佇む少女は機械仕掛け 作:ロボッピ
盛り上がった学園祭も終わり、ユキとレイにとっては初めてとなるアカデミアの授業が通常通り行われていた。長らく休講の扱いとなっていた錬金術の授業もクロノス教授が代理として不慣れながら講義を行うことで再開されていた。
(さすがに小学校の授業とはレベルが違う……。でもどちらかと言えばデュエル関連に重点を置いてるから、その分普通の授業はレベルが抑えめになっている? これなら真面目に受けていれば……何とかなりそう)
授業が終わり放課後。蜂の巣をつついたような生徒達の騒がしい声が教室を満たす。明日香が二人に話しかけようと近づいていくと先にラーイエローの制服を着た生徒が話しかけていた。
「やあ。授業にはついていけそうかな?」
「あ、はい……。えっと、あなたは?」
「おっと失礼、自己紹介が遅れたね。俺はラーイエロー所属の三沢大地。よろしくな。授業で分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
そう言って爽やかな笑顔を見せた青年はアカデミアでも優秀な成績を収めている生徒、三沢大地。二人は彼がまだ幼いユキ達が授業についていけないことを心配して話しかけてくれたことに気がつくと、お礼と共に挨拶を済ませた。
「難しい編入試験を突破してきた君達にはいらぬ心配だったかな?」
「えと……授業は何とかついていけそうです。でも月一である試験が少し不安?」
「ああ……それなら試験前に筆記試験の傾向と対策くらいなら教えてあげよう」
「本当ですか!?」
「それくらいお安い御用さ。でも実技試験の方で当たったら手加減は出来ないからそのつもりで頼むよ」
三沢は二人を激励するとその場を後にした。するとちょうど入れ替わりで明日香が二人に話しかける。
「あら? もう話は終わったのね」
「うん……でも最後に不思議なことを言っていた?」
「えっ、そうだった?」
「実技試験は確か同じ色の制服の人同士でやるって言ってた。だからイエローの三沢さんとユキ達が戦うことはないはず?」
「言われてみればそうだね……」
「そのことね。実はもう三沢君は実力的にはオベリスクブルーにいてもおかしくないのよ。本人の希望でイエローに留まっているけどここ最近の試験ではブルーの生徒と実技試験を行なって順調に勝ち星を重ねてるから、もしかしたらあなた達と戦うこともあるかもね」
「そうだったんだ」
「じゃああの人、結構強いんだ。あれ? 明日香さん一緒に帰らないんですか?」
「ええ……ちょっと校長室に呼ばれてるの。だから今日は先に帰っててね」
(三沢君や亮……彼らも校長室に呼ばれている。このメンバーとなるとやはりセブンスターズの件と見て間違いなさそうね。となれば……大徳寺先生の消息が掴めたのかしら?)
三沢に続くようにして明日香も校長室に向かっていくのを見届けるとユキ達は校舎を後にして帰路についた。
「……そういえばレイちゃん。ブラック・マジシャン・ガールから貰ったカードはもうデッキに組み込んだの?」
「うん! ね、ユキ。デッキ調整にちょっと付き合って! 色々試してみたいんだ!」
「いいよ」
ユキは慣れた様子でレイのデッキ調整に付き合う。長い付き合いの二人はよくデッキの調整に付き合っており、それ故にお互いのデッキのことを熟知していた。
「あそこにいるのは……ユキ達か」
鮫島校長の話を聞き終え、屋上で周りを見渡していた亮は二人がデュエルしていることに気が付いた。
(大徳寺先生の分の七星門の鍵はまだ差し込まれていない。ならばまだ無事ではあるはず。だがここしばらく消息を絶っている以上、7人目のセブンスターズに捉えられている可能性が高い)
二人から目を離すとブルーの寮に明日香が、レッド寮に万丈目や十代、翔に隼人が入っていくのを確認した。
(明日香は一旦吹雪の様子を見に戻ったな。十代達はレッド寮の大徳寺先生の部屋を捜索して手がかりを探すと言っていた。俺は異変にすぐ気づけるよう見晴らしの良いここから様子を伺うとしよう。……ん?)
先程ブルー寮に入ったばかりの明日香が血相を変えて、時々立ち止まりながら何かに導かれるように森の中へと向かっていった。
(まさか吹雪の身に何かあったのか!?)
