幸運なノービス物語   作:うぼのき

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序章
第1話 ユグドラシル


「ついにこの時が……」

 

 長かった。本当に長かった。

 

「みんなありがとう……僕もこれで……」

 

 PC画面に映る僕のキャラが敵を斬る。

 30人を超える仲間達が見守る中、その敵を倒した時。

 

「きたーーー!」

 

 天使の羽のエフェクトと共に、僕のキャラがレベル99になった。

 発光式。

 レベル99となり、足元からオーラのような光りが放たれるようになる。

 ラグナロクオンライン(RO)ではよくある光景だろう。

 オーラを放つキャラが「ノービス」であることを除けば。

 

 スーパーノービス。通称スパノビ。

 ノービスはROでキャラを作ると必ずこの職業から始まる。

 ジョブレベル10になると、通常は1次職に転職する。

 ソードマン、シーフ、アーチャー、アコライト、マジシャン、マーチャント。

 

 しかし転職せずにそのままノービスとして成長することを選んだ者達はスパノビと呼ばれた。

 僕もそのスパノビに魅入られて、この茨の道を歩んできた。

 同じスパノビの仲間だけではなく、ギルドのみんなも協力してくれてついにレベル99となったのである。

 

 しかもただのスパノビではない。

 僕のスパノビのステータスはなんと……

 

 

 Str:8

 Agi:97

 Vit:5

 INT:5

 DEX:5

 LUK:99

 

 

 神速クリ型スパノビなのである。

 勝手に僕が名付けました。

 武器は当然+10トリプルクリティカルスティレットです。

 ステータスポイントは1余ってしまうステ振りになったけどね。

 

 画面にはみんなから祝福を受ける僕のキャラが、なんだか照れているように見える。

 そして「枝折り」が始まりお祭り騒ぎだ。

 レベル99になることは「デスペナ」から解放されることを意味する。

 もう何回死んでも恐くないのだ!

 

 お祭りが終わり、しばらく溜まり場で談笑する。

 いつもの光景もオーラを放つ僕のノービスを見るとなんだか新鮮に見える。

 と、同時にちょっと寂しい気もする。

 目標としていたレベル99のノービスを達成してしまったことによる喪失感だろうか。

 

「本当のスパノビが実装されるのが待ち遠しいね」

 

 チャットに仲の良いギルメンの発言が表示される。

 

 本当のスパノビ。

 一部で噂になっているノービスから転職できる本当の職業として「スーパーノービス」が実装されるという噂だ。

 なんでも1次職全てのスキルを取得することができるとか。

 ジョブレベルは50ではなく99とか。

 様々な憶測が飛び交っている。

 

 まあどんなに期待しても、スーパーノービスの前に2-2次職の実装が先なんだけどね。

 2-2次職は1次職から転職できる新たな上位職だ。

 クルセイダー、ローグ、バード(男)、ダンサー(女)、モンク、セージ、アルケミスト。

 こちらはすでに韓国で実装済みなので、ある程度確実な情報が出てきている。

 

 ギルメン達と2-2次職の話で盛り上がり、夜も遅くなったのでログアウトして寝た。

 

 

♦♦♦

 

 

 今は夏休み。

 大学受験を控えた高校3年生の僕にとっては嬉しい休みの日々。

 特に難関の大学を狙っているわけではないので、勉強はそこそこで大丈夫だ。

 今日もPCを起動すると、さっそくROに接続する。

 レベル99になったから、高難易度ダンジョンもノビで行って問題なし!

 デスペナないからね!

 

 さっそくサーバーを選択……あれ?

 なんだこのサーバー?

 そこには見知らぬサーバーがあった。

 

 

 ユグドラシル(0人)

 

 

 ユグドラシルって北欧神話で世界を支えている世界樹のことだよな。

 新しいサーバーの告知なんてなかったはず。

 しかもログイン人数は0人って!

 これは僕が最初の1人になれるかも!?

 

 喜び勇んでユグドラシルのサーバーを選ぶと、

 

「え?」

 

 そこには僕のレベル99のノービスである「グライア」がいた。

 なんでグライアが表示されるんだ?

 サーバーでキャラ共有?

 

 しかもキャラスロットが1つしかない。

 とりあえずグライアでログインしてみた。

 真っ暗な画面の中にぽつんとグライアがオーラを放って立っている。

 

 なんだここ?

 

 クリックすると移動できるので、どんどん上に向かって移動させていくと、白い髭の老人が立っていた。

 クリックすると会話ウィンドが表示される。

 

 

オーディン

「よく来たなグライア。ここは運命の間である。お主はユグドラシルの世界へと渡るのだな?」

 YES NO

 

 

 いきなり質問された。

 しかもこの老人の名前がオーディンになっている。

 北欧神話の最高神じゃないか。

 とりあえずYESを選択する。

 

 

オーディン

「うむ。ではまずお主に天職を授けよう。……むむ! なんと! お主はノービスを極めた者ではないか! これは驚いた。長いことノービスを極めた者に出会わなかったもんでな。ならばお主の天職はこれしかあるまい! スーパーノービスじゃ!」

 

 

 これなんかのイベントか?

 そんな風に思いながらオーディンの言葉を目で追っていたら、転職の時のエフェクトが起きる。

 

「え?」

 

 グライアの見た目が変わっている。

 ノービスよりちょっとかっこいいノービスになっている。

 職業もスーパーノービスになっている。

 

 

オーディン

「うむ。久しぶりにスーパーノービスを見れて、わしも満足じゃ。

 ではユグドラシルでの活躍を祈っておるぞ。向こうで会える日を楽しみにしておる」

 

 次の瞬間、パソコンから光りが溢れ僕を包み込んだ。

 

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