 

 金属の軋む音を響かせながらターンテーブルが回転されると、仲間がいる場所へと前面を向けたバレット・ライナーが、弾丸のごときスピードで駆けつけてきた。

 

弾丸特急バレット・ライナー 攻撃力3000

 

「攻撃力3000か……。これなら相打ちが狙えるな」

 

「けどバレット・ライナーは攻撃のために自分の場のカードを2枚墓地に送らないと。その結果が相打ちだと、次の翔さんのターンで場がどうしても空いちゃうよ。残りのライフも少ないのに……」

 

「ここは道半ば……。目的地はまだ先に? ユキはこのモンスターさんを召喚します。融合呪印生物—地!」

 

 脳のような形をした岩の集合体が出現する。

 

融合呪印生物—地 攻撃力1000

 

「そのモンスターは……えーと、そう! 三沢君とのデュエルで使っていた……!」

 

「このモンスターさんの力を借りて、新たな道を切り開きます」

 

「……! そうか! あのモンスターの効果は! それにレアメタル・レディも確かお兄さんとのデュエルで……!」

 

「ご明察の通り? 融合呪印生物—地の効果を自身とレアメタル・レディをリリースして発動。このカードを含めた融合素材一組をユキの場からリリースすることで、『融合』を必要とせず、地属性融合モンスターを特殊召喚できる……!」

 

 兜のように岩がレアメタル・レディの頭に取り付くと、その素材の材質を読み取り、離れた。

 

「さらに融合呪印生物は融合素材モンスターの代わりになれます。よってレアメタル・ソルジャーとして扱い、レアメタル・レディと一つに!」

 

 そして自身の身体をレアメタルを纏った男性の機械戦士に変容させると、手を突き出した。

 

生贄融合(リリースフュージョン)! 来て……レアメタル・ナイト!」

 

 すると今度は彼女の身体が変形していき、持ち手が赤く左右を刀身とした武器となって彼の手に渡った。

 

レアメタル・ナイト 攻撃力1200

 

「おおっ! ここでユキも融合モンスターを呼び出したか!」

 

(攻撃力はたったの1200。だけど、あのモンスターの力は侮れないっす……!)

 

「さらにマジックカード、受け継がれる力。バレット・ライナーを墓地に送ることで、レアメタル・ナイトの攻撃力をターンが終わるまでその攻撃力分上昇させます……!」

 

(……! ユキは……このターンで一気に決めるつもりなんすね……!)

 

 バレット・ライナーがその姿をレールへと変えると、ギアを組み込んだ加速装置となってレアメタル・ナイトの前に敷かれていった。

 

レアメタル・ナイト 攻撃力1200→4200

 

「やった! これなら……!」

 

「バトル! レアメタル・ナイトでジャンボドリルに攻撃! レアメタル・ナイトはモンスターとバトルを行うダメージステップ時に攻撃力を1000上昇させます……!」

 

「何……! さらにパワーアップするのか!? 翔の残りライフは2200、ジャンボドリルの攻撃力は3000。ということは……!」

 

 機械戦士がレールに乗ると、見る見るうちに加速していく。勢いそのままに大ジャンプからの一撃をお見舞いしようと踏ん張った、瞬間だった。

 

「させないっすよ! トラップカード、進入禁止!No Entry!発動っす! このカードでフィールドの攻撃表示モンスターを全て守備表示にするっす!」

 

「えっ! 守備表示に……!?」

 

(……!)

 

 フィールドを揺るがした地響きにより踏み込みに失敗したレアメタル・ナイトはもとより、攻撃に備えていたジャンボドリルさえも体勢を崩してしまった。

 

レアメタル・ナイト 守備力500

 

スーパービークロイド—ジャンボドリル 守備力2000

 

「ああっ! 防がれちゃった……!」

 

「あの状況からライフを根こそぎ持っていく大打撃を放ったのには驚いたが……。それだけに防がれたのはきついぞ」

 

「……カードを2枚伏せてターンエンド。墓地に送られたバレット・ライナーの効果でユキの墓地からバレット・ライナー以外の機械族……ナイト・エクスプレス・ナイトを手札に戻します」

 

レアメタル・ナイト 攻撃力4200→1200

 

ユキ LP1150

 

フィールド 『レアメタル・ナイト』(守備表示)

 

セット2 『補給部隊』 『転回操車』

 

手札1

 

「僕のターン、ドローっす! ジャンボドリルを攻撃表示に!」

 

スーパービークロイド—ジャンボドリル 攻撃力3000

 

(2枚の伏せカードがあるっすが、今のジャンボドリルは効果で破壊されないっす。ここは強気に攻めて……勝負を決めるっす!)