親友とその妹に迫る危険を感じ取った亮は校舎を後にすると全速力で明日香が向かった森の入り口まで駆けつけた。すぐにでも森の中へ飛び込もうとする亮だったが、先程屋上から見た光景との違和感に気がついた。
(……ユキ達がいない? デュエルが終わってブルー寮に帰ったか。……いや、まさか!?)
脳裏によぎった嫌な予感を振り切るように森の中へ走り出そうとした亮だったが……
「うわあああっ!?」
「万丈目……!?」
耳を貫くような叫び声が森に響くと、亮の中で渦巻く予感がさらに膨れ上がっていく。その予感を証明するかのように万丈目の叫び声はユキ達の耳にも届いていた。
「万丈目さん……!?」
「明日香さんの叫び声が聞こえて森に入ったけど明日香さんは見当たらないし、万丈目さんの叫び声まで聞こえるなんて……一体何が起こっているの」
万丈目の叫び声が聞こえた方に向かった二人は遠くに十代、翔、隼人の後ろ姿を見つける。何かを目印にするように森の奥深くへと入っていく三人を追おうとした二人だったが足の速さはあちらの方が格段に上で追いつくことは叶わず、すぐに草木に視界が遮られ声をかけても届くことはなかった。
「どうしようユキ。これで十代様達に何かあったら僕……」
「レイちゃん……。……ん、これなんだろう。模様? 空中に浮いてる……なんで?」
「あれっ。これって確か授業でやった錬金術のマークじゃない?」
「本当だ……なんでこんなところに」
空中に浮かび黄緑色の光を放つ円形の模様が消えたかと思えばすぐ近くに同じ模様が点灯する。思わず目を合わせた二人だったが、その模様は十代達が向かっていった方向に断続的に浮かび上がった。
「きっと十代様はこれを目印に向かっていったんだ! これを追っていけば追いつけるはず!」
「で、でも怪しいよ……? まるで誰かを誘い出すためのものみたい」
「……! これは十代様をおびき出すためのもの? ……なら、なおさら心配だよ!」
「あ……! 待って、レイちゃん……」
ユキが手を伸ばして止めるより先にレイは遠目まで離れた模様を追うように駆けていき、少し遅れてユキも走り出す。その模様が導いた目的地は古ぼけた廃校舎だった。
「不気味な場所……」
「そうだね……。暗くてよく見えないし……十代様はどこにいるのかな」
森に囲まれて陽の光もほとんど入らない廊下を二人が歩くたびにギシギシと木がきしむ音が響く。校舎自体は大した大きさではなく全体を探し終えた二人だったが彼女達以外の人影を見つけることは出来なかった。
「……! まさか十代様達も誰かに……」
「いや、そうだとしたらその誰かも見つからないのはおかしい……もし十代さん達もここに来たのなら何か見落としがあるのかも」
もう一度隈なく校舎を調べる二人。すると天候が悪くなり雲により空は覆われ、僅かばかり入っていた光も消え去ってしまった。幸い隣り合って歩いていた二人が離れ離れになることは無かったが、懐中電灯の類も持っていない二人はそこで立ち往生する形となってしまった。
「……! ユキ、あそこから光が……」
「え……本当だ」
廊下の一部に空いた穴から道が続いており、そこからうっすらと光が漏れていた。ユキは光を頼りに近づき恐る恐るその穴をのぞいてみた。
「道が……それに奥には階段まで。しかもこの光、自然の光じゃない。人工的なもの……」
「え……! この廃校舎にもう電気なんて通ってるはずが……」
「どうする……?」
「きっと十代様達はこの先にいるんだ! 行くよユキ!」
「う、うん……」
二人が階段を降りるとそこは地下トンネルに続いていた。おぼろげな光が不安定な二人の影をトンネルの壁に映し出しながら、乾いた二人の足音をトンネル中に交差するように響かせつつ奥へと進んでいく。
「……!」
「え……」
だがどうやら彼女達は……招かざる客だったようだ。壁に寄りかかるように置かれていた三つの棺から、それぞれ一人。いや一体と呼ぶ方が相応しいだろうか。棺の蓋が急に横にずれるように開くと包帯を全身に巻いた三体のミイラが二人の前に立ちふさがった。
「きゃっ……!」
「ひゃああああ!?」
