佇む少女は機械仕掛け 作:ロボッピ
——朝を迎えたレイはピンチに追い込まれていた。
(し、知らなかった。ユキがこんなに……)
レイはユキの身体を激しく揺さぶる。しかし大した反応が返ってこない。
(寝起きが悪かったなんて!)
「ちょっとユキー! 朝礼に遅刻しちゃうよ!?」
「あと……5分……」
「もう10回目だよ!? ほら、起きて!」
仕方なく布団をひっぺがそうとしたが半分寝ている身体にどこにそんな力があるのか、ユキは意地でも布団を離そうとしない。
「もう! 昨日は普通に起きてたじゃない?」
「昨日は……船の疲れ……早めの睡眠。おかげで……三度寝……すっきり? 今日は……ダメ……」
うつらうつらしながら話し終えたユキが再び夢の世界にダイブしようとする。すると彼女達の部屋のドアがノックされた。
「レイ、ユキ。入っていいかしら?」
「明日香さん? 大丈夫ですよ」
明日香がドアを開き入って来ると、その手に二着の青い制服を持っていた。
「あなた達レッドの制服しか持ってなかったでしょ? 調達してきたから今日からはこれに着替えてね」
「あ、ありがとうございます!」
「……あら。ユキはまだ寝ているのかしら? そろそろ起きないと遅刻するわよ」
「んー……無理。布団がユキを離さない」
「ふふ、昨日は遅かったものね。でもそろそろ起きないとダメよ」
「あっ……!」
レイがあれだけ苦闘していた布団を明日香があっさりと引き離し、ユキは切なそうな声をもらした。
「女の子は朝の手入れが肝心なんだから。ほら、支度するわよ」
「はい……」
布団を失ったユキが渋々起き上がると、頭がまだ目覚めないながらも体がするべきことを覚えているように動き、身支度を終える。
明日香のおかげでユキ達は何とか朝礼に間に合った。今日も学園祭の準備期間ということで簡単な挨拶が終わると、各々の寮に生徒が散っていった。明日香達は購買部に寄ったユキと合流すると集合場所に歩を進めていく。
「明日香様ー! ……あら、その子達は誰ですの?」
「見たことない顔ね……」
その道すがら、二人のブルー女子の生徒が明日香に駆け寄ってきた。
「ももえ、それにジュンコ。この子達は編入生よ」
「えっ、編入生って女の子だったんですか!?」
「あら? 確か噂によると二人とも背の小さい男子生徒と聞いていましたが……」
「ええと、それはね……」
昨晩あった出来事を明日香が説明し終えるとジュンコがそういうこともあるかというような淡白な反応だったのに対し、ももえは目を輝かせながら二人の手を握った。
「一目惚れした殿方のために遠く離れた孤島に乗り込む二人の少女……心打たれましたわ!」
「わっ……」
「びっくりしたぁ……」
「ももえ!? もう……落ち着いて」
「あはは……完全にスイッチ入ってるわね」
明日香がジュンコと二人がかりでももえを落ち着かせると改めて明日香が二人の紹介を済ませた。
「ということで……これからよろしくお願いします?」
「よろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願い致します。わたくしのことはももえで良いですわ」
「よろしくー。アタシもジュンコでいいわ」
互いに自己紹介を終えるとほぼ同時にブルー生徒の作業場所にたどり着いた。ブルー寮は男子と女子が力を合わせて出し物をするため他の寮と比べて作業人数も多く、その進みも一番早かった。それ故に大まかな作業は昨日のカイザーの効率的な指揮の効果もあり、ほとんど終わっていた。
「明日香」
「亮。どうしたの?」
男子生徒の指揮は亮が女子生徒の指揮は明日香が取っていたため、男子生徒の総意、あるいは女子生徒の総意は二人を通じて伝えられていた。今回もその件で用があると察した明日香だったが下の方から物言いたげな目線が飛んできていることに気がついた。
「ユキにレイ……もう、違うのよ? これは学園祭の準備の相談で……」
「でも明日香様、プライベートでも亮さんとよくお話になられていてとても仲がいいですわよね」
「ももえ!?」
ユキ達の誤解を解くべく弁解しようとした明日香だったが思わぬ追撃が入る。
「もしかして二人って……実はつ、付き合ってたり!?」
「ジュンコ!? ……二人ともちょっとこっちへ来て」
これ以上誤解を広げさせてはいけないと思い明日香は二人を少し離れたところに呼び、小声で話し始めた。
「……さっきの話でユキ達が一目惚れしたっていうのは亮のことなのよ」
ユキとレイが好きになった男性の名前は下手に言わない方がいいと伏せていた明日香だったがやむを得ず、と言った感じでももえ達に伝えた。
「えっ……!? そ、そうでしたの?」
「あちゃー。そうだったんだ」
「だから二人ともユキ達に変な誤解を与えないでね?」
「……はい、分かりました。でもわたくし達は本気で明日香様は亮さんと付き合っていると思っていましたが……」
「そ、そんなことないから! いいからお願いね!? ……亮。待たせてごめんなさい」
「いや……別に構わない」
明日香はももえ達に念押しすると亮達の元に戻っていく。するとユキ達の目線に合わせて話していた亮が体勢を立て直していた。
「なんだ。本当に学園祭の準備の話だったんだね」
「ユキ達の……早とちり」
(亮……誤解を解いといてくれたのね)
「それならユキ達は今は離れておく? 色々込み入った話もあるだろうし……」
「そうだね。亮様、今度お時間がある時はもっと話しましょうね!」
「ああ。二人ともまた今度な」
