第41話 合流
空中都市ジュノー。
僕がこの世界に来た時点で既にボット帝国にアルデバランまで占領されていたので、当然僕はジュノーに来たことはない。
つまりジュノーの街中の構造を知らないのだ。
それはつまり……ちょっとした迷子というか、なんというか。
戦闘音らしきものが聞こえる方角に進んでいったのだが、ボット帝国の戦士達ばかりが見えて、カプラーさん達を探すことはできないでいる。
正面入り口がどこなのか分かれば、きっとそっちにいるはずなのだが、街の人に道を尋ねようにもみんな洗脳状態なので声をかけるわけにもいかない。
そのため1人でジュノーをあっちこっち彷徨っている状態なのだ。
幸いクローキングで敵に見つからずに移動できているけど、SPが切れそうになる度に無人の家の中に入っては休憩している。
ジュノーの中も消費アイテムは使えない。神力遮断スキルだろう。
今もSPが切れそうになったので、近くにあった家の中に入って休んでいるところだ。
「あっちこっち迷っているけど、少しずつ戦闘音に近づいている……はず」
カプラーさん達に近づいていると信じて、休憩を終えた僕はクローキングで外に飛び出した。
大通りを駆け抜けて広場に出たところで戦闘が行われていた。
特に広場の中央での戦闘が激しい。
(あれはカプラーさん達だ!)
広場の中央で戦っていたのはカプラーさん達だった。
カプラ社と秘密の羽メンバーが勢揃いしているのが見える。
それを相手しているのは、たった4人のボット戦士だ。
だがその姿からただのボット戦士ではないとすぐに分かった。
ブラックスミス、プリースト、ウィザード、ハンターの4人に見えるが、その姿は上位職を連想させる姿だった。
それにクローンモンスターのボット戦士のような半透明の白い煙が見えない。
彼らはウィンザーや、グリームさんのお師匠さんを殺したガイルと同じ“オリジナル”なのか!
クローキングで近づき、魔法を詠唱するウィザードの背後を取ろうとした。
だが、
「ルアフ」「サイト」
プリーストとウィザードが同時に隠蔽スキルを見破る魔法を唱えてきた。
簡単に背後を取らせてくれる甘い相手だとは思っていない。
焦ることなく宝剣スキルを発動、プリーストに宝剣を向かわせると、僕はウィザードに斬りかかった!
「シャープシューティング!」
ハンターの強烈な矢が一直線の光となって襲ってきた。
ランドグリスの影にも負けない速さだが、この速さなら見える。
ハンターの一撃を避けながら、僕の一撃はウィザードに届いた。
「ハンマーフォール!」
背後からブラックスミスの斧が振り下ろされてくるが、その斧が地面を叩いた時には僕はもうそこにはいない。
残影により、一瞬でカプラーさん達の前に移動しているから。
「グライア様!「グライア君!」「主!」
背中にみんなの声を受けた僕は、何と事情を説明したものかと思うも、今は目の前の敵を倒さないといけない。
「遅れてすみません。いろいろ説明したいことがあるのですが、今は目の前の敵を!」
「後でゆっくりお聞かせ下さいね!」
「ストームガスト!」
ウィザードがストームガストを詠唱し始めた。
だが、
「ランドプロテクター!」
地面が光り輝く。縦横8mほどの正方形の光り輝く地面の上では、いかなる魔法も無効となる。
僕らに降らしたストームガストは霧となって消えていった。
「なんだあれは?」
ブラックスミスの男が怪訝な表情で光り輝く地面を見ている。
「さて、なんでしょうね」
「お前の仕業か。宝剣持ちとなれば、お前がグライアだな。ウィンザーが言っていた通り面白そうな奴だな。俺はアルトアイゼン! 勝負しようぜ!」
「いいですけど、後ろのお仲間は納得していないようですが?」
「何勝手に勝負するとか決めてるのよ。ボルセブ様の指示を忘れたの?」
「ディモン、お前のそのくそ生真面目な性格どうにかならないのか」
「ボルセブ様の指示は絶対よ。指示通りに動きなさい」
「まぁまぁ、宝剣持ちが来たのですから、ボルセブ様の指示は達成したとも言えるのではないですか?」
「さすがはマーガレッタ! 話が分かるね」
「私が宝剣持ちを殺す」
「おいケイロン。お前ストームガストを無効化されたからって俺の獲物を取るなよ」
「お前の獲物だと決まったわけじゃない。筋肉馬鹿は下がっていろ」
「はぁ……ならケイロンの後は俺な」