 

「バトル! ジャンボドリルでレアメタル・ナイトに攻撃! さらに、ジャンボドリルは守備表示モンスターに攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その分の戦闘ダメージをユキに与えるっす!」

 

「……! ドリルジャンボと同じで貫通効果を……!」

 

(……さっきのトラップはジャンボドリルを守りながら、その効果を最大限に活かせる連携だったんだ……!)

 

「そんな! レアメタル・ナイトの守備力は500しかないのに!」

 

「効果破壊もそうだが、その効果を無効にもできん。これは厄介だぞ。ユキに打つ手はあるのか……?」

 

「……ユキのモンスターが相手モンスターとバトルを行う攻撃宣言時に、墓地のビック・バイパー T301は特殊召喚できます。救援を要請……!」

 

 味方のピンチに飛ばされたSOSに応じ、白を基調とした戦闘機が現場へと駆けつけてきた。

 

ビック・バイパー T301 攻撃力1200

 

「ジャンボドリルに貫通効果があるから、800しかない守備よりは攻撃表示にするのは分かるけど……」

 

「何の意味がある……?」

 

「どっちを攻撃してもユキのライフは0になるぜ。けど俺の時は発動しても、影響が無かった挑発は使わなかった。もしかしたら何かあるのかもな……!」

 

(翔。見せてもらうぞ。お前の選択を)

 

(僕は目先のことしか見えていなかったのかもしれないっすね……。今まで色々見えていたはずだった。けど、その本質まで見抜こうとはしていなかった。それは全力を出せていない……相手へのリスペクトが欠けた行為だった!)

 

「僕はレアメタル・ナイトに攻撃を続行するっす!」

 

「……!」

 

 プロペラとドリルを回転させて地中へと潜ったドリルジャンボはモグラのように地中を突き進むと、やがて体勢を崩しているレアメタル・ナイトの下の地面が隆起した。

 

(……仕方ない!)

 

「手札のナイト・エクスプレス・ナイトを墓地に捨てて、トラップカード、共闘を発動! このターンレアメタル・ナイトの攻撃力・守備力はナイト・エクスプレス・ナイトのそれぞれの数値と同じになります!」

 

「……! ナイト・エクスプレス・ナイトの攻守は3000……!」

 

レアメタル・ナイト 守備力500→3000

 

 加速レールに乗って走ってきた急行列車が機械戦士を柔らかく弾き飛ばすと、騎士形態へと姿を変え、地面から突き出たドリルを盾で受け止めてみせた。

 

「防いだっ!」

 

「ビック・バイパー T301に攻撃していれば相打ちになっていたな……」

 

「やるっすね……! 急遽変更された守備表示モンスターに、迎撃カードを応用して防御に充てるのはさすがに読めなかったっすよ!」

 

「翔さんこそ……。どちらの攻撃でも仕留めさせてくれないとは、読み切れませんでした」

 

「へへっ、どうもっす。カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

(気付いていたな。先程のターン、ライフを削り切る攻撃を防がれたのにも関わらず、そこより守備にされたことへの動揺が大きく見られたこと。そして……俺とデュエルした時のように、攻撃を防がれても迎撃を狙っていたことを)

 

 以前ユキとデュエルした時に同様の読みをした亮には、翔が相手が密かに狙っていたカウンターを読み切ったことがよく分かっていた。そして亮は卒業までに見たかった翔の目を見れて、人知れず満足した笑みを浮かべていた。

 

翔 LP2200

 

フィールド 『スーパービークロイド—ジャンボドリル』(攻撃表示) 『エクスプレスロイド』(守備表示)

 

セット1

 

手札0

 

「ユキのターン……」

 

(転回操車を使ってハッスル・ラッセルをサーチすることはできるけど……耐性と貫通効果を有したジャンボドリルがいる状況で、ライフも劣っているユキが長期戦に臨むのは、不利。このターンのドローで……勝機を掴み取る!)

 

「……ドロー!」

 

 ジャンボドリルを残されたユキは全体の状況を見渡すと、追い込まれたことを強く感じていた。それでも諦めず、逆境をひっくり返すために可能性に手を伸ばし、足腰をフルに使って引き抜いた。

 

(……!)

 

 そして手にしたカードに目を見開くと、頭の中で複数のカードを連ねた道筋を描き出した。

 

(……これが最後の勝負!)