ユキとレイ、それにももえとジュンコは話の邪魔にならないよう離れていく。まだブルー寮に戻って来ていない生徒もいたため準備は始まっておらず、先に戻っていたみんなは和気あいあいと話していた。
「それで用なんだが……見ての通り昨日みんなが頑張ってくれたおかげで作業がほとんど終わっている。男子側の提案なんだが、後は俺達に任せてくれとのことだ」
「えっ……? でもみんなでやった方がもっと早く終わるわよ?」
「俺もそう思うが……男の意地というやつだろう」
「……そういうもの?」
「まあ……そういうものだ。あとこれは個人的になんだがお前に頼みがあるんだ」
「あら、何かしら」
「ユキとレイのことなんだが……俺は男子だから生活面で彼女達のフォローが出来ないこともある。だからそういう時はお前に彼女達の助けになってもらいたいんだ」
ユキ達の年齢を考えると慣れない生活で苦労するのは目に見えていた。そんな彼女達に出来るだけ助けになってやりたいと思う亮だったが、男子である亮には限界もある。自分の手が届かないところは信頼できる明日香に頼みたかったのだ。
「何かと思えば……もちろんよ。二人とも私の可愛い後輩だもの。言われなくても助けられることなら助けるわ」
「ああ……ありがとう。だが本当に頼みたいことはここからなんだ。……どうやら良くない予想が当たってしまったようだからな」
「えっ?」
明日香と話している間も亮はユキとレイの動向を窺っていた。この時期にしては珍しい編入生、その存在に気付いたブルー生徒が何人か二人に話しかけていく。……しかし、正確に言うのならば話しかけられたのはレイだけだった。
「昨日デュエル後にお前達の様子を見ていて気がついたんだが彼女はあまり自分から話そうとしない。そして今の様子を見るにレイが話しやすそうというのもあるのだろうが、恐らくユキがあまり表情に変化がないせいだろう……ユキに話しかける生徒がいないんだ」
「あっ……確かに」
そんな会話をしている間にレイ達の存在に気がついた一人のブルー生徒が話しかける。しかしやはりというべきか、話しかけられたのはレイだった。
「レイも気を使おうとしているようだが……話しかけてくる人間は5歳以上は上の相手。しかも初対面の相手にそこまで手が回らないようだ」
結局ユキが話す機会は一切無くその生徒も去っていってしまった。
「本当ね……」
「そこで……だ。この空き時間を使ってお前にユキとデュエルをしてもらいたい」
「デュエルを?」
「ああ。昨日デュエルが終わった後、興味を持ったお前達がレイにもユキにも話しかけたように、ユキのデュエルを見ればみんなも話しかけてくるはずだ。それにユキは自分から話そうとしないだけで、話しかけられたことには答えられる。きっかけさえ作れれば何とかなるはずだ」
「……なるほど」
明日香はようやく亮が言ったことに納得がいく。それと共に亮の観察力に感心していた。
「……ふふっ。あの子達のことよく見ているのね」
「それは……」
明日香の言葉に亮は少し照れくさそうに言葉を濁した。
「照れなくてもいいんじゃないかしら? それがあなたのいいところだもの。……じゃあ、学園祭の準備頑張ってね」
「ああ。……頼んだぞ」
「任せて!」
二人が話し終えた頃にはブルー生徒も全員戻ってきた。亮は男子生徒を、明日香は女子生徒を全員集め終えると事情を説明していた。
「……ってことは、後の作業は全部男子がやってくれるんですか?」
「ええ。だからこの空き時間を使って編入生の歓迎デュエルをしたいの。みんないいかしら?」
「勿論! 誰が相手するんですか?」
「私がやるわ」
明日香はデュエル中にのみつける青いグローブをはめると、ディスクを展開していった。
「ええっ! あの『オベリスク・ブルーの女王』天上院明日香自らが編入生の相手をするんですか!?」
「……ええ、そうよ」
(いつの間にそんな異名がついていたのかしら。恥ずかしいのだけれど……)
「相手はユキ! あなたよ!」
明日香が人差し指を勢いよくユキに向かって指すと人混みが割れていき、後ろ側に待機していたユキが明日香の視界にはっきりと入るようになった。
「……承知した?」
デュエルを挑まれたら受けるのがデュエリストの礼儀。応えるようにユキもディスクを展開していった。
「ユキ! 頑張れー!」
デュエルの邪魔にならないようレイは少し離れると声を張ってユキを応援した。
「明日香様頑張って!」
「ユキちゃんも明日香様も頑張って下さいー」
人混みを掻き分けジュンコとももえが最前列まで応援に駆けつけた。
「行くわよ……デュエル!」
「……デュエル!」
二人の宣言が響くとざわついていた声も収まり、明日香の先攻で戦いの火蓋が切られた。
「私のターン、ドロー。マジックカード、融合を発動!」
「……! いきなり融合……」
「手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合! その優雅な滑りで全てを魅了せよ! サイバー・ブレイダー!」
二人の戦士が融合の渦になり一つとなると長い青髪の女性が現れる。フィールドに着地したかと思うとスケートリンクを滑るように自由にフィールドを滑りだした。
サイバー・ブレイダー 攻撃力2100
「まずはこのモンスターが相手をするわ。ターンエンド!」
明日香 LP4000
フィールド 『サイバー・ブレイダー』(攻撃表示)
セット0
手札3
「ユキのターン……」
ユキはデッキの前に手を差し出す。するとディスクからデッキの一番上のカードが自動的に差し出された。
「ドロー」
(うん。いい……!)