「後? 私が負けるというのか?」
「くっくっく。やってみれば分かるよ。お前は経験不足なのが痛いな」
「ふん!」
4人の中ではもっとも若い姿のケイロンと呼ばれたウィザードが前に出てきた。
「おい宝剣持ち。私と勝負だ」
「いいですよ」
「グライア様。この4人は!」
「大丈夫です。カプラーさん達は下がっていてください」
広場の中央だけ別世界だ。
周りではボット戦士と国の部隊が激しく戦い続けている。
ランドプロテクターの効果時間が切れ、光り輝く地面は消え失せた。
同時にケイロンが高速詠唱を始める。
「ユピテルサンダー!」
「スペルブレイカー!」
魔法詠唱を打ち壊すスペルブレイカーを唱えながら一気に間合いを詰める。
「エナジーコート!」
「ディスペル!」
ケイロンの魔力バリアであるエナジーコートをディスペルで打ち消す。
そこにスパノビソードと宝剣がケイロンを斬り裂い……
「セイフティーウォール」
聖なるバリアがケイロンを守る。
後ろからプリーストの支援が飛んできた。
確かマーガレッタという名前だったな。
「おい」
「今のは助けないと、やられていましたよ」
「別にいいだろうが。まあいい……おい交代だ」
ブラックスミスのアルトアイゼンが不満そうな声を上げる。
ケイロンはアイスウォールを数枚展開させると、後方に下がっていった。
「何なのあいつ!」
「詠唱魔法を中断させる魔法のようですね。さらには支援魔法などを打ち消す魔法」
「そんな魔法聞いたことないわよ!」
「私達が使える魔法など、神の管理下で制御された僅かなものばかり。ルーン文字を解せば無限ともいえる魔法が存在するのです」
「では宝剣持ちはルーン文字を解しているのか?」
「さぁ、それは何とも……ですが現実として目の前で私達の知らない魔法を使ったというのが事実です」
「おい! ウィンザーを追い詰めた魔法ってのを俺にも見せてみろよ! オーバートラストマックス!」
アルトアイゼンが向かってきた。
ウィンザーほどではないが速い。
ランドグリスの影と同じぐらいか?
「トンネルドライブ」
斧を避けるようにハイディングで一瞬姿を隠すと、アルトアイゼンの背後を取り、
「バックスタブ!」
強烈な一撃を入れてやった。
「ヒール!」
すぐにマーガレッタのヒールが飛んでくるが、宝剣をマーガレッタに向かわせる。
「ダブルストレイファング!」
ハンターのディモンが宝剣を打ち落とそうとするも、ディモンの矢をかわして宝剣はマーガレッタに向かっていく。
「ハンマーターミネーション!」
アルトアイゼンの雷のような鋭い一撃が襲ってきた。
「跳躍!」
空高く跳びその一撃をかわすと、空中に飛んだまま、
「残影!」
再びアルトアイゼンの背後を取り、スパノビソードでその背中を斬り裂いた。
「ぐお!」
今度はその肉体にまで届いたらしい。
ウィンザー並みの速さで背中を斬り裂いてやったのだ。
HPがどれほどか知らないが、耐えることは出来なかったようだ。
「きさまぁぁぁ!」
斧を高速で振り回すも、僕にはその動きがはっきりと見えている。
この4人はウィンザー並みの強さは持っていないようである。
マーガレッタに向かわせた宝剣2本も、ケイロンとディモンに妨害されながらもマーガレッタを斬ろうと追い続けている。
このアルトアイゼンはここで……倒しておくか。
クローンではないオリジナルがボット帝国の主力部隊であることは間違いないはずだ。
なら少しでもその数を減らすべきだろう。
「爆裂波動!」「気功!!」
僕の気が一気に爆発すると、身体を駆け巡る闘気が電流のように流れ、身体能力を大幅に上昇させてくれる。
さらに気功で気を1つ溜める。
そして、
「三段斬!」
本来は拳による攻撃であるモンクのスキルをスパノビソードで発動させると、連続技のが炸裂する。
「連打斬!」
アルトアイゼンの身体から真っ赤な血飛沫が舞う。
既にその目に生気はない。
最後の一撃は、
「猛龍斬!」
闘気を全てスパノビソードに乗せると、強烈な一閃でアルトアイゼンを斬った。
「なっ!?」
次の瞬間、僕の目に映ったのは……光の粒子となって消えていくアルトアイゼンだった。
モンスター?
このアルトアイゼンはクローンモンスター?
でも言葉を喋っていたし、動きもクローンモンスターとは違っていた。
いったいどういうことなんだ?