 

 そして退路を断ったユキと翔の目が合う。互いに勝負の時を感じ取り、覚悟を決めていた。

 

「レアメタル・ナイトのもう一つの効果を発動! リバーサル・エクスチェンジ!」

 

「さらなる効果っすか……!」

 

「このカードは特殊召喚されたターンで無ければ、融合デッキに眠るレアメタル・ヴァルキリーと交換することができます……!」

 

「ここで……融合モンスターを入れ替えるっすか!?」

 

 起き上がった男性の機械戦士が剣を宙に放ると、剣は赤いレアメタルの装甲を纏った女性へと姿を戻した。そして今度は逆に男性の機械兵士が青い持ち手の剣へと姿を変え、彼女の手に収まった。

 

レアメタル・ヴァルキリー 攻撃力1200

 

(攻撃力は変わらない……。何を狙っているっすか?)

 

「マジックカード、クロス・アタック!」

 

 先が二つに分かれた戦闘機の間にエネルギーが充填されると、放たれたエネルギーは翔の場のモンスターを超えていき、翔の目の前で着弾した。

 

「このカードは自分フィールドに攻撃表示で存在する同じ攻撃力のモンスター2体を選択して発動できます。片方のモンスターの攻撃を封じる代わりに、もう片方のモンスターはこのターン相手プレイヤーへのダイレクトアタックが可能になる……!」

 

「……! ユキの場のモンスターはどっちも攻撃力1200……!」

 

「この効果でレアメタル・ヴァルキリーのダイレクトアタックを可能に!」

 

 エネルギーの放出が保たれると、戦闘機の上にレアメタル・ヴァルキリーが降り立つ。目の前に架け渡された橋はまるで虹のように弧を描いていた。

 

「あ、あれ? ユキのデッキにそんなカード入ってたっけ?」

 

「このカードは昨日の夜に入れたんだ」

 

「……そっか。昨日のデュエルで、味わったもんね」

 

(ダイレクトアタックを受けても、ライフは残るっす。だとしたら次のターンの反撃でユキはやられる。まだ僕には見えていない、何かが……。……!)

 

「レアメタル・ナイトはモンスターとのバトルで攻撃力を1000上昇させる。ということは、もしかしてレアメタル・ヴァルキリーは……!」

 

「そう……。相手へのダイレクトアタックを行った際のダメージステップ時に攻撃力を1000上昇させる」

 

「じゃあ攻撃力は実質2200なのか!」

 

「やるな……! この土壇場でそんな手に繋げるか」

 

「これで……決着をつけます! バトル! レアメタル・ヴァルキリーで翔さんにダイレクトアタック!」

 

 エネルギーの橋へと足を踏み出したレアメタル・ヴァルキリーが上へと続く道を突き進んでいく。

 

「トラップカード、統制訓練を発動っす! ユキの場のレベル5以下のモンスター……ビック・バイパー T301を選択して、フィールドに存在するそれ以外のレベルのモンスターを全て破壊するっす!」

 

「……!」

 

「そんな! ビック・バイパー T301のレベルは4……」

 

「レアメタル・ヴァルキリーはレベル6だ……!」

 

「エクスプレスロイドはレベル4だし、ジャンボドリルはレベル8だけどビークロイド・コネクション・ゾーンの効果で破壊されない! すげーぜ、翔!」

 

 橋を維持していた戦闘機にエラーが発生すると、暴走したエネルギーが拡散されていった。運良く避けられた者、強靭な身体で跳ね除けた者がいる中、エネルギーそのものの上に立っていたレアメタル・ヴァルキリーはそのどちらの条件も満たすことが出来なかった。

 

「やった……。……!?」

 

 すると場にT301とは異なる、緑を基調とした戦闘機がワープホールを通って出現した。

 

「永続トラップ、リミット・リバース! このカードはユキの墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できます。ユキはジェイドナイトを呼び戻しました……!」

 

「確かにジェイドナイトはレベル4っすが……」

 

「そしてジェイドナイトが攻撃表示で存在する限り、ユキの場の攻撃力1200以下の機械族モンスターはトラップの効果では破壊されない?」

 

 ジェイドナイトがすぐ横を通過し、レアメタル・ヴァルキリーは驚きながら振り返ると、作られたワープホールの意味を咄嗟に理解して飛び込んだ。

 

「……そうか……! このタイミングじゃレアメタル・ヴァルキリーはまだ……!」

 

「ダメージステップに入っていないため、攻撃力は1200! だから……」

 