ユキは差し出されたカードを流れるように引き抜く。購買部から購入した新たなディスクの機能に満足している様子だった。
(あのディスク手に入れたんだ……結局自分で引くからあんまり変わらない気がするけど。ユキはオートマチックなの好きだからなあ。この前もいつか自動で走るバイクに乗ってみたいって言ってたし)
ユキの気持ちを察したレイが何とも言えない表情を浮かべた。
「あの小さな女の子、どんな戦術を使うのかしらね」
「聞いた話によると小学5年生だけど特別に編入が認められたらしいわよ」
「そうなの!? それはますます気になるわね……」
ブルーでも屈指の実力を持つ明日香のデュエルは注目度が高く、自然に対戦相手であるユキにも周りのみんなが興味を示していた。
(……よし、みんなユキに興味を持ち始めたみたいね)
「勇気機関車ブレイブポッポを召喚」
レールが引かれていくとその上を緑色の機関車が煙突から煙を出しながら走っていった。
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力2400
「そして手札から永続魔法を2枚発動する」
「……!」
「補給部隊、
前線にエネルギーを補充する基地とパーツを組み立てる簡易的な工場が建設された。
(……来た! ユキの
「バトル。勇気機関車ブレイブポッポでサイバー・ブレイダーに攻撃」
「えっ!? 確かブレイブポッポは攻撃宣言時、攻撃力を元々の攻撃力の半分にしてしまうデメリットがあったはず……」
「……その通り?」
レールがサイバー・ブレイダーまで伸び、力強く発進したブレイブポッポだったが、燃料不足か途中から勢いが半減してしまった。
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力2400→1200
その勢いのままブレイブポッポはサイバー・ブレイダーに突っ込んでしまう。それに気づいたサイバー・ブレイダーは華麗な舞で突撃を避けると、レールが途切れて止まってしまったところに身体を回転させながら蹴りによる一撃を叩き込んで破壊した。
ユキ LP4000→3100
「ちょ、ちょっと大丈夫なの!?」
「まさかユキちゃん緊張しているのかしら……?」
(昨日のデュエルを見た限りそんなミスをするとは思えない。何か狙いがあるはず……)
「補給部隊、さらに機甲部隊の最前線の効果発動」
「……!」
「まず機甲部隊の最前線の効果により1ターンに1度ユキの機械族モンスターが戦闘で破壊され墓地に送られた時、そのモンスターより攻撃力が低い同じ属性の機械族モンスターをデッキから特殊召喚することが出来る」
「ブレイブポッポの攻撃力は2400……!」
「よってデッキから攻撃力2400を下回る地属性・機械族モンスターをデッキより1体呼び出すことが可能……!」
(いつもなら攻撃力2200の機械王さんを呼び出すけど……ここは)
「来て……サイファー・スカウター」
顔に金属製のマスクを取り付けた機械兵士が降り立つ。マスクの目に当たる部分に赤外線センサーがついており、左肩に置かれた二つのランプを点灯することが可能な機械と接続されていた。
サイファー・スカウター 攻撃力1350
(攻撃力1350? もう少し攻撃力の高いモンスターを呼び出すと思っていたのだけれど……)
「さらに補給部隊により1ターンに1度、自分の場のモンスターが破壊された場合にユキはカードを1枚ドローする。ドロー!」
(……なるほど。ダメージを負う代わりに1枚分のカード・アドバンテージを得たのね)
「……サイファー・スカウターでサイバー・ブレイダーに攻撃」
「……!」
懐にしまってあった鋼鉄製の弾が装填された銃を取り出すと、赤外線センサーにより敵の位置を捉えながら一歩前に踏み出し銃を構えた。
「補給部隊も機甲部隊の最前線も発動出来るのは 1ターンに1度よ!?」
「こ、今度は何を狙っているのでしょう……?」
「この瞬間サイファー・スカウターの効果が適用される? その効果により戦士族とバトルを行うダメージ計算時のみ、攻撃力と守備力がそれぞれ2000上昇する……!」
「サイバー・ブレイダーは戦士族。これが狙いだったのね……!」
赤外線により感知した敵の正体が分かると二つのランプのうち上のものが赤色に光る。するとその急所を的確に把握したサイファー・スカウターはそこを目がけて弾丸を放った。
サイファー・スカウター 攻撃力1350→3350 守備力1850→3850
「くっ……!」
明日香 LP4000→2750
「明日香様!」
「いきなり明日香様がダメージを……」
「やるわねユキ。でも私はサイバー・ブレイダーの第一の効果を適用していたわ」
「え……?」