「え?」
消えたアルトアイゼンから視線を上げれば、そこには宝剣2本によって同じく光の粒子となり消えていくマーガレッタの姿があった。
宝剣スキルは強力だ。
ランドグリスの影との戦いによって、さらにその動きは速く強くなっている。
それでも宝剣だけでオリジナルを倒せてしまうなんて……。
「くそ~~!」
ケイロンとディモンが向かってきた。
同時に後ろからカプラーさん達が一斉に2人に向かっていく。
僕は宝剣を1本ずつ、それぞれケイロンとディモンに向かわせた。
それだけで十分だった。
宝剣に動きを抑えられた2人は、カプラーさん達の攻撃を避けることはできず、あっという間に光りの粒子となって消えていった。
そしてオリジナル部隊を失ったボット戦士達を倒し終えるまで、10分とかからなかった。
広場は国が制圧。
国の部隊では数名の戦死者が出てしまった。
また退路が無くなったことで士気はかなり低い。
みんな不安の表情を浮かべている。
僕はカプラーさん達と後方で集まり話し合った。
「グライア様、助けて頂きありがとうございます。
本当にいろいろ聞きたいことが多すぎるのですが、まずは今までどこにいたのでしょうか? 1ヶ月ほど前、私とティア様はグライア様がワープポタールに乗ってプロンテラに戻ったのを見ています。ですがプロンテラの教会にグライア様が現れることはありませんでした」
「それに関しては、ワープポタールに乗って出た先がプロンテラの教会ではなかったのです」
「え?」
「あ、これはティアさんのせいではありません。ティアさんは間違いなくプロンテラへのワープポタールを出しています。ただ、ちょっとした力が僕をその場所に招いたようなんです」
「ちょっとした力とは?」
「今は言えません。ですが、その力の導きによって僕はどこにあるのか分からない島で1ヶ月の間ずっと修行の日々を送っていました」
「さきほどのグライア様の強さはそこで鍛えられたものなのですね」
「はい。そうです」
「なるほど……グライア様の新しい力に関していろいろ聞きたいところではありますが、今は時間がありませんので、後日ゆっくりと……。
ところで、グライア様はどうやってジュノーにやって来たのでしょうか?
地上に戻るワープポイントは消滅していましたが、どこかに地上と繋がるワープポイントがあるのですか?」
「それは……」
僕は空に浮かぶ岩を跳躍スキルで飛び上がり、さらには岩壁を登ろうとするも失敗して、宝剣を足場にまた跳躍スキルで上がってきたことを説明した。
僕の説明を聞くみんなの顔が驚愕の色に染まって、ちょっと面白かった。
「な、なるほど。それはグライア様にしかできませんね。
となると、あいかわらず退路は断たれた状況ですね」
「ワープポタールは?」
「だめです。ワープポタールだけ発動しません」
「洗脳装置をどうにか破壊するべきだわ」
「ナディア様の言う通りですね。幸いあの4人はグライア様のおかげで倒すことが出来ましたので復活までに時間があるはずです。まだ他にも主力級の敵が潜んでいる可能性がありますが、グライア様がいればきっと倒せるはずです」
復活!?
「そのことなんですけど、いまの4人は倒した時に光りの粒子となって消えていきましたよね? あの4人はウィンザーとは違うのでしょうか? それに復活ってどういうことですか?」
「グライア様はご存知ないことでしたね。
アルデバランを取り戻した後、ウィンザーとガイルが私達の前の現れることはありませんでした。
代わりなのか、あの4人が私達との戦いで常に先頭に立ってきたのです。
そしてクローンのボット戦士とは違うはずの彼らは、何度倒しても復活して私達の前に現れたのです」
「それって不死身ってこと……いや、でも光の粒子となって消えていった……」
「私達もなぜ彼らが何度も復活できるのか分かっておりません。
ですが、倒した彼らは倒される直前までの記憶を持ってまた現れるのです。
そしてその強さは倒す度にどんどん強くなっているように私達には感じられます」
まるでランドグリスの影だな。
あの現象が応用されているのか?
だとすれば、さらに強くなった彼らがまた僕達の前に現れることになるのか。
「洗脳装置はシュバルツバルド政府庁舎に置かれている可能性が高いと思います。
おそらくそこには洗脳された大統領もいるはずです。
洗脳装置を破壊して大統領を救出しましょう!」
シュバルツバルド政府庁舎はこの広場からまっすぐ北に向かったところにあるそうだ。
僕はカプラーさん達と一緒に政府庁舎に向かった。
第5章開始です。
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