行く手を阻まれてしまった二人は叫び声を上げながら慌てて後退した。
「一体何が起こっているの!?」
「分からない……! けどここは引いた方が……」
「でもこんなことが起こってるなら十代様達を置いてはいけないよ……!」
非日常的な現状に混乱し、判断が下さず結論を出せないうちにもミイラ達はじりじりと詰め寄ってくる。レイはユキをかばうように手を伸ばし、ミイラの方を向きながら追いつかれないよう後ろに下がっていく。しかし船の上でボーイからユキをかばった時とは訳が違った。レイの腕は小刻みに震え、口も恐怖を抑えるようにぎゅっと噛み締められていた。
(……怖い。誰か……)
レイと同じくユキも恐怖で頭が回らず、足が震えてしまい慣れない後ろ向きで歩いていた影響もあってついには転んでしまった。
「ユキ!?」
「た、助けて……」
その間にも近づいてくるミイラ達にこれ以上ない恐怖を覚えたユキは思わずある人の名前を叫んでいた。
「助けて——亮さんっ!」
「…………! ユキ、レイ! しゃがむんだ!」
「……!」
「えっ……!」
レイがしゃがむと低い体勢になった二人を飛び越えて、ミイラとの間に割り込んだ者がいた。
(ふぅ。二人の叫び声が聞こえた時は心臓が止まるかと思ったが……どうやら間に合ったようだな)
「無事だったか。二人とも……」
「りょ、亮様!?」
「亮さん……!」
模様の後を追い、完全に光を失った校舎で苦労していた亮だったが、二人がミイラに驚いた時の叫び声で地下の存在に気がつき間一髪のところで割り込むことに成功したのだった。
(叫び声がした後に姿を忽然と消した明日香に万丈目。そして動くミイラ……間違いない。これは七人目のセブンスターズの仕業だろう。俺はもう七星門の鍵を所持していない。だが関係のない二人に手を出そうというのならば……話は別だ!)
「二人に手出しはさせない! もしここを通りたければ……俺とデュエルしろ!」
「…………」
亮がディスクを構えると三体のミイラの額に錬金術の模様が浮かび上がる。すると腕に動物の骨らしきものによって作られたデュエルディスクがどこからともなく出現し、取り付けられた。
「……いいだろう。私たちとデュエルだ」
「……!」
今まで話す様子も無かったミイラが途端に話し出し、三体ともディスクを構えた。
(セブンスターズからの使者というわけか。となればカミューラのデュエルの時のように魂をかけた闇のデュエルの可能性も十分に考えられる……)
「亮さん……これは一体」
「説明は後だ。このデュエルは危険なものになる。お前達はそのまま下がっているんだ」
「え……そんな、3対1のデュエルなんて無茶だよ! 僕も……!?」
「ゆ、ユキも……!?」
状況を把握しきれていない二人だったが危険を察知し、何とか加勢しようとする。しかし彼女達は……立ち上がれなかった。
(……無理もない。何も知らなかった彼女達が受けた恐怖の大きさは計り知れないものだろう。そんな状態で危険なデュエルをしようとしても本能的に体がそれを拒否しているんだ……)
「大丈夫だ。二人とも……俺は負けない!」
(セブンスターズとの戦いに彼女達を巻き込むわけにはいかない。俺が彼女達を……守る!)
「デュエルだ!」
「「「……デュエル」」」
バトルロイヤルルールでの3対1の変則デュエルが今、幕を開けた。
「先攻は俺だ! 俺のターン、ドロー。サイバー・ドラゴン・ドライを召喚する!」
光の粒子が横に繋がるように集まると光のヴェールが溶けるように外れ、中にいた機械竜の姿があらわになった。
サイバー・ドラゴン・ドライ 攻撃力1800
「サイバー・ドラゴン・ドライが召喚に成功した時、自分フィールドのサイバー・ドラゴンのレベルを5とすることが出来る」
「だがお前のフィールドにはサイバー・ドラゴンは……」
「サイバー・ドラゴン・ドライにはフィールド及び墓地で存在する限り、サイバー・ドラゴンとして扱われる特殊能力がある。よってレベルを4から5へと変更する!」
サイバー・ドラゴン・ドライ ☆4→5
「……」
(レベルを……? レベルを上げてもステータスに影響はない。一体どんな狙いが?)