放たれた弾丸に神がかり的な反応で回避を試みたサイバー・ブレイダーは避けることこそ叶わなかったものの直撃は免れていた。
「パ・ド・ドゥ。相手フィールドのモンスターが1体のみの場合、サイバー・ブレイダーは戦闘では破壊されないわ」
「……むぅ」
急所を狙った狙撃をかわされたサイファー・スカウターはとっさに後ろに大きく跳躍して体勢を立て直した。
サイファー・スカウター 攻撃力3350→1350 守備力3850→1850
「カードを1枚伏せてターンエンド」
ユキ LP3100
フィールド 『サイファー・スカウター』(攻撃表示)
セット1 『補給部隊』 『機甲部隊の最前線』
手札3
「私のターン! ……一気に行かせてもらうわよ!」
「……!」
「マジックカード、浅すぎた墓穴を発動。互いに自分の墓地からモンスターを選び、自分フィールドに裏側守備表示で特殊召喚する! 私が選択するのはエトワール・サイバー!」
「ユキは勇気機関車ブレイブポッポを選択する」
墓地に繋がる穴がそれぞれのフィールドに空くと上昇気流に乗ってモンスターが1体ずつ帰還した。
エトワール・サイバー(裏側守備表示) 守備力1600
勇気機関車ブレイブポッポ(裏側守備表示) 守備力2100
「残念ながら……ブレイブポッポは守備力も高い? サイバー・ブレイダーで倒すことは出来ない」
「それはどうかしらね? この瞬間、サイバー・ブレイダーの第二の効果が適用されるわ!」
「二つ目の効果……?」
「パ・ド・トロワ。相手フィールドのモンスターが2体のみ存在する場合、サイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になるわ!」
「なっ……」
ただでさえ速いスピードで滑っていたサイバー・ブレイダーが倍近くの速さで滑り出し、肉眼で捉えられるのは残像だけとなった。
サイバー・ブレイダー 攻撃力2100→4200
「攻撃力4200。効果を発動したサイファー・スカウターの攻撃力をさらに上回る数値……!」
「まだよ! さらにエトワール・サイバーを生贄に捧げ、サイバー・プリマを召喚する!」
セット状態のモンスターが消えるとバレエの衣装を身に纏ったレディが現れる。右手をお腹のあたりに持っていくと深々とお辞儀をした。
サイバー・プリマ 攻撃力2300
「ユキ、あなたの狙いは分かっているわ。このまま私が攻撃しても補給部隊と機甲部隊の最前線がある限り、そこまで大きな痛手は負わない……そうでしょう?」
「……!」
「サイバー・プリマの効果発動! このモンスターが生贄召喚に成功した場合、フィールドにある表側表示の魔法カードを全て破壊する!」
「……しまった」
サイバー・プリマが前線に設置された基地に乗り込むと蝶のように舞い蜂のように刺す動きを見せ、基地は壊滅してしまった。
「亮とのデュエルを見ていたからね。あなたが永続魔法によって戦力を維持する戦術を得意とすることは薄々感じていたし、さっきのターンでそれは確信に変わったわ」
「うっ、たった2回のデュエルで……?」
「凄い……それだけでユキの戦術を見抜くなんて」
「ふふ……大人気ないなんて言わないわよね?」
「……勿論」
「その言葉を聞いて安心したわ。続けて行くわよ!」
微笑を浮かべていた明日香の顔が引き締まるとその目は鋭くユキを射抜いた。
「……!」
「装備魔法、
「あっ……! 戦士族じゃなくなることでサイファー・スカウターの効果が発動出来なくなる……」
「それだけじゃないわ! 忘れたかしら? 相手モンスターが2体の時、サイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になるのよ!」
「攻撃力上昇値も500じゃない……!」
サイバー・ブレイダーの足に竜の鱗が生えてくるとスピードがさらに増していき、もはや残像を肉眼で捉えることも出来なくなった。
サイバー・ブレイダー 攻撃力4200→5200 守備力800→1300
(今まで明日香さんが使ったモンスターは全員戦士族だった。サイファー・スカウターを超えるのは難しいと思ってたのに……でも)
昨日の亮とのデュエルのように予測を上回られてしまうユキ。しかしそんなデュエリストと対峙できる事をどこか嬉しく感じていた。
(ユキ……なんだか楽しそう)
あまり表情に変化は見受けられないユキだったが、レイだけはユキの心情を感じ取っていた。
(ここに来て……良かった。そう思えることがまた一つ増えた)
「バトルよ! サイバー・ブレイダーでサイファー・スカウターに攻撃。グリッサード・スラッシュ!」
明日香のフィールドで佇んでいたサイバー・ブレイダーが目にも留まらぬスピードでフィールドを滑りサイファー・スカウターに向かっていく。
