幸運なノービス物語   作:うぼのき

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第39話 魂

 朽ち果てた教会を出た僕はワープポタールに向かって進んでいった。

 歩きながら、まさかまた別世界に飛ばされた? なんて不安になったけど、ステータス画面は呼び出せたし、宝剣スキルも発動したのでおそらく同じ世界のはずだ。

 

 やがてプラズマのようなモンスターが宝剣の射程距離に入った。

 1匹だけだったので簡単に倒せるかと思いきや、これが意外に強かった。

 見た目通りプラズマ電流を飛ばして攻撃してきたのだが、HPも高く倒すのにそれなりの時間を要したのだ。

 グラストヘイムのモンスターより強いな。

 

 倒すとプレゼントボックスというアイテムを落とした。

 開けてみると、中から妙なアイテムが出てきた。

 

 

 ソードマンの魂

 

 

 なんだこれ? ソードマンの魂なんてアイテム聞いたことないぞ。

 アイテムボックスの消費欄に入ったので、消費型のアイテムのようだ。

 とりあえず使ってみることにした。

 

 ソードマンの魂をアイテムボックスから取り出すと、手の平に揺らめき輝く魂が現れる。

 地球にいた頃に想像していた人魂そのものだな。

 ソードマンの魂を使ってみると、揺らめき輝く魂が僕の体内に吸収されていった。

 

「むぐっ!」

 

 いきなりのことにちょっと驚いた。

 にゅるって体内に入ってくる感触があったのだ。

 これで何か変わったのか?

 ステータス画面をいろいろ見てみると、

 

「お、おお!? ええ!?」

 

 僕以外誰もいない島に声が響く。

 僕のステータス画面のスキル欄には、ソードマンの全スキルが表示されていたのだ。

 しかもこの世界では表示されないはずのパッシブ系スキルまでちゃんと表示されている。

 

 僕はソードマンになったのか? と一瞬思ったが、僕の天職はノービスのままだ。

 HPやSPにも変化はない。

 ソードマンのスキルだけを手に入れたようだ。

 

 他にもあるのか? と思い、見つけたプラズマモンスターを片っ端から倒していった。

 朽ち果てた教会のあるマップにプラズマは全部で7匹いた。

 最初に倒したプラズマを含めて7匹だ。

 そしてその全てがプレゼントボックスを落とした。

 手に入れたプレゼントボックスを開けていくと、

 

 マジシャンの魂

 アーチャーの魂

 アコライトの魂

 シーフの魂

 マーチャントの魂

 テコンキッドの魂

 

 最初に手に入れたソードマンの魂と合せて、1次職全ての魂が揃った。

 テコンキッドだけ僕の知らない天職だった。

 これで1次職全てのスキルを手に入れたわけだ。

 シーフのスキルを手に入れたことでダブルアタックのスキルを取得してしまった。

 ゲームではダブルアタックとクリティカルは同時に発生しない仕様だった。

 つまり僕は取得してはいけないスキルを取得してしまった! ……訳ではない。

 

 ソードマンのスキルを手に入れた直後にすぐに気付いたのだが、僕のスキル欄には確かに1次職全てのスキルが表示されている。

 が、しかし、使用することができないのだ。

 バッシュはもちろん、魔法を詠唱しても虚しい声が響くだけだ。

 パッシブ系スキルも適用されていないだろう。

 

 理由は分からないけど、とりあえず進むしかない。

 このマップにはもうプラズマモンスターはいないので、遠くに見えていたワープポイントに入ることにした。

 

 

 次のマップに入ると、同じく島ではあるけど中央から伸びる長い橋が見える。

 その橋の先にまたワープポイントが見えた。

 

 プラズマのモンスターは見えない。

 代わりに、何か茶色の四角い箱に白い点の目と口があって、箱の横に小さな翼がついて浮かんで飛んでいるモンスターがいた。

 ちょっと馬鹿っぽいけど可愛らしい。

 茶色ではなく、紫色の同じ形をしたモンスターもいた。

 

 攻撃してみると、この浮かぶ箱モンスターはなかなかタフだった。

 でもHPは高かったけど、強さはそれほどでもなかったので、簡単に倒すことができた。

 

 茶色の箱モンスターから、

 ナイトの魂

 ウィザードの魂

 ハンターの魂

 プリーストの魂

 アサシンの魂

 ブラックスミスの魂を手に入れた。

 