(きっと亮様のことだから何か狙いがあるはず……)
「バトルロイヤルルールでは互いに1ターン目で攻撃することは出来ない。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
亮 LP4000
フィールド 『サイバー・ドラゴン・ドライ』(攻撃表示)
セット2
手札3
「私のターン。フィールド魔法、アンデットワールドを発動する」
闇色に染まった霧がフィールドを包み込んでいく。
「このフィールド魔法が場にある限りフィールドの表側表示モンスター及び墓地に存在するモンスターは全てアンデット族となり、また互いにアンデット族モンスター以外の生贄召喚は出来なくなる」
霧が機械龍を包むと身体から鋭く放たれる金属光沢が失われてしまった。
「何……!」
「そんな! 亮様のデッキは機械族デッキなのに……」
「さらにマジックカード、おろかな埋葬を発動。効果によりデッキから死霊王 ドーハスーラを墓地へ送り、永続魔法、不死式冥界砲を発動してターンを終了させる」
「え……? モンスターを場に出さない。あるいは出せなかった……?」
「……いや、アンデット族のテーマは『不死』だ。わざわざデッキから墓地に送ったあのモンスター……何かあるかもしれない」
ミイラ(右) LP4000
フィールド 無し
セット0 『アンデットワールド』 『不死式冥界砲』
手札3
「私のターン、ドロー」
「このスタンバイフェイズに墓地のドーハスーラの効果を発動する」
「……!」
「フィールド魔法が表側表示である場合、スタンバイフェイズに墓地に眠るこのカードを守備表示で復活させることが出来る」
「自己再生能力を持っているのか……!」
地面に空いた穴から霊気を帯びた二つの骸骨が浮かび上がり空中で合体すると、途端に霊気が大蛇の身体となって骸骨に取り憑いた。
死霊王 ドーハスーラ 守備力2000
「ドーハスーラが場にいる限りドーハスーラ以外のアンデット族モンスターの効果が発動した時、その効果を無効にする効果、フィールド・墓地のモンスターを1体除外する効果を1ターンに1度ずつ適用することが出来る」
「アンデットワールドで亮様のモンスターはアンデット化しちゃう。これじゃあ亮様はモンスター効果を迂闊に使えない……」
「ドーハスーラが特殊召喚されたことで不死式冥界砲の効果を発動。自分フィールドにアンデット族モンスターが特殊召喚された時、1ターンに1度相手に800のダメージを与える」
「……!」
「バトルロイヤルルールでは相手プレイヤーを選択する必要がある。当然、私が選択するのはお前だ」
骸骨の口から魂が解放されるとエクトプラズムとして亮に放たれて、心臓を貫くように通過していった。
「ぐっ!?」
亮 LP4000→3200
ダメージを受けた亮は思わず胸を手で押さえ、片膝をついてうずくまった。
「りょ、亮さん……?」
「……大丈夫だ。心配するな」
亮は胸に走った痛みをこらえながら立ち上がった。
(まさか。本当にダメージが……?)