「今のサイバー・ブレイダーの攻撃力は5200。サイファー・スカウターの攻撃力は1350で効果も発動出来ない……」
「ユキちゃんのライフは3100……ということは」
サイファー・スカウターは赤外線センサーで敵の位置を探ろうとする。しかしあまりにも素早い動きで視界に入れることも難しく、背後を取られてしまった。
「……そう簡単にやられるわけにはいかない? トラップ発動、逆さ眼鏡。このターン限り、フィールドの全ての表側表示モンスターの攻撃力は半分になる」
「……!」
空間が歪むとフィールドに出ていたモンスターの力が半減していく。するとスピードが遅くなったサイバー・ブレイダーの動きをサイファー・スカウターが感知し、奇襲を免れた。
サイファー・スカウター 攻撃力1350→675
サイバー・ブレイダー 攻撃力5200→2600
サイバー・プリマ 攻撃力2300→1150
「それでもサイファー・スカウターは倒させてもらうわ!」
サイファー・スカウターの方にある二つのランプのうち下にあるものが緑色に点灯すると、反撃するべく弾丸が放たれる。それに気がついたサイバー・ブレイダーは足を回転させて鋭く突き出し、かまいたちを発生させて弾丸ごとサイファー・スカウターを真っ二つにした。
ユキ LP3100→1175
「くっ……でもサイバー・プリマは追撃出来ない」
「そうね……セット状態のブレイブポッポに逆さ眼鏡の効果はないもの。バトルを終了するわ。でもあなたの目論見通りとはいかなかったようね」
「む……」
「このターン私がサイファー・スカウターを倒せるモンスター呼んだとしても逆さ眼鏡でダメージを抑えながら2枚の永続魔法で次のターンに備えつつ、機甲部隊の最前線で呼び出したモンスターで逆さ眼鏡の効果を受けた私のモンスターの追撃を避ける。それがあなたの狙いだったのでしょう?」
「ううん……その通り」
明日香の的を射た考察に思わず唸ったユキだったが、焦らないようゆっくりと息を吐き出し落ち着こうとしていた。
「明日香様珍しいわね。いつもは頭の中で相手の戦術をまとめるのに今日は話しかけるようにするなんて」
「そうですわね……」
(なんでしょう。まるで見ている人たちにユキちゃんのことを伝えているような……)
「これでターン終了よ。この瞬間、逆さ眼鏡の効果は終了するわ。それとユキの場のモンスターが1体になったことでサイバー・ブレイダーのパ・ド・トロワによる倍化効果も失われているわ」
空間の歪みが消えていくと失われた力も元に戻された。
サイバー・ブレイダー 攻撃力2600→1300→2600
サイバー・プリマ 攻撃力1150→2300
明日香 LP2750
フィールド 『サイバー・ブレイダー』(攻撃表示) 『サイバー・プリマ』(攻撃表示)
セット0 『竜魂の力』
手札1
「ユキのターン、ドロー。……ブレイブポッポを反転召喚」
緑色の機関車に燃料が投入されると汽笛を鳴らし、煙を高く吹き上げた。
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力2400
「さらにオイルメンを召喚する」
燃料用の油が入った缶が置かれると機械的な両手と両足が生えていき腕を高く上げるようなポーズを決め、最後に空から舞い降りて来たマントを振り向かずに羽織った。
オイルメン 攻撃力400
「ユキの場のモンスターが2体になったことでサイバー・ブレイダーの攻撃力が倍になるわ」
サイバー・ブレイダー 攻撃力2600→5200
「マジックカード、アイアンドローを発動! ユキの場にいるモンスターが機械族の効果モンスター2体のみの場合に発動でき、その効果でカードを2枚ドロー出来る。ただしこのカードを使った後はターンが終わるまでユキに許される特殊召喚は1回のみとなる」
金属製のグローブが現れるとユキの右手に装着され、ディスクから差し出された2枚のカードがその手で引き抜かれた。
「ドロー!」
(……来た!)
消えていく金属製のグローブを名残惜しそうにしながらユキはもたらされたカードを確認し、次なる行動に出た。
「オイルメンの効果発動。このカードは装備カード扱いとして自分フィールドの機械族モンスターに装備することが可能なユニオンモンスター。ブレイブポッポに装備する……!」
「ユニオンモンスター……!」
オイルメンが停車した機関車に乗り込むと、先ほどよりも勢いよく機関車が走り出した。
「装備モンスターが破壊される時、代わりに装備されたオイルメンを破壊することが出来る」
「……相手モンスターが1体になったことでサイバー・ブレイダーの攻撃力は2600に戻るわ」
サイバー・ブレイダー 攻撃力5200→2600
(ブレイブポッポの攻撃力は2400。1度だけとはいえ破壊耐性を与えることで次の私のターンを凌ごうということかしら?)