 小型のジェイドナイトが通れる程度のワープホールだったが、レアメタル・ヴァルキリーは身を(かが)ませて、辛うじてそこに突入した。そしてジェイドナイトが一度ワープホールを閉じるとエネルギーの奔流がフィールドを飲み込んだ。しかし別空間に避難したレアメタル・ヴァルキリーが被害を受けることはなく、再び開かれたワープホールから帰還し、エラーを修復したT301のエネルギーの橋を再び駆け出した。

 

(一か八かの勝負じゃなく、トラップでの破壊を対策した上で踏み込んで来てたんすね……。……完敗っす)

 

「ダメージステップに入ったことでレアメタル・ヴァルキリーの攻撃力が1000上昇します……!」

 

 橋を駆け降りていったレアメタル・ヴァルキリーはその勢いを乗せて大きくジャンプし、身体を一回転させて斬りかかった。

 

レアメタル・ヴァルキリー 攻撃力1200→2200

 

翔 LP2200→0

 

 そして剣戟(けんげき)を振るったレアメタル・ヴァルキリーが着地し、勝利への架け橋を渡り切ったのだった。

 

「強いっすね、ユキ」

 

「ありがとうございます。翔さんも手強かったです」

 

 ソリッドヴィジョンが消えていく中、二人は健闘を讃えあった。

 

「それと……翔さんの中に亮さんの面影を感じました。鋭く射抜くような、恐ろしくも真剣な眼差し。……正直なことを言うと、プレッシャーだった?」

 

「……! それは僕にとって……何よりの褒め言葉っす。……プレッシャーを感じてた風には見えなかったっすけど」

 

「きっと亮さんならそこまで見えていた?」

 

「参ったっすね……。精進するっす」

 

「ユキももっと頑張ります。一緒に頑張りましょう。翔さ……あ。……兄さん?」

 

「えっ!? ……あー。いや、逆じゃないっすか? ってそもそも気が早過ぎっす!?」

 

「ふふっ……冗談です」

 

「やめておけユキ! そんなやつを兄にするのは!」

 

「お、どうしたんだ? 万丈目のアニキ〜?」

 

「嫉妬してるの〜?」

 

「ええい、うっとおしい!」

 

 賑やかな彼らを背にした亮は静かに笑いながらその場を去っていくのだった。

 

 日が沈み、海ももはや青とは言えないほど黒く染まった頃。亮は灯台のふもとで遠くを見つめながら、碧色の髪をなびかせ、打ちつけられる波の音を聞いていた。

 しばらくそうしていた彼は、波の音に紛れていた来訪者の足音に少し遅れて気付くと、顔をそちらに向ける。

 

「明日香か」

 

「あら、奇遇ね。もうここに集まる必要はないのに」

 

「なんとなくな。潮風を浴びたくなったんだ」

 

「私もよ。……ふふ。お互い良いことがあったみたいね」

 

「ふっ……そのようだな」

 

 顔を見合わせた二人はそれ以上詮索することなく、並んで海の方を見た。灯台の明かりさえも届かない遠くを見つめながら、明日香は寂しげに問いかける。

 

「もうじき卒業してしまうのね……。在校生への卒業模範デュエル。誰を指名するか、もう決めたのかしら?」

 

「ああ。ちょうど今日な。迷いは吹っ切れた……。後は俺自身悔いを残さぬよう、全てに決着をつけるつもりだ」

 

「そう言うと思ったわ。あなたの目には、もうやるべきことが映っているんだもの」

 

 未だ遠くを見つめる亮を見て、明日香は仕方なさそうに笑った。

 

「……すまない」

 

「いいのよ。その代わり、見せて。あなた達の最高のデュエルを」

 

「約束する」

 

 そうして月日が流れた。決して長いとは言えないが、亮にとっても濃密で充実したひとときだった。切磋琢磨し己が腕を磨く後輩たち。今日、卒業を間近に迎えたこの日。そんな彼らに模範を示すべく、亮はデュエルコートに向かっていた。

 

「……! 吹雪」

 

「や。今日は楽しみだね。僕は在校生の立場だけど、君の同級生として今日のデュエル……楽しませてもらうよ」

 

「ああ。そのつもりでいてくれ。今日は俺達にとって……集大成となる日だ」

 

 亮は胸の高鳴りを今日だけは抑えるつもりはなかった。吹雪に対してもいつものようなクールな表情ではなく、昂る感情を乗せるように口角を上げると、見据える先へと歩みを進めるのだった——。




メガロイド都市に融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚出来なくなる縛りがあるので、存在するのが不自然かと採用を迷いましたが、制約を破っているわけではないし、EXデッキ=融合デッキのこの世界ではその一文自体が無くなっていると考えてOKとしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。