(セブンスターズの全員が闇のデュエルを仕掛けて来たわけではない。だが姿の見えない万丈目と明日香のことを考えるとやはりと言うべきか、7人目のセブンスターズは少なくとも穏便に済ませてはくれないようだな)
「まだこちらのターンだ。永続魔法、不死式冥界砲を発動する」
「……!」
「さらに永続魔法、ミイラの呼び声を発動しその効果を使用する。自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札のアンデット族モンスターを特殊召喚することが出来る。死霊王 ドーハスーラを特殊召喚!」
怨念が込められた骸骨がその恨みを大蛇の身体へと変えて現世に現れた。
死霊王 ドーハスーラ 攻撃力2800
「不死式冥界砲の効果を食らえ」
「くうっ……!」
亮 LP3200→2400
亮の胸に再び激痛が走り地面に膝をつきそうになるが、すんでのところで踏ん張り、しっかりと相手を見据えて立ち上がった。
「さらにマジックカード、無情の抹殺。私の場のドースハーラを墓地に送り、お前の手札をランダムに1枚墓地に送る」
骸骨が墓地に沈んでいくと大蛇の身体が霊魂となって亮の手札を1枚喰らった。
「サイバー・ドラゴンが墓地に送られたか……」
「亮様のキーカードが!」
「ターンエンドだ」
ミイラ(中央) LP4000
フィールド 無し
セット0 『不死式冥界砲』 『ミイラの呼び声』
手札2
「ならば私のターン、ドロー」
「この瞬間、墓地に眠るドーハスーラは復活し不死式冥界砲によりさらに800のダメージをお前に与える」
「ぐうっ……!?」
死霊王 ドーハスーラ 守備力2000
亮 LP2400→1600
気丈に振る舞っていた亮だったが胸に走った
「やっぱりおかしい……。普通のデュエルじゃこんなのあり得ない」
「亮様、大丈夫!?」
「ああ……」
そう答える亮だったが既に二人の方に振り返る余裕も無かった。
「マジックカード、トレードイン。手札のレベル8モンスター、ドーハスーラを墓地に捨て2枚のカードをドロー。……不死式冥界砲を発動する」
「そんな……3対1でただでさえ不利なのに、3人ともあのカードを引き当てるなんて」
「……」
「続けていくぞ。マジックカード、生者の書—禁断の呪術—。墓地に眠るアンデット族モンスター、ドーハスーラを復活させ、お前の墓地に眠るサイバー・ドラゴンを除外する」
分厚い書が開かれると緑色の怪しい光によって照らされた地面を貫くようにしてドーハスーラが蘇った。
死霊王 ドーハスーラ 攻撃力2800
「そして不死式冥界砲が放たれる」
「がっ……」
亮 LP1600→800
亮は身体のバランスを崩すと左手で胸を押さえながら、地面に右手をついた。
「マジックカード、アドバンスドロー。自分フィールドにいるレベル8以上のモンスター……ドーハスーラをリリースし、2枚のカードをドローする」
「……ドーハスーラが墓地に」
「あ……また次のスタンバイフェイズにドーハスーラが復活したら亮様のライフは!」
「せめてあのフィールド魔法さえ破壊出来れば……」
「そうはさせない。永続魔法、フィールドバリアを発動。このカードがある限り互いにフィールド魔法を破壊出来ず、またフィールド魔法を発動することも出来ない」
「これでアンデットワールドは破壊出来ない。フィールド魔法が表側表示である限り復活するドーハスーラはまさに『不死』の能力を得たというわけか……」
「そういうことだ。私はカードを1枚場に伏せターンを終える」
ミイラ(左) LP4000
フィールド 無し
セット1 『不死式冥界砲』 『フィールドバリア』
手札3
「俺の……ターンッ!」
「だがお前に出番を渡すわけではない。このスタンバイフェイズにドーハスーラは蘇り……不死式冥界砲により800のダメージを与える」
「……!」
死霊王 ドーハスーラ 守備力2000
ドーハスーラが蘇ると周りに浮かぶ怨霊が亮に向かっていき、その胸を貫いた。
「亮様!?」
「亮さん……!?」
胸を貫いた衝撃で亮はその身を地面に預けてしまう。……しかし彼は痛みを堪え、身体を引きずるようにして立ち上がった。
亮 LP1000
「なんだと……」
「俺は不死式冥界砲に対して2枚の伏せカードを発動させていた。帝王の
「あ、危ない……」
「良かった……」
「……だが不死のコンボが成立した以上、ライフが尽きるのが少し伸びただけだ。それにお前はモンスター効果も封じられている」
「果たしてそうかな? フィールドをよく見てみるんだな」
サイバー・ドラゴン・ドライが粒子となって分散されていくと立ち込めていた霧を打ち消していった。
「なに……」