「装備魔法、
「……!」
機関車の上に設置するように砲台の積荷が乗せられると縄で固定された。
「……バトル。ブレイブポッポでサイバー・ブレイダーに攻撃」
「なんですって! ブレイブポッポの効果が発動して攻撃力が元々の攻撃力の半分になるのに……!?」
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力2400→1200
「この瞬間、重力砲の効果により装備モンスターとバトルを行う相手モンスターの効果はバトルフェイズが終わるまで無効となる」
固定された砲台から赤いビームが放たれると重力を失ったサイバー・ブレイダーが浮き上がり、自由を失ってしまう。
「サイバー・ブレイダーの戦闘破壊耐性が無効に……! でもその攻撃力では倒せないわ!」
「勿論……手はある? 速攻魔法、コンセントレイトをブレイブポッポを対象に発動! このターン選択したモンスター以外の自分のモンスターの攻撃を封じる代わりに、ターンが終わるまで対象としたモンスターの攻撃力をその守備力分アップさせる」
「なっ……! ブレイブポッポの守備力は2100……!」
「よって攻撃力は2100上昇する!」
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力1200→3300
宙に浮いたサイバー・ブレイダーに向けてレールが敷かれる。加速する機関車の前方にエネルギーが集中し、空気との摩擦によって火を纏う形となる。身動きが取れないサイバー・ブレイダーに避ける術はなく燃え盛る一撃をまともに受けてしまった。
「ぐっ……やってくれたわね」
明日香 LP2750→2050
「サイバー・ブレイダー……撃破。オイルメンの効果発動。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、カードを1枚ドローする。……ドロー!」
オイルメンから放たれた光がデッキの一番上のカードを輝かせるとユキの新たな力となって手札に加えられた。
「ブレイブポッポの半減していた攻撃力は元に戻る。さらにメインフェイズ2に入り重力砲のもう一つの効果を発動。 1ターンに1度、装備モンスターの攻撃力を400上昇させることが出来る」
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力3300→4500→4900
「……あれ。その効果を攻撃する前に使えばもう少しダメージが与えられたんじゃ……」
「そうはいかないわジュンコ。ブレイブポッポの攻撃力は攻撃宣言時に元々の攻撃力の半分、つまり1200となってしまうもの。先に使ってもダメージは増えないのよ」
「あっ……なるほど」
「その通り……カードを2枚伏せてターンエンド。この瞬間コンセントレイトの効果は終了する」
ブレイブポッポが纏っていた炎が鎮火されるとスピードを落として徐行運転に入った。
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力4900→2800
ユキ LP1175
フィールド 『勇気機関車ブレイブポッポ』(攻撃表示)
セット2 『オイルメン』 『重力砲』
手札1
(強いわね……。これが覚悟を決めた乙女の強さ。でも私だってデュエルに賭ける気持ちは誰にも負けるつもりはない!)
「私のターン! ……行くわよ、ユキ!」
「……! 受けて立つ……」
「サイバー・プチ・エンジェルを召喚!」
背中に羽を生やし、頭に光の輪をつけた小さな天使が舞い降りると、その身体が機械化していった。
サイバー・プチ・エンジェル 攻撃力300
「き、機械族……!」
アカデミアのデュエリストとのデュエルではクロノス、亮と機械族の使い手に続けて当たっていたため、明日香も機械族を使うのではないかと密かに思っていたユキはその様子に機械族センサーが反応し、期待に満ちた目で明日香を見つめた。
「……期待に添えなくてごめんなさい。天使族よ」
「…………そう」
返事を聞いたユキがあからさまに落ち込む。表情に大した変化がなくてもこればかりは明日香に伝わった。
「さ、サイバー・プチ・エンジェルが召喚に成功したことでデッキから機械天使の儀式を手札に加えるわ」
「……ん。儀式……?」
少しの間茫然自失としていたユキだったが、儀式という言葉が耳に入り現実に戻ってきた。
「見せてあげるわ。私の持つサイバー・ガール、そのフィナーレを飾るモンスターを! 儀式魔法、機械天使の儀式を発動!」
「儀式魔法……!?」
明日香のフィールドが暗くなると青白い炎で囲まれていく。