 紫色の箱モンスターから、

 クルセイダーの魂

 セージの魂

 バードの魂

 ダンサーの魂

 モンクの魂

 ローグの魂

 アルケミストの魂を手に入れた。

 

 紫色の箱モンスターから手に入れた魂の天職は、2-2次職と言われるものだと思う。

 日本ではまだ実装されていなかったけど、韓国で実装されていた情報を見た時にこんな名前だったと記憶している。

 

 スキルは取得しても、同じく使えることはなかった。

 もはやスキルが多すぎて、見え難いことこの上ない状態だ。

 

 

 橋に向かっていくと、浮かぶ箱モンスターではない別のモンスターと出会った。

 

 見た目からして悪魔っぽいモンスターが2匹。

 どちらも黒塗りの法衣を着ている。

 1匹は恐ろしい化物顔に巨大な十字架のような武器を持っていて、もう片方は女性のような顔に背中から黒い翼が生えていた。

 

 2匹同時に戦うことになるも、宝剣スキルを使って難なく倒すことができた。

 浮かぶ箱モンスターほどHPはなかったけど、戦闘能力はこっちの方が高かったので一瞬も気を緩めることなく戦った。

 

 2匹からは、

 拳聖の魂とソウルリンカーの魂を手に入れた。

 聞いたこともない天職だけど、とりあえず使ってスキルを取得しておいた。

 あいかわらず使えないけど。

 

 このマップにもモンスターの姿が見えなくなったので、長い橋を渡り次のマップへと進んでいった。

 使えないスキルを取得し続けているけど、最後にオーディンと会うことで使えるようになるのだろうか?

 

 

 橋を渡りその先にあるワープポイントに入る。

 再び同じような島のマップだ。

 しかしその先にワープポイントは見えない。

 あの朽ち果てそうな教会に似た、同じく朽ち果てそうな教会が見える。

 どうやらここが最終マップのようだ。

 日が落ちるまであと30分もないだろう。

 

 そして最終ボスもいた。

 橋の道の先に、漆黒の翼を広げる女性の戦士がいる。

 堕天使という言葉が思い浮ぶな。

 

 てっきりオーディンが待っているのかと思ったが……いや、こいつを倒したらオーディンが登場するのかもしれない。

 ピリピリと感じる気配から、間違いなくボス級の強さだろう。

 

「よく来たな」

 

 橋を渡りきった僕に、堕天使が声をかけてきた。

 喋れるのか。

 ならモンスターではない?

 

「貴方が僕をここに呼び寄せたのですか?」

 

「違う。私ではない」

 

「ではオーディンが?」

 

「そうだ。オーディン様の命により私はここでお前を待っていた。

 私はワルキューレのランドグリス。

 オーディン様に選ばれしグライアよ。その内に眠る力、我が命を糧に目覚めさせよう!」

 

 

 ランドグリスはその手に持つ槍で、僕の胸を……突き刺した。

 反応できない速度ではなかった。

 でもなぜか僕はその槍を避けることをしなかった。

 

 神聖な……というよりも赤く邪悪な感じのする槍は僕の心臓に到達している。

 でも不思議と痛くなかった。

 心臓に突き刺された槍の先端から、僕の身体に流れてくる力を感じる。

 とても熱いその力が僕の身体に満ち溢れていった。

 

 僕の目の前でランドグリスの姿がみるみるうちに老いていく。

 堕天使のようにちょっと怖かったけど、綺麗で美しかったその姿はもうない。

 自分の命を糧に僕の眠る力を目覚めさせるといっていた。

 僕の身体に流れ込んでいるのは、彼女の生命力そのものなのか。

 

「オーディン様はもうこの世にいらっしゃらない。

 その霊魂のみがニブルヘイムで今もこの世を見守って下さっている。

 ワルキューレも私とスクルドを残してみな消えていった。

 グライアよ、スクルドに会うがいい。

 スクルドはジュノーにあるユミルの書の中にいる。

 ユミルの書を手に入れるのだ」

 

 え? オーディンはもうこの世にいない?