「帝王の轟毅の効果は自分フィールドのレベル5以上の通常召喚されたモンスターをリリースし、フィールドの表側表示のカードを1枚ターン終了時まで無効にした後、俺はカードを1枚ドローするというものだ。俺はこのカードによりアンデットワールドを無効にし、カードをドローしていた」
「レベル5以上の通常召喚されたモンスター……だと?」
「あっ! サイバー・ドラゴン・ドライ……!」
「サイバー・ドラゴン・ドライは自身の効果でレベルを4から5へと変更していた。それはこのカードの発動条件を満たすためだったんだ……」
「なん……だと……」
「俺はこのデュエルが始まってからお前達のことを観察していたが、誰一人としてサイバー・ドラゴン・ドライに対して警戒をしていなかった。自分のコンボを成立させることには長けているようだが、相手の手を読むのは苦手なようだな。アンデッドワールドの効果が消えたことで俺のモンスターはアンデッド化を回避し、モンスター効果の使用に問題はなくなった!」
「くっ……だがモンスター効果が使えたところでフィールドバリアによりアンデットワールドは破壊出来ない。不死のコンボが消えたわけではない……」
「その通りだ。確かにそのモンスターを墓地に送っても次のターンが来れば復活させられてしまうだろう」
「ふ……負けを認めたか」
「俺がお前達の戦術にどういう判断を下したかは……その目で観察するといい。サイバー・ドラゴン・コアを召喚する!」
機械竜の中核となるパーツが出現すると亮のデッキに赤いプラグが伸びていく。
「サイバー・ドラゴン・コアの効果でデッキよりサイバー魔法カード、エマージェンシー・サイバーを手札に加える。ドーハスーラは当然その効果を適用することは出来ない」
「くっ……」
「そしてエマージェンシー・サイバーを発動。デッキよりサイバー・ドラゴンモンスターであるサイバー・ドラゴンを手札に加える。さらにマジックカード、サイバー・リペア・プラントを発動。墓地にサイバー・ドラゴンとして扱われるサイバー・ドラゴン・ドライが存在することでデッキから機械族・光属性のモンスター……サイバー・ドラゴンを手札に!」
サイバー・ドラゴン・コアのプラグがデッキに接続されると眠っていた2体の機械竜が取り出され、亮の手中に収まった。
「やった! サイバー・ドラゴンが手札に戻ったよ!」
「相手の手をかわした上で、モンスターとマジックの連携でキーカードを手札に……」
(あんなにダメージを負った状態で尚も隙のないタクティクス……。ユキとデュエルした時もそうだった。あの人はどんな時でも冷静、それでいて全力をぶつけてくる……)
「ゆくぞ! マジックカード、パワー・バンドを発動! 機械族融合モンスターに必要な素材を自分の手札・フィールドから墓地に送り融合召喚を行う! サイバー・ドラゴン・コアはフィールド及び墓地でサイバー・ドラゴンとして扱う。よってこのモンスターと手札のサイバー・ドラゴン2体を融合!」
2体のサイバー・ドラゴンが現れると既に場に出ていたサイバー・ドラゴン・コアが模倣するかのように変形して姿をサイバー・ドラゴンへと変える。3体の機械竜が火花を散らしながら結合し、より強力な3つ首の機械竜となってその姿を見せた。
「融合召喚! 現れよ、サイバー・エンド・ドラゴン!」
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000
「攻撃力4000だと……」
「まだだ! パワー・ボンドにより呼び出されたモンスターの攻撃力は元々の攻撃力分上昇する!」
ただでさえ十分な大きさのある機械竜の胴体がトンネルの中で所狭しと伸びていった。
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000→8000
「な……」
「ただし俺はエンドフェイズに上昇した数値分のダメージを受ける」
「……仕掛けどころを誤ったか。私達の場のモンスターは守備表示故にダメージはない。このターンで終わりだな」
「……ああ、そうだな。このターンで終わりだ。機械族融合モンスター専用装備魔法、エターナル・エヴォリューション・バーストをサイバー・エンド・ドラゴンに装備し……バトル! お前の場のドーハスーラへと攻撃!」
亮は場を一瞥すると左側にいるミイラの方に向き直り、攻撃を仕掛けた。
「そうはさせない。カウンタートラップ、攻撃の無力化。相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了……」
「無駄だ。エターナル・エヴォリューション・バーストがある限り、俺のバトルフェイズ中に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動出来ない」