「そうよ。このカードによって儀式召喚が可能となる! フィールドにいるレベル2のサイバー・プチ・エンジェルとレベル6のサイバー・プリマを生贄に捧げることで手札に眠るこの儀式モンスターを呼び出すわ!」
2体のモンスターが供物として捧げられるとその魂が天へと昇る。すると炎が消え、天から閃光が明日香のフィールドに突き刺さった。
「目もくらむほどの速さを持ちし光の天使よ。光速の刃で敵を切り裂け! 降臨せよ! レベル8、サイバー・エンジェル—
閃光の正体は光を纏った天使。両手には切れ味のいい鎌が、背中から生えた2本の手にはそれぞれ短剣が握られていた。
サイバー・エンジェル—荼吉尼— 攻撃力2700
「融合召喚だけじゃなく、儀式召喚まで……! でもブレイブポッポの攻撃力は重力砲で強化されて2800。そのモンスターでは倒すことは出来ない」
「そうはいかないわ! ダキニの儀式召喚に成功したことで効果を発動よ! その効果でユキ……あなたは自身のフィールドのモンスターを1体墓地へ送らなくてはならないわ!」
「えっ……!? ユキの場には……ブレイブポッポしかいない。……ブレイブポッポを選択。でもブレイブポッポにはオイルメンが装備されて……はっ!」
「気づいたようね。オイルメンは装備したモンスターを戦闘及び効果による破壊から守ることができる。けどダキニの効果によりブレイブポッポは破壊されないまま墓地へ送られるのよ!」
「……やられた」
先手を打つべくブレイブポッポから重力砲が放たれたがその瞬間にはダキニの姿は消え、次の瞬間にはブレイブポッポの各車両の連結は全て切断されていた。
「さあ、フィナーレよ! バトル! ダキニでユキにダイレクトアタック!」
ダキニはブレイブポッポが停止したことを確認すると次なる標的をユキに定め、大きく跳躍して鎌を振り下ろした。
「これで……!」
「ユキ……!」
「……させない。トラップ発動、ピンポイント・ガード! 相手モンスターが攻撃してきた時、自分の墓地に眠るレベル4以下のモンスターを守備表示で呼び戻す。もう一度お願い……ブレイブポッポ!」
「……!」
ブレイブポッポが光の穴に飲み込まれていくと、ユキの目の前へと転送される。分断された連結も直されておりさらにメッキが塗られていた。
勇気機関車ブレイブポッポ 守備力2100
「この効果で呼び出されたモンスターはこのターン破壊されない。これでダキニの攻撃は……」
「攻撃続行よ! ダキニでブレイブポッポに攻撃!」
「え……?」
ユキを狙った一撃だったが突然現れたブレイブポッポが盾となり、メッキを施された機体が鎌を弾き返した。
「ブレイブポッポはピンポイント・ガードの効果により破壊されない……!」
「でも切れ味は受けてもらうわ! ダキニが存在する限り自分の儀式モンスターが守備モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与えるのよ!」
「貫通効果……!?」
鎌を弾き返したブレイブポッポだったがその一撃は鋭く、ブレイブポッポの方も飛ばされてしまいユキに体当たりする形となってしまった。
「きゃ……!」
ユキ LP1175→575
「なんとか防いだわね。でもダキニ相手に守備固めは通用しないわ……次のターンで勝負よ! 私はこれでターンエンド!」
フィールドにダキニが戻ってくると明日香にそっと目配せをする。それに気付いた明日香は首を横に振った。
(このエンドフェイズ、ダキニの第三の効果で墓地の機械天使の儀式を手札に戻すことが出来る。でも勝負は次のターン……だからこの効果は使わないわ)
明日香 LP2050
フィールド 『サイバー・エンジェル—荼吉尼—』(攻撃表示)
セット0
手札0
「ユキのターン……ドロー」
(……このターンで勝負にいく!)
「ブレイブポッポを攻撃表示に変更。そして装備魔法、愚鈍の斧をブレイブポッポに装備! 装備モンスターの攻撃力を1000上昇させる」
メッキが剥がれ落ちたブレイブポッポの先頭車両にある積荷を持ち上げるためのアームに斧が握られると、ぎこちなくはあったが力強い振りで風を切った。
勇気機関車ブレイブポッポ 攻撃力2400→3400
「さらにY—ドラゴン・ヘッドを攻撃表示で召喚」
赤い機械竜が翼を羽ばたかせて降下のスピードを調整し、ゆっくりと地面に着地した。
Y—ドラゴン・ヘッド 攻撃力1500
(あのモンスター……確か万丈目君が使っていたわね。でもXやZのカードが無ければ能力を発揮できないはず。それよりも今注意するべきなのは……)
「……バトル。ブレイブポッポでダキニに攻撃!」
「……!」
(仕掛けてきたわね……!)