 

「目覚めた力の使い方をここで学ぶがよい。

 私の影が、お前の相手となるだろう。

 そして時が来れば、お前をジュノーへと導く光が現れる」

 

 徐々にランドグリスの肉体が崩れ始めた。

 同時のランドグリスの影が伸びていくと、離れるはずのない影がランドグリスから離れていく。

 1つの影が離れると、さらに影が生まれてまた離れていく。

 その影の中からランドグリスに似た堕天使が生まれてきた。

 その数全部で15体。

 

「私の影を倒せないようでは、彼の者が創りし化物に勝つことなどできないぞ。そして蘇りつつあるあの巨人にも」

 

「巨人? あ、ちょ、ちょっと待って!」

 

「答えは自らが見つけるがいい……これでようやく私の役目は終わった」

 

 

 ランドグリスの肉体は塵となって消えていった。

 巨人とはいったい何のことだったのか。

 影から生まれた15体のランドグリス似の堕天使達は、四方八方に散っていく。

 いきなり襲ってくることはないようだ。

 

 ステータス画面を見た。

 僕の天職がスーパーノービスになっていた。

 ランドグリスから力をもらった時にスーパーノービスの天職を得たのだろう。

 HPとSPも上がっている。

衣装も少し変って、ちょっとだけ格好良くなったかな。

 

 スキルの欄に変化があった。

 ずらりと並んでいたスキルは整理されて、各天職のタブが作られている。

 各天職のタブの中には、その天職の全スキルが表示されている。

 スキルは使えるようになったのだろうか?

 

 2-2次職はさっぱり分からないし、聞いたこともないテコンキッドに拳聖とソウルリンカーもまったく分からない。

 これはランドグリスの影達と戦いながら、スキルの効果を確認していく必要がありそうだ。

 

「とりあえずあの教会に行ってみるか」

 

 ランドグリスは時が来れば僕をジュノーに導く光が現れると言っていた。

 まずは寝床を確保して……あ、食料足りるかな? アイテムボックスの中にある食料を数えながら教会へと向かっていった。

 

 外見は朽ち果てそうな教会だったのに、中は意外と綺麗だった。

 これなら寝る分には問題ないな。

 教会の裏手には綺麗な泉もあったので、水浴びもできそうだ。

 大切に使おう。

 

 今日はもう疲れたので、寝袋をアイテムボックスから取り出す。

 適当な食料も取り出して食べると、寝袋に入った僕は一瞬で眠りに落ちていた。

 

 

♦♦♦

 

 

 朝です。

 

 教会の外に出ると、ランドグリスの影がうろうろしているのが見える。

 モンスターみたいな存在なのだろうか。

 

 朝食を食べながら、いろんな天職のスキルを見ていった。

 

 その中で目を引いたのが、テコンキッドが持つ「跳躍」というスキルだった。

 跳躍スキルを使ってみた。

 

「はぐっ!」

 

 びよ~んと跳ねた僕は教会の天井に頭をぶつけてしまった。

 名前通りのスキルってわけか。

 

 外に出て跳躍スキルを再び使う。

 びよ~んと空高く跳んだ。想像以上に高く跳んだ。

 え? これってこのまま落ちていくのか?

 

「うおおおお!」

 

 着地の衝撃に身構えるも、スキル効果なのか着地の際の衝撃はあまりこなかった。

 これは面白い!

 何度かびよ~んびよ~ん! と跳ねて遊んでしまった。

 

 モンクのスキルで「残影」というスキルがまた便利だった。

 「気功」というスキルで気を溜めないと使えないが、一定距離を瞬間移動するスキルだ。

 使い方を学べばかなり有効なスキルだろう。

 気功を5つ溜めて使える「爆裂波動」状態なら残影は使いたい放題みたいだな。

 

 他にもいろいろあるのだが、とりあえずランドグリスの影と戦ってみるか。

 リンクしないよね? 15匹全部襲ってきたらさすがに無理だし。

 あれ? ここって神力範囲……外ですね。名前が赤い。

 ということは、ランドグリスの影に負けると死ぬのか。

 

 一番近くにいたランドグリスの影と戦ってみた。

 すると、そいつは斧を持って攻撃してきたのだ。

 いきなり「ハンマーウォール」から「メマーナイト」を打ち込んできやがった。

 こいつはブラックスミスってわけか。

 

 ランドグリスの影は全部で15匹。

 僕が手に入れた2次天職は15個。

 なるほどね。

 

 ランドグリスは影にそれぞれの天職を与えているんだ。

 そしてその動きを見てスキルの使い方を覚えろと。

 なら僕もブラックスミスのスキルを使って相手した方がいいか。

 

「ウェポンパーフェクション! オーバートラスト! マキシマイズパワー!」

 

 15匹のランドグリスの影全部を倒すのに、どれだけ時間がかかるかな……。

 

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