「何だと……!」
縦横無尽に伸びるそれぞれの首から光線が放たれると、ドーハスーラを三つの異なる角度から貫いた。
「さらにサイバー・エンド・ドラゴンは守備モンスターを攻撃した場合、守備力を攻撃力が超えていればその超過分の戦闘ダメージを相手に与える」
「超過ダメージは……6000、だと……」
ミイラ(左) LP4000→0
「不死のコンボ、確かに恐ろしいコンボだ。だがそれを操るプレイヤーにはライフという限界がある」
「……そんな手があったとは。だが私達のライフは残っている。攻撃を終えたお前にはパワー・ボンドのデメリットが待っている……」
「それはどうかな? エターナル・エヴォリューション・バーストのさらなる効果! 装備モンスターが相手モンスターに攻撃したダメージステップ終了時に俺の墓地に眠るサイバー・ドラゴンモンスターを除外することで続けて相手モンスターに攻撃出来る。この効果を使用しサイバー・ドラゴンを除外することでドーハスーラに連続攻撃!」
「何だと……」
「まさか……」
トンネルの暗闇に潜むようにしていたドーハスーラがサイバー・エンド・ドラゴンが放つ光に照らされると、強力な光線によって撃ち抜かれ怨念と共に地に沈んだ。
ミイラ(右) LP4000→0
「再び装備魔法の効果を使用し、サイバー・ドラゴンを除外することでドーハスーラに攻撃する! エターナル・エヴォリューション・バースト……サンレンダァ!」
ドーハスーラが光線の光に包まれると怨念が浄化されていき、骸骨に宿っていた魂が成仏していった。
ミイラ(中央) LP4000→0
「わ、ワンターンスリーキル……!?」
「……凄い」
こうしてデュエルの幕は閉じ、サイバー・ドラゴン・ドライの粒子が消え去ってもトンネルを覆うようにして出ていたアンデッドワールドによる闇の霧も出現しなくなった。
「アムナエル……様。あなたの見込んだ通り、彼も遊城十代に勝るとも劣らない錬金術の使い手でした……」
「アムナエル……それが7人目のセブンスターズか。……!」
ミイラの額から錬金術の模様が消えると、ディスクと共に三体のミイラの身体が煙となって消滅してしまった。
(消えた……か。とりあえずの危機は去ったようだな)
亮が少し気を緩めると先ほどのデュエルで蓄積されたダメージが重くのしかかった。
「亮様! 大丈夫!?」
「ああ。なんとか……な」
体勢を崩しかけた亮だったが致命的なダメージまでは負わなかったようで、レイの支えがなくても立つことは出来るようだった。
「亮さん、ユキ達のためにそこまで……。………!?」
「ユキ? どうかしたのか」
「……う、ううん。ユキは大丈夫。……でも守ってくれてありがとうございました」
「亮様、ありがとう!」
「お前達が無事ならそれでいいさ。ところで二人はどうしてここに?」
「十代様達があの錬金術の模様でここに誘い込まれたみたいなんだ! だからこの奥で何かされてるんじゃないかって心配で……」
(万丈目と明日香が敗れたなら残りの七星門の鍵を持っているのは行方不明の大徳寺先生と十代だけ。7人目のセブンスターズに呼び出される理由は十分にあるな。十代を放っておくわけにもいかないが、二人だけでこの道を帰らせるのも危険か。……仕方ない、このまま連れて行くしかないか)
「行くぞ、二人とも。それにこうなってしまった以上、今起きていることも説明しておこう……」
「はい! ユキ、行こう?」
「うん……」
奥へと歩を進め出した亮の後ろを少し遅れて二人がついていく。
(こんなにも大きく見える背中が)
道すがらに先ほどのデュエルやセブンスターズについて亮から説明を受けながら、ユキはどこか心にモヤがかかっているような感覚に陥っていた。
(どうしてさっき……あんなに遠くにあるように感じたんだろう)
そのトンネルはやがて突き当たりにある場所へと繋がっているのだが、今のユキはそのトンネルがどこまでも果てしなく続いているような気がしていた。
今回出てきたミイラはイメージ的には『さまようミイラ』を想像して頂けるとピンと来やすいかも。
追記:12月30日時点でデュエル構成のミスに気付きました。後日デュエルの内容を差し替えさせていただきます。申し訳ございません……。
追記:12月31日時点で修正完了しました。前述のミスはアンデットワールド下で機械族融合モンスターにしか装備できないエターナル・エヴォリューション・バーストを発動していたことです。そのため1ターン目に伏せられていた手のひら返しが帝王の轟毅に変更され、攻略法がドーハスーラをセット状態にすることからアンデットワールドの無効化に変わっています。