「あ、あの子またブレイブポッポで攻撃を……!?」
「愚鈍の斧で攻撃力を上げてもまた攻撃力が1200になってしまいますわ!」
燃料の供給がおいつかなくなりブレイブポッポが減速していく。しかしアームごと敵に向かっていくかのように斧が減速していく機関車を引っ張っていた。
「愚鈍の斧を装備したモンスターの効果は……無効になる?」
「……! それを利用してブレイブポッポのデメリットを打ち消したのね……!」
ダキニは回避のためにその場を離れたが斧が呼応するように力を発揮して加速するとついにはブレイブポッポがダキニに追いつき、一振りを浴びせた。
「くっ……!」
明日香 LP2050→1350
「やった……ダキニを倒した! Y—ドラゴン・ヘッドのダイレクトアタックでユキの勝ちだ!」
「そ、そんな……まさか」
「明日香様が負ける……!?」
背中に渾身の一撃を受けたダキニは地面に叩きつけられ、砂塵が舞った。
「……まだよ!」
「……!」
砂塵を打ち消すように中から光が放たれると癒しの光によって背中の傷は治されており、ダキニは立ち上がった。
「私は墓地の機械天使の儀式の効果を使っていたのよ。自分フィールドの光属性モンスターが破壊される場合、墓地にあるこのカードを除外することで身代わりとすることが出来る!」
「さすが明日香様!」
「これで次のターン、Y—ドラゴン・ヘッドを攻撃すれば明日香様の勝ちですわ!」
「……でも、まだ次のターンにはなっていない?」
「……! まだ……策があるというの?」
攻撃を凌ぎきったと思った明日香はユキの目がまだ勝利に向いていることに気づくと、さらに警戒を強めた。
「機械族・レベル4モンスターのブレイブポッポとY—ドラゴン・ヘッドを対象として永続トラップ、機動要塞 メタル・ホールドを発動……!」
地面の中から突き抜けるように出現したのは人型の機動要塞。重厚感のある身体が着地すると砂塵が舞い上がった。
「このカードは発動後、モンスターとして特殊召喚される」
機動要塞 メタル・ホールド 攻撃力0
「ここでトラップモンスターを……!」
「さらに対象としたモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。そしてメタル・ホールドの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力の合計分アップする……!」
「ブレイブポッポの攻撃力は2400。Y—ドラゴン・ヘッドの攻撃力は1500。ということは……」
足部にあるパーツが機関車となり、背中に機械の翼が取り付けられ進行方向と逆に羽ばたくと、さらに要塞の機動力が増していった。
機動要塞 メタル・ホールド 攻撃力0→3900
「……やるわね、ユキ。ここでモンスターの力を一つに集めるトラップモンスターを呼び出すなんて。でも私はライフが尽きるまで諦めない! ダキニがやられても次のターン、逆転のカードを引き当ててみせる!」
逆境に立たされた明日香だったがその目はまだ勝利を諦めてはいなかった。
(この状況でも諦めないどころか、次のターンを回したらやられてしまうと思わせるほどの気迫……それが向き合っているユキには伝わってくる。だからこそ……勝負をかけ命運を託したこのターンでユキは決着をつける!)
「これが最後の一手……! Y—ドラゴン・ヘッドの効果を適用する!」
「なっ……Y—ドラゴン・ヘッドの効果ですって!?」
能力の発揮は難しいと考えていたY—ドラゴン・ヘッドに明日香は意表を突かれる形となった。
「Y—ドラゴン・ヘッドは自身の効果ではX—ヘッド・キャノンにしか装備することは出来ない。でもメタル・ホールドの効果で装備カード扱いとされたことで……ユニオンモンスターの真価を発揮できる!」
「あ……。オイルメンのように装備時に使うことの出来る効果……!」
「Y—ドラゴン・ヘッドの装備時効果。装備モンスターの攻撃力及び守備力を400ずつ上昇させる」
機動要塞 メタル・ホールド 攻撃力3900→4300 守備力0→400
「……そんな手があったなんてね」
「メタル・ホールドでダキニに攻撃!」
スピードで逃げ切ろうとするダキニだったが機動力を増した要塞にそれは叶わないことを察すると意を決して要塞に向かって加速していく。振り下ろした剣と突き出した拳がぶつかり合うと、競り合いの末に力で
明日香 LP1350→0
「……まさか、負けるなんてね。私もまだまだね……もっと精進しないと」
デュエルが終わり、消えていくソリッドヴィジョンを横目に明日香はグローブを外しながらユキに近づいていく。それに気づいたユキも歩み寄った。
「強いわねユキ。またやりましょう……リベンジもしたいからね」
「……喜んで。今のデュエルも本当に紙一重のところ……いいデュエルだった」
二人が握手を交わすとギャラリーからは自然と拍手が送られた。
(負けるつもりはなかったけれど……これで亮に頼まれたことは完遂できたみたいね)
「ユキ、少し忙しくなるわよ」
「……? 何故?」
「気づかない? 今のデュエルでみんなあなたに興味が湧いてきたみたいなのよ」
明日香がユキから離れるとギャラリーがユキに押し寄せてきた。
「質問攻めにあうと思うけど……頑張ってね?」
「えっ……」
その言葉を最後に明日香の姿が見えなくなり、代わりに大勢のブルー女子達がユキを取り囲んだ。明日香が予想した通りに質問攻めにあったユキは大勢に囲まれ緊張していたが、聞かれたことには答えられていた。
「……大丈夫そうね」
「明日香さん」
「レイ?」
「あの、ありがとうございました。ユキのために……」
明日香がユキにデュエルを挑んだ意図に気がついたレイはまだユキの元には向かわず、お礼を言うために残っていた。
「……お礼なら亮に言ってあげて。デュエルを提案したのは亮だから」
「えっ」
(そうなんだ。さすが亮様、優しい。でも……)
「でも……明日香さんもありがとうございます」
明日香は少し意外そうに驚くと、柔和な笑みを見せた。
「どういたしまして。……さあ、ユキのところに行ってあげて」
「はい!」
レイも人混みの中に入っていくのを見届けると明日香はその場を離れようとする。すると作業中に様子を伺っていた亮と目が合い、口元に手を当てて笑うと目で大丈夫だと伝えた。
こうしてユキとレイは新たなオベリスク・ブルーの一員として馴染み、学園祭を迎えたのだった。
勇気機関車ブレイブポッポ、過労死枠説